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ロシアのプーチン大統領は19日、ベラルーシの首都ミンスクを訪れ、ルカシェンコ大統領と約2時間にわたり会談した。ベラルーシは、今や数少ないロシアと気脈を通じる国となったが、ルカシェンコ氏は外交巧者でプーチン氏に思わせぶりをするだけ。これまでは、ウクライナ侵攻へ参戦することを避けてきた。今回の会談で、参戦へ踏み切らせるかが注目されている。

 

ルカシェンコ氏には、国内基盤が盤石でない弱みがある。参戦すれば、国内の反政府勢力が動き出すというリスクがあるのだ。そういう時限爆弾を抱えてまで、危ない橋を渡るのか。

 

英『BBC』(12月20日付)は、「ウクライナ『国境の防衛強化へ』、ロシアとベラルーシの首脳会談受け『新攻勢』懸念」と題する記事を掲載した。

 

ウクライナのイェウヘン・イェニン第1副内相はBBCに対し、ウクライナは軍と弾薬を使ってベラルーシ国境の防衛を強化する方針だと述べた。さらに、「ロシア国境とベラルーシ国境の一帯に張り巡らせた防衛線を、増強している」と述べた。

 

(1)「ベラルーシは、ウクライナだけでなくロシアとも国境を接している。ロシア国防省は、プーチン大統領のベラルーシ訪問に先立ち、ベラルーシに駐留する部隊がベラルーシ軍と合同軍事演習を行う予定だと発表した。ベラルーシはウクライナでの戦争に直接関与していないが、2月にロシア軍がウクライナ侵攻を開始する際、自国領土の使用を許可していた」

 

ベラルーシは現在、西側諸国から経済制裁を受けている。参戦は、緒戦から回避していただけに、敢えてこの段階で派兵するとすれば、ロシアから好条件を出されなければなるまい。だが、ロシアにはすでに経済的余力がなくなっている。

 

(2)「ベラルーシ政府はロシア政府から、ウクライナでのいわゆる「特別軍事作戦」への支援を強化するよう圧力をかけられている。しかし、ロシア政府のペスコフ大統領報道官はこうした報道を「まったく愚かな、根拠のないでっちあげ」だと一蹴した。プーチン氏とルカシェンコ氏がベラルーシで会談するのは3年半ぶりだった。これまで両大統領はロシア国内で会談するのがほとんどだった」

 

プーチン氏が、わざわざベラルーシを訪問したのは、相当な「下心」あってのことだろう。つまり、参戦させることだ。

 

(3)「『実務訪問』とされた会談は2時間以上にわたり行われた。内容はまだ明らかになっていないが、プーチン氏は共同記者会見で、ロシアは誰も「取り込む」気はないと述べた。また、不特定の「敵」がロシアとベラルーシの「一体化」を阻止したがっているとした。米国務省のネッド・プライス報道官は、プーチン氏は現在ウクライナを取り込もうとしており、ロシア側の発言は「皮肉の極み」だと指摘した」

 

プーチン氏は共同記者会見で、ロシアは誰も「取り込む」気はないと述べた。これが事実とすれば、ルカシェンコ氏から婉曲に断られたのかも知れない。もう少し時間が経たなければ真相は分かるまい。

 

(4)「BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長によると、共同記者会見では経済関係や貿易、安全保障について多く語られたものの、会談の意図を読み解く手がかりはほとんどなかった。プーチン氏は、核ミサイルを搭載できるよう、ベラルーシの軍用機の一部の装備が整えられたことや、ロシアがその人員の訓練を支援していることを示唆した。一方のルカシェンコ氏は、ロシアがS-400防空システムや、核兵器が搭載可能な短距離弾道ミサイル発射装置「イスカンデル」をベラルーシに提供してくれたことに感謝を述べた」

 

このパラグラフの通りとすれば、ロシアがベラルーシへ兵器を供与しただけになる。これらの兵器供与が、ウクライナへの潜在的な圧力になると考えているのであろう。ただ、ベラルーシの動きは、NATO軍によって100%監視されている。妙な動きをすれば、けん制されるだろう。

 

(5)「公の場で「ウクライナ」という単語が言及されることはほぼなかったという。しかし今回の訪問は、ロシアの指導者がベラルーシの指導者に圧力をかけて、ウクライナでの新たな地上戦に参加させようとしているのではないかとの憶測に拍車をかけたと、ローゼンバーグ編集長は指摘。単なる噂に過ぎないかもしれないし、ベラルーシが加勢するとウクライナ側に思わせて北部に駐留するウクライナ兵を足止めするための策略かもしれないとした」

 

米シンクタンクの戦争研究所は16日時点で、「ベラルーシ経由のウクライナ侵攻の可能性は低いものの、あり得る」と分析した。つまり、ベラルーシの参戦可能性は低いが、ゼロでもないという微妙な判断だ。ただ、ロシア軍の劣勢が明らかな現在、敢えて「火中に栗を拾う」行為も愚かに映る。最後は、独裁者同士の損得論になるのか。