勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    中国の「鶴の一声」で、日本産ホタテなど海産物の対中輸出がストップしている。駐日米国大使館は、ホタテを加工するアジアの工場を紹介するなど支援体制を組んでいる。日本政府は10月7日、ドイツ西部ケルンで日本産ホタテなど水産物の安全性と品質をアピールするイベントを開いた。現地のバイヤーからは、「日本のホタテは身が大きく、歯応えがいい。口の中で広がる甘みはカナダや米国産とはまったく違うね」と好評だ。 

    『日本経済新聞 電子版』(10月8日付)は、「欧州で日本産ホタテ売り込み、処理水の風評払拭で脱中国」と題する記事を掲載した。 

    日本政府は7日、ドイツ西部ケルンで日本産ホタテなど水産物の安全性と品質をアピールするイベントを開いた。イベントは日本貿易振興機構(ジェトロ)などが主催し、ホタテやタイなど水産物を使った料理、福島産の日本酒をバイヤーに振る舞った。欧州最大の食品見本市「ANUGA(アヌーガ)」が7日からケルンで始まったのに合わせて開催、約90の日本の食品会社・団体も出展した。

     

    (1)「2022年の日本の水産物輸出は3873億円だった。このうち中国は23%の871億円と最大の輸出先だが、1回目の処理水放出を受け、8月下旬から日本産水産物を全面禁輸とした。中でもホタテは911億円の輸出額のうち51%の467億円を中国が占めている。禁輸の影響で在庫がだぶつき、価格が30%前後下がっているという。輸出で主力の冷凍ホタテの保存期間は1年程度といい、水産物卸大手、西本Wismettacの片岡幸穂シニアマネジャーは「欧州連合(EU)の販路を広げるために赤字覚悟で売るつもりだ」と語る」 

    中国の理不尽な制裁で、日本のホタテなど海産物の対中輸出が8月下旬から全面的にストップしている。ここは、中国の制裁に屈することなく対応するしかない。欧州へホタテ市場を広げる機会にすべきだろう。 

    (2)「農林水産省は9月上旬、パリに次いで欧州2カ所目となる輸出支援拠点を、ベルギー・ブリュッセルに開設した。官民挙げて日本産水産物の販路を開拓する構えだが、足元ではオランダやデンマークを中心としたEUへのホタテの輸出は全体の8%の73億円、中国の6分の1以下の水準だ。足かせとなっているのは、食品衛生管理の国際認証「HACCP(ハサップ)」だ。EUへの輸出に適合したハサップを取得している日本の水産加工施設は22年時点で110カ所だった。EUは認可基準が厳しいうえ、取得には大規模な改修と新規設備など投資が必要になるため、採算が合わずに諦める事業者が多い。米国向けにハサップを取得している日本の施設(569カ所)と比べ、5分の1にとどまる」 

    中国は、日本から貝殻付きのホタテを輸入して加工して米国へ輸出している。最終輸出先が米国であれば、日本国内の対応(加工)で問題は切り抜けられるはずだ。国内で、資金と技術を集めて進んだ加工工程をつくるチャンスであろう。泣き言を言っている時間があれば、対策を立てて切り抜けることだ。風評被害で補助金をもらう前に、立ち上がることだ。

    (3)「ただ、最大輸出国の中国の禁輸をきっかけに「EUへの輸出拡大に取り組む生産・加工事業者は一気に増えた」(片岡氏)。追い風もある。19年に発行した日EU経済連携協定(EPA)で、26年にはホタテなど一部水産物の関税が撤廃され、価格競争力が高まる。アヌーガに出展した日本の食品会社の担当者は「歪な一国依存を改める絶好のタイミングかもしれない」と語った」 

    下線を引いた通り、ホタテ輸出で「歪な一国依存」から脱出ことだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月24日付)は、「日本産ホタテ、米国が輸出ルート転換支援 中国を迂回」と題する記事を掲載した。 

    在日米国大使館は中国による日本産水産物の全面禁輸を受け、農林水産省と連携し、水産加工品について中国に依存しない新たな流通ルートづくりを支援する。日本の水産業者にタイやベトナム、台湾などにある米認定の加工施設の情報提供を始めた。 

    (4)「特に日本産ホタテの場合、大半が中国に輸出された後、殻むきなどの加工を経て米国に再輸出されている。中国が8月に東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出に反発して輸入を止めた後はこのルートが滞り、米側も中国を迂回する輸入ルートの確保を迫られていた。米側には中国による不当な輸入停止措置に、日米が連携して対抗する姿勢を示す狙いがある。日米は経済安全保障の観点から半導体や重要鉱物のサプライチェーン(供給網)で中国依存からの脱却を進めるが、水産物の流通網でも同様の動きを強める契機となる」

     

    ホタテの殻むきなどの加工は、手作業である。かつては、日本国内で行っていたが、採算が合わない理由で中国へまかせることになった。日本の技術を使えば、殻むき技術の自動化はできないだろうか。政府も本腰を入れてみるべき価値はあろう。中国の傲慢な制裁に一矢報いるべきだろう。 

    (5)「米政府は水産物や畜産物の輸出元の加工施設に、食品衛生管理に関する国際規格「HACCP(ハサップ)」の取得を求める。米大使館はタイなどの米食品医薬品局(FDA)認定施設を日本側に情報提供していく。農水省がルート転換の是非を精査する。米国が中国経由で輸入した日本産ホタテは22年の1年間で1億ドル(およそ147億円)にのぼる。米国はホタテを含む日本産水産物の大部分に輸入関税を課しておらず、日本にとって重要な輸出先だ」 

    日本は、殻付きのホタテを中国へ輸出するよりも、加工して米国へ輸出すれば付加価値も上がる。経済制裁は、ブーメランになって中国へ跳ね返ることを教えるべきだ。

     

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    ロシアの主要輸出品である原油は、G7の上限設定価格60ドル(1バレル)を大幅に下回る42~45ドルというディスカウント価格で取引されている。国際指標の北海ブレント原油は現在1バレル82ドルだ。実に45%もの値引きである。ロシア財政は、これによって圧迫されることは不可避である。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ 電子版』(12月28日付)は、「ロシア産原油インドへ G7価格上限内・西側保険で」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア産原油が西側諸国の保険会社と契約しているタンカーにより、インドに向けて運ばれている。ロシア政府は主要7カ国(G7)が定めた価格上限の下での原油取引は遮断するとしたが、それに反する最初の動きだ。

     

    (1)「ロシアのプーチン大統領はG7の価格上限に従う国には原油を輸出しないとしているが、フィナンシャル・タイムズ(FT)が出荷・保険記録を調べたところ、価格上限が導入された5日以降、西側と保険契約している少なくとも7隻のタンカーにロシア産原油が積み込まれたことがわかった。この7隻が、西側の保険会社と契約していることも確認できた。価格上限措置により、ロシア産原油の買い手は1バレル60ドル以下の価格であることを証明しないと、海上輸送による国際原油取引を支える西側の保険や仲介などのサービスを利用できない」

     

    プーチン大統領は27日、ロシア産原油の輸入価格に上限を設けた国に対し、2023年2月~7月まで原油輸出を禁止する大統領令に署名した。主要7カ国(G7)などが、長期化するロシアによるウクライナ侵攻への打撃を目指す措置への対抗措置である。

     

    (2)「タンカー7隻は合計約500万バレルの原油を積み、ロシアのバルト海沿岸の港から出航した。行き先はインドの精製施設と記載されている。ロシアがウクライナ侵攻を開始した2月以降、インドはロシア産原油の最大級の買い手となっている。出荷記録によると、原油の一部はインドで製油事業を手掛けるリライアンスとバーラト・ペトロリアムが買い手とみられるが、両社ともコメントの要請に返答しなかった。G7による価格上限の設定は、供給不足を回避するためにロシア産原油の市場への流入を保ちつつ、1バレル60ドル以下とすることでロシアの歳入を細らせることが狙いだ

     

    価格上限制の狙いは、ロシアのウクライナ侵攻の財源を絶つことが目的である。できるだけ、ロシア産原油価格を引下げて、歳入を減らさせることにある。

     

    (3)「プーチン氏は、すでにロシア産原油の大部分が1バレル60ドルかそれ以下で取引されていることを認めており、「西側諸国が示した上限は現在の売値の範囲内だ」と語っている。ある西側当局者は、開始直後から「有望な」兆候が表れており、価格上限はおおむね期待していた効果を生んでいると語る。別の西側当局者は12月5日以降、価格上限の範囲内でFTが突き止めたのとほぼ同じ件数の取引を確認できていると話し、買い手側が上限の枠組みに慣れるにつれて量は増すとの見方を示した」

     

    上限価格は、1バレル=60ドルである。EU(欧州連合)は、これ以下の取引価格でなければ海上保険契約を結ばせないという「規定」をつくっている。海上保険契約のつかない貨物輸送は、危険極まりないことで事実上は不可能だ。これを避けるべく、ロシアは闇タンカーを用意している。

     

    (4)「現時点で価格上限の対象は原油のみだが、2023年2月からガソリンや軽油などの石油製品にも同様の枠組みが適用される。ロシアは、西側の制限をすり抜けるためにタンカー約100隻の「影の船団」を組織した。貿易業者や海運仲立業者の間では、それでも輸出量を維持するには足りないとみられている。ウクライナ侵攻を受けて西側の多くの買い手が敬遠するようになって以降、ロシア産原油は大きく割り引いた価格で取引されている。価格上限措置の開始に加え、海上輸送されるロシア産原油を欧州の大半の精製業者が購入することを禁じられた12月5日以降は、さらに値引きされている」

     

    ロシアは、原油を輸出しなければ外貨収入が減るだけに、抜け穴探しに必死である。そこで「闇タンカー」が登場する。海上保険契約をかけないタンカーである。国際航路では、無保険輸送は御法度であるだけに、「闇タンカー」が活動できる余地はあるのか疑問視されている。

     

    (5)「調査会社アーガス・メディアによると、欧州向けの代表的な油種「ウラル」は現在、1バレル42~45ドルほどで取引されている。国際指標の北海ブレント原油は1バレル82ドルだ。ケプラー、アーガス両社のデータによると、価格上限導入後11日間の時点で海上輸送によるロシアの原油輸出は減少している。ケプラーのアナリスト、マシュー・ライト氏は「価格上限導入後の1週目でやや下向き、2週目に入ってかなり弱まったようだ。とはいえ、中期的な影響についてはっきり結論を下すには時期尚早だ」と話す。世界最大の独立系石油商社ビトルは11月、十分な数のタンカーを確保できなければ、ロシアの海上輸送による原油輸出は日量100万バレル減少するとの見通しを示した。約2割の減少に相当する

     

    ロシア産原油のカギは、チャーターできるタンカーの数による。輸出で、日量で約2割の減少(100万バレル)が見込めるという。しかも、価格は1バレル42~45ドルと大幅ディスカウントである。ロシアにとっては、踏んだり蹴ったりの状況だ。

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