勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    昨年のドイツ名目GDPは、日本を抜いて世界3位になったものの実態はふらついている。円の異常安が生んだGDP3位交代であったことが、ますます明確になっている。 

    ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が、17日発表した9月の先行指数は3.6と、8月の19.2から急低下した。エコノミスト予想では、17への小幅な低下が見込まれていた。これほどの大幅悪化を予想したエコノミストは1人もいなかった。一致指数もマイナス84.5へ低下した。 

    『ブルームバーグ』(9月17日付)は、「ドイツの景気見通しは『著しく悪化』、ZEW先行指数が急低下」と題する記事を掲載した。 

    (1)「ZEWのバンバッハ所長は発表文で、「景気の早期改善への期待は目に見えて薄れつつある」と述べ、「ユーロ圏景気見通しの後退は悲観的な見方が総じて強まっていることを示唆するが、ドイツの見通しは著しく悪化している」と指摘した。ドイツの4ー6月(第2四半期)国内総生産(GDP)はマイナス。工業界の不振が影響した。ここ最近は、自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)が国内工場の閉鎖検討や雇用保障協定の破棄を明らかにしたほか、BMWは業績予想の下方修正を強いられるなど、厳しいニュースが相次いでいる」

     

    ドイツ経済は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーコストの急上昇で製造業が窮地に立たされている。景気の半年から1年先を示す先行指数が、たったのプラス3.6では、10月はマイナス転落が不可避だろう。一致指数は、すでにマイナスである。ドイツ経済は正直正銘の危機状態にある。 

    『ブルームバーグ』(9月6日付)は、「ドイツ激震、VW工場閉鎖は『氷山の一角』 工業力衰退の象徴に」と題する記事を掲載した。 

    ドイツ最大のメーカー(VW)が工場閉鎖という引き返せない「ルビコン川」を渡ろうとしていることで、ドイツは工業力衰退という物語の中で最も象徴的な瞬間に直面している。VWの発表は、ビジネスの現実を遅ればせながら認識したというだけではない。自動車大国としてのドイツのイメージと、かつて輸出世界一だった経済への打撃だ。

     

    (2)「VWの発表は、ビジネスの現実を遅ればせながら認識したというだけではない。自動車大国としてのドイツのイメージと、かつて輸出世界一だった経済への打撃だ。1989年にベルリンの壁が崩壊すると、東西ドイツの統一が急がれたが、文化や経済面での格差は残った。9月1日に投開票された独東部2州の州議会選では、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進した。東西の分断を浮き彫りにしているAfDや左派ポピュリストの勢いを止める力は、主流派の政党にはない」 

    旧東ドイツの2州は、景気が停滞しており極右政党が州議会選で躍進している。不況期の極右政党の進出は、旧ナチスを連想させるだけに不気味である。 

    (3)「AfDの台頭は、ショルツ首相の連立政権にとって痛手となるだけではない。2025年の総選挙が迫る中で有権者が抱く不満の根本原因に向き合うよう迫っている。そうした中で多くを左右するのが、輸出主導の自動車製造大国から、半導体やEVバッテリーといった先端を行くクリーンエネルギー大国への速やかな移行という新たな経済の奇跡をドイツが成し遂げられるかどうかだ」 

    かつての自動車大国ドイツが、VWの工場閉鎖問題が象徴するように、行き詰まっている。日本は、トヨタが世界一の座を堅守してくれている。ありがたいことだ。

     

    (4)「VWの失速は、時代に乗り遅れた企業を巡る警告であり、ドイツの成功モデルに潜んでいた陥穽(かんせい)だ。欧州経済の原動力となってきたドイツが、今後も欧州をリードし続けることができるのか疑問に疑問が投げかけられている。INGのマクロ部門責任者カルステン・ブルゼスキ氏は「VWの問題は誤った経営判断による自業自得という側面もあるが、VWはビジネス拠点としてのドイツが直面している難題の一例を突き付けている」と指摘。ドイツは長年にわたり競争力を失い続けており、これがかつての独経済の至宝、VWにも影響を及ぼしている」と述べた」 

    VWの失速は、EV(電気自動車)へ賭けすぎたことだ。EVが、未だ技術的に完成していないことに気付かず勝負した結果である。トヨタの判断とは、全く異なっていた。経営判断の失敗である。 

    (5)「VWは昨年、東部の中規模都市ツウィッカウでフルEV247000台と、「ランボルギーニ」と「ベントレー」向けに1万2000の車体を生産したが、工場閉鎖の可能性が浮上する前から、コスト削減がすでに進んでいた。EVが依然として高価でEV購入を促す奨励策が縮小されつつあり、欧州でのEVの普及がなかなか進まないという状況にツウィッカウ工場は全面的にさらされている。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、マーティン・アデマー氏は、「ドイツ経済における自動車産業の重要性は近年低下しているが、引き続き非常に重要なセクターであることに変わりはない」と語った」 

    自動車産業は、雇用の受け皿である。工場閉鎖は、大変な失業者を生む。

     

     

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    リチウム電池の設備抑制

    EU高関税がEVへ壁に

    企業へ補助金を出す理由

    過剰投資が生産性引下げ

     

    中国国家主席の習近平氏にとって、まことに都合の悪い事態が起こってきた。不動産バブル崩壊の後遺症を処理する財政支出拡大を行わない一方で、「三種の神器」であるEV(電気自動車)・電池・ソーラーパネルの三製品の輸出急増構想が行き詰まったからだ。これで、習氏の描いた「中国式経済成長」は崩れた訳で、収拾策をどうするのか最終段階を迎えた。

     

    習近平氏は、一貫して財政赤字拡大を忌避してきた。財政には、経済全体を調整する機能が備わっている。政治と密接な関係を深めているのだ。財政運営が成功することは、政治も成功したというシグナルになるので、習氏は不動産バブル崩壊に伴う財政赤字拡大を忌避したかったに違いない。政治の「良いところ取り」を狙って、失敗部分を切り捨てたかったのだ。

     

    習氏は、インフラ投資や企業への補助金を湯水のごとく支出させてきた。いわゆる「過剰投資」である。これによって、毎年のGDPを押上げる効果を期待できたので、迷うことはなかった。この「補助金漬け」が、中国経済に「過剰投資」をもたらした。過剰投資は、必然的に「過剰能力」を生むので企業は低い操業度になる。これによって、中国経済は生産性を引上げられない宿命的な欠陥を抱えることになった。

     

    長い目で見ると、低い生産性が低いGDP成長率になる。習氏は、これをかさ上げさせるべく、さらにインフラ投資と企業補助金を給付してきた。こうして繰返される過剰投資が、中国経済を蝕んでおり、慢性的な低生産性の事態へ追込んでいる。IMF(国際通貨基金)は、2026年から3%台成長へ落込むと危惧している。29年には3.31%まで低下するとみている。これは、24年4月時点の予測である。中国は、あがいてもどうにもならない局面へ向っている。経済は、思惑を離れてセオリー通りに動くのである。

     

    リチウム電池の設備抑制

    中国工業情報化省は6月19日、リチウムイオン電池産業に関する新たなガイドライン(指針)を発表した。生産能力の拡大を抑制し、技術革新、製品の品質向上、生産コスト低減を促す、とした。しかも、実施は20日からである。慌ただしい決定だ。

     

    発表によると、農地や環境保護地区でのリチウムイオン電池製造は、停止または大幅に縮小される。これは、リチウムの精製過程で多量の二酸化炭素を排出して環境を破壊するからだ。先進国が、リチウム精錬を取り止めた理由は環境負荷問題にあった。中国は、こういうマイナスに目をつぶって、「経済成長」目的で突進した。今、ようやくその負担の大きさに気付かされたのだろう。

     

    工業情報化省はまた、リチウム電池のサプライチェーンにおける生産能力の急速な拡大と低操業度が、電池や原材料などの価格を急落させると指摘している。中国電池業界は、CATL(寧徳時代新能源科技)とBYD(比亜迪)2社の寡占体制ができあがり、飽くなき価格引下げ競争を行っている。23年の世界シェアは、CATLが36.8%、BYDは15.8%である。こういう状況下での値下げ競争は、国内弱小電池メーカーの生存自体を脅かしている。中国政府が、設備投資競争を止めたのは当然であろう。

     

    同省は、「リチウム電池産業の計画や新規プロジェクトの立ち上げは、資源分野の発展、生態系保護、省エネルギーに沿ったものでなければならないと」指摘している。中国が、リチウム電池の増設にストップを掛けたのは、自然破壊と密接な関係を持っている。だが、これだけが設備抑制の理由ではない。電池を搭載するEV輸出に陰りが出たことだ。もはや、従来通りの輸出が不可能と判断した証拠であろう。

     

    EU高関税がEVへ壁に

    EU(欧州連合)は、7月から中国製EVへ最大48.1%の関税率を課すことになった。これでは、中国製電池が他国よりも2割程度、割安とされるメリットが吹飛ぶのだ。到底、5割近い高関税率を乗り越える見通しが立たなくなったのであろう。このほか、EUのEV需要が落ちている。24年のEV需要は、昨年よりも10%減が確実となった。中国EV輸出の壁が、それだけ高くなるのだ。

     

    米国は、中国製EVへ100%の超高関税率を課すとしている。米国は、EUの2倍もの高関税率である。EUへのEV輸出が抑制されれば、米国は「ゼロ」同然となろう。

     

    中国のソーラーパネルは、世界市場を「食い尽くした」感じである。それでも、EU市場への進出意欲を見せている。最近、ルーマニア政府が、実施した太陽光発電所の建設プロジェクトの競争入札から、応札していた中国企業2社が撤退した。EUの政策執行機関であるEU委員会が、これらの中国企業に対して不公正な補助金の有無に関する調査を進めていたことが影響したとみられる。(つづく)

     

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    北海道が世界先端地域へ

    太陽光コスト原発へ接近

    水素へ価格差調整を実施

    EUが水素技術で相乗り

     

    政府は6月4日、「金融・資産運用特区」として東京・大阪・福岡・札幌の4都市を指定した。規制緩和によって、個人の金融資産を投資に向かわせ、「成長と分配の好循環」の実現を図るという主旨だ。この中で、札幌市が、北海道とともに指定されたのは、異色という感じである。狙いは、日本経済の将来を左右するグリーンエネルギー産業振興である。北海道・札幌が、選ばれたのはそれだけ大きな意味を持っている。

     

    北海道は、太陽光発電と風力発電で日本最大の適地である。陸上風力では日本全体の約半分の適地があるのだ。すでに、米国のインベナジーは、今後10年間で、北海道における再生可能エネルギー(再エネ)関連開発に2000億円以上の投資計画を明らかにしている。北海道が、内外資本から再エネ産業の有望地域として脚光を浴びているのだ。

     

    北海道は、苫小牧や室蘭を中心として工業地帯が形成されている。道内でつくられる再エネは今年2月、これら地域での工業用水素発電に使われる企業間協定が発表された。出光興産・ENEOS・北海道電力3社による事業計画で、国産グリーン水素サプライチェーンを立ち上げる。

     

    具体的には、2030年頃までに苫小牧西部エリアにおいて、国内最大となる年間1万トン以上のグリーン水素を製造できる水電解プラントを建設する。製造したグリーン水素は、出光興産および地域の工場などにパイプラインで供給する計画だ。こうした、事業計画の発表は、日本グリーン水素に「水素時代」が到来しつつあることを告げている。

     

    北海道が世界先端地域へ

    グリーン水素は、二酸化炭素を排出しないのでクリーンエネルギーである。水素を製造するには、こうした再エネによって水電解プラントを稼働させる方法と、もう一つ小型原子力の「高温ガス炉」を使う方法がある。高温ガス炉による水素製造実証試験は、日本が今年2月世界で初めて成功した。30年以降の実用化に向けて、三菱重工業が高温ガス炉の製造を行うことに決まった。

     

    日本は、このように「地産地消型」の再エネを使う水素製造と、高温ガス炉による水素製造の二つが、ワンセットになってグリーンエネルギー時代を牽引する。グリーンエネルギーが普及するためには、先ず水素需要をつくり出すことが大前提になる。

     

    そこで、大きな意味を持つのは、今回の北海道GX(グリーントランスフォーメーション)特区によって、普及への地ならしが必要性であることだ。北海道は、明治維新の開拓に次ぐ「第二の開拓」と言われるほど期待が高まっている。札幌市は、GX投資を最大40兆円呼び込む戦略を展開する。7月から、関連企業の申請を受け付ける準備も始めた。担当する局を新たに設けるなど全力投球の構えだ。

     

    北海道の工業は、苫小牧や室蘭の北海道西部地域に偏っている。製造業の北海道経済に占めるウエイトは、全国水準に比べ2分の1と低く、主力は食品工業である。高度成長時代とは一変した。こうした事情から、再エネ消費は限定されている。そこで、有り余る電力を貯蔵する蓄電池設備が不可欠になる。ここに先ず、ビジネスチャンスが生まれるのだ。

     

    蓄電池設備では、道内でエネルギー企業や総合商社が太陽光や風力による発電量の変動を吸収する、系統用蓄電池事業に相次いで参入している。蓄電池設備が完備していれば、大量の再エネは、余剰が出ても蓄電設備で溜められるので安定的な操業が可能だ。再エネは、天候や夜間によって発電が中断する。平均的な稼働率は、20%とされている。これだけ変動の大きい電源を使いこなすには、蓄電池設備が不可欠である。

     

    中国や韓国では、再エネの電力が余剰を来して捨てている事例も出ている。「もったいない」話であり、蓄電池設備が整っていれば、こうした電力ロスを防げるのだ。日本では、絶対に引き起してはならないケースである。

     

    系統用蓄電池とは、送電線と蓄電池を直接つないで充放電する蓄電池を指す。北海道では再エネの豊富さを背景に、系統用蓄電池を送電線に接続したいと検討するケースが急増している北海道電力の送配電会社、北海道電力ネットワーク(札幌市)への申し込みは、検討中も含めて2024年3月末時点で827万キロワットと全国の約2割を占め、23年5月末時点と比べて3倍弱に増えた。『日本経済新聞』(6月7日付)が報じた。蓄電池設備は、再エネのインフラなのだ。

     

    北海道では、約560万キロワット分の再エネが送電網に接続済みである。北海道の最大需要電力は、約500万キロワットだ。供給が、すでに需要を上回っている。接続の申し込み済みや検討中の計画は、1600万キロワットを超すとされる。すべて実現すれば、合計2200万キロワットに達する。道内需要の4倍を超える再エネが生まれるのだ。こうして、蓄電池設備のほかに電力調整市場が不可欠になっている。(つづく)

     

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    テイカカズラ
       

    欧州は、環境保護の先進地域であり、EV(電気自動車)へ補助金を支給して推進中である。だが、欧州での生産を優先する傾斜を強める。アジア製EVを補助金支給対象から外す動きが強まっているのだ。保護主義が前面に出ており、自由貿易はしだいに影が薄くなってきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月10日付)は、「EV保護主義、欧州で拡大 仏伊がアジア製に補助金制限」と題する記事を掲載した。

     

    欧州で電気自動車(EV)をめぐる保護主義的な動きが広がる。フランスでは上海汽車集団が生産する英ブランド「MGモーター」など一部のアジア生産車が、輸送距離が長く環境負荷が大きいとして補助金対象外となる見通し。イタリアも同様の制度を検討している。日本の自動車メーカーも日本を含めたアジアでEVを生産する場合、補助金が対象外になる可能性がある。

     

    (1)「仏政府はEV購入に5000〜7000ユーロ(約80万〜110万円)の補助金を支給するこれまでの制度を改定し、新たに車種ごとに炭素排出量を反映した「環境スコア」を算定する。今後は同スコアが規定を満たさないと支給対象外となる。補助金対象となる車種は15日に発表される。スコア算定のため部材の生産や組み立て、輸送による炭素排出量について地域や国ごとに係数を設けた。原子力発電や再生可能エネルギーによる発電比率が高く、生産拠点と販売地の距離が近い欧州生産が有利となる。アジアで生産するEVの大半はスコアが規定を下回るとみられている。パニエリュナシェ仏エネルギー移行相は9月、上海汽車傘下のMGのEVや、中国湖北省で生産し輸出するルノーの多目的スポーツ車(SUV)のEV「ダチア・スプリング」について「現状の生産体制なら補助金の対象外になる」との見通しを示した」

     

    欧州は、EV生産を国内で行う保護主義が前面に出てきた。雇用確保が狙いである。そのために種々、理由が編み出されている。アジアで生産のEVは、原子力発電や再生可能エネルギーによる発電比率が低いなどの理由で、補助金対象外にされそうだ。

     

    (2)「ダチア・スプリングは23年1〜9月に欧州で4万台以上を売り、このうち約半分は仏国内だった。販売価格は補助金がなければ3割増の2万800ユーロに上がる。このほか、米テスラが上海で生産する「モデル3」も対象から外れる可能性がある。EV購入に3000ユーロの補助金を支給しているイタリア政府も、補助金の8割が輸入EVに使われていることを問題視し、仏政府と同様な仕組みの導入を検討している」

     

    フランスやイタリアは、国内生産を奨励するためにEV補助金対象が限定され始めている。

     

    (3)「背景にあるのが、中国製EVの台頭だ。独シュミット・オートモーティブ・リサーチの調査では、23年1〜9月に欧州で販売された中国生産EVは40万台を超え、EV新車販売の3割近くを占めた。MGや比亜迪(BYD)など中国車メーカー製だけでなく、コスト競争力からテスラや独BMWなど欧州メーカーが中国で生産したEVも15万台に上る。仏伊の保護主義的な動きに対し、アジアの車大手や当局は反発している。MG仏現地法人の広報担当者は日本経済新聞の取材に対して「スコアの算出要件が不適切だ。欧州域外で生産する全てのメーカーが不利になる」と語った」

     

    仏伊が、EV補助金対象をEU製に限定しようとしているのは、中国製EVの締め出しが狙いとみられる。中国製EVは、中国政府の補助金をたっぷりと支給され、そのうえ、仏伊でも補助金が支給されれば、販売戦略上できわめて有利になる。これを、阻止する狙いであろう。

     

    (4)「仏紙『ラトリビューン』によると、欧州域内で新工場の建設を検討しているBYDは対抗措置として「(補助金)対象外になるなら、工場はフランスに建てない」と主張しているという。一方、日産自動車の「リーフ」など日本車大手が欧州で販売するEVはまだ少ないが、日本から輸出する車種は補助金対象から外れる可能性がある。トヨタ自動車は日本から欧州に輸出するEVを増やしているが、「輸送距離が不利に働く仕組みでは戦えない」(同社幹部)として欧州の既存エンジン車工場でのEV生産も検討する。日産も英国工場のEV化に計30億ポンド(約5600億円)を投じ、欧州連合(EU)に輸出する計画を表明しており、同様の動きが日本車大手で広がる可能性が高い」

     

    欧州が、EVへの補助金を欧州製に限定する動きを強めれば、日本企業もこの方針に従うほかない。

     

    (5)「EUは、EVシフトにかじを切った欧州メーカーにとって、域内シェアの確保は死活問題だ。EUの対中国の貿易赤字は22年に4000億ユーロまで膨らんでおり、域内生産の強化は貿易収支の不均衡の是正、中国依存の低減など経済安全保障の観点からも欠かせないとみている」

     

    EUの対中貿易は、大幅な赤字である。中国が、この是正策として具体策を採らなければ、EUは自衛策を取るほかない。EVが、その格好な対象になってきた。

     

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    2021年頃は、「コンクリートの流し込みが始まらないうちに、もう集合住宅地での工事話が来ていた」ほど、建設会社は活況を呈していた。それから2年たち、1世帯住宅の市場は「完全崩壊」の状態だという。ドイツ全土で、住宅建設業者は景況の急激な反転に直面し、住宅建設の減少がドイツ経済全体に波紋を広げてきた。建設業界は、倒産の広がりで逆風にさらされている。

     

    『フィナンシャル・タイム』(11月12日付)は、「冷え込むドイツ住宅建設市場、経済に深刻な影響も」と題する記事を掲載した。

     

    資材価格は新型コロナウイルス禍前の水準から40%以上高騰し、欧州諸国の中で最大の値上がり幅だ。金利動向に左右されやすい住宅業界は、欧州中央銀行(ECB)が行った10会合連続の利上げにも対処しなければならない。ドイツはなおも大都市を中心に手頃な価格の住宅が不足しており、住宅ローン金利の上昇で住宅購入を見合わせる人が増えている。こうした状況の中で住宅市場への信頼感が著しく悪化し、ドイツの住宅不動産市況は欧州で最悪レベルの状態にある。

     

    (1)「住宅価格は、23年4〜6月期に前年同期比で10%下落し、建築許可件数の減少が欧州全体を大幅に上回るペースで進んだ。10月には22.%の会社が、プロジェクトの中止を報告した。Ifo経済研究所が1991年に集計を始めて以降で最多となった。If0の調査部門を率いるクラウス・ホールラベ氏は、「悪化の一途をたどっている。住宅建設の新規受注はごく低水準のままで、建設会社の受注残が減っている」と言う。建設業の竣工高は2015年1〜3月期から22年初めまでの間に16%以上増加した。低金利と比較的緩やかな融資基準を追い風に需要が急増する中、欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)によると住宅価格は66%上昇した」

     

    住宅建設には、高金利は禁物である。現在のような高金利下では住宅需要が低下して当然であろう。欧州中央銀行は、金利を緩和する姿勢は全くみせていない。欧州中央銀行(ECB)は9月に10会合連続で利上げし、上げ幅は4会合連続で0.25ポイントとした。今回の決定で、政策金利は4.25%から4.50%になった。

     

    (2)「21年に国内総生産(GDP)の5%以上を占めた建設業の現在の苦境は、国際通貨基金(IMF)の経済見通しでドイツが主要先進国の最下位に転落する状況につながっている。英金融サービス会社ハーグリーブス・ランズダウンの上級投資アナリスト、スザンナ・ストリーター氏は、「不動産部門はドイツの成長エンジンなので、(同部門の問題は)良い前兆ではない」と言う。住宅建設の動向に業績が左右される企業も圧迫を感じている。1世紀以上にわたり浴室や台所の工事を手がけているバウマングループのマネジングディレクター、サビーネ・ブロックシュナイダー氏は、これより厳しい時期はほとんどなかったと語る。

    同氏は「販売の落ち込みとコスト増で、規模の小さい会社は深刻な困難に直面するだろう」と指摘し、1年前と比べて受注は15%減っていると話した」

     

    ドイツでは、建設業がGDPの5%以上を占めている。ドイツの成長エンジンである。それが、高金利でおおきな重圧を受けているのだ。

     

    (3)「バウマン社では、コスト増と需要減退の中で従業員1200人の人員整理とその他の従業員の一時帰休を余儀なくされそうだ。「来年はさらに厳しくなると見通しており、残念ながら臨時雇用の従業員は切らざるを得なくなるだろう」とブロックシュナイダー氏は語った。業界側は、多くの住宅建設業者が市場の失敗とみなす問題の是正に政府が介入すべきだとみている。1990年代や2000年代初めの下降期とは異なり、ベルリンやミュンヘン、ハンブルク、ケルン、フランクフルトといった大都市では依然、手頃な価格の住宅が足りない状況にあると業界側は訴えている」

     

    来年も、建設業は厳しい環境が続くと予想している。高金利が続くからだ。ただ、大都市には、手頃な住宅を求める潜在需要が多いという。

     

    (4)「建設業界向けに重機の販売・レンタルを手がけるBKLバウクラン・ロジスティクのヨルク・ヒゲストバイラー最高経営責任者(CEO)は、「建設費の大幅な増加と金利高という現在の状況が投資家と開発業者をおびえさせている」と話す。業界は9月、税優遇や魅力的な補助金制度、省エネ基準の引き下げ、計画・認可手続きの簡素化など14項目の行動計画について連邦政府と合意した。11月6日に発表された一連の施策について、ガイビッツ住宅・都市開発・建設相は行政手続きと法制上のハードルを低くして業界の回復を加速させると述べた。同相は、「手頃な価格の住宅をより速やかに建設するためには、計画と認可、建設にもっとスピードが必要だ」と語り、「連邦政府と各州政府が合意した協約により、確実に加速する」と強調した」

     

    業界は、11月の政府による一連の住宅政策に期待を賭けている。政策が効果を発揮するようになれば、底入れ期待も持てるからだ。欧州経済センター(ZEW)が、11月14日に発表した11月のドイツの景気期待指数(先行指数)はプラス9.8と、予想以上に上昇した。4月以降、初めてのプラスである。先行指数は、4カ月連続の改善だ。今後、半年経てば景気が回復するとの見方を示唆するものだ。『ロイター』(11月14日付)が報じた。

     

     

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