勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: イラン経済ニュース時評

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    イラン当局は、米国から攻撃を受けた場合、米国とのあらゆる紛争をエスカレートさせると警告している。イランは、米国との対立を抑制するために報復を制限するという同国の軍事ドクトリン見直しを示唆している。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(2月26日付)は、「イラン、米国が攻撃なら報復拡大と警告 『抑制的な対応』修正も」と題する記事を掲載した。

     

    イラン軍のムサビ参謀総長は最近、イランの戦略は「かつてはエスカレーション(緊迫した状況)抑止だった」が、「米国の態度が我々にアプローチの変更を余儀なくさせた」と述べた。同氏は、「米国が今回過ちを犯せば、我々は甚大な犠牲を米国に負わせる。我が軍は横暴な大国に対して最後まで立ち向かう決意だ」と語った

     

    (1)「イラン政権の内部関係者はフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、イランは米国に対する軍事ドクトリンを修正し、紛争が勃発した際に米軍およびその関連施設に具体的な損害を与えることを意図した戦略に移行したと話した。同関係者はまた、イラン政権は戦争を求めておらず、26日にスイスのジュネーブで行われる米国とイランの核問題を巡る協議が、米国の攻撃を阻止する新たな核合意への道を開くことを望んでいると述べた。しかし、イランはトランプ米大統領に屈服するよりはむしろ戦う構えであると続けた」

     

    イランは、和戦両様の構えである。米イランの合意が成立することを期待するほかない

     

    (2)「同関係者は、「イランはエスカレーションへと動き、米軍基地からホルムズ海峡、米軍艦に至るまで、射程内にあるあらゆるものを標的にするだろう」と強調した。イラン政権の内部関係者は、「極めて限定的な攻撃」の場合、イランはエスカレートさせない可能性があると示唆したが、イラン外務省のバガイ報道官は「限定的な攻撃などありえない」と明言した」

     

    イランは、射程2000キロ圏の米軍施設を攻撃するとしている。これまでのような、限定的な反撃はあり得ないと言う。

     

    (3)「イラン国外のアナリストらは、03年のイラク侵攻以来で最大規模となる軍事力を中東に集結させている米軍に対し、イランが損害を与えられるかどうかについて懐疑的だ。イスラエルと米国は、25年6月の「12日間戦争」でイランに立て続けに深刻な打撃を与えた。これにより、イランと宿敵国との軍事的な不均衡が露呈した。イラン当局者は、米軍の戦闘機や長距離攻撃能力によって、自国の軍事・経済インフラが数日で壊滅させられる可能性を懸念している」

     

    イラン当局者は、米軍の戦闘機や長距離攻撃能力によって、自国の軍事・経済インフラが数日で壊滅させられる可能性を懸念している。

     

    (4)「英内閣で中東問題の上級情報顧問を務めたリネット・ヌスバッハー氏は、イランのエスカレーションの脅威は真剣に受け止めるべきだと述べた。同氏は「イランの国家安全保障体制は危険だが、狂っているわけではない」と指摘した。「彼らは明確なシグナルを発し、自らの目的を理解し、敵対勢力の目的も理解している。そして、その枠組みの中で行動しようと努めている」と強調した」

     

    イランの反撃能力を軽視することへの警戒論もある。

     

    (5)「ヌスバッハー氏は、イランが弾道ミサイルを展開させるだけでなく、ホルムズ海峡の船舶航行の封鎖を試みる可能性があると話した。同海峡は、世界の海上輸送原油の多くが通過する重要な貿易ルートだ。イラン革命防衛隊は2月上旬、海軍演習の一環として同海峡の一部を一時的に閉鎖すると発表していた。米国の複数メディアは、米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長が内部協議で、イラン攻撃の潜在的リスクを強調したと報じていた。トランプ氏は23日にこうした報道を激しく批判し、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、ケイン氏の見解はいかなる軍事衝突も「容易に勝利できる」というものだったと言明した」

     

    イランが、弾道ミサイルを展開させるだけでなく、ホルムズ海峡の船舶航行の封鎖を試みる可能性があるとしている。この場合は、世界の原油市況に大きな影響が出よう。

     

    (6)「イランの最高指導者ハメネイ師の上級軍事顧問の息子であるハムゼ・サファビ氏はイランのニュースサイト「エンテハブ」に対し、個人的な見解と強調しつつ、「今回、イランはそうした配慮を脇に置き、実害を与える報復に踏み切るだろう」と語った。サファビ氏はさらに、今後戦争が発生した場合、イランはより高度な軍事技術を公にすることになるだろうと主張し、イランは報復においてもはや米国とイスラエルを区別しないとした。「イスラエルが(イランへの)攻撃を開始すれば、イランは米国も攻撃する。そして米国が(イランを)攻撃すれば、イランはイスラエルも標的とするだろう」と述べた」

     

    イランは、イスラエルと米国を相手に戦うとしている。戦線拡大は不可避であろう。米軍によるベネズエラ急襲と、レベルの違う戦いになることは十分に認識すべきであろう。

     

    テイカカズラ
       


    トランプ米大統領が、イランとの核交渉を巡り米国の要求を受け入れさせるため、イランへの限定的な初期攻撃を検討していることが分かったと『ウォール・ストリート・ジャーナル』が報じた。この第1段階の攻撃は、イラン政府に合意を迫るためのもので、大規模な報復を招く可能性のある全面攻撃には至らないものという。

     

    イラン攻撃が、承認されれば数日以内に実施される可能性がある。また最初の攻撃では、少数の軍事施設または政府施設が標的となる。トランプ氏が求めるウラン濃縮停止にイランがそれでも従わない場合、米国は政権施設に対する広範な作戦で対応する考えで、これは体制の転覆を目指すものとなる可能性があるという。事態は深刻である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月21日付)は、「イラン政権崩壊後の限られる選択肢」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は、イランの最高指導者ハメネイ師の政権を攻撃することを選択した場合、極めて難しいリスク評価に直面することになる。政権が崩壊した場合に明確な代替勢力が存在しないという現実だ。

     

    (1)「イランの反体制派は政治的に分裂し、組織化されておらず、国内外で物理的に分断されている。米国が、より扱いやすい人物が後継者となることを期待して最高指導者を排除することを選んだとしても、その人物がハメネイ師よりも穏健であるという保証はない。イランの元当局者で、現在は米国を拠点とする反体制活動家のサゼガラ氏は「もしトランプ氏がハメネイ師と最高司令官の殺害といった行動に出た場合、問題は次に何が起こるかだ。イランは破綻国家になるかもしれない」と述べた」

     

    イランは、現政権が崩壊すれば破綻国家になる危険性があるという。現状よりもさらに悪化するのだ。

     

    (2)「ルビオ米国務長官もそのことを認めており、先ごろ議会で、複雑な政権移行期間を通じて政府内で協力してくれる人物が見つかることを期待しなければならないだろうと語った。前回、イラン政府が崩壊した時は、このような状況ではなかった。パーレビ国王が倒される1979年の革命前夜、その後に何が起こるかははるかに明確だった。当時、イラン国民は国内外を問わず、社会階級や政治的分断を超えて、ホメイニ師の指導の下に団結した。カリスマ的な聖職者だった同師は、モスクや慈善団体の広大なネットワークを活用して、民衆の動員を調整することができた。同師が1979年2月に亡命先のパリから帰国した際、英雄として迎え入れられた」

     

    ルビオ米国務長官は、米議会で複雑な政権移行期間を通じて、政府内で協力してくれる人物が見つかることを期待しなければならないだろうと語った。イランは、後継候補がいないという、最大の危機に直面している。

     

    (3)「イランにとって最も恐ろしい脅威は、イラン国内から生じている。怒りに燃えるイラン国民は過去10年間、2009年の不正選挙疑惑、22年の女性の権利問題、そして昨年末の深刻化する経済危機を巡り、ますます頻繁に街頭デモを繰り広げている。アナリストや活動家は、数千人が死亡した残忍な弾圧にもかかわらず、再びデモが激化するのは避けられないと話す。すでに新たな怒りの波が醸成されつつあり、犠牲者を追悼する式典では「ハメネイ師に死を」「子ども殺しの共和国に死を」といったスローガンが叫ばれている」

     

    イラン民衆は、自然発火的に怒りをデモ行進で示しているが、無統制で「指導者」がいないことだ。これでは、簡単に政権によって弾圧されるという結末を重ねている。

     

    (4)「これらの民衆運動には、国内に明確な指導者や組織構造が存在しない。著名な反体制派の人物は、遅かれ早かれ沈黙させられるか投獄される。その中には、ノーベル平和賞受賞者(23年)のナルゲス・モハンマディ氏や元イラン国会議員のモスタファ・タジザデ氏が含まれる。両氏とも現在投獄されている。イラン国外に拠点を置く反体制活動家には、人権活動家が多く含まれる。イラン人弁護士でノーベル平和賞受賞者(03年)のシリン・エバディ氏を含む彼らの多くは長年、イラン国外に滞在しているため、多くのイラン国民は彼らが国内の現実を理解していないと感じている」

     

    イランで、ノーベル平和賞を授賞された人物はいるが、政治的指導力がないのだ。祈りと言説だけでは、民主主義が実現できないという厳しい状況に置かれている。

     

    (5)「イラン国外で最も著名な反体制派の人物は、追放された元国王の息子で亡命中のレザ・パーレビ氏で、同氏は将来の指導者として名乗りを上げている。同氏は最近の抗議活動において反体制の強力なシンボルとして浮上した。イラン国民はパーレビ氏の全国的な抗議行動への呼びかけに応え、1月に大勢が集結した。多くの人々が同氏の名前や体制批判のスローガンを叫ぶ中、治安部隊が再び弾圧を開始した。しかし同氏は、父親による政治的弾圧や父親が権力の座にあった時代の社会的不平等を覚えているイラン国民の間では、依然として意見が分かれる人物だ。イランの人口の半分近くを占めるクルド人、アゼルバイジャン人、その他の少数民族の多くは、父親が中央集権的な統制を重視していたためパーレビ氏を信用していない」

     

    イランで追放されたパーレビ元国の息子は、頻りと母国の民主主義復活を唱えるものの、父親の「悪行」が祟って信用されていないのだ。親の祟りが息子の言動から信用を奪っている。イラン国民は、不満を言い募るばかりでなく、次代の指導者をどう作るのかという課題も背負わされている。

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    経済情勢への不満が本格的な反政府抗議デモに発展したイランでは、1979年のイラン革命を経済的に支え、聖職者を権力の座に押し上げるのに一役買ったバザール(市場)の商人らが、聖職者らに反旗を翻している。

     

    『ロイター』(1月14日付)は、「聖職者指導層に反旗翻すイラン商人、経済への不満が抗議デモの発火点に」と題する記事を掲載した。

     

    イランでは、エリート部隊であるイスラム革命防衛隊が厳重な権力構造を築いて経済統制を強める一方で、バザール商人の政治的、経済的影響力はこの数十年で減退。小規模な小売店主から大規模な卸売業者に至るまで、不満が高まっていた。

     

    (1)「数百年の歴史を持つテヘランのグランドバザールの商人は、「私たちは苦境に立たされている。米国の制裁に加え、防衛隊かその関係者が経済を支配しているため、商品を輸入できない。彼らは自分たちの利益しか考えていない」と、匿名を条件に語った。イランの抗議デモは、12月下旬にこのグランドバザールで発生。店主ら数百人が通貨リアルの急落への不満を訴えた抗議の波は全土に広がり、聖職者指導層らにとってこれまでで最も重大な局面へと発展しつつある」

     

    革命防衛隊は、聖職革命後の軍隊である。だが、国家の経済的利益を独占するという現代においては想像もできない存在になっている。

     

    (2)「デモは急速に拡大して政治的な運動へと発展し、イスラム共和国の正統性に疑問を投げかけている。デモ参加者は、催涙ガスや警棒、そして多くの場合実弾で武装した治安部隊にひるむことなく最高指導者ハメネイ師の肖像を燃やし、「独裁者に死を」と叫んだ。イランの指導者らは経済的困難を認めつつ、長年の敵である米国とイスラエルが騒乱を扇動したと非難している。イラン治安機関はこの数十年、民族反乱や学生運動、そして経済や自由を求める抗議活動を鎮圧しており、指導者層はこれを頼みにいかなる犠牲を払ってでも権力を維持しようと躍起になっているようだ」

     

    聖職指導者は、いかなる犠牲を払おうと貪欲までに権力を守る態勢を固めている。聖職者にあるまじき行動だ。正義とは、かけはなれた振舞である。「正義」ほど、便利に使われる言葉はない。

     

    3)「イランでは、インフレにより多くの商品の価格が一般人の手の届かない水準にまで押し上げられている。一般市民と聖職者や治安エリートとの間の経済格差、そして国営メディアさえも報じた経済政策の失政や政府汚職が、国民の不満に火を注いだ。イランの通貨リアルは2025年 、ドルに対してほぼ半分の価値を失い、公式インフレ率は12月に42.5%に達した」

     

    一般市民と、聖職者や治安エリートとの間の経済格差が大きく開いている。古代の聖教一致社会が、現代へ舞い戻ったようなものだ。

     

    (4)「イラン革命を指導したホメイニ師によって創設された革命防衛隊は、80年代のイラン・イラク戦争後にイランの主要産業に投資する許可を得たことで、経済的な影響力の足場を確保した。その後数十年で、防衛隊の影響力は、ハメネイ師の全面的な支援と、イランを事実上世界金融・貿易システムから締め出した西側の制裁によって生じた機会の恩恵を受けて飛躍的に拡大。防衛隊は現在、石油から運輸、通信、建設に至るまで、幅広く経済を支配している。テヘランでカーペットを扱うある商人(62)は、防衛隊は自分たちの経済的利益を守ることに長けており、危機はまだ終わっていないと述べた」

     

    革命防衛隊は現在、石油から運輸、通信、建設に至るまで、幅広く経済を支配している。利益を独占している。

     

    (5)「制裁対象の原油を秘密裏に輸送する「影の船団」から、主に中国に石油を売るフロント企業、石油輸送網まで、制裁下にあるイランの石油産業のあらゆる部分が防衛隊の影響下にある。あるイラン高官は、「防衛隊が原油販売で得る石油収入のうち、どれだけ国に還流しているのか誰にも分からない。彼らはあまりにも強力で、誰も問うことはできない」と述べた。2013年から21年まで大統領を務めたロウハニ師は、防衛隊が予算削減に抵抗していると公然と非難し、繰り返し衝突した。防衛隊のビジネス網や資産を抑制しようと試みたが、おおむね失敗に終わった」

     

    イランの石油産業のあらゆる部分が、防衛隊の影響下にあるという。これが、石油利益をすべて飲み込む巨大パイプとなっている。

     

    (6)「聖職者階級は、経済力を手放した一方で、忠実な防衛隊と民兵組織「バシジ」に頼り、民族蜂起や学生運動、経済的困難に対する抗議活動を暴力的に鎮圧し、政治秩序を維持してきた。「国が外国の脅威に直面しているという微妙な状況を考えると、ハメネイ師は経済への影響力を削いで防衛隊を動揺させることはできない。体制側は、抗議活動を鎮圧し、外国の脅威に対抗するために防衛隊を必要としている」と、ロウハニ師に近い関係者は述べた」

     

    革命防衛隊は、国の経済力を掌握しているので、あらゆる弾圧をためらいもなく行っているのであろう。これが、聖教一致社会の実態だ。

     

     

     

     

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    イランでは昨年12月末から連日、政府に対する抗議デモが起きている。首都テヘランの商人による抗議活動をきっかけに、生活苦にあえぐ市民の不満が噴出。現体制に異を唱える人がデモに加わっている。トランプ米大統領は介入を示唆しており、イラン政府は沈静化を急いでいる。一方、英『タイムズ』紙は4日、イランの最高指導者ハメネイ師が抗議活動の鎮圧に失敗した場合、国外へ逃亡する計画を立てていると報じた。逃亡先は、モスクワで家族ら20人が同行するとしている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月6日付)は、「イラン、経済悪化で連日抗議デモ 米介入懸念の政府は沈静化に腐心」と題する記事を掲載した。

     

    ロイター通信は4日、人権団体の情報として、過去1週間ほどに及ぶデモで20人近くが死亡したと報じた。イラン西部などで当局との衝突が起こっているもようだ。

     

    (1)「25年12月28日、テヘランの商業地区で発生した抗議活動が拡大している。通貨安に伴うインフレで苦境を訴える商人が市場を閉鎖するなどした。ロイターによるとデモには学生らも加わり、22年の「反スカーフデモ」以来の規模になっているという。イランは、デモの背景にイスラエルがいるとみる。テヘランの警察当局は、イスラエルの対外特務機関モサドの指示を受けてイランでのデモを扇動したとして、イラン人の男を逮捕した。同国のファルス通信などが5日、報じた。報道によると男はSNSを通じてリクルートされ、デモに参加するよう仕向けられたという」

     

    イランは、22年の大規模デモ以来の抗議活動になっている。デモは、イスラエルの対外特務機関モサドの指示を受けているとの情報も流されている。

     

    (2)「米国による制裁でイランの経済は厳しい状況が続き、市民の不満はたまっている。イランの最高指導者ハメネイ師は3日、デモについて「暴徒はしかるべき場所に追いやらなければならない」と語り、体制批判に対する警戒感をあらわにした。同時に「抗議は正当だ」と語り、経済的な苦境に追いやられた市民に理解を示した。ペゼシュキアン大統領も経済対策に力を入れるとしている」

     

    最高指導者ハメネイ師は、デモに対して曖昧姿勢を見せ始めた。デモ鎮圧が、困難になってきたという実感が言わせたのか。微妙な発言である。英『タイムズ』紙が報じたように、国外脱出を考え始めたとも見えるのだ。

     

    (3)「トランプ氏は2日、自身のSNSに「イランが平和的なデモ参加者に発砲し、暴力により殺害するのであれば、米国が救出しにいく」と投稿し、介入を示唆した。米国は25年6月のイランとイスラエルの交戦に加わり、初めてイランを直接攻撃した。イスラエルには、最終的にイランのイスラム体制を転覆させる野心があったとされている。トランプ氏は25年12月末にイスラエルのネタニヤフ首相と会談した際、必要であれば再度イランを攻撃する考えを明らかにした。トランプ政権は3日、ベネズエラでの軍事作戦で同国のマドゥロ大統領を拘束し、政権移行を進めると打ち出した。イランにとってもひとごとと言えない状況になっている」

     

    トランプ氏は、自身のSNSで平和的なデモ参加者に対して政府が弾圧を加えれば介入すると投稿した。ベネズエラで「実績」を持つトランプ氏だ。にわかに米国の動きが関心を呼んでいる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月5日付)は、「米のベネズエラ大統領拘束、『明日はわが身』のイラン」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は、イランで拡大する抗議活動への介入を辞さない姿勢を示しているが、米軍がベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束したことで、イラン政府にとっては一段と緊急性を帯びる事態となっている。トランプ氏がどこまで踏み込む意思があるのか不透明感が高まっている。

     

    (4)「トランプ氏は2日、イラン政府が抗議活動を厳しく取り締まった場合、米国として抗議活動の参加者を支援するための「準備は万端」だと発言。その翌日、米軍はイランの同盟国であるベネズエラの首都カラカスを攻撃し、マドゥロ氏とシリア・フローレス夫人を米国に移送して刑事訴追した。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中東・北アフリカ担当責任者サナム・バキル氏は、「これはトランプ氏の行動が予測不可能であり、イランに関しては本当にあらゆることが選択肢としてあることを裏付けている」と述べた」

     

    トランプ氏の行動が予測不可能であり、イランに関してもあらゆることが選択肢として上げられる状況だ。ハメネイ師の海外脱出計画説もその一つであろう。

     

    (5)「イランの複数の高官は、トランプ氏がイラン国内の抗議者たちを支持して介入するという脅しを実行に移した場合、米国に報復すると警告してきた。一方で、イスラエルはイランを直接攻撃することを長年にわたり躊躇していたものの、昨年6月の12日間の戦争でこれを打ち破り、イランの防空網を粉砕。トランプ政権も戦争の終盤には攻撃に加わり、イラン国内の主要な核施設を爆撃した。イランの指導者らは、この悲惨な経験を経て、自国の脆弱性をすでに再評価している状況にあった」

     

    イラン当局は、米国の軍事力の脅威を身に滲みている。すでに、イランの防空網が粉砕されているからだ。

     

    (6)「アドバイザリー会社グローバル・グロース・アドバイザースのイラン人コンサルタント、ルーズベ・アリアバディ氏は、マドゥロ氏の拘束により、イラン政権は最高指導者であるアリ・ハメネイ師が強制的に排除される可能性をより真剣に考慮せざるを得なくなるだろうと指摘。「イランにとっては、これまで存在しなかった可能性が生じることになる」とした」

     

    ハメネイ師は、米国によって強制的に排除される可能性を否定できなくなっている。自らの身の安全を守ることが、最大の選択とは何とも哀しい結末である。

     

     

     

    あじさいのたまご
       

    イラン議会は6月22日、ホルムズ海峡封鎖を承認した。実行には、国家安全保障最高評議会の決定が必要である。イランのプレスTVが22日伝えた。ホルムズ海峡は、世界の石油・ガス輸送の2割が行き交う大動脈だ。それだけに、世界の原油相場は一挙に暴騰する。一説では、1バレル100ドル突破説が囁かれている。米国は、こうした事態を放置するのか。それが焦点になる。

     

    米海軍は、ペルシャ湾周辺に第5艦隊を配備している。航行の自由を確保するため、過去にもイランによる妨害行為に対抗してきた。封鎖が実際に行われた場合、経済的および地政学的な影響を最小限に抑えるため、米国を含む関係国が、迅速な対応に動く可能性が強いとみるべきだろう。

     

    『ロイター』(6月22日付)は、「イラン核施設攻撃、 原油高騰の可能性 安全資産への資金逃避も」と題する記事を掲載した

     

    米国がイランの核施設を攻撃したことを受けて、週明けの世界市場ではまず原油価格が上昇し、安全資産への資金逃避が強まるとみられている。投資家は中東情勢の悪化が世界経済にどう波及するか見極める構えだ。

     

    (1)「投資家は、株式が売られドルなどの安全資産が買われる可能性が高いと予想した。ただ、紛争の行方には依然として多くの不確実性が残るとの指摘も出ている。トランプ米大統領は攻撃が「成功した」と述べたが、詳細はほとんど明らかにされていない。ポトマック・リバー・キャピタルのマーク・スピンデル最高投資責任者(CIO)は「市場は当初警戒感を示し、原油価格は上昇して始まるだろう」と予想した。同氏は、核施設の被害状況の調査は行われておらず、時間がかかるとの見方を示した。また、トランプ氏が作戦完了を宣言したにもかかわらず、米国はもはや戦闘に関与しており、今後どうなるかが問題だと指摘した」

     

    米国のイスラエル・イラン紛争介入によって、事態は新局面を迎えている。米国の介入効果を、どのように評価するかがポイントだ。重視すれば、事態は沈静化するだろう。そうでなければ、拡大するとみるであろう。

     

    (2)「さらに、「今や米国全土の人々が影響を受けることになるため、不確実性が市場を覆うだろう。特に原油市場で不確実性と変動性が高まる」との見方を示した。市場の主な懸念は中東情勢の展開が原油価格、さらにインフレに与える影響だ。インフレ率が上昇すれば消費者心理は冷え込み、短期的な利下げの可能性も低下する可能性がある。クレセット・キャピタルのジャック・アブリンCIOは、「これは新たな複雑なリスク要因となる。間違いなくエネルギー価格に影響を与える上、インフレにも波及する可能性がある」と述べた」

     

    トランプ大統領は、これまで原油相場の下落を望んできた。それが、逆の動きをするとなればどう反応するかだ。

     

    (3)「北海ブレント先物は10日以降最大18%上昇しており、19日には約5カ月ぶり高値の1バレル=79.04ドルを記録した。一方、イスラエルが13日にイラン攻撃を開始した際にS&P500種株価指数は一時下落したものの、その後は小動きとなっている。今回の米国の攻撃に先立ち公表されたオックスフォード・エコノミクスのメモによると、1)紛争の鎮静化、2)イランの石油生産の全面停止、3)ホルムズ海峡の封鎖――という3つのシナリオを想定していた。それぞれが原油価格に影響を及ぼすが、シナリオが進むごとに影響が大きくなると分析した」

     

    上記のケースのうち、2)と3)は最悪事態を想定したもの。この場合、イラン経済は破綻するので、現実化しないと言えそうだ。

     

    (4)「最も深刻なケースでは、世界の原油価格が1バレル=130ドルに急上昇し、年末までに米国のインフレ率が6%近くまで上昇すると予測した。「原油価格ショックは実質所得を圧迫し、必然的に消費者支出を冷え込ませるだろう。しかし、インフレ上昇やそれに続く2次的インフレの影響懸念から、年内の米利下げの可能性は完全になくなる公算が大きい」との見方を示した」

     

    1バレル=130ドルになれば、米国はインフレ再燃である。トランプ氏は、こういう事態を回避すべく、米海軍の力でリスクを防ぐであろう。

     

    (5)「ハリス・ファイナンシャル・グループのマネジングパートナー、ジェイミー・コックス氏は、攻撃発表後のコメントで、原油価格は一時的に急騰する可能性が高いとしながらも、米軍が力を見せつけイランの核開発能力が完全に失われたことにより、イランは交渉上の優位性を全て失ったと指摘。イランが和平交渉を模索する可能性が高いとして、原油価格は数日中に安定すると予想した。エコノミストらは、すでにトランプ大統領の関税政策で圧迫されている世界経済に原油価格の急騰がさらなる打撃を与える恐れがあると懸念している」

     

    米軍が軍事力を見せつけたので、イランの核開発能力が完全に失われと判断すれば、イランの交渉面における優位性を全て失ったであろう。この前提に立てば、事態は沈静化する。そうでなければ、米軍が再び軍事力を使うほかないであろう。

     

    (6)「ドルは今年に入って下落しているが、紛争の激化は複雑な影響をもたらす可能性がある。アナリストらは、米国によるイラン・イスラエル紛争への直接介入により、ドルは当初安全資産として買われる可能性があると指摘する。IBKRのチーフ市場ストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は、安全資産への逃避が見られれば、米国債利回りは低下しドルは上昇することになるだろうと述べた。「株価がマイナスに反応しないのは想像し難いが、問題はどの程度マイナスに反応するかだ。それはイランの反応と原油価格が急騰するかどうかにかかっている」と語った」

     

    今回に事態では、ドル高局面という見方だ。米国のイラン攻撃が、成功したという前提に立てば、こうした結論になるのだろう。

     

     

     

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