中国の自動車メーカーが、世界自動車業界の混乱を加速させている。同国の月間自動車輸出台数は初めて7桁(100万台)の大台に乗り、衰える気配を見せていない。これは各国に保護主義の議論を再燃させ貿易摩擦を激化させる。
『ロイター』(7月18日付)は、「加速する中国車輸出、各国の対抗措置と全面衝突リスクもと題する記事を掲載した。
中国勢の海外生産ペースが速まっている。世界的な競合他社の利益率を圧迫し、業界再編を促すことになる。これは、各国に保護主義の議論を再燃させ、その先に待っているのは新たな激しい通商摩擦だ。
(1)「中国のメーカーは、6月に110万台の自動車を海外に出荷した。これは前年同月比で70%超の増加で、この勢いが維持されれば年間1000万台前後としていた当初の海外販売予測を、余裕を持って上回ってもおかしくない。こうした傾向を後押ししているのは、二つの推進力だ。中国国内の販売は不振で9カ月連続減少している。年初来の国内購入台数は2割ほど落ち込み、既に過剰な供給状態に拍車をかけている。
中国は、6月にEV(電気自動車)中心に110万台の自動車を輸出した。年間では、1000万台に達するかもしれなという驚異的伸びである。ガソリン価格上昇の反動である。
(2)「一方、中国国外では買い手の意欲が旺盛だ。イランでの戦闘の影響で高騰した燃料価格が、手頃な電気自動車(EV)への関心を高めている。これにより、吉利汽車などのメーカーは、6月の海外輸出台数を2倍強に増やすことができた。しかも、それは中国国内生産車に限った話ではない。コンサルティング会社アリックスパートナーズの調査では、中国の自動車メーカーが外国生産台数を、昨年の120万台から2030年までに340万台に引き上げる計画だ。先月の輸出を約90%増加させたBYD(比亜迪)は、ハンガリーの新工場が年内に稼働すると発表しており、既に欧州で2番目の拠点を模索している」
中国の自動車メーカーは、外国生産台数も増やしている。昨年の120万台から2030年までに340万台に引き上げる計画である。
(3)「輸出と海外生産の加速は、業界の他社を圧倒するだろう。S&Pグローバル・モビリティーによれば、今年の自動車市場全体の世界的な成長率は約0.2%と、ほぼ横ばいになる見通し。つまり中国ブランドの拡大は、既存の国際的なメーカーからシェアを奪うことにかかっている。BYDの幹部、ステラ・リー氏は英紙フィナンシャル・タイムズに、同社は米国市場に参入しなくても、いずれトヨタ自動車を追い抜くと考えていると語った」
今年の自動車市場の世界的な成長率は、約0.2%と横ばい予想である。ここで、中国だけが海外市場で販売台数を伸せば、他国メーカーへ大きくしわ寄せされる。
(4)「このような状況は、ホンダやベトナムのビンファストのような赤字の競合他社をさらに厳しい立場に追い込み、他のメーカーの利益も減少させるだろう。ビジブル・アルファのデータに基づくと、主要自動車メーカー12社の平均純利益率は、中国の輸出が勢いを増し始めた5年前の約6%から、昨年は1%にまで低下した。規模を回復し、地位を固めるために、提携やパートナーシップを検討せざるを得ない企業も出てくるかもしれない」
世界主要自動車メーカー12社の平均純利益率は、中国の輸出が勢いを増し始めた5年前の約6%から、昨年は1%にまで低下した。中国自動車進出の影響を被っている。
(5)「自国の自動車メーカーを守ろうとする各国・地域の政策担当者は、既に関税や貿易障壁を設けている。しかし6月の輸出データは、これらの措置が今のところ供給の波を止めるのにほとんど役に立っていないことを示しており、より強力な対抗手段が準備されているかもしれない。例えば欧州連合(EU)は、バッテリー式電気自動車(BEV)には追加関税を課しているが、ハイブリッド車にはまだ適用していない。ドイツ紙ハンデルスブラットは関係者の話として、欧州当局がこの方針の再検討に入ったと報じた」
EUは、中国EVには関税引上げで対抗するが、HVは未だ適用していない。検討課題になった。
(6)「中国の自動車メーカーの輸出台数が、100万台の大台を突破したのはEVの普及という意味で好ましいのかもしれない。だが、そうした事態は中国車の輸出攻勢が外国の対抗措置と全面的に衝突する軌道をたどるリスクをはらんでいる」
今年は、EUで中国と激しい衝突が予想される。EUは、自動車雇用をどう守るのか。中国も国内不況が深刻である。原油価格高騰は、コストアップをもたらしているものの、販売価格への転嫁ができずにいる。



