勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    欧州は、環境保護の先進地域であり、EV(電気自動車)へ補助金を支給して推進中である。だが、欧州での生産を優先する傾斜を強める。アジア製EVを補助金支給対象から外す動きが強まっているのだ。保護主義が前面に出ており、自由貿易はしだいに影が薄くなってきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月10日付)は、「EV保護主義、欧州で拡大 仏伊がアジア製に補助金制限」と題する記事を掲載した。

     

    欧州で電気自動車(EV)をめぐる保護主義的な動きが広がる。フランスでは上海汽車集団が生産する英ブランド「MGモーター」など一部のアジア生産車が、輸送距離が長く環境負荷が大きいとして補助金対象外となる見通し。イタリアも同様の制度を検討している。日本の自動車メーカーも日本を含めたアジアでEVを生産する場合、補助金が対象外になる可能性がある。

     

    (1)「仏政府はEV購入に5000〜7000ユーロ(約80万〜110万円)の補助金を支給するこれまでの制度を改定し、新たに車種ごとに炭素排出量を反映した「環境スコア」を算定する。今後は同スコアが規定を満たさないと支給対象外となる。補助金対象となる車種は15日に発表される。スコア算定のため部材の生産や組み立て、輸送による炭素排出量について地域や国ごとに係数を設けた。原子力発電や再生可能エネルギーによる発電比率が高く、生産拠点と販売地の距離が近い欧州生産が有利となる。アジアで生産するEVの大半はスコアが規定を下回るとみられている。パニエリュナシェ仏エネルギー移行相は9月、上海汽車傘下のMGのEVや、中国湖北省で生産し輸出するルノーの多目的スポーツ車(SUV)のEV「ダチア・スプリング」について「現状の生産体制なら補助金の対象外になる」との見通しを示した」

     

    欧州は、EV生産を国内で行う保護主義が前面に出てきた。雇用確保が狙いである。そのために種々、理由が編み出されている。アジアで生産のEVは、原子力発電や再生可能エネルギーによる発電比率が低いなどの理由で、補助金対象外にされそうだ。

     

    (2)「ダチア・スプリングは23年1〜9月に欧州で4万台以上を売り、このうち約半分は仏国内だった。販売価格は補助金がなければ3割増の2万800ユーロに上がる。このほか、米テスラが上海で生産する「モデル3」も対象から外れる可能性がある。EV購入に3000ユーロの補助金を支給しているイタリア政府も、補助金の8割が輸入EVに使われていることを問題視し、仏政府と同様な仕組みの導入を検討している」

     

    フランスやイタリアは、国内生産を奨励するためにEV補助金対象が限定され始めている。

     

    (3)「背景にあるのが、中国製EVの台頭だ。独シュミット・オートモーティブ・リサーチの調査では、23年1〜9月に欧州で販売された中国生産EVは40万台を超え、EV新車販売の3割近くを占めた。MGや比亜迪(BYD)など中国車メーカー製だけでなく、コスト競争力からテスラや独BMWなど欧州メーカーが中国で生産したEVも15万台に上る。仏伊の保護主義的な動きに対し、アジアの車大手や当局は反発している。MG仏現地法人の広報担当者は日本経済新聞の取材に対して「スコアの算出要件が不適切だ。欧州域外で生産する全てのメーカーが不利になる」と語った」

     

    仏伊が、EV補助金対象をEU製に限定しようとしているのは、中国製EVの締め出しが狙いとみられる。中国製EVは、中国政府の補助金をたっぷりと支給され、そのうえ、仏伊でも補助金が支給されれば、販売戦略上できわめて有利になる。これを、阻止する狙いであろう。

     

    (4)「仏紙『ラトリビューン』によると、欧州域内で新工場の建設を検討しているBYDは対抗措置として「(補助金)対象外になるなら、工場はフランスに建てない」と主張しているという。一方、日産自動車の「リーフ」など日本車大手が欧州で販売するEVはまだ少ないが、日本から輸出する車種は補助金対象から外れる可能性がある。トヨタ自動車は日本から欧州に輸出するEVを増やしているが、「輸送距離が不利に働く仕組みでは戦えない」(同社幹部)として欧州の既存エンジン車工場でのEV生産も検討する。日産も英国工場のEV化に計30億ポンド(約5600億円)を投じ、欧州連合(EU)に輸出する計画を表明しており、同様の動きが日本車大手で広がる可能性が高い」

     

    欧州が、EVへの補助金を欧州製に限定する動きを強めれば、日本企業もこの方針に従うほかない。

     

    (5)「EUは、EVシフトにかじを切った欧州メーカーにとって、域内シェアの確保は死活問題だ。EUの対中国の貿易赤字は22年に4000億ユーロまで膨らんでおり、域内生産の強化は貿易収支の不均衡の是正、中国依存の低減など経済安全保障の観点からも欠かせないとみている」

     

    EUの対中貿易は、大幅な赤字である。中国が、この是正策として具体策を採らなければ、EUは自衛策を取るほかない。EVが、その格好な対象になってきた。

     

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    2021年頃は、「コンクリートの流し込みが始まらないうちに、もう集合住宅地での工事話が来ていた」ほど、建設会社は活況を呈していた。それから2年たち、1世帯住宅の市場は「完全崩壊」の状態だという。ドイツ全土で、住宅建設業者は景況の急激な反転に直面し、住宅建設の減少がドイツ経済全体に波紋を広げてきた。建設業界は、倒産の広がりで逆風にさらされている。

     

    『フィナンシャル・タイム』(11月12日付)は、「冷え込むドイツ住宅建設市場、経済に深刻な影響も」と題する記事を掲載した。

     

    資材価格は新型コロナウイルス禍前の水準から40%以上高騰し、欧州諸国の中で最大の値上がり幅だ。金利動向に左右されやすい住宅業界は、欧州中央銀行(ECB)が行った10会合連続の利上げにも対処しなければならない。ドイツはなおも大都市を中心に手頃な価格の住宅が不足しており、住宅ローン金利の上昇で住宅購入を見合わせる人が増えている。こうした状況の中で住宅市場への信頼感が著しく悪化し、ドイツの住宅不動産市況は欧州で最悪レベルの状態にある。

     

    (1)「住宅価格は、23年4〜6月期に前年同期比で10%下落し、建築許可件数の減少が欧州全体を大幅に上回るペースで進んだ。10月には22.%の会社が、プロジェクトの中止を報告した。Ifo経済研究所が1991年に集計を始めて以降で最多となった。If0の調査部門を率いるクラウス・ホールラベ氏は、「悪化の一途をたどっている。住宅建設の新規受注はごく低水準のままで、建設会社の受注残が減っている」と言う。建設業の竣工高は2015年1〜3月期から22年初めまでの間に16%以上増加した。低金利と比較的緩やかな融資基準を追い風に需要が急増する中、欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)によると住宅価格は66%上昇した」

     

    住宅建設には、高金利は禁物である。現在のような高金利下では住宅需要が低下して当然であろう。欧州中央銀行は、金利を緩和する姿勢は全くみせていない。欧州中央銀行(ECB)は9月に10会合連続で利上げし、上げ幅は4会合連続で0.25ポイントとした。今回の決定で、政策金利は4.25%から4.50%になった。

     

    (2)「21年に国内総生産(GDP)の5%以上を占めた建設業の現在の苦境は、国際通貨基金(IMF)の経済見通しでドイツが主要先進国の最下位に転落する状況につながっている。英金融サービス会社ハーグリーブス・ランズダウンの上級投資アナリスト、スザンナ・ストリーター氏は、「不動産部門はドイツの成長エンジンなので、(同部門の問題は)良い前兆ではない」と言う。住宅建設の動向に業績が左右される企業も圧迫を感じている。1世紀以上にわたり浴室や台所の工事を手がけているバウマングループのマネジングディレクター、サビーネ・ブロックシュナイダー氏は、これより厳しい時期はほとんどなかったと語る。

    同氏は「販売の落ち込みとコスト増で、規模の小さい会社は深刻な困難に直面するだろう」と指摘し、1年前と比べて受注は15%減っていると話した」

     

    ドイツでは、建設業がGDPの5%以上を占めている。ドイツの成長エンジンである。それが、高金利でおおきな重圧を受けているのだ。

     

    (3)「バウマン社では、コスト増と需要減退の中で従業員1200人の人員整理とその他の従業員の一時帰休を余儀なくされそうだ。「来年はさらに厳しくなると見通しており、残念ながら臨時雇用の従業員は切らざるを得なくなるだろう」とブロックシュナイダー氏は語った。業界側は、多くの住宅建設業者が市場の失敗とみなす問題の是正に政府が介入すべきだとみている。1990年代や2000年代初めの下降期とは異なり、ベルリンやミュンヘン、ハンブルク、ケルン、フランクフルトといった大都市では依然、手頃な価格の住宅が足りない状況にあると業界側は訴えている」

     

    来年も、建設業は厳しい環境が続くと予想している。高金利が続くからだ。ただ、大都市には、手頃な住宅を求める潜在需要が多いという。

     

    (4)「建設業界向けに重機の販売・レンタルを手がけるBKLバウクラン・ロジスティクのヨルク・ヒゲストバイラー最高経営責任者(CEO)は、「建設費の大幅な増加と金利高という現在の状況が投資家と開発業者をおびえさせている」と話す。業界は9月、税優遇や魅力的な補助金制度、省エネ基準の引き下げ、計画・認可手続きの簡素化など14項目の行動計画について連邦政府と合意した。11月6日に発表された一連の施策について、ガイビッツ住宅・都市開発・建設相は行政手続きと法制上のハードルを低くして業界の回復を加速させると述べた。同相は、「手頃な価格の住宅をより速やかに建設するためには、計画と認可、建設にもっとスピードが必要だ」と語り、「連邦政府と各州政府が合意した協約により、確実に加速する」と強調した」

     

    業界は、11月の政府による一連の住宅政策に期待を賭けている。政策が効果を発揮するようになれば、底入れ期待も持てるからだ。欧州経済センター(ZEW)が、11月14日に発表した11月のドイツの景気期待指数(先行指数)はプラス9.8と、予想以上に上昇した。4月以降、初めてのプラスである。先行指数は、4カ月連続の改善だ。今後、半年経てば景気が回復するとの見方を示唆するものだ。『ロイター』(11月14日付)が報じた。

     

     

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    中国の「鶴の一声」で、日本産ホタテなど海産物の対中輸出がストップしている。駐日米国大使館は、ホタテを加工するアジアの工場を紹介するなど支援体制を組んでいる。日本政府は10月7日、ドイツ西部ケルンで日本産ホタテなど水産物の安全性と品質をアピールするイベントを開いた。現地のバイヤーからは、「日本のホタテは身が大きく、歯応えがいい。口の中で広がる甘みはカナダや米国産とはまったく違うね」と好評だ。 

    『日本経済新聞 電子版』(10月8日付)は、「欧州で日本産ホタテ売り込み、処理水の風評払拭で脱中国」と題する記事を掲載した。 

    日本政府は7日、ドイツ西部ケルンで日本産ホタテなど水産物の安全性と品質をアピールするイベントを開いた。イベントは日本貿易振興機構(ジェトロ)などが主催し、ホタテやタイなど水産物を使った料理、福島産の日本酒をバイヤーに振る舞った。欧州最大の食品見本市「ANUGA(アヌーガ)」が7日からケルンで始まったのに合わせて開催、約90の日本の食品会社・団体も出展した。

     

    (1)「2022年の日本の水産物輸出は3873億円だった。このうち中国は23%の871億円と最大の輸出先だが、1回目の処理水放出を受け、8月下旬から日本産水産物を全面禁輸とした。中でもホタテは911億円の輸出額のうち51%の467億円を中国が占めている。禁輸の影響で在庫がだぶつき、価格が30%前後下がっているという。輸出で主力の冷凍ホタテの保存期間は1年程度といい、水産物卸大手、西本Wismettacの片岡幸穂シニアマネジャーは「欧州連合(EU)の販路を広げるために赤字覚悟で売るつもりだ」と語る」 

    中国の理不尽な制裁で、日本のホタテなど海産物の対中輸出が8月下旬から全面的にストップしている。ここは、中国の制裁に屈することなく対応するしかない。欧州へホタテ市場を広げる機会にすべきだろう。 

    (2)「農林水産省は9月上旬、パリに次いで欧州2カ所目となる輸出支援拠点を、ベルギー・ブリュッセルに開設した。官民挙げて日本産水産物の販路を開拓する構えだが、足元ではオランダやデンマークを中心としたEUへのホタテの輸出は全体の8%の73億円、中国の6分の1以下の水準だ。足かせとなっているのは、食品衛生管理の国際認証「HACCP(ハサップ)」だ。EUへの輸出に適合したハサップを取得している日本の水産加工施設は22年時点で110カ所だった。EUは認可基準が厳しいうえ、取得には大規模な改修と新規設備など投資が必要になるため、採算が合わずに諦める事業者が多い。米国向けにハサップを取得している日本の施設(569カ所)と比べ、5分の1にとどまる」 

    中国は、日本から貝殻付きのホタテを輸入して加工して米国へ輸出している。最終輸出先が米国であれば、日本国内の対応(加工)で問題は切り抜けられるはずだ。国内で、資金と技術を集めて進んだ加工工程をつくるチャンスであろう。泣き言を言っている時間があれば、対策を立てて切り抜けることだ。風評被害で補助金をもらう前に、立ち上がることだ。

    (3)「ただ、最大輸出国の中国の禁輸をきっかけに「EUへの輸出拡大に取り組む生産・加工事業者は一気に増えた」(片岡氏)。追い風もある。19年に発行した日EU経済連携協定(EPA)で、26年にはホタテなど一部水産物の関税が撤廃され、価格競争力が高まる。アヌーガに出展した日本の食品会社の担当者は「歪な一国依存を改める絶好のタイミングかもしれない」と語った」 

    下線を引いた通り、ホタテ輸出で「歪な一国依存」から脱出ことだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月24日付)は、「日本産ホタテ、米国が輸出ルート転換支援 中国を迂回」と題する記事を掲載した。 

    在日米国大使館は中国による日本産水産物の全面禁輸を受け、農林水産省と連携し、水産加工品について中国に依存しない新たな流通ルートづくりを支援する。日本の水産業者にタイやベトナム、台湾などにある米認定の加工施設の情報提供を始めた。 

    (4)「特に日本産ホタテの場合、大半が中国に輸出された後、殻むきなどの加工を経て米国に再輸出されている。中国が8月に東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出に反発して輸入を止めた後はこのルートが滞り、米側も中国を迂回する輸入ルートの確保を迫られていた。米側には中国による不当な輸入停止措置に、日米が連携して対抗する姿勢を示す狙いがある。日米は経済安全保障の観点から半導体や重要鉱物のサプライチェーン(供給網)で中国依存からの脱却を進めるが、水産物の流通網でも同様の動きを強める契機となる」

     

    ホタテの殻むきなどの加工は、手作業である。かつては、日本国内で行っていたが、採算が合わない理由で中国へまかせることになった。日本の技術を使えば、殻むき技術の自動化はできないだろうか。政府も本腰を入れてみるべき価値はあろう。中国の傲慢な制裁に一矢報いるべきだろう。 

    (5)「米政府は水産物や畜産物の輸出元の加工施設に、食品衛生管理に関する国際規格「HACCP(ハサップ)」の取得を求める。米大使館はタイなどの米食品医薬品局(FDA)認定施設を日本側に情報提供していく。農水省がルート転換の是非を精査する。米国が中国経由で輸入した日本産ホタテは22年の1年間で1億ドル(およそ147億円)にのぼる。米国はホタテを含む日本産水産物の大部分に輸入関税を課しておらず、日本にとって重要な輸出先だ」 

    日本は、殻付きのホタテを中国へ輸出するよりも、加工して米国へ輸出すれば付加価値も上がる。経済制裁は、ブーメランになって中国へ跳ね返ることを教えるべきだ。

     

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    ロシアの主要輸出品である原油は、G7の上限設定価格60ドル(1バレル)を大幅に下回る42~45ドルというディスカウント価格で取引されている。国際指標の北海ブレント原油は現在1バレル82ドルだ。実に45%もの値引きである。ロシア財政は、これによって圧迫されることは不可避である。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ 電子版』(12月28日付)は、「ロシア産原油インドへ G7価格上限内・西側保険で」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア産原油が西側諸国の保険会社と契約しているタンカーにより、インドに向けて運ばれている。ロシア政府は主要7カ国(G7)が定めた価格上限の下での原油取引は遮断するとしたが、それに反する最初の動きだ。

     

    (1)「ロシアのプーチン大統領はG7の価格上限に従う国には原油を輸出しないとしているが、フィナンシャル・タイムズ(FT)が出荷・保険記録を調べたところ、価格上限が導入された5日以降、西側と保険契約している少なくとも7隻のタンカーにロシア産原油が積み込まれたことがわかった。この7隻が、西側の保険会社と契約していることも確認できた。価格上限措置により、ロシア産原油の買い手は1バレル60ドル以下の価格であることを証明しないと、海上輸送による国際原油取引を支える西側の保険や仲介などのサービスを利用できない」

     

    プーチン大統領は27日、ロシア産原油の輸入価格に上限を設けた国に対し、2023年2月~7月まで原油輸出を禁止する大統領令に署名した。主要7カ国(G7)などが、長期化するロシアによるウクライナ侵攻への打撃を目指す措置への対抗措置である。

     

    (2)「タンカー7隻は合計約500万バレルの原油を積み、ロシアのバルト海沿岸の港から出航した。行き先はインドの精製施設と記載されている。ロシアがウクライナ侵攻を開始した2月以降、インドはロシア産原油の最大級の買い手となっている。出荷記録によると、原油の一部はインドで製油事業を手掛けるリライアンスとバーラト・ペトロリアムが買い手とみられるが、両社ともコメントの要請に返答しなかった。G7による価格上限の設定は、供給不足を回避するためにロシア産原油の市場への流入を保ちつつ、1バレル60ドル以下とすることでロシアの歳入を細らせることが狙いだ

     

    価格上限制の狙いは、ロシアのウクライナ侵攻の財源を絶つことが目的である。できるだけ、ロシア産原油価格を引下げて、歳入を減らさせることにある。

     

    (3)「プーチン氏は、すでにロシア産原油の大部分が1バレル60ドルかそれ以下で取引されていることを認めており、「西側諸国が示した上限は現在の売値の範囲内だ」と語っている。ある西側当局者は、開始直後から「有望な」兆候が表れており、価格上限はおおむね期待していた効果を生んでいると語る。別の西側当局者は12月5日以降、価格上限の範囲内でFTが突き止めたのとほぼ同じ件数の取引を確認できていると話し、買い手側が上限の枠組みに慣れるにつれて量は増すとの見方を示した」

     

    上限価格は、1バレル=60ドルである。EU(欧州連合)は、これ以下の取引価格でなければ海上保険契約を結ばせないという「規定」をつくっている。海上保険契約のつかない貨物輸送は、危険極まりないことで事実上は不可能だ。これを避けるべく、ロシアは闇タンカーを用意している。

     

    (4)「現時点で価格上限の対象は原油のみだが、2023年2月からガソリンや軽油などの石油製品にも同様の枠組みが適用される。ロシアは、西側の制限をすり抜けるためにタンカー約100隻の「影の船団」を組織した。貿易業者や海運仲立業者の間では、それでも輸出量を維持するには足りないとみられている。ウクライナ侵攻を受けて西側の多くの買い手が敬遠するようになって以降、ロシア産原油は大きく割り引いた価格で取引されている。価格上限措置の開始に加え、海上輸送されるロシア産原油を欧州の大半の精製業者が購入することを禁じられた12月5日以降は、さらに値引きされている」

     

    ロシアは、原油を輸出しなければ外貨収入が減るだけに、抜け穴探しに必死である。そこで「闇タンカー」が登場する。海上保険契約をかけないタンカーである。国際航路では、無保険輸送は御法度であるだけに、「闇タンカー」が活動できる余地はあるのか疑問視されている。

     

    (5)「調査会社アーガス・メディアによると、欧州向けの代表的な油種「ウラル」は現在、1バレル42~45ドルほどで取引されている。国際指標の北海ブレント原油は1バレル82ドルだ。ケプラー、アーガス両社のデータによると、価格上限導入後11日間の時点で海上輸送によるロシアの原油輸出は減少している。ケプラーのアナリスト、マシュー・ライト氏は「価格上限導入後の1週目でやや下向き、2週目に入ってかなり弱まったようだ。とはいえ、中期的な影響についてはっきり結論を下すには時期尚早だ」と話す。世界最大の独立系石油商社ビトルは11月、十分な数のタンカーを確保できなければ、ロシアの海上輸送による原油輸出は日量100万バレル減少するとの見通しを示した。約2割の減少に相当する

     

    ロシア産原油のカギは、チャーターできるタンカーの数による。輸出で、日量で約2割の減少(100万バレル)が見込めるという。しかも、価格は1バレル42~45ドルと大幅ディスカウントである。ロシアにとっては、踏んだり蹴ったりの状況だ。

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