中国は何十年にもわたり、米国などの西側諸国に代わる、価値判断を押し付けない存在として自らを売り込んできた。ペルシャ湾地域では、そうしたこれまでの姿勢が今、危機に瀕している。複数の報道によれば、中国はイランに対し、インフラや船舶の攻撃、また湾岸諸国内の米関連施設の攻撃に必要な衛星画像・部品・情報を提供してきたからだ。湾岸諸国にとって、味方と思ってきた中国が、実はイランの軍事行動を支えていたことが分かり窮地に立たされている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月22日付)は、「中国が払うイラン支援の代償」と題する寄稿を掲載した。筆者のム・トゥーゲンハット氏は、英下院の保守党議員で、ハドソン研究所の特別研究員。
複数の報道によれば、中国はイランに対し、インフラや船舶の攻撃、また湾岸諸国内の米関連施設の攻撃に必要な衛星画像・部品・情報を提供してきた。この後方支援態勢のそれぞれが、イランによる製油所や港湾の破壊、そして民間人の殺害までも助けてきた。サウジアラビアなどの湾岸諸国はこのことを見過ごしていない。これらの国々を合わせると、中国にとっての重要性はイランの比ではない。
(1)「米エネルギー情報局(EIA)によると、2024年の中国の原油輸入元はロシアが1位で、全体の20%を占めた。イランは11%で、その多くは、西側諸国の制裁を逃れるための「影の船団」を通じたものだった。一方、サウジは14%、イラクは10%、オマーンは7%、アラブ首長国連邦(UAE)は6%で、4カ国の合計は約37%に達した。中国がイランによる攻撃を可能にした結果、中国経済に対して合計でイランの3倍以上の影響力を持つ原油供給国が危険にさらされている」
中国は、イランへ軍事情報を流して湾岸諸国が被弾した元凶とみられている。湾岸諸国4ヶ国は、中国へイランの4倍もの原油を輸出している。イランを庇って4ヶ国を犠牲にしたたことは、中国外交の大きなミスだ。
(2)「中国行きのエネルギーは、中国の支援を受けたイランのドローン(無人機)やミサイルが標的にしている地域を直接通って運ばれている。サウジなどの国々が、中国共産党がイラン革命防衛隊(IRGC)を支援していることにこれ以上耐えられないと判断すれば、自国のタンカーを中国の港に向かわせない可能性がある。中国は、特に湾岸地域への依存度を下げる狙いで、カザフスタンやミャンマーにパイプライン建設のための資金を投じてきた。そのため、こうしたパイプラインを使うという代替策があると考えているかもしれない」
中国は、これまで中東において八方美人の振る舞いをして原油を確保してきた。だが、今回のイラン溺愛が、とんだ波紋を呼ぶことになりかねないのだ。
(3)「ペルシャ湾岸の君主制アラブ諸国は、大国政治に無知ではない。より大きな勢力と慎重に協力することで、何世紀も生き延びてきた。中国の影響力が拡大するにつれ、湾岸諸国は港湾・インフラ・技術への中国の投資を歓迎した。しかし、湾岸諸国の現実的な前提は、自国の安全保障を中国が損なうことはないというものだった。友好関係が徐々に再編される中で、サウジが米国との防衛関係を加速させ、UAEがウクライナとの防衛協力を最近発表したことは、(中国の)中立にはおのずと限界があるという認識を反映している」
サウジが、米国との防衛関係を加速させ、UAEは最近ウクライナとの防衛協力を発表した。中国との関係見直しに繋がりかねない事態だ。
(4)「中国がこうした厄介な立場に陥ったのは、国内的には一貫性があったものの結局は自滅的な論理が要因だった。中国はイランを支持することにより、イランから割引価格で石油を調達できるようになり、それが同国の制裁回避を助けた。また米国の注意を分散させておくため、秩序を乱すパートナーを支え続けた。さらに中国は、自国と友好関係にある国々が米国と対立した場合でも、これら諸国を見捨てないことを他国に示した。サウジやUAEにこうした動きがどのように映るかは恐らく考慮されていなかった」
中国は、米国によるイラン攻撃という「リトマス試験紙」によって、親イランを明らかにしてしまった。サウジとUAEは、「正体見たり」という思いであろう。
(5)「イランでの戦争が、停戦交渉とあからさまな対立の間を行き来する中で、中国の外交担当者らは、同国による対イラン支援の悪影響への対処を迫られることになった。ペルシャ湾岸アラブ諸国に、はっきりと刻まれたイランによる攻撃の爪痕が、中国による対イラン軍事支援の証拠を示す中で、中国の当局者らは、衛星画像データや軍事転用可能な技術を中国がイランに提供しているとの報道を否定するか、矮小化する必要がある」
イランは、中国の立場を考慮せずに湾岸諸国を攻撃した。これからの中国は、湾岸諸国へ苦しい弁明を迫られる。
(6)「中国は今後、「衛星データが悪用されており、中国製部品は決して軍事攻撃への利用を想定したものではなく、IRGCが暴走しており、湾岸諸国との関係は引き続き相互の信頼に基づいている」といった主張を君主制アラブ諸国に伝え、安心感を醸成することに外交面で力を注ぐだろう。こうした言い訳の一部は受け入れられるかもしれないが、アラビア半島に点在する各国王室では既に、認識が変化しつつある」
中国は、イランを悪者にして自己弁護をするほかない。
(7)「中国は、湾岸諸国の中でイランという一つの国を他の国々との関係を損なう形で支援してしまった。そして中国は、同国の原油輸入量の3分の1超を供給している国々が、こうした裏切り行為を忘れてくれることを期待している」
中国は、どうやって湾岸諸国との気まずい関係を回復するのか。



