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今年の新車販売台数でトヨタは連続3年、世界一になる公算が強くなった。トヨタも依然、半導体不足が続いているので、全ての需要を満たせない状況という。余裕を残しての世界一と言えそうだ。

 

『日本経済新聞』(12月27日付)は、「トヨタ、3年連続世界一へ 22年新車販売台数 中国でVWと明暗」と題する記事を掲載した。

 

トヨタ自動車の2022年の世界新車販売が3年連続で世界首位になる見通しとなった。トヨタが26日に発表した1~11月の世界販売台数は前年同期比横ばいの956万台だった。独フォルクスワーゲン(VW、9%減の742万台)を214万台上回った。主力市場の中国や東南アジアでの販売増が全体を押し上げた。一方、半導体不足などに端を発する世界的な生産停滞は続いており、需要をすべてまかなえない状態が依然リスクとなっている。

 

(1)「ダイハツ工業と日野自動車を含む、トヨタグループ全体の11月単月の世界販売は88万台と前年同月比で4%伸びた。一方、VWは9%増の67万台だった。トヨタを逆転して首位に立つには22年の月間平均販売の3倍を超える台数が12月だけで必要になる計算だ。トヨタ単体(トヨタ・レクサスブランド)だけでもVWを上回りそうだ。1~11月でけん引したのは中国や東南アジアだ。トヨタ単体の中国での販売は2%増だった。「カローラ」や「カムリ」といった車種が好調だったほか、夏に工場の生産能力を増強し、新型コロナウイルス禍の落ち込みから回復し始めた旺盛な需要を取り込んだ。東南アジアでは多目的スポーツ車(SUV)などが好調で、インドネシア(1割増)やタイ(2割増)などで販売を伸ばした」

 

1~11月までの実績で、トヨタがVWを引離して世界一位になることは確実な情勢である。トヨタは、半導体手当でよりスムースに行っていることもプラスになっている。もちろん、車の質が評価されている。米国では、耐久性で断トツの強みを発揮している。

 

(2)「VWは中国で6%減と苦戦し、その他のアジア太平洋地域でも6%増にとどまった。中国でのロックダウン(都市封鎖)により、部品供給や海上輸送の混乱が響いた。独北部ウォルフスブルクの本社工場の稼働にも影響し、販売台数が大きく落ち込んだ。VWの新車販売の4割、トヨタでも2割を占める中国市場が明暗を分けた。中国市場への進出でトヨタは後発だ。このため、トヨタの中国での1~11月の販売台数はVWと比べて4割少ない。事業規模が小さい分、半導体不足やロックダウンの影響を相対的に抑えられたとみられる」

 

中国でも、トヨタはホンダと並んで下取り価格で高いことが注目されている。このことが、ユーザーを繋ぎ止めているのであろう。

 

(3)「22年の中国新車市場については、中国汽車工業協会が21年を上回ると予測。一方で、新型コロナウイルスの封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策緩和前は、自動車各社は販売店の営業が一部でできず、生産調整も実施した。12月の生産・販売ではトヨタとVWの双方に影響がでるとみられ、1月以降も新型コロナ感染拡大が需要に影響する可能性が懸念されている」

 

中国は、「ゼロコロナ」から一足飛びに「ウイズコロナ」になって、生産・流通で大混乱に陥っている。この影響は、少なくも来年1~3月まで続く見通しである。これが、トヨタとVWにどのような結果をもたらすか、である。

 

(4)「トヨタも中国以外の主力市場では苦戦した。北米と日本ともに1割減だった。半導体を多く使う高性能車種の供給が滞ったことが原因だ。VWもお膝元の西欧地域で7%減だった。9月に就任したVWのオリバー・ブルーメ社長は「供給不足は例外ではなく、もはや自動車産業のルールとなりつつある」と語る。成長領域とされる電気自動車(EV)ではVWが先を行く。1~9月に前年同期比25%増の約36万台を販売した。トヨタは11月までで2万台弱にすぎない。トヨタは本格量産EVの「BZ4X」が不具合によりリコール(回収・無償修理)に追い込まれるなど、思うような成果が出せていない」

 

トヨタは、EVで苦戦している。「BZ4X」がリコールに追込まれたからだ。トヨタにしては珍しい失敗である。ただ、トヨタのことだ。これを教訓にして再出発するであろう。

 

(5)「トヨタは23年3月期に世界で970万台を生産する計画を掲げていたが、11月に50万台下方修正した。前期実績(857万台)や過去最高だった17年3月期(907万台)を上回る高水準だが、半導体不足によって計画通りに造れない混乱がなお続いている。

足元では改善の兆しもある。トヨタの11月の世界生産は1%増の83万台と11月として過去最高だった。ある部品会社幹部は「半導体不足は最悪期を脱した」と語る。生産が正常化すれば、世界で積み上がっている受注残が解消され、長引く納期問題の改善にもつながる」

 

下線部のように、半導体不足で納車遅れが続いている。半導体供給が増えれば、受注残は販売増となる。

 

(6)「調査会社の米S&Pグローバルによると、23年の世界新車(乗用車系)販売台数は前年比6%増の約8360万台の見通しだ。半導体不足は緩和されるものの、早くても24年までは影響が残るという。供給網全体で部品を安定調達できるかが問われる局面は続きそうだ」

 

23年は、世界新車が前年比で6%増が見込めるという。ただ、中国のコロナに伴う大混乱を折り込んでいないであろうから、割引しておうべきだ。