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オランダ政府は、対中の半導体装置輸出禁止を旧型品まで拡大して、軍用品転用を防ぐ方針を明らかにした。これによって、中国は半導体製造装置で手も足も出ない状況へ追込まれることになる。中国は、ロシアへ秘かに半導体を輸出しているとの疑惑を受けているが、オランダは、これを根元から絶つ意思を見せた。

 

『日本経済新聞 電子版』(3月17日付)は、「蘭貿易相、半導体『軍事利用防ぐ』 対中輸出規制を拡大」と題する記事を掲載した。

 

オランダのスフレイネマーヘル外国貿易・開発協力相は17日、米国が主導する半導体技術や製造装置などの対中輸出規制について「夏前にも輸出制限の対象を広げる」と明らかにした。導入済みの先端品の輸出規制に加え、旧式でより汎用性が高い製造装置も対象に加える。中国による半導体の軍事利用を防ぐため米国と足並みをそろえる狙いだ。都内で日本経済新聞の取材に応じた。スフレイネマーヘル氏は8日にオランダ議会への書簡で輸出規制を強化する方針を明らかにしており「国際的な安全保障に基づいて判断した」と強調した。オランダには半導体の微細化に不可欠な露光装置大手ASMLの本社があり、米国は対中規制で同国に協調を求めてきた。

 

(1)「オランダは先端半導体の製造に欠かせない極端紫外線(EUV)露光装置の輸出を既に制限している。スフレイネマーヘル氏は「新たに深紫外線(DUV)露光装置の一部を輸出規制の対象に加える」と明言した。DUV装置はEUV装置と比べて旧式の装置で、自動車やコンピューターなどに搭載される汎用半導体の製造に使われることが多い。スフレイネマーヘル氏は「多少古い装置であっても製造される半導体は軍事目的に使うことができる」と述べ、規制対象を広げる意義を強調した」

 

極端紫外線(EUV)露光装置は、オランダが唯一の生産国である。すでに、この分野の対中輸出禁止措置を行なう決定をしたが、深紫外線(DUV)露光装置という、一世代前の装置についても輸出禁止措置にする。これで、中国は半導体で20年以上は遅れると指摘されている。

 

(2)「規制相手として中国を名指しするのは避けたものの、「技術の悪用を防ぐには民主主義国家が協力しなければならない」と述べた。「輸出規制にはできるだけ多くの国に参加してもらいたい」と話し、日本を含む西側諸国に連携を呼びかけた。米国は日本にも半導体関連の対中輸出規制の導入を求めており、日本政府が調整を進めている。スフレイネマーヘル氏は、「日本も世界の安全保障について独自の評価を下してほしい」と述べ、オランダと同様の対応をとることに期待を示した。スフレイネマーヘル氏は16日、西村康稔経済産業相と会談した。半導体分野の連携でも意見を交わしたといい「日本政府は経済安全保障を非常に重要視していると感じた」と述べた」

 

オランダは、ロシアのウクライナ侵攻によって戦争危機を身近に感じている。中国は、このロシアを非難せず支持をしていることから、中国への危機感を強めているもの。オランダ貿易相が、わざわざ訪日したのは、DUV装置で日本も同調しているかを確認したかったに相違ない。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(3月9日付)では、「オランダが対中半導体規制 米国・日本と共同歩調で」と題する記事を掲載した。

 

オランダのスフライネマッハー貿易相は8日、議会への書簡においてどの半導体製造装置が輸出禁止措置の影響を受けるかは明確にしていなかった。書簡には、技術を輸出する企業は許可を申請しなければならないと記されているだけという。スフライネマッハー氏は、この「特定の標的に向けられる」措置は、同国の半導体製造装置大手ASMLが手掛ける深紫外線(DUV)露光装置の一部など、最も小さく、高性能の半導体を生産できる非常に高度なシステムだけだと強調している。

 

書簡では、「(オランダの)内閣は技術の進歩と地政学的な状況を踏まえ、国家安全保障のために、特定の半導体製造装置の輸出規制を拡大する必要があると判断した」と記した。オランダ貿易相は、この段階ではまだ輸出禁止措置の品目について明確にしていなかったが、日本政府との打ち合わせで、日本の強い方針を確認したので、最先端のEUVのほかに一世代古いDUVまでも踏みこんで禁輸措置へ踏込んだと見られる。