勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

    a0960_008532_m
       

    中国の自動車メーカーが、世界自動車業界の混乱を加速させている。同国の月間自動車輸出台数は初めて7桁(100万台)の大台に乗り、衰える気配を見せていない。これは各国に保護主義の議論を再燃させ貿易摩擦を激化させる。

     

    『ロイター』(7月18日付)は、「加速する中国車輸出、各国の対抗措置と全面衝突リスクもと題する記事を掲載した。

     

    中国勢の海外生産ペースが速まっている。世界的な競合他社の利益率を圧迫し、業界再編を促すことになる。これは、各国に保護主義の議論を再燃させ、その先に待っているのは新たな激しい通商摩擦だ。

     

    (1)「中国のメーカーは、6月に110万台の自動車を海外に出荷した。これは前年同月比で70%超の増加で、この勢いが維持されれば年間1000万台前後としていた当初の海外販売予測を、余裕を持って上回ってもおかしくない。こうした傾向を後押ししているのは、二つの推進力だ。中国国内の販売は不振で9カ月連続減少している。年初来の国内購入台数は2割ほど落ち込み、既に過剰な供給状態に拍車をかけている。

     

    中国は、6月にEV(電気自動車)中心に110万台の自動車を輸出した。年間では、1000万台に達するかもしれなという驚異的伸びである。ガソリン価格上昇の反動である。

     

    (2)「一方、中国国外では買い手の意欲が旺盛だ。イランでの戦闘の影響で高騰した燃料価格が、手頃な電気自動車(EV)への関心を高めている。これにより、吉利汽車などのメーカーは、6月の海外輸出台数を2倍強に増やすことができた。しかも、それは中国国内生産車に限った話ではない。コンサルティング会社アリックスパートナーズの調査では、中国の自動車メーカーが外国生産台数を、昨年の120万台から2030年までに340万台に引き上げる計画だ。先月の輸出を約90%増加させたBYD(比亜迪)は、ハンガリーの新工場が年内に稼働すると発表しており、既に欧州で2番目の拠点を模索している」

     

    中国の自動車メーカーは、外国生産台数も増やしている。昨年の120万台から2030年までに340万台に引き上げる計画である。

     

    (3)「輸出と海外生産の加速は、業界の他社を圧倒するだろう。S&Pグローバル・モビリティーによれば、今年の自動車市場全体の世界的な成長率は約0.2%と、ほぼ横ばいになる見通し。つまり中国ブランドの拡大は、既存の国際的なメーカーからシェアを奪うことにかかっている。BYDの幹部、ステラ・リー氏は英紙フィナンシャル・タイムズに、同社は米国市場に参入しなくても、いずれトヨタ自動車を追い抜くと考えていると語った」

     

    年の自動車市場の世界的な成長率は、約0.2%と横ばい予想である。ここで、中国だけが海外市場で販売台数を伸せば、他国メーカーへ大きくしわ寄せされる。

     

    (4)「このような状況は、ホンダやベトナムのビンファストのような赤字の競合他社をさらに厳しい立場に追い込み、他のメーカーの利益も減少させるだろう。ビジブル・アルファのデータに基づくと、主要自動車メーカー12社の平均純利益率は、中国の輸出が勢いを増し始めた5年前の約6%から、昨年は1%にまで低下した。規模を回復し、地位を固めるために、提携やパートナーシップを検討せざるを得ない企業も出てくるかもしれない」

     

    世界主要自動車メーカー12社の平均純利益率は、中国の輸出が勢いを増し始めた5年前の約6%から、昨年は1%にまで低下した。中国自動車進出の影響を被っている。

     

    (5)「自国の自動車メーカーを守ろうとする各国・地域の政策担当者は、既に関税や貿易障壁を設けている。しかし6月の輸出データは、これらの措置が今のところ供給の波を止めるのにほとんど役に立っていないことを示しており、より強力な対抗手段が準備されているかもしれない。例えば欧州連合(EU)は、バッテリー式電気自動車(BEV)には追加関税を課しているが、ハイブリッド車にはまだ適用していない。ドイツ紙ハンデルスブラットは関係者の話として、欧州当局がこの方針の再検討に入ったと報じた」

     

    EUは、中国EVには関税引上げで対抗するが、HVは未だ適用していない。検討課題になった。

     

    (6)「中国の自動車メーカーの輸出台数が、100万台の大台を突破したのはEVの普及という意味で好ましいのかもしれない。だが、そうした事態は中国車の輸出攻勢が外国の対抗措置と全面的に衝突する軌道をたどるリスクをはらんでいる」

     

    今年は、EUで中国と激しい衝突が予想される。EUは、自動車雇用をどう守るのか。中国も国内不況が深刻である。原油価格高騰は、コストアップをもたらしているものの、販売価格への転嫁ができずにいる。

    a0960_008532_m
       


    EU(欧州連合)では、EV(電気自動車)が不振を極め解雇者続出である。この事態を解決するには、EVを保護する一方で、中国EVを廃除しなければならないという二律背反に陥っている。そこで、EV部品が70%の完成車について購入補助金を給付するとの案が出されているが、異論百出で決定に至っていない。70%部品に英国や日本も含めよという主張も出ているという。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(2月17日付)は、EUEV補助に『70%域内生産』要件 中国勢に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)の欧州委員会は、電気自動車(EV)に政府の購入補助策を適用する際の条件として、部材の少なくとも70%を域内製とすることを義務付ける案を検討している。中国勢との競争が激化するなか、域内の製造業基盤を保護する狙いがある。

     

    (1)「フィナンシャル・タイムズ(FT)が確認した法案の草案によると、欧州委は建設分野でも政府補助や公共調達の対象となる製品について、窓やドアに使われるアルミニウム製品の少なくとも25%、プラスチック製品の30%を域内製とすることを義務付ける方針だ。EVや建設などの重工業に域内製の基準を設けるのは、約2兆6000億ユーロ(約472兆円)規模のEUの製造基盤を維持するための広範な取り組みの一環となる」

     

    EUは、472兆円規模でEU製造業保護を行う。EV保護もその一環である。

     

    (2)「欧州では、中国の低価格製品との競争に加え、エネルギー価格の高騰や厳格な気候変動対策への対応コストの増加により、EUの製造業では工場閉鎖や数千人規模の人員削減が進んでいる。欧州委が25日に公表する予定の「産業アクセラレーター法」は、公共調達の入札で二酸化炭素(CO2)排出量を考慮することなどを通じて、域内産業の競争力を高めることを目的とする」

     

    EUの製造業では、工場閉鎖や数千人規模の人員削減が進んでいる。それだけに、中心産業であるEV保護では意見が割れている。

     

    (3)「草案では、購入補助の対象となるEVやハイブリッド車(HV)、燃料電池車(FCV)、および公的機関が購入またはリースする車両について、域内で組み立てることを求める。さらに、電池を除く部材の少なくとも70%を価格ベースで域内調達とすることが条件となる。また、車載電池の主要部材の一部についても域内由来とする要件が盛り込まれた。EV業界は電池技術や材料で中国への依存度が高く、この条件の達成は難しいとの指摘が自動車業界から出ている」

     

    EV購入補助対象車では、域内で組み立てることを求める。さらに、電池を除く部材の少なくとも70%を価格ベースで域内調達が条件だ。

     

    (4)「部品の70%という基準は草案で角かっこ付き([70%]といった形)で記載されており、なお議論中で変更される可能性がある。再生可能エネルギーや電池などクリーン技術分野の企業や自動車部品メーカーは、域内調達の要件を支持している。一方、自動車メーカーの見解は分かれている。独BMWは、規制が不要なコスト増と事務負担を招くと警告した。これに対し、独フォルクスワーゲン(VW)や欧州ステランティスは、自動車メーカーに域内製部材の使用を促す「メード・イン・ヨーロッパ」の公的支援制度の導入を求めている。さらに一部の自動車メーカーは、優遇対象をEU域内調達に限定せず、トルコや英国などの製造拠点、あるいは日本などの主要な貿易相手国が製造した部材調達も含めるべきだと主張している」

     

    70%も最終決定ではない。変更される可能性もある。優遇対象をEU域内調達に限定せず、トルコや英国などの製造拠点、日本なども加えるべきという意見もだされている。

     

     

     

    a0960_008532_m
       


    EU(欧州連合)加盟国の閣僚理事会は12日、域内にあるロシアの国家資産を無期限に凍結することで合意した。全会一致ではなく、EU条約の緊急条項を発動し、域内人口を勘案した特定多数決で決めた。資産凍結は今後、ロシアがウクライナに賠償するまで解除しない。親ロシアのハンガリーが拒否権を行使して凍結の延長を阻み、資産を利用したウクライナ支援が滞る事態を避ける狙いがある。EUは、侵略者を許さないという強い姿勢だ。中国は、こういうEUのスタンスをどんな思いでみているか。

     

    『ロイター』(12月13日付)は、「EU、ロシア中銀資産の無期限凍結で合意 ウクライナ支援融資に道」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)は12日、域内で管理されているロシア中央銀行の資産を無期限で凍結することで合意した。これまでは6カ月ごとに凍結の延長の是非を巡る投票を実施していたが、無期限で凍結することで、ロシアと比較的良好な関係を持つハンガリーやスロバキアなどが反対する事態を防ぐ狙いがあるとみられる。

     

    (1)「無期限凍結の対象になるのは2100億ユーロ(約2460億ドル)に上る資産。EUは域内で凍結されているロシア資産を担保にウクライナに最大1650億ユーロの融資を行う意向で、EUはロシア中銀資産を無期限で凍結することで、ロシア資産の多くが保管されているベルギーを説得したい考え。こうした融資は2026年と27年のウクライナの軍事、民生予算を賄うためのもので、ロシアが戦争賠償を支払った時点での返済が予定されている」

     

    EUは、域内で凍結されているロシア資産を担保にウクライナに最大1650億ユーロの(約30兆1950億円)融資を行う意向である。これは、ロシアに払わせる賠償金が支払いを終えたら返済するもの。ウクライナ侵略を続けるロシアへの大きな制裁圧力となる。EUは、米国とロシアが主導するウクライナ和平交渉で、欧州側の交渉力が高まると期待する。

     

    (2)「EUは18日に開く首脳会議で、融資の詳細のほか、ベルギーが単独で負担を強いられないようにする保証などについて詰めの協議を行う。これに先立ち、ウクライナのゼレンスキー大統領は15日にベルリンを訪問し、メルツ独首相と会談。独政府によると、EUや北大西洋条約機構(NATO)の首脳も協議に参加する」

     

    凍結資産の多くを管理する証券決済機関ユーロクリアを抱えるベルギーは、融資案はリスクが大きいとして難色を示す。それだけに、EUやNATOも参加して、ロシアの復讐に備えて議論する。ウクライナのNATO加盟については、加盟国の間で意見が一致していない状況だ。

     

    (3)「ロシア中銀は12日、EUによるロシア中銀の資産利用計画は違法だとし、国益を守るため、あらゆる手段を講じる権利を留保すると表明。ロシア資産の多くが保管されているベルギーの決済機関ユーロクリアについては、資金や証券の処分能力に悪影響を及ぼしたとし、モスクワの裁判所に提訴すると表明した」

     

    ロシア中央銀行は12日、ユーロクリアに損害賠償を求め、モスクワの仲裁裁判所に提訴すると発表した。

     

     

    a0960_008417_m
       

    EU(欧州連合)が、海外からの直接投資に関する規制強化を計画している。具体的には、中国企業が欧州の労働者に恩恵をもたらすことなく、また技術移転もせずにEUのオープンな市場から利益を得ることを防ぐ目的だ。中国は、海外企業の直接投資の際、技術移転を露骨に要求してきた。だが、EUへ資本進出する際に技術移転を拒む閉鎖体質を丸出しにしている。こういう偏った経営に対して、EUが、「ノー」を突きつけるもの。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月23日付)は、「EUが海外からの投資規制強化へ、中国の競争力に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    欧州委員会は域内の産業基盤活性化や経済成長促進に向けた一連の提案を12月に出す予定で、現在協議中の規制改定案はその一部だ。トランプ米政権の関税政策のあおりで安価な中国製品がEU市場に大量に流入している。鉄鋼や化学製品業界は、ただでさえエネルギー価格高騰や複雑な環境規制への対応に苦闘しているのに、中国企業がさらなる重圧をかけている。

     

    (1)「直接投資は、中国企業がEUの追加関税を回避するための手段とも考えられている。欧州委員会のセジュルネ上級副委員長(産業戦略担当)は、フィナンシャル・タイムズ(FT)に、「外国投資がEU域外で組み立てられた部品(の組み立て)に充てられるのではなく、欧州のバリューチェーン全体の機能」に貢献できるような基準を設定すべきだと述べた」

     

    EUは、中国企業が関税逃れ目的で、製品組み立てだけを行うことに強い警戒をみせている。全生産工程をEUで行うことを条件にしようとしている。

     

    (2)「フランスは、現地調達要件の拡大と「メード・イン・ヨーロッパ」条項をEUの法律に盛り込むべきだと長年主張してきており、同国出身のセジュルネ氏もこれを強く後押ししてきた。同氏は改定案ではEUに投資する外国企業に地元労働者の雇用や、「バッテリー等の分野」での技術移転が義務付けられるとの見方を示した。また「(投資は)欧州市場への単なる入り口ではなく、欧州の経済成長に資するべきだ」と述べた。さらにEUとトランプ氏には、製造業の復活という「共通の課題」があると述べ、「唯一異なっているのはEUが産業政策において関税以外の手段を用いる点だ。我々は市場を保護するが、(外国からの直接投資に対し)欧州での現地生産を認める条件を設ける方法を選ぶ」と説明した」

     

    現地生産では、技術移転も条件に付けられる。中国政府は、技術移転に難色を示しているので、これが争点になろう。

     

    (3)「中国の車載電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)は、欧州の競合他社より優れた技術を持っており、この問題の焦点となっている。すでにドイツで工場が稼働しているほか、ハンガリーに70億ユーロ、スペインに40億ユーロを投じて工場を建設中だ。米国防総省は1月、CATLを中国人民解放軍とのつながりが疑われる企業のリストに追加した。同社は疑惑を否定している」

     

    CATLは、技術移転が焦点になっている。中国政府は、ブレーキをかけている。

     

    (4)「スペイン東部サラゴサの工場は、欧州自動車大手のステランティスと共同で建設する。CATLは中国から建設作業員2千人を現地に連れて行く計画だ。また工場の従業員3千人の大半は地元で採用するとしているが、中国政府の方針に従い最も重要な技術の共有には消極的になると予想する労働組合関係者もいる。あるスペイン政府関係者は、同国が外国投資への規制強化を目指すEUの取り組みを強く支持していると明らかにし、「欧州の経済安全保障と強靱(きょうじん)さを高め、海外からの直接投資を通じて欧州各国が付加価値の高いテクノロジーや雇用を生み出すことが可能になる」と期待を示した。中国企業は近年、水素関連事業でもドイツやスペイン、北欧諸国で大規模な投資を行っている」

     

    CATLは、中国から建設作業員2千人を現地に連れて行く計画だ。技術漏洩を防ぐ目的であろう。最も重要な技術の共有には消極的になるとみられている。

     

    (5)「中欧アジア研究所(CEIAS)のマルティン・シェベナ首席エコノミストは、規制強化により「欧州各国、特に規制介入の緩さを暗にほのめかして一部産業への外国投資を誘致しようとする南欧や中東欧諸国の(税率引き下げや労働・環境基準緩和などを競う)『底辺への競争』に歯止めがかかる」と指摘した。また、シェベナ氏は電気自動車(EV)産業では伝統的に欧州企業とつながりが深い日本と韓国の企業も規制強化の影響を受けると指摘した。一方、EU関係者は、日韓企業は中国企業よりEUが定める基準に適応する可能性が高いとの見方を示した」

     

    日韓企業は、中国企業よりEUが定める基準に適応する可能性が高いとみられている。技術移転にも弾力的という意味であろう。

    a1320_000159_m
       

    EU(欧州連合)は、トランプ氏の相互関税で大きな痛手を被る見通しが濃くなってきた。米中が、二大輸出市場であるだけに両国の貿易戦争の影響を真っ正面から受けるからだ。4年間で120兆円規模の損失になるという。こうして、EUは米国との話合いを早急に始める意向だ。EU経済の核であるドイツは、今後4年間でGDPが、1.5%押下げられるという。25年のGDPマイナス成長が不可避の見込みとなってきた。

    『日本経済新聞 電子版』(4月13日付)は、「欧州経済、米関税で損失120兆円 独はGDP1.5%押し下げ」と題する記事を掲載した。

    欧州経済の回復シナリオがトランプ米大統領の「相互関税」で狂い始めている。欧州連合(EU)が被る経済損失は今後4年間で7500億ユーロ(約122兆円)規模に膨らむ見通しだ。ドイツは東西統一後で初めて3年連続のマイナス成長となるかどうかの瀬戸際に立つ。


    (1)「次期独首相に就任する見通しとなった中道右派キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は9日、「ドイツだけでなく、欧州諸国を代表してワシントンで話し合いたい」と述べた。独公共放送でトランプ氏との早期会談に意欲を示した。欧州と米国をまたぐ「大西洋横断の関税ゼロ」をめざす。ドイツ経済研究所(IW)の試算によると、トランプ氏の大統領任期である4年間でEUに与える域内総生産(GDP)の損失は7500億ユーロ規模に達する恐れがある。世界からの輸入品に課す相互関税の表明を踏まえて公表したもので、トランプ氏はEUの税率を原則20%とした」

    ドイツ次期首相は、EUを代表して米国と話し合う方針を固めた。4年間でEUに与えるGDPの損失は7500億ユーロ規模に達する見込みだという。

    (2)「当面90日間は、上乗せ分の一時停止で10%に下がるものの、EUとの交渉は成否が読めず、トランプ政権の政策も二転三転する。IWの分析は、他国の報復措置を含めておらず、中国が米国製品への報復関税を125%に引上げると表明したため不透明感は一段と増した。特に深刻なのが欧州最大の経済大国ドイツだ。累計の経済損失はおよそ2000億ユーロになり、関税がない場合と比べて28年時点の独GDPを1.5%押し下げる。IWで国際経済に詳しいユルゲン・マテス氏は、「EUは貿易紛争の新局面を迎えた」と指摘する」

    ドイツ経済は、輸出依存度が37.31%(2023年)と先進国では最も高い。それだけに、受ける影響が大きくなる。


    (3)「世界でも欧州は、景気回復が遅れてきただけに影響は大きい。ロシアのウクライナ侵略でエネルギー不安が高まり、歴史的なインフレが猛威を振るった。新型コロナウイルス禍からの景気回復シナリオを狂わせ、ドイツ経済は24年まで2年連続のマイナス成長に転落した。英HSBCによると、EUから米国への輸出にかかるモノの関税率は、23年時点で平均3%強だった。大幅な関税引き上げは製品の値上がりを通じて、ドイツ企業の米国での販売減少に結びつく。独自動車工業会のミュラー会長は一連の追加関税で「雇用にも影響が出るだろう」と懸念する」

    EUは、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー供給遮断で大きな被害を受けた。ようやく、この被害から回復しようという矢先にトランプ関税の圧迫を受ける。

    (4)「実際、欧州各国で景気見通しの下方修正が相次ぐ。IFO経済研究所など主要な独研究機関が10日公表した共同の景気予測で、25年のドイツ実質成長率は0.1%と24年秋時点から0.7ポイント引き下げた。輸出の下振れで再び成長が止まり、東西統一後で初となる3年連続のマイナス成長も現実味を帯びる。フランス政府も25年の成長率予測を0.7%と0.2ポイント下方修正する。イタリアは0.6%程度の成長にとどまりそうだ。景気の急減速は想定外の税収下振れを招きかねず、国防費の引き上げやウクライナの軍事支援にも影を落とす」

    25年のドイツ経済は、憲法上の財政赤字規制が緩和されることから、回復が見込まれていた。それが一転、3年連続のマイナス成長の気配が濃くなっている。


    (5)「金融市場は欧州中央銀行(ECB)の利下げ終了が遠のくとの見方を強める。米ゴールドマン・サックスは欧州経済の下振れリスクを踏まえ、4月と6月に続いて9月まで連続利下げに動くとの予測に切り替えた。政策金利は現在の2.5%から1.5%まで下がると想定する。市場で景気浮揚への期待を呼んでいたドイツの財政出動も、効果をそがれる恐れがある。メルツ氏は憲法改正で厳格な債務抑制策を見直し、巨額の財政拡張へ道筋をつけた。今後10年あまりで国防費やインフラ投資に充てる追加の財政支出は1兆ユーロ規模になる見通しだ」

    政策金利は、現在の2.5%から1.5%まで下がると想定する。この効果は、相互関税で帳消しになりそうだ。




    このページのトップヘ