米国とイランが、和平の枠組みで一致したと明らかにした。2月末に始まった戦争の終結、米国によるイランの港湾封鎖解除、ホルムズ海峡の開放などが含まれる。イランの核計画については今後の交渉に委ねられることになった。トランプ米大統領は米東部時間14日午後5時30分(日本時間15日午前6時30分)ごろ、自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「イラン・イスラム共和国との合意が完了した」と投稿した。一方、イランの最高安全保障委員会事務局は声明で、レバノンを含む全ての戦線での戦争と軍事作戦が15日夜から恒久的に終了すると表明した。『ロイター』(6月15日付)が報じた。
『ロイター』(6月14日付)は、「米イラン覚書、最終草案で海峡即開放 14日にも締結か」と題する記事を掲載した。
米国とパキスタンの首脳は、米国とイランの戦闘停止に向けた覚書が14日に締結されるとの見通しを示した。しかし、イランは14日の締結はないとの見解を示した。イラン国内では強硬派が米国との合意に反対の声を上げている。関係者によると、覚書の最終決定に向けた取り組みの一環として、カタールの交渉担当者が14日朝にテヘランへ向かった。
(1)「トランプ米大統領は13日、自身の80歳の誕生日である14日に覚書に署名する予定だと自身のSNS(交流サイト)に投稿した。パキスタンのシャリフ首相は同日、24時間以内の締結に向けてパキスタン政府が電子署名の準備を進めており、来週には技術レベルの協議が続くと述べた。一方、イラン外務省のバガイ報道官は、トランプ氏の投稿前に、「明日(14日)はない」が「数日中に」実現する可能性があると語った。国営メディアが伝えた。イランのファルス通信は14日、情報筋の話として、イラン政府は覚書についてまだ最終決定を下しておらず、専門家および意思決定レベルで政治、法律、技術的な側面の検討が続いていると報じた」
トランプ氏は、6月14日が自身の誕生日である。この日に覚書に署名したいのだ。トランプ氏は14日、イスラエルによるレバノン再攻撃を受け「重要なプロセスを妨害すべきではない」とSNSに投稿した。「イランとの合意が極めて近い特別な日に起こるべきではなかった」と不満を漏らした。「台無しにしないようにしよう」と呼びかけた。
(2)「イラン高官は14日、覚書の最終草案の内容を説明した。それによると、イランがホルムズ海峡を即開放し、米国はイラン港湾封鎖の解除に着手する。イラン資産250億ドルの凍結解除、イラン産原油に関する制裁を一定期間免除することなどが盛り込まれている。イランは核兵器を製造も取得もしないことに同意し、最終合意までの間、ウラン濃縮活動など、核開発計画の現状を維持する。イランの濃縮ウランの希釈は同国内で行うことを認めるという」
両国の覚書き条件は、①イランがホルムズ海峡を即開放。②米国はイラン港湾封鎖の解除に着手する。③イラン資産250億ドルの凍結解除し、イラン産原油に関する制裁を一定期間免除する。④イランは核兵器を製造しない。⑤濃縮ウランは現状維持(希釈は国内で可)などである。
これら取り決め裏にあるのは、「本当の理由」は米国側の3つの理由とされる。
1)原油価格の暴騰を止めるため(米国のインフレ対策)
2)イランを中国から引き離すため(対中戦略)
3)トランプ政権の外交成果づくり(選挙前の実績)
ここでは、2)の「対中戦略」に注目すべきである。イランはここ数年、中国との石油取引、中国の投資、中国の軍事協力 に大きく依存してきた。しかし、今回の覚書では
米国がイラン資産250億ドルを解除し、原油制裁を緩める。これは 、「中国に頼らなくても経済が回る」 という新しい選択肢をイランに与える動きである。 米国は、イランを中国陣営から引き離す「地政学的取引」を仕掛けていると指摘されている。
今回の覚書きで、原油相場は次のような動きが予測されている、
短期は、急落(70ドル台へ)。理由は、ホルムズ海峡の即開放、イラン原油の市場復帰、制裁免除による供給増である。市場は、「供給不安の解消」を織り込む。
中期は、安定(70〜85ドル)。理由は、イランの増産、サウジの調整、世界経済の減速、中国の需要低迷である。供給が増える一方で、需要は伸びないことにより、中期的に原油相場は安定する、としている。
(3)「米国が重視するのは、イランの濃縮ウランの撤去だ。焦点は、2025年6月13日のイスラエルによる最初の攻撃前にイランが保有していたと国際原子力機関(IAEA)が推定する、純度最大60%に濃縮された440.9キログラム。IAEAの基準によれば、これがさらに濃縮されれば核兵器10発分に相当する。ただ現在どれだけ残っているかは不明だ」
イランの濃縮ウラン処理は、今回の紛争の原点である。米国は、曖昧な解決に終わらせると非難を浴びる。絶対に譲れない一線である。
イランが中国から離れると、 ユーラシア大陸の「陸の秩序」が崩れ、 中国の戦略は根本から破綻するとみられる。イランは、中国の一帯一路の「中核」である。中国→中央アジア→イラン→トルコ→欧州 という 「陸のシルクロード」の要衝である。イランがここから離れると、中国は中東への陸路を失うのだ。欧州への陸路も寸断される。こうして、一帯一路は「地図上の線」に戻るであろう。中国のユーラシア戦略は、イランが抜けると成立しない構図になっている。
中国は、これまでイラン原油、イラン天然ガス、イランの港湾(チャーバハル) に依存してきた。だが、イランは米国と和解し、海峡が開放されると、中国は「優先供給」を失うであろう。こうして、中国はエネルギー価格の主導権を失う。中東での政治的影響力も急低下するであろう。 中国は、エネルギーの「首根っこ」を米国に握られるのだ。
イランが、中国から離れると、 日本は次の役割を得るであろう。中東の安定供給の保証人、重要鉱物特恵市場の中心国、中国依存からの脱却を進めるASEANの支援国として浮上する。日本は、UAE(
アラブ首長国連邦)との強い関係を生かして、中東で大きな足場を築くであろう。




