勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    EU(欧州連合)加盟国の閣僚理事会は12日、域内にあるロシアの国家資産を無期限に凍結することで合意した。全会一致ではなく、EU条約の緊急条項を発動し、域内人口を勘案した特定多数決で決めた。資産凍結は今後、ロシアがウクライナに賠償するまで解除しない。親ロシアのハンガリーが拒否権を行使して凍結の延長を阻み、資産を利用したウクライナ支援が滞る事態を避ける狙いがある。EUは、侵略者を許さないという強い姿勢だ。中国は、こういうEUのスタンスをどんな思いでみているか。

     

    『ロイター』(12月13日付)は、「EU、ロシア中銀資産の無期限凍結で合意 ウクライナ支援融資に道」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)は12日、域内で管理されているロシア中央銀行の資産を無期限で凍結することで合意した。これまでは6カ月ごとに凍結の延長の是非を巡る投票を実施していたが、無期限で凍結することで、ロシアと比較的良好な関係を持つハンガリーやスロバキアなどが反対する事態を防ぐ狙いがあるとみられる。

     

    (1)「無期限凍結の対象になるのは2100億ユーロ(約2460億ドル)に上る資産。EUは域内で凍結されているロシア資産を担保にウクライナに最大1650億ユーロの融資を行う意向で、EUはロシア中銀資産を無期限で凍結することで、ロシア資産の多くが保管されているベルギーを説得したい考え。こうした融資は2026年と27年のウクライナの軍事、民生予算を賄うためのもので、ロシアが戦争賠償を支払った時点での返済が予定されている」

     

    EUは、域内で凍結されているロシア資産を担保にウクライナに最大1650億ユーロの(約30兆1950億円)融資を行う意向である。これは、ロシアに払わせる賠償金が支払いを終えたら返済するもの。ウクライナ侵略を続けるロシアへの大きな制裁圧力となる。EUは、米国とロシアが主導するウクライナ和平交渉で、欧州側の交渉力が高まると期待する。

     

    (2)「EUは18日に開く首脳会議で、融資の詳細のほか、ベルギーが単独で負担を強いられないようにする保証などについて詰めの協議を行う。これに先立ち、ウクライナのゼレンスキー大統領は15日にベルリンを訪問し、メルツ独首相と会談。独政府によると、EUや北大西洋条約機構(NATO)の首脳も協議に参加する」

     

    凍結資産の多くを管理する証券決済機関ユーロクリアを抱えるベルギーは、融資案はリスクが大きいとして難色を示す。それだけに、EUやNATOも参加して、ロシアの復讐に備えて議論する。ウクライナのNATO加盟については、加盟国の間で意見が一致していない状況だ。

     

    (3)「ロシア中銀は12日、EUによるロシア中銀の資産利用計画は違法だとし、国益を守るため、あらゆる手段を講じる権利を留保すると表明。ロシア資産の多くが保管されているベルギーの決済機関ユーロクリアについては、資金や証券の処分能力に悪影響を及ぼしたとし、モスクワの裁判所に提訴すると表明した」

     

    ロシア中央銀行は12日、ユーロクリアに損害賠償を求め、モスクワの仲裁裁判所に提訴すると発表した。

     

     

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    EU(欧州連合)が、海外からの直接投資に関する規制強化を計画している。具体的には、中国企業が欧州の労働者に恩恵をもたらすことなく、また技術移転もせずにEUのオープンな市場から利益を得ることを防ぐ目的だ。中国は、海外企業の直接投資の際、技術移転を露骨に要求してきた。だが、EUへ資本進出する際に技術移転を拒む閉鎖体質を丸出しにしている。こういう偏った経営に対して、EUが、「ノー」を突きつけるもの。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月23日付)は、「EUが海外からの投資規制強化へ、中国の競争力に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    欧州委員会は域内の産業基盤活性化や経済成長促進に向けた一連の提案を12月に出す予定で、現在協議中の規制改定案はその一部だ。トランプ米政権の関税政策のあおりで安価な中国製品がEU市場に大量に流入している。鉄鋼や化学製品業界は、ただでさえエネルギー価格高騰や複雑な環境規制への対応に苦闘しているのに、中国企業がさらなる重圧をかけている。

     

    (1)「直接投資は、中国企業がEUの追加関税を回避するための手段とも考えられている。欧州委員会のセジュルネ上級副委員長(産業戦略担当)は、フィナンシャル・タイムズ(FT)に、「外国投資がEU域外で組み立てられた部品(の組み立て)に充てられるのではなく、欧州のバリューチェーン全体の機能」に貢献できるような基準を設定すべきだと述べた」

     

    EUは、中国企業が関税逃れ目的で、製品組み立てだけを行うことに強い警戒をみせている。全生産工程をEUで行うことを条件にしようとしている。

     

    (2)「フランスは、現地調達要件の拡大と「メード・イン・ヨーロッパ」条項をEUの法律に盛り込むべきだと長年主張してきており、同国出身のセジュルネ氏もこれを強く後押ししてきた。同氏は改定案ではEUに投資する外国企業に地元労働者の雇用や、「バッテリー等の分野」での技術移転が義務付けられるとの見方を示した。また「(投資は)欧州市場への単なる入り口ではなく、欧州の経済成長に資するべきだ」と述べた。さらにEUとトランプ氏には、製造業の復活という「共通の課題」があると述べ、「唯一異なっているのはEUが産業政策において関税以外の手段を用いる点だ。我々は市場を保護するが、(外国からの直接投資に対し)欧州での現地生産を認める条件を設ける方法を選ぶ」と説明した」

     

    現地生産では、技術移転も条件に付けられる。中国政府は、技術移転に難色を示しているので、これが争点になろう。

     

    (3)「中国の車載電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)は、欧州の競合他社より優れた技術を持っており、この問題の焦点となっている。すでにドイツで工場が稼働しているほか、ハンガリーに70億ユーロ、スペインに40億ユーロを投じて工場を建設中だ。米国防総省は1月、CATLを中国人民解放軍とのつながりが疑われる企業のリストに追加した。同社は疑惑を否定している」

     

    CATLは、技術移転が焦点になっている。中国政府は、ブレーキをかけている。

     

    (4)「スペイン東部サラゴサの工場は、欧州自動車大手のステランティスと共同で建設する。CATLは中国から建設作業員2千人を現地に連れて行く計画だ。また工場の従業員3千人の大半は地元で採用するとしているが、中国政府の方針に従い最も重要な技術の共有には消極的になると予想する労働組合関係者もいる。あるスペイン政府関係者は、同国が外国投資への規制強化を目指すEUの取り組みを強く支持していると明らかにし、「欧州の経済安全保障と強靱(きょうじん)さを高め、海外からの直接投資を通じて欧州各国が付加価値の高いテクノロジーや雇用を生み出すことが可能になる」と期待を示した。中国企業は近年、水素関連事業でもドイツやスペイン、北欧諸国で大規模な投資を行っている」

     

    CATLは、中国から建設作業員2千人を現地に連れて行く計画だ。技術漏洩を防ぐ目的であろう。最も重要な技術の共有には消極的になるとみられている。

     

    (5)「中欧アジア研究所(CEIAS)のマルティン・シェベナ首席エコノミストは、規制強化により「欧州各国、特に規制介入の緩さを暗にほのめかして一部産業への外国投資を誘致しようとする南欧や中東欧諸国の(税率引き下げや労働・環境基準緩和などを競う)『底辺への競争』に歯止めがかかる」と指摘した。また、シェベナ氏は電気自動車(EV)産業では伝統的に欧州企業とつながりが深い日本と韓国の企業も規制強化の影響を受けると指摘した。一方、EU関係者は、日韓企業は中国企業よりEUが定める基準に適応する可能性が高いとの見方を示した」

     

    日韓企業は、中国企業よりEUが定める基準に適応する可能性が高いとみられている。技術移転にも弾力的という意味であろう。

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    EU(欧州連合)は、トランプ氏の相互関税で大きな痛手を被る見通しが濃くなってきた。米中が、二大輸出市場であるだけに両国の貿易戦争の影響を真っ正面から受けるからだ。4年間で120兆円規模の損失になるという。こうして、EUは米国との話合いを早急に始める意向だ。EU経済の核であるドイツは、今後4年間でGDPが、1.5%押下げられるという。25年のGDPマイナス成長が不可避の見込みとなってきた。

    『日本経済新聞 電子版』(4月13日付)は、「欧州経済、米関税で損失120兆円 独はGDP1.5%押し下げ」と題する記事を掲載した。

    欧州経済の回復シナリオがトランプ米大統領の「相互関税」で狂い始めている。欧州連合(EU)が被る経済損失は今後4年間で7500億ユーロ(約122兆円)規模に膨らむ見通しだ。ドイツは東西統一後で初めて3年連続のマイナス成長となるかどうかの瀬戸際に立つ。


    (1)「次期独首相に就任する見通しとなった中道右派キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は9日、「ドイツだけでなく、欧州諸国を代表してワシントンで話し合いたい」と述べた。独公共放送でトランプ氏との早期会談に意欲を示した。欧州と米国をまたぐ「大西洋横断の関税ゼロ」をめざす。ドイツ経済研究所(IW)の試算によると、トランプ氏の大統領任期である4年間でEUに与える域内総生産(GDP)の損失は7500億ユーロ規模に達する恐れがある。世界からの輸入品に課す相互関税の表明を踏まえて公表したもので、トランプ氏はEUの税率を原則20%とした」

    ドイツ次期首相は、EUを代表して米国と話し合う方針を固めた。4年間でEUに与えるGDPの損失は7500億ユーロ規模に達する見込みだという。

    (2)「当面90日間は、上乗せ分の一時停止で10%に下がるものの、EUとの交渉は成否が読めず、トランプ政権の政策も二転三転する。IWの分析は、他国の報復措置を含めておらず、中国が米国製品への報復関税を125%に引上げると表明したため不透明感は一段と増した。特に深刻なのが欧州最大の経済大国ドイツだ。累計の経済損失はおよそ2000億ユーロになり、関税がない場合と比べて28年時点の独GDPを1.5%押し下げる。IWで国際経済に詳しいユルゲン・マテス氏は、「EUは貿易紛争の新局面を迎えた」と指摘する」

    ドイツ経済は、輸出依存度が37.31%(2023年)と先進国では最も高い。それだけに、受ける影響が大きくなる。


    (3)「世界でも欧州は、景気回復が遅れてきただけに影響は大きい。ロシアのウクライナ侵略でエネルギー不安が高まり、歴史的なインフレが猛威を振るった。新型コロナウイルス禍からの景気回復シナリオを狂わせ、ドイツ経済は24年まで2年連続のマイナス成長に転落した。英HSBCによると、EUから米国への輸出にかかるモノの関税率は、23年時点で平均3%強だった。大幅な関税引き上げは製品の値上がりを通じて、ドイツ企業の米国での販売減少に結びつく。独自動車工業会のミュラー会長は一連の追加関税で「雇用にも影響が出るだろう」と懸念する」

    EUは、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー供給遮断で大きな被害を受けた。ようやく、この被害から回復しようという矢先にトランプ関税の圧迫を受ける。

    (4)「実際、欧州各国で景気見通しの下方修正が相次ぐ。IFO経済研究所など主要な独研究機関が10日公表した共同の景気予測で、25年のドイツ実質成長率は0.1%と24年秋時点から0.7ポイント引き下げた。輸出の下振れで再び成長が止まり、東西統一後で初となる3年連続のマイナス成長も現実味を帯びる。フランス政府も25年の成長率予測を0.7%と0.2ポイント下方修正する。イタリアは0.6%程度の成長にとどまりそうだ。景気の急減速は想定外の税収下振れを招きかねず、国防費の引き上げやウクライナの軍事支援にも影を落とす」

    25年のドイツ経済は、憲法上の財政赤字規制が緩和されることから、回復が見込まれていた。それが一転、3年連続のマイナス成長の気配が濃くなっている。


    (5)「金融市場は欧州中央銀行(ECB)の利下げ終了が遠のくとの見方を強める。米ゴールドマン・サックスは欧州経済の下振れリスクを踏まえ、4月と6月に続いて9月まで連続利下げに動くとの予測に切り替えた。政策金利は現在の2.5%から1.5%まで下がると想定する。市場で景気浮揚への期待を呼んでいたドイツの財政出動も、効果をそがれる恐れがある。メルツ氏は憲法改正で厳格な債務抑制策を見直し、巨額の財政拡張へ道筋をつけた。今後10年あまりで国防費やインフラ投資に充てる追加の財政支出は1兆ユーロ規模になる見通しだ」

    政策金利は、現在の2.5%から1.5%まで下がると想定する。この効果は、相互関税で帳消しになりそうだ。




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    ドイツは、規則を好む社会である。財政赤字にブレーキをかけるべく、憲法(基本法)で財政赤字をGDP比0.35%に制約(「債務ブレーキ」)する項目を設けている。だが、これがガンになって不景気でも財政赤字を増やせないという「財政の弾力性」が失われている。これも、ドイツの「官僚主義」の現れとみられる。やたらと規制を作って手続きを煩雑にしているのだ。

    『ロイター』(3月14日付)は、「『官僚主義』が阻む景気回復、ドイツ企業が改善訴え」と題する記事を掲載した。

    ドイツが国内工業の回復を急ぐのであれば、新政権は思い切った公共投資拡大策だけでなく、官僚主義的な手続きを劇的に減らす必要がある、と企業関係者は主張している。


    (1)「ロイターが自動車、エネルギー、物流といった産業を代表する業界団体のトップ幹部らにインタビューを行ったところ、ドイツの官僚主義的な手続きのコストや手間のせいで、本来であれば事業の現代化に投資すべきリソースが食い潰されている、という声が上がった。自動車メーカーなど産業界のクライアント向けにボルト・リベット類を製造する従業員450人のメーカー、メカニンドゥス・フォーゲルサングを率いるウルリッヒ・フラトケン氏もその1人だ」

    ドイツは、官庁への手続きが煩雑であると指摘されている。これは、AI(人工知能)でカバーできる問題だ。ドイツは、デジタル化が遅れている。

    (2)「ここ数カ月、欧州連合に対して規制枠組みの緩和・簡素化を求める企業幹部からの声が高まっている。米国市場の閉鎖性が強まり中国企業が海外事業を拡大する中で、どのように競争していくべきか企業が模索しているからだ。ドイツでは先週、銀行業界のトップが、インフラや国防の分野で予定されている大規模な歳出計画が十分に効果を発揮するには、並行して官僚主義的な煩雑さを解消する必要がある、と釘をさした。ドイツ企業5000社が加盟する鉄鋼産業の業界団体WSMのクリスチャン・ビートマイヤー代表は、欧州最大の経済大国ドイツでは、規制面での負担によりイノベーションが阻害されていると指摘する」

    インフラや国防の分野で、大規模な歳出計画が十分に効果を発揮するには、並行して官僚主義的な煩雑さを解消する必要と指摘されている。手続きが煩雑であるのは、規制が強すぎる結果である。


    (3)「欧州委員会は2月、サステナビリティー報告基準の一部を緩和し、2029年までに報告義務を25%、中小企業に関しては35%縮小すると宣言した。管理コストに換算して375億ユーロ(400億ドル)の削減に相当する。先日のドイツ総選挙で最多得票を得た保守派のキリスト教民主同盟(CDU)は連立政権の発足に向けて協議を進めているが、優先すべき政策課題15項目のうち、2番目に官僚主義の解消を挙げている。だが現実には、企業幹部らはこうした公約に対して半信半疑で、政府が単に新たな要件を課すことになるのではないかと危ぶんでいる」

    EU(欧州連合)の欧州委員会(内閣に相当)は、2029年までに政府への報告義務を25%、中小企業に関しては35%縮小すると宣言した。これによって、管理コストが375億ユーロ(400億ドル)も削減可能という。ドイツの次期首相を出すCDUは、重要政策の2番目に官僚主義の解消を挙げているほどだ。


    (4)「実際、世界経済フォーラムが2023年に行った調査によれば、EU諸国のうち、政府規制の遵守がそれ以前の4年間に比べてより複雑になったのは3カ国だけで、その1つがドイツだった。ドイツのIFO経済研究所は許認可の取得や納税申告の提出、商品の取引といった業務に要するコストを測定する指数をまとめているが、2024年のデータによれば、他の欧州諸国、OECD加盟国ではここ数年負担が軽減されている一方で、ドイツでは2006年以来、官僚主義スコアが横ばい状態であることが分かった。アディダスのビヨルン・グルデン最高経営責任者(CEO)は、規制要件が過剰になってしまったと話す」

    ドイツの規制要件は、過剰になっている。これは、市場経済のスムースな流れを阻害することでもある。米国のトランプ政権は、規制を外しすぎて問題になっているが、ドイツもこの流れの万分の一でも取り入れる必要がある。

    (5)「ドイツはこれまで官僚主義の解消に向けて多くの法律を制定してきた。その1つが今年施行されるもので、納税通知書のデジタル化や、企業の領収証保管年数を10年から8年に短縮することなどにより、9億4400万ユーロの節約を謳っている。CDUのマニフェストでは、報告義務を縮小し、中小企業については検査担当者の任命義務を免除する旨の単年度法案を提案している」

    業務のデジタル化は、日本も学ばなければならない。


    (6)「CDUは、「サプライチェーン法」の廃止を望んでいる。これは従業員数1000人以上の企業に対し、サプライチェーン内での人権・環境関連のリスク低減への取り組みを報告するよう義務付けるものだが、結局はより小規模なサプライヤーに説明義務を転嫁することになり、またEU全体を対象とした類似の法律と重複している。ドイツ緑の党や社会民主党、さらには複数の非政府組織(NGO)は、こうした報告義務を緩和すれば企業の説明責任が軽減され、サステナビリティー面で苦労の末に獲得した成果が帳消しにされてしまうのではないかという懸念を表明している。

    ドイツでは、緑の党や社会民主党などが規制撤廃にブレーキをかけている。すべてを民間に任せることが不安なのだ。ドイツのような「規制大国」には、こういう一面がある。


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    昨年のドイツ名目GDPは、日本を抜いて世界3位になったものの実態はふらついている。円の異常安が生んだGDP3位交代であったことが、ますます明確になっている。 

    ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が、17日発表した9月の先行指数は3.6と、8月の19.2から急低下した。エコノミスト予想では、17への小幅な低下が見込まれていた。これほどの大幅悪化を予想したエコノミストは1人もいなかった。一致指数もマイナス84.5へ低下した。 

    『ブルームバーグ』(9月17日付)は、「ドイツの景気見通しは『著しく悪化』、ZEW先行指数が急低下」と題する記事を掲載した。 

    (1)「ZEWのバンバッハ所長は発表文で、「景気の早期改善への期待は目に見えて薄れつつある」と述べ、「ユーロ圏景気見通しの後退は悲観的な見方が総じて強まっていることを示唆するが、ドイツの見通しは著しく悪化している」と指摘した。ドイツの4ー6月(第2四半期)国内総生産(GDP)はマイナス。工業界の不振が影響した。ここ最近は、自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)が国内工場の閉鎖検討や雇用保障協定の破棄を明らかにしたほか、BMWは業績予想の下方修正を強いられるなど、厳しいニュースが相次いでいる」

     

    ドイツ経済は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーコストの急上昇で製造業が窮地に立たされている。景気の半年から1年先を示す先行指数が、たったのプラス3.6では、10月はマイナス転落が不可避だろう。一致指数は、すでにマイナスである。ドイツ経済は正直正銘の危機状態にある。 

    『ブルームバーグ』(9月6日付)は、「ドイツ激震、VW工場閉鎖は『氷山の一角』 工業力衰退の象徴に」と題する記事を掲載した。 

    ドイツ最大のメーカー(VW)が工場閉鎖という引き返せない「ルビコン川」を渡ろうとしていることで、ドイツは工業力衰退という物語の中で最も象徴的な瞬間に直面している。VWの発表は、ビジネスの現実を遅ればせながら認識したというだけではない。自動車大国としてのドイツのイメージと、かつて輸出世界一だった経済への打撃だ。

     

    (2)「VWの発表は、ビジネスの現実を遅ればせながら認識したというだけではない。自動車大国としてのドイツのイメージと、かつて輸出世界一だった経済への打撃だ。1989年にベルリンの壁が崩壊すると、東西ドイツの統一が急がれたが、文化や経済面での格差は残った。9月1日に投開票された独東部2州の州議会選では、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進した。東西の分断を浮き彫りにしているAfDや左派ポピュリストの勢いを止める力は、主流派の政党にはない」 

    旧東ドイツの2州は、景気が停滞しており極右政党が州議会選で躍進している。不況期の極右政党の進出は、旧ナチスを連想させるだけに不気味である。 

    (3)「AfDの台頭は、ショルツ首相の連立政権にとって痛手となるだけではない。2025年の総選挙が迫る中で有権者が抱く不満の根本原因に向き合うよう迫っている。そうした中で多くを左右するのが、輸出主導の自動車製造大国から、半導体やEVバッテリーといった先端を行くクリーンエネルギー大国への速やかな移行という新たな経済の奇跡をドイツが成し遂げられるかどうかだ」 

    かつての自動車大国ドイツが、VWの工場閉鎖問題が象徴するように、行き詰まっている。日本は、トヨタが世界一の座を堅守してくれている。ありがたいことだ。

     

    (4)「VWの失速は、時代に乗り遅れた企業を巡る警告であり、ドイツの成功モデルに潜んでいた陥穽(かんせい)だ。欧州経済の原動力となってきたドイツが、今後も欧州をリードし続けることができるのか疑問に疑問が投げかけられている。INGのマクロ部門責任者カルステン・ブルゼスキ氏は「VWの問題は誤った経営判断による自業自得という側面もあるが、VWはビジネス拠点としてのドイツが直面している難題の一例を突き付けている」と指摘。ドイツは長年にわたり競争力を失い続けており、これがかつての独経済の至宝、VWにも影響を及ぼしている」と述べた」 

    VWの失速は、EV(電気自動車)へ賭けすぎたことだ。EVが、未だ技術的に完成していないことに気付かず勝負した結果である。トヨタの判断とは、全く異なっていた。経営判断の失敗である。 

    (5)「VWは昨年、東部の中規模都市ツウィッカウでフルEV247000台と、「ランボルギーニ」と「ベントレー」向けに1万2000の車体を生産したが、工場閉鎖の可能性が浮上する前から、コスト削減がすでに進んでいた。EVが依然として高価でEV購入を促す奨励策が縮小されつつあり、欧州でのEVの普及がなかなか進まないという状況にツウィッカウ工場は全面的にさらされている。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、マーティン・アデマー氏は、「ドイツ経済における自動車産業の重要性は近年低下しているが、引き続き非常に重要なセクターであることに変わりはない」と語った」 

    自動車産業は、雇用の受け皿である。工場閉鎖は、大変な失業者を生む。

     

     

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