『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(2月5日付)は、「中国が軍用品でロシア支援、貿易データで発覚」と題する記事を掲載した。
中国は、国際的な制裁と輸出規制をよそに、ロシア軍がウクライナで戦争を行うのに必要な技術を提供している。WSJが、ロシアの税関データを確認したところ明らかになった。税関の記録には、中国国有の防衛企業が航法装置や電波妨害技術、戦闘機部品を制裁対象のロシア国有防衛企業に出荷していることが示されている。
G7(主要7ヶ国)は、この動かぬ証拠を握られた中国企業に対して、制裁を科す検討を進めている。今年のG7議長国は日本だ。中国外交部は、駐中国日本大使館へ「日中友好の確認」と働きかけている。
『ブルームバーグ』(2月9日付)は、「G7が中国企業への制裁検討、ロシア軍支援で-関係者」と題する記事を掲載した。
主要7カ国(G7)はロシアに軍事目的で部品やテクノロジーを供給しているとして、中国とイラン、北朝鮮の企業への制裁を協議している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
(1)「機微に触れる問題だとして関係者が匿名で語ったところでは、G7はロシアのウクライナ侵攻開始から1年となる2月24日までに包括的措置を調整することを目指している。関係者の一人は制裁の議論はまだ初期段階であり、G7が一律の措置を講じない可能性があると述べた。対象となる企業もなお検討中だとした」
バイデン米政権は、ロシアによるウクライナ侵攻を一部の中国国有企業が支援している可能性を示唆する証拠を中国政府に提示した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。米国は中国政府がこうした活動を認識していたかどうか突き止めようとしている。同関係者はこのような支援に関し、殺傷力のない軍事的・経済的なもので、米国やその同盟国による対ロ制裁にあからさまに違反するには至らない内容だと説明した。以上は、『ブルームバーグ』(1月25日付)が報じた。ただ、ロシアへの制裁対象である航法装置や電波妨害技術、戦闘機部品が輸出されている。これを見過ごせば、ロシア軍の戦力強化に繋がるだろう。
(2)「G7は、ウクライナへの侵攻を巡り対ロ制裁に加わっていない第三国経由で軍事目的の物品がロシアに供給されるのを断とうと取り組んできた。関係者によると、一部企業がロシアの制裁逃れを助けているのではないかと懸念されている。米国は、ロシアへの非致死性機器提供について中国側に懸念を表明してきた。ブリンケン国務長官は気球問題を巡り延期した訪中でこの問題を取り上げる予定だった」
米非営利団体C4ADSが『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)に提供した税関記録によれば、ロシアは軍民両用品のほとんどを中国から輸入している。C4ADSは、国家安全保障上の脅威の分析を専門としている。中国が、ロシアのウクライナ侵攻を支援していることを巡っては、アントニー・ブリンケン米国務長官の北京訪問で議題となるはずだったという。
ロシアは基本的な軍需品の多くを国内で生産する能力を持つ一方で、現代戦に不可欠な半導体などの軍民両用技術については輸入に大きく依存している。欧米当局は、昨年2月に開始した経済的圧力は、コンピューターチップや赤外線カメラ、レーダー装置などのロシアへの輸出をターゲットにすることで、モスクワの軍事機構をまひさせるだろうと述べている。税関や企業の記録文書によると、ロシアは依然として、米国主導の制裁に参加していない国を通じてこれらの技術を輸入することが可能となっている。輸出規制されている製品の多くは、トルコやアラブ首長国連邦(UAE)などの国々を経由している。以上は、WSJの報道による。
G7としては、中国企業への制裁を見送る訳には行くまい。中国にとっては、大きな汚点になる。