昨年12月末、秋田県の能代港(能代市)で大規模な洋上風力発電所が稼働した。風車の数は20基。大型の風車を複数基束ねて動かす大型施設として国内初だ。発電量は、一般家庭約13万世帯分にあたる約14万キロワットになる。日本でもいよいよ洋上風力発電時代を迎えた。
洋上風力発電は、経済的な連携効果が大きい。発電は当然として、発電装置での部品需要が地元企業に生まれること。これは、新規雇用を生むほか、発電装置を支える海中のコンクリートブロックが、魚礁になることで漁業者にもメリットになるなど、地元経済を潤す。まさに地域経済活性の切り札として期待されるビジネスとして登場した。
こういう環境下で英国政府が、日本へ洋上風力発電所事業の連携打診を行なった。日英連携によりアジア地域で展開しようという大掛かりな構想である。
『日本経済新聞 電子版』(3月20日付)は、「『アジア太平洋で洋上風力発電』日英連携に意欲、英特使」と題する記事を掲載した。
英国のグレッグ・クラーク対日貿易担当特命大使は17日までに都内で日本経済新聞の取材に応じ、英国が輸出に力を入れる洋上風力発電で「日本と連携すればアジア太平洋地域でリーダーシップを発揮できる」と語った。日本と水深が深い海でも使える「浮体式」の開発や運営・管理で協力することで、同地域への普及を加速できるとの考えを示した。
(1)「英国は世界最大級の洋上風力発電国で、2021年には発電量全体の約1割を洋上風力発電が占めた。日本は周辺に浅い海が少ないため、世界で主流の「着床式」ではなくより高度とされる浮体式の技術に強みを持つとされる。クラーク氏は「日英にとって自動車に次ぐ新たな産業協力の分野になりうる」と主張した。英国は欧州連合(EU)を離脱してからアジア地域への関与を強める「インド太平洋への傾斜」を中核戦略として据えており、クラーク氏はフィリピンや台湾でも「ビジネスチャンスが大きい」と述べた」
英国が、日本へ積極的なアプローチをしている。米同盟国の中で日英が二大同盟国とされており、英国の日本への期待が一段と高まる。第6世代戦闘機の「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」は、日英伊三カ国の共同開発だ。24年までに基本設計を固め、35年の実戦配備を見込んでいる。戦闘機の共同開発は、40~50年間もの長期にわたるビジネスになるので、日英関係は強固なものになる。
(2)「新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻を機に、各国でサプライチェーン(供給網)の見直しが進むなど経済安全保障への関心が高まっている。クラーク氏は「日本は供給網の多様性の観点で非常に重要」と強調した。日英がイタリアと共同で開発に取り組む次期戦闘機のような「高度な国と国とのハイレベルな防衛産業」から小規模な産業分野まで幅広い分野での協力に期待を寄せた」
日本の製造業は裾野が広いことから、洋上風力発電のようなビジネスに好適である。地域に根ざすビジネスだけに、地域経済活性化に大きく寄与する。これをアジア全体へ拡大すれば、日本にとってはまたとないチャンスであろう。
(3)「米国は人工知能(AI)や半導体の分野で中国を規制する動きを強めている。英国では21年に安全保障上の重要なインフラや防衛などの産業で、外国からの投資を規制する法律が成立している。クラーク氏は「必要であれば特定の投資を除外する権利を行使する」と述べるにとどめ、特定の国への言及を避けた。年内にも加盟するとみられる環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟交渉については「非常にスムーズに進んでいる」と早期加盟に自信を示した」
英国は、今年中にTPP加盟が実現する。TPPの盟主格の日本にとっては、英国との協業は効果を生む。
『日本経済新聞 電子版』(3月10日付)は、「大和、英洋上風力発電に出資 数百億円規模」と題する記事を掲載した。
大和証券グループ本社は10日、英国の洋上風力発電所ホーンシー・ワンに出資すると発表した。英インフラファンドから持ち分の一部を数百億円で取得する。大和として洋上風力発電への出資は初めて。再生エネルギー関連での投資では同社で過去最大規模になる。大和は大規模太陽光発電所に出資するなど再エネ事業への取り組みを強化している。
(4)「ホーンシー・ワンは、デンマークのオーステッドが英国の海域で開発を進める洋上風力発電プロジェクト。174本の風力発電タービンで原子力発電所1基分に相当する1.2ギガワットの発電容量がある。大和の担当者によると、設備は既に稼働しており「売電により安定的な収益が見込める」という」
大和証券が、英国の洋上風力発電所ホーンシー・ワンに出資する。数百億円規模という。証券会社が、出資したことで日本での洋上風力発電への関心は高まることは確実だ。海洋国家日本が、新たなエネルギー開発と雇用増加に向けて動き出している。