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浮かんでは沈んできたベトナムの新幹線計画が、いよいよ実現に向けて動き出すことになった。ベトナム政府は13日、国内を縦断する高速鉄道建設に関し、日本政府に支援を要請したと発表した。ベトナム政府の声明によると、ファム・ミン・チン首相と日本の鈴木俊一財務相が同日、ハノイで会談。支援要請はこの中で行われた。

 

ベトナム・新幹線計画は2013年、ベトナム政府の閣議で正式に決まったが、建設費用を理由に、2013年の国会で否決されたという曰く付きのものだ。だが、ベトナム経済は米中対立による米中デカップリングを背景に、中国企業がベトナムへ移転するという好環境へと転換した。

 

米貿易統計によると、22年1~9月の米国への輸入は18年の同時期に比べ33%程度増えた。輸入相手国の状況には、大きな変化が出ている。中国からの輸入は4年前に比べ6%の増加にとどまった。これに代わって、米国への輸出を最も増やしたのは東南・南アジアだ。その中でも、ベトナムが首位で170%を超える伸び率を記録した。次いで、バングラデシュとタイは、18年に比べ80%以上も増えた。

 

米国の輸入に占める比率(2022年1~9月)は、中国の17.0%に対して、ベトナムが4.0%と2位を占めるまでになった。今後は、さらに増加する見込みが強くなっている。アップルが、ベトナムでの生産を開始したこともプラス要因だ。

 

こうした好転を背景に、銀行のHSBC(香港上海銀行)ホールディングスは、2022年のベトナムのGDP成長率予想を7.6%に引き上げた。2022年第3四半期のベトナムGDPは、前月同期比で13.67%増を記録。ベトナム経済は、様相を一変してきたのである。さらに、将来に向けて大きな夢を描いている。

 

ベトナムは現在、低中所得こくであるが、2045年までに高所得に到達し、先進国になることを目標としているほど。現在、中間所得層が2030年までに平均17%成長すると予想されている。さらにベトナムは、2030年までにドイツやイギリスよりも大きな「世界第10位の消費市場になる」と予測する向きも出てきた。成長盛りという上昇ムードである。

 

こうして好循環過程にあるベトナムが、棚上げしていた新幹線計画を取り上げ、実現に向けて動き始めたところだ。

 

『ロイター』(1月16日付)は、「ベトナム、日本政府に支援要請 大規模鉄道の建設検討」と題する記事を掲載した

 

ベトナム政府は13日、国内を縦断する高速鉄道建設に関し、日本政府に支援を要請したと発表した。

 

(1)「ベトナム政府の声明によると、ファム・ミン・チン首相と日本の鈴木俊一財務相が同日、ハノイで会談。支援要請はこの中で行われた。日本はベトナムにとって最大の公的開発援助国で、対外直接投資(FDI)の大きさでは3位。ベトナム国営メディアによると、同国は最大648億ドル(約8兆3000億円)をかけて、全長1545キロメートルに及ぶ鉄道を建設することを検討している」

 

昨年1月、ベトナム運輸省は2021年~2030年の鉄道システム開発計画案を政府に提出したとの報道が流れた。これに拠ると、2030年迄にハノイ~ヴィン、ニャチャン~ホーチミン市間の高速鉄道路線を整備する。このほか一般鉄路として北部でハノイ~ハイフォンなど4本、南部はビエンホア~ブンタウ、ホーチミン市~カントーなど3本しんせつするという壮大な計画だ。

 

新幹線計画はハノイ~ホーチミン間を直通で結び、2050年までに全線開通する予定となっていた。この計画では、投資額が1兆2000億円に達すると試算されている。長期の建設計画であること、これまでの地下鉄建設計画でも費用が大幅な増加となっているため、実際にはどこまで膨らむか不明とされている。この費用調達に関して、国の財源と民間資本に拠るとしているが、ODA(政府開発援助)による調達に落ち着くと予想されるという。ベトナム政府が今回、日本政府へ支援要請したことは、ODA資金を前提にしていると見られる。

 

(2)「チン首相はまた、ベトナム中北部タインホア省のニソン製油所について、「出資比率の見直し」に関し、日本に支援を要請した。ベトナム政府は詳細を明らかにしていない。ニソン製油所は、日本の出光興産とクウェート石油公社がそれぞれ35.1%、ベトナム国有石油・ガス会社ペトロベトナムが25.1%、三井化学が4.7%保有している。生産能力は日量20万バレル。2022年の初めに原油調達の資金をめぐって株主の間で意見が対立。出光は当時、新規の資金支援を行う計画はないと説明していた」

 

ベトナム政府は、中北部タインホア省のニソン製油所の出資比率見直しを要請した。多分、ベトナム側の出資比率の引上げであろう。それは、日本側の引下げ要請を意味している。