勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    中国は、焦っている。国力が目に見えて低下していく現実の中で、いかに他国へ威圧感を与えるかに腐心している。これが、レアアース(希土類)の主権宣言によって、世界の製造業を支配下におさめるという野心の表明に現れた。だが、これは逆効果になった。EU(欧州連合)は、ドイツの対中姿勢が警戒ムードになったことに合わせることになった、だが、スペインが最近、対中接近姿勢をみせており、EUの統一方針を乱すリスクも抱えている。

     

    『ロイター』(11月21日付)は、「EUの対中通商姿勢、ドイツの方針転換で強化へ

     

    12月3日に公表予定の「経済安全保障ドクトリン」はEU欧州委員会が通商防衛の手段を見直し、中国のレアアース(希土類)供給制限や米国の強硬な通商政策などの脅威に対して一段の対応が必要かどうかを判断する。

     

    (1)「中国は、政策の中心的課題となるだろう。欧州が環境保護対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)移行を推進するために必要な重要鉱物の供給を中国に依存している状況や、欧州企業が中国の補助金による輸出で不公正な競争にさらされている状況を巡る懸念が高まっているためだ。志を同じくする貿易相手国との関係を強化・深化させる政策変更を推し進めたり、あるいは報復措置を発動したりするためには結束が必要とされるだろう。これは、加盟27カ国が米国の関税政策に対する上でなかなか達成できなかったことだ」

     

    欧州は、中国の補助金による輸出で不公正な競争にさらされている状況に対して、共同で対応する体制を整備しつつある。

     

    (2)「重大なことには、域内最大の経済規模のドイツが中国に関して同調しつつある兆しが見受けられる。ドイツは1年前、中国製の電気自動車(EV)に対する関税に反対していたが「安全保障に関連する対中貿易関係」について議会に助言する専門家委員会を先週設置し、「リスク低減」戦略を復活させた。メルツ首相は今月、第6世代(6G)移動通信システムに中国企業製の部品を使用しないと表明した」

     

    ドイツが、中国に対する姿勢を融和から警戒へ変えたことで、EUは結束して対応可能となってきた。

     

    (3)「さらに、ドイツが長年の重視していた自由貿易の原則を覆し、欧州の鉄鋼産業の保護を訴えた。クリンクバイル副首相兼財務相は今週訪中し、中国のレアアース輸出規制や産業の過剰生産能力に懸念を示した。上海でロイターに「自由で開かれた市場を支持するが、欧州やドイツが敗者になるのは望まない」と語った。中国側の何立峰副首相はクリンクバイル氏と共同記者会見した際、中国が「公正かつ公平で差別のないビジネス環境の促進」に協力して取り組むと述べた」

     

    中国のレアアース輸出規制によるレアアース主権宣言は、EUを心底から中国への警戒姿勢を高めている。

     

    (4)「中国は景気減速のために、ドイツにとってもはやかつてのような安定した輸出市場でなくなっている。EUのモノの対中貿易赤字は、2019年以降約60%拡大し、ドイツの対中貿易収支は23年に黒字から赤字に転じ、赤字幅が拡大し続けている。EU首脳は10月、不公正な貿易に対抗するため、中国から大量に届く低価格小包に対する関税免除の終了を早めることなどEUの経済手段を効果的に活用するべきだという点で合意した」

     

    EUもドイツも、そろって対中貿易で赤字幅を拡大している。中国製品のダンピングがもたらした結果だ。

     

    (5)「欧州委が12月に発表するドクトリンは、輸出規制、投資審査、外国補助金の制限などを強調すると見込まれる。最終的な切り札は「反威圧措置規則(ACI)」で、輸出入や投資、公共調達へのアクセスを制限できる。ドイツのシンクタンク・メルカトル中国研究所のジェイコブ・ギュンター氏は、ドイツの強硬姿勢は状況を一変させる要因となり得るためEUがより強い行動を取ることができるようになる、と述べた」

     

    EUは、「反威圧措置規則(ACI)」で中国からの経済アクセスを制限できる。ACIとは、第三国がEUやその加盟国に対して、経済的手段を使って政治的な圧力をかける行為(経済的威圧)に対抗するための法的枠組みだ。

     

    2023年10月にEU理事会で正式に採択され、2023年12月に施行された。第三国が、貿易・投資などの手段を使って、特定の政策変更や行動を強制しようとする行為を禁じる。中国の対リトアニア制裁や、米国の一方的な関税措置などが契機になった。中国対抗への切り札になる。日本も、ACIを導入すれば、中国の圧力を跳ね返すことができよう。

     

    (6)「欧州委のシェフチョビッチ委員(貿易・経済安全保障担当)は先月、EUが「実質的な投資」を求めていると述べた。しかし、ドイツが中国に対してこれまでよりも冷淡になると同時に、スペインは再生可能エネルギー、EV電池、鉱業の分野で中国投資を受け入れようとしている。スペインの豚肉業者も貿易協定によって販売を拡大できる上に、中国が反ダンピング調査で他のEU諸国よりも関税を低く抑えた恩恵を受けている。米シンクタンクのロジウムグループのノア・バーキン氏は、スペインの対中政策について欧州委、ドイツ、フランスで築かれた欧州のコンセンサスからますますかけ離れていると述べた。「『スペイン・ファースト』の姿勢はEUがレアアースや半導体メーカーのネクスペリアを巡る中国の経済的圧力に直面する重要な時期に結束を損なうリスクをもたらしている」と語った」

     

    皮肉なもので、ドイツが中国へ厳しい姿勢をみせる一方、スペインが「親中姿勢」に転じた。スペインは、中国の甘い「誘惑」に乗せられたのであろう。いずれ、ドイツ同様に目が覚める時期が来るのだ。

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    トランプ米大統領が、推進する世界貿易の新基準を今、より明確な形を見せ始めている。米国と欧州連合(EU)の当局者は、15%の関税合意の可能性に向けて歩み寄っており、米国と日本が結んだ同様の合意に続く可能性出てきた。数カ月にわたる各国・地域との貿易交渉は、日本とEU二つの進展によって、転換点を迎えようとしている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月24日付)は、「トランプ関税、15%が新基準 日本が先例に」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ氏が、自ら設定した81日の貿易合意期限まで1週間を切る中、まだ不確定要素も多く残っている。

     

    (1)「米国は、主要貿易相手国であるカナダとメキシコと合意に達していない。来週までに合意に達しなければ、それぞれ35%と30%の関税が課される可能性がある。両国には現在、一部製品を除いて25%の関税が適用されている。また中国と合意した関税を巡る90日間の休戦により、中国からの対米輸出に対する追加関税は30%に引き下げられた。これは全ての輸入品に対する10%の課税を含めた水準だが、8月12日には対中関税が再び引き上げられる可能性もある」

     

    米国は、隣国のカナダとメキシコとの交渉は進んでいない。中国も、8月12日には関税が再び引き上げられる可能性もあるという。

     

    (2)「より高い関税は米国の消費者向け商品の価格を押し上げるとエコノミストらはみている。トランプ氏の貿易戦争の中で国内経済は回復力を示してきたが、今後は逆風を受ける可能性もある。米プリンストン大学の国際経済学教授、ジーン・M・グロスマン氏は、「関税として15%は非常に大きな数字だ。他国に対してもこの水準になれば、われわれは高コストの新たな世界に入ることになる」と述べた」

     

    米国は、高関税によって高コストの世界へ入るという警戒観が強まっている。

     

    (3)「ジェフリーズの米国担当チーフエコノミスト、トーマス・シモンズ氏は、15%程度の関税であっても、米国の消費者にとって自動車価格の上昇につながる可能性が高いとした。自動車セクターの行方は米国とEUの貿易協議においても争点となっており、EUは米政府による現行25%の関税を引き下げようとしている。複数の関係者によれば、欧州当局者らは米国との合意で、EUの対米輸出品の大半に対して15%の基本関税が一律で適用される可能性があると考えている。この水準はトランプ氏が今年から関税を引き上げる前に設けられていた関税に上乗せされることはない。現在協議されている15%の関税率は、平均するとEUが直面している実際の水準よりもそれほど高いものではないと関係者らは述べた。15%の基本関税は自動車に適用されるが、現在、50%の関税が課されている鉄鋼とアルミニウムには適用されない見通しとなっている」

     

    EUは、対米輸出品の大半に対して、日本並みに15%の基本関税が一律で適用される可能性があると考えている。

     

    (4)「関係者らによれば、米国側は15%の水準に同意しているとみられており、EU当局者らは潜在的な合意の一環としてこれらの条件について協議を続けている。ただし合意に達することは確実ではなく、いかなる合意もトランプ氏の承認が必要になるとも強調している。米国とEUは、航空機を含む特定のセクターを基本関税から除外する措置を設ける話し合いも行っていると関係者らは述べている。トランプ氏は23日、EUとの合意が日本との合意に似たものになる可能性があることを示唆。同氏は日本との合意を称賛した後、米国は各国・地域に対して15%から50%の範囲で単純な関税を課す計画だと述べた」

     

    米国とEUの交渉当事者は、15%の関税一本化で調整が付いているという。最後は、トランプ氏の承認だけである。日本の場合も、当事者間では15%関税が1ヶ月前に合意されていたが、トランプ氏の承認が得るまで発表を待っていた。

     

    (5)「複数の関係者によると、日本との合意発表後、欧州当局者らにとっても15%の基本関税を受け入れやすくなった。日本との合意は、米国が主要貿易相手国・地域の大半に課す関税について、15%を水準とすることを示すシグナルとなった可能性がある。EUはまた、米国と合意できない場合に備えて対抗措置の準備も続けている。EU加盟国は24日、1000億ドル(約14兆6000億円)以上に相当する米国製品に対する潜在的な関税パッケージを承認する見通しで、これはEUが米国との合意を既定事実とは見ていないことを示している。EUによるこれら関税措置は、87日より前には発効しない」

     

    EUは、米国と15%関税で合意できなければ、報復案もパッケージで用意している。戦闘態勢を解かずにいる。

     

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    「あちらを立てれば、こちらが立たず」の喩え通り、欧州には新たな問題が起こっている。「超堅実財政」のドイツが、憲法で禁じられている財政赤字のGDP比0.35%規制を撤廃することに決めたことだ。国防費とインフラ投資については、前記規制から除外する。これによって、財政規律の甘い弱小国へ波及するリスクが浮上している。これが、欧州債券市場を混乱させるという危惧を呼び起こしているのだ。

    『ブルームバーグ』(3月21日付)は、「ドイツの歳出計画、周辺国債務への不安再燃させるー債券自警団始動も」と題する記事を掲載した。

    ドイツの新たな大型支出時代が欧州全域の借り入れコストを押し上げ、欧州周辺国の財政安定性に対する懸念を再燃させている。


    (1)「イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガルの10年物国債利回りは、今月初めと比較して0.3ポイント以上上昇している。欧州ソブリン債(国債)危機に苦しんだ4カ国は、今でも高い負債を抱えており金利上昇の影響を受けやすい。ドイツは長年にわたり、欧州連合(EU)における財政規律の代弁者であり、イタリアやスペインなどの国々に対して緊縮財政を迫り、共同債務の発行に反対してきた」

    ドイツは、超堅実な財政政策を取ってきたので経済成長率で、イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガルなどに抜かれ「欧州の病人」と揶揄されてきた。そのドイツが、財政緩和政策へ転じることから、前記諸国の財政緩和姿勢が問題化する事態になりそうだ。

    (2)「支出に対するより寛容なアプローチへの転換は、欧州で多くの債務を抱える諸国に負の影響を及ぼす可能性がある。M&Gインベストメンツのポートフォリオマネジャー、ロバート・バロウズ氏は、「ドイツが赤字支出を受け入れれば、他の国々も追随し、欧州全体で債務に対するより緩やかな姿勢につながる可能性がある。これは欧州諸国の国債に対する信頼を弱め、多額の債務を抱える国々の借り入れコストを上昇させる恐れがある」と指摘した。同氏は周辺国国債の保有を減らしたという」

    ドイツが、赤字支出を受け入れれば、他の国々も追随しかねない。こうなると、欧州全体で債務に対するより緩やかな姿勢になりやすいというリスクが持ち上がっている。

     
    (3)「ドイツ債の利回りも急上昇しているが、市場では欧州最大の経済であるドイツは防衛とインフラに巨額の資金を費やす余裕があるとみられている。リスクは、この動きがドイツ国外にも広がることだ。欧州の指導者たちが、他の国々にも防衛費を増やすことを認めるために予算規則を緩和する計画を支持しているためその可能性は高い。エーゴン・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、コリン・フィンレイソン氏は、「ドイツは世界で最高級の信用力を持つ国の一つであり、財政的な余裕も十分にある」が、「他の欧州諸国がドイツのやり方をまねようとした場合、広く受け入れられるとは思えない」と話した」

    ドイツは、過剰貯蓄を抱えているほどだから、財政赤字を増やして経済のバランスが取れる。他国が、不用意にドイツの真似をすると、財政赤字を増やすというジレンマを抱えている。

    (4)「リスクにさらされているのは、周辺国だけではない。フランスとベルギーの債務水準は近年急上昇しており、両国の債務残高の対国内総生産(GDP)比はスペインやポルトガルを上回っている。昨年、フランス国債が急落したことは、多額の債務を抱える国が支出を増やそうとすれば、債券市場の「自警団」が素早く復活することを示した」

    債券自警団とは、財政政策が過度に浪費的とみなされると、国債を売却して警告を発する債券投資家を意味する。具体的には、債券利回りの上昇である。これは、新規発行の際に高い金利を付けざるを得ず、資金調達コストを引上げる。


    (5)「ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)最高経営責任者(CEO)の最近の分析によると、EU加盟国のうち財政支出を大幅に増やす余地があるのはドイツ、オランダ、スウェーデン、アイルランドのみ。フランス、スペイン、ギリシャが最も脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれる可能性があるという。「ドイツがアクセルを踏み込めば、欧州全体の金利水準が上昇するだろう。債券自警団に何ができるかをわれわれは既に目撃している」と同氏はインタビューで語った。

    EU加盟国のうちドイツ、オランダ、スウェーデン、アイルランドの4ヶ国は、財政支出を大幅に増やす余地がある。だが他の国は、そういうゆとりがないのだ。これは、EUにとって見逃せない重大事である。


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    北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、この10月に10年の任期を終えて退任する。ストルテンベルグ氏は、欧州に対してウクライナ戦争が10年間は続くものと覚悟する必要があると英国BBCへ述べた。欧州が、長期戦でも戦い抜く覚悟を決めることが、逆説的だが早期に戦争を終結させると指摘。戦費は、接収したロシア資金の年間利息分500億ドルを充当する。 

    『BBC』(7月19日付け)は、「欧州は10年続くウクライナ戦争を覚悟すべきとNATO事務総長」と題する記事を掲載した。 

    今年10月に退任するストルテンベルグ事務総長は、ウクライナでの戦争が10年以上続く懸念はあるかという質問に、「ある」と答えた。そのうえで、「しかし大事なのは、ウクライナ支援を強化し、長く支援し続ける意思があれば、その方がこの戦争は早く終わるということだ」との見方を示した。

     

    (1)「ストルテンベルグ氏は、「逆説的だが、(ロシアの)プーチン大統領は、我々がこの戦争から撤退するのを待てると考えている。だから戦争が続いている」。「だからこそ、我々がじっくり腰を据えてウクライナを、強力に忍耐強く支援する用意があると明確に発信すれば、ウクライナが独立した主権国家として永らえるための解決に至る条件が整う」 

    ストルテンベルグ氏は、ウクライナ支援を強化することで、ロシアへ欧州の決意をみせなければならないと強調する。 

    (2)「NATOはこの間、ウクライナ支援を調整する指揮部隊を9月からドイツで稼働させると発表している。「これによって事態の予測可能性が高まり、責任も明確になり、支援も増強できる。NATOが今後じっくりウクライナを支えるつもりだと、明示することになる」と事務総長は説明した。「今こそ自由と民主主義のために立ち上がる必要があるし、その場所はウクライナだ」と強調した」 

    NATOは、ウクライナ支援を調整する指揮部隊を9月からドイツで稼働させると発表している。欧州が、長期戦を覚悟してウクライナを支援する姿勢を明確にする。

     

    (3)「他方でドイツはこの間、ウクライナへの軍事支援を来年度、ほぼ半減させる予算案を承認した。現在の約67億ユーロ(約1兆1457億円)から約34億ユーロ(約5814億円)に減らす見通し。ドイツのクリスティアン・リントナー財務相は、凍結したロシア資産の利子から500億ドル(約7兆8500億円)をウクライナが受け取ることで主要7カ国(G7)が合意していることから、ウクライナの資金繰りは「当面は安泰だ」と述べている」 

    欧州最大の経済大国ドイツは、ウクライナ支援を半減させるが、凍結したロシア資産の利子から500億ドルで代替させる。これで、財政負担は軽減させる。ロシアは、皮肉な結果になった。ロシア凍結資金の利息で、ロシアが攻められる事態になるからだ。 

    (4)「ウクライナへの支援をめぐっては、11月の米大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領が勝利すれば、アメリカからの資金が削減または停止されるかもしれないとの懸念が欧州で出ている。副大統領候補に、共和党内でも特に孤立外交主義傾向の強いJ・D・ヴァンス上院議員を選んだことからも、この懸念が高まっている。ヴァンス議員はかつて、「ウクライナがどうなろうと実際かまわない」と発言している。アメリカの対ウクライナ支援を声高に批判してきたヴァンス議員は、今年2月のミュンヘン安全保障会議で、アメリカは東アジアに政策の重心を「転換」しなくてはならず、そのことに欧州は目覚めるべきだとも述べている」 

    米国は、11月の大統領選しだいで共和党のトランプ氏復帰があり得る。副大統領候補のヴァンス上院議員は、トランプ氏ともどもウクライナ支援に反対している。

     

    (5)「こうした状況でストルテンベルグ事務総長は、「強いNATOはアメリカの国益にかなう」ため、アメリカはNATOに残るはずだと自信を示した。「アメリカでは連邦議会だけでなく世論調査でも、超党派でNATOを強く支持している」と事務総長は述べた。トランプ政権が復活した場合、NATOの資金が減るのかという質問には、「アメリカとNATOの関係についてどう考えるとしても、我々は自分たちの防衛に投資を拡大することが正しい対応だ」と事務総長は言い、「第一に、そうすればアメリカが強力な同盟国であり続ける可能性が高まる」と説明した」 

    NATOは、防衛費を拡大しており「強いNATO」へと転換している。米国にとっても、強力な同盟国であり続ける可能性を高める。 

    (6)「ストルテンベルグ氏は、「第二に、何か本当に悪いことが起こった場合に備えて、ヨーロッパとカナダの防衛力を強化しておくべきだ」と指摘。欧州の同盟諸国の防衛支出が不十分でアメリカに依存しすぎているというトランプ前大統領の批判は「全く正しいし妥当」だったと評価した。ただし、「今の状況は当時から変わった」とも説明した。NATO加盟諸国はそれぞれ、2024年までに、自国の対国民総生産(GDP)比で少なくとも2%を防衛費に充てると約束している。32加盟国のうち今年その目標を達成したのは23カ国。防衛費が対GDP比2.3%に達したイギリスも、そこに含まれる」

    NATO加盟32ヶ国のうち23ヶ国は、24年までに国防費を対GDP比2%へ引上げる。英国は、2.3%へ達した。

     

     

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    ドイツの極右政党AfD(ドイツのための選択肢)は、世論調査で20%台を維持するほどの支持を受けている。この背景には、ドイツ経済の深刻な不況問題がある。第一次大戦後のドイツが味わった大不況下で、ヒトラーが政権を握ったと同じ状況が起こっているのだ。AfDは、移民排撃をしたことやエネルギー危機克服で原発再開を主張するなど、世論を引きつける発言をしている。 

    ドイツでは、ヒトラー再来という危機感から数十万人がデモに繰り出し、AfD反対への意思を示した。それにしても、ドイツの民主主義はどうなっているのか。景気が悪化すれば、ポピュリズム政党の発言になびくとは哀しい話だ。日本が、太平洋戦争を決断した東条英機を礼賛するようなものである。

    『フィナンシャル・タイム』(1月22日付)は、「ドイツ極右指導者、英国のEU離脱は『自国のモデル』」と題する記事を掲載した。 

    ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のアリス・ワイデル共同党首は、同党が政権に就いた場合、欧州連合(EU)加盟について、ブレグジット(英国のEU離脱)のような国民投票の実施を目指すと明言した。その上で英国の離脱は「大正解」だったと称賛した。同氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、「これはドイツにとってのモデルであり、国はあのような主権的判断を下せるということだ」と強調した。 

    (1)「主流政党が熱烈な親EU派のドイツでは、この考え(注:EU離脱)は大きなタブーを破ることになる。また、ドイツ憲法は国民投票に厳しい制限を設けており、仮に投票が実施されたとしても、世論調査ではドイツ国民の大多数がEU残留に投票することを示している。しかし、AfDに投票する有権者の間では、EUへの支持が最も弱い。ワイデル氏の発言は、AfDへの支持が急伸していることを背景にしている。世論調査での同党の支持率は22%で、ショルツ首相の不安定な連立政権に参加しているドイツ社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党すべてをリードしている」 

    ドイツでも、EU離脱論が出ている。この背景には、ドイツの主権が制限されていることへの不満があろう。かつての「ドイツ帝国」再来を夢見ている。だが、EUのお陰で通貨「ユーロ」の恩恵を最も受けてきたにはドイツだ。マルク時代より割安に設定されているユーロで、ドイツは輸出を伸してきたことを忘れている。もう一つ、第一次・第二次の世界大戦を始めた責任だ。ドイツは、EUの中で協調することにより過去の罪を許される。日本まで戦争に巻き込んだ歴史は消えないのだ。

     

    (2)「AfDは9月にザクセン、ブランデンブルク、チューリンゲンの旧東独地域3州での重要な州議選で勝利すると見られている。もっとも、その他すべての主要政党がAfDと連立協定を組むのを拒んでいるため、権力の座への道筋ははっきりしない。ドイツの国内情報機関はAfDの大部分をなす派閥を過激派に指定し、幹部数人を監視下に置いている。それでも、同党はショルツ氏および悪化する経済の運営方法への国民の怒りから恩恵を受けている」 

    AfDは、ポピュリズム政党である。不況下で失業者が増えていることを理由に、移民反対を叫んで人気を集めている。ただ、単独で州レベルでの政府を組織できない限界がある。他党が、連立を拒否しているからだ。 

    (3)「複数のAfD議員とオーストリアの極右活動派マルティン・ゼルナー氏が昨年11月に会合を開き、物議を醸したことが報じられると、AfDはここ数日、大騒動の渦中に置かれることになった。会合では、ドイツのパスポートを所有する市民を含め、外国から移住してきた過去がある数百万人の人をドイツから強制的に「再移住」させる計画が話し合われた。ドイツの多くの都市でAfDに反対する大規模デモが開かれ、政治家は同党がドイツの民主主義制度に及ぼす危険について警鐘を鳴らした」 

    複数のAfD議員は、オーストリアの極右活動派と会合を開いたことが大騒動になっている。移民禁止を話し合ったからだ。ヒトラーが、ユダヤ人追放で悲劇を生んだ歴史と直結する。

     

    (4)「他党は、AfDとの連立や協力を一切排除する「ファイアウオール」を築くことによってAfDの脅威に対応してきた。その結果、世論調査での高い支持率にもかかわらず、同党はドイツ連邦16州で州政府を一つたりとも支配していない。ドイツ国会議事堂を見渡せ、反政府デモの喧噪が遠くに聞こえるオフィスで、ワイデル氏自身が「2029年より前」にAfDがベルリンで政権の座に就くことはないと認めた。だが、AfDが将来、政府内で一定の役割を果たすことは「避けられない」と主張し、同党のボイコットを真っ先に放棄するのは中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)だと予想した」 

    AfDは、当面の政権担当の可能性を否定している。だが、CDUはいずれAfDと連立政権を組むだろうと予測している。CDUがその間、政権につく可能性がないと前提しているようだ。CDUも甘くみられている。 

    (5)「AfDが政権を握った場合の最優先課題は何かと問われると、ワイデル氏は「効果的な国境管理を導入し、外国人の犯罪者を直ちに強制送還することだ」と答えた。さらに、税制を改革し、国家をスリム化し、化石燃料から再生可能エネルギーへのドイツの転換を打ち切るという。「フランスは15カ所もの新規原子力発電所を計画しているのに、我々は自分たちで作ることさえできない風力タービンと太陽光パネルに命運を託している」と指摘した」 

    AfDが政権を取れば、原発再開を約束している。脱原発が、エネルギー危機を生んでいることを利用したものだ。現政権は、こういうAfDの動きを警戒して、原発問題で柔軟姿勢が求められる。「ヒトラー再現」阻止には、原則論だけで対応することが困難になろう。

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