勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    スズキは、2027年にも軽自動車の電気自動車(EV)を欧州に投入する。日本で今秋に発売する軽EVを欧州の規制などに合わせ輸出するもの。日本の独自規格である軽自動車に世界で商機があるとみて、欧州勢や中国勢のEVに対抗する。一方、中国のBYDが軽自動車のEV「ラッコ」を発売し、日本の軽市場へ参入した。日本独自規格の「国民車」が、にわかに内外で注目を浴びる時代になった。

     

    欧州のEV市場は、テスラ、VW、BMW、メルセデス、ボルボなどが中心で、平均価格は日本の2倍以上である。EVの高価格化が進みすぎて、「安価なEVの空白地帯」が生まれている。ここに、軽EVの開拓余地がある。スズキ軽EVは、「欧州EVの」価格破壊者」になれる。価格帯は、1万5千〜2万5千ユーロ(予想)、欧州EVの半額で若年層・高齢者・セカンドカー需要に直撃するであろう。

     

    南欧都市部の「狭い街路」に最適化された車体サイズである。欧州の旧市街は、パリ、ローマ、バルセロナ、マドリード、リスボンなど、日本以上に道が狭い。ここでは、軽EVのサイズはむしろ「理想形」である。

     

    『日本経済新聞』(8月4日付)は、「日本発『軽』EV、欧州に商機 スズキが輸出、中国勢対抗」と題する記事を掲載した。

     

    スズキは、26年度中に湖西工場で生産を始め、国内販売するモデルを輸出する。英国やイタリアなど欧州の複数国での販売を検討している。スズキが、軽自動車をほぼそのまま輸出するのは1990年代に軽オープンカー「カプチーノ」を少量欧州に輸出して以来とみられる。

     

    (1)「詳細な発売時期や価格は、明らかにしていないが欧州でも安い水準になりそうだ。英国での価格は2万ポンド(約420万円)を下回るもようだ。日本で11月に「eスカイ」として発売する軽EVがベースとなる。同モデルは、スズキが初めて手掛ける軽EVの乗用車だ。満充電で走れる距離は310キロメートルで、サイズは「ワゴンR」に近い。国内ではより背の高い軽が売れ筋だが、輸出も見据えた形に設計した。国内モデルをほぼそのままに、一部の仕様を欧州各国の規制や道路事情などに合わせる。電池は中国・比亜迪(BYD)系から調達する」

     

    全長3.4メートル以下、全幅1.48メートル以下、全高2メートル以下といった軽自動車規格に適合した電気自動車(EV)だ。軽は、街乗り利用が多いため、航続距離に制約があるEVと親和性が高いとされる。これが、欧州で人気得られるポイントになる。

     

    軽EVが、欧州で成功し得るのは「3つの領域」とされている。

     

    1)都市部の超小型モビリティ需要(特に南欧)

    パリ、ローマ、バルセロナなどは旧市街が狭い地域に適する。交通規制が厳しく、EVが0優遇される。駐車スペースが極端に小さいのが歓迎される。ここでは、軽EVのサイズはむしろ「理想形」である。

     

    2)カーシェア・ラストマイル配送に最適 

    欧州では都市部の配送規制が強化されており、小型EVバン・軽EVの需要が急増している。これらは「小型・安価・EV」を求めている。軽EVは、低コストで導入できるEV配送車として魅力がある。

     

    3)高齢者・若年層のセカンドカー市場

    欧州は高齢化が進んでおり、「小さくて扱いやすいEV」は一定の需要がある。また、若年層は車離れし、低所得層は環境意識が強く、安価なEVは受け入れられやすい。

     

    (2)「欧州連合(EU)は25年、EVの普及を促すため新たな車両分類の導入を決めた。日本の軽を参考に、EU域内で生産する小型EVを補助金や規制対応などで優遇する。スズキの軽EVはEU域内生産ではなく、補助金などの恩恵は受けられない見通し。ただ新規格で欧州の小型EV市場が成長することで、商機が生まれるとみている。欧州で成功すれば、東南アジアなど小型車が強い市場への展開も視野に入る。調整は入ったが中期的にみて依然、円安水準の為替も追い風となる。新規格で欧州の小型EV市場が成長することで、商機が生まれるとみている。欧州で成功すれば、東南アジアなど小型車が強い市場への展開も視野に入る」

     

    欧州のEVは、高価格化が進みすぎている。市場の「下の層」が空白になっている。中国勢が、その層を狙っている。スズキは、日本の軽技術で対抗できる。つまり、軽EVは欧州の「空白地帯」を埋める武器になる。

     

     

    テイカカズラ
       

    EU(欧州連合)は、中国からのダンピング輸出の被害を受けている。EUの太陽光パネルは、中国メーカーに駆逐されてしまったほどだ。次は、EV(電気自動車)の進出でないかと恐怖感を募らせている。先に、英仏独の各首脳はそれぞれ訪中して、中国のダンピング輸出へ苦情を伝えてきたほどである。

     

    このように、EUは、中国からの被害者になっているが、専門家グループの「欧州地政学的戦略に関するタスクフォース」は、2月のリポートで「中国が輸入の80%超を欧州に頼る重要なチョークポイントは41、米国の場合はこれが67ある」と指摘した。欧州が、地政学的な対立に利用できる手段を単にマッピングするだけでも、中国へより積極的な態度を取るための一歩になる。これらの研究は、欧州の指導者らに多くの知恵も提示していると評価されている。EUの対中国攻略戦法の指南書である。

     

    『レコードチャイナ』(3月14日付)は、「対中依存、欧州は想像されているほど弱くはない―独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独国際放送局『ドイチェ・ヴェレ』中国語版サイト(3月12日付)は、欧州が中国からの経済的威圧に対抗しうる独自の交渉材料を持つとする独紙の論評を紹介した。

     

    (1)「記事は、欧州経済界が「チャイナ・ショック」に直面し、中国製品の大量流入により雇用が脅かされるとともに、対中依存度が深まる中、EUの産業戦略担当委員セジュルネ氏が「メード・イン・ヨーロッパ」計画を提唱したことを伝えた。一方で、同計画は保護主義的な色彩が濃く、中国製電気自動車(EV)との競争圧力が減れば、域内企業の技術革新意欲も低下するという弊害があると指摘。その中でも、推進派は基幹技術分野での対中依存リスクを警告し、少なくとも重要製品は域内で生産すべきだと主張していることを紹介した」

     

    EUにも、相変わらずの自由貿易論が残っている。確かに公正な競争は、「資源最適配分」をもたらすが、それは即、EUの失業者を増やす道にもなるのだ。相手国のダンピング輸出が、逆に適正資源配分を歪める恐れが強い。なまじ「理論かぶれ」していると、中国の餌食にさせられるリスクを高める。

     

    (2)「記事は、『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』紙が評論の中で、真に重要なのは域内生産の拡大ではなく、「輸入依存が一方的でないこと」だと主張したことに言及。貿易相手国も欧州の特定製品に高度に依存していれば、欧州の自主性はおのずと高まると論じたことを伝えている。また、同紙が「欧州地政学戦略タスクフォース」の研究により、機械設備や医療製品など中国が80%以上を欧州からの輸入に頼る41種類の「ボトルネック」製品が存在すると指摘し、EUが日本やカナダと連携すれば、中国に対する強力な交渉材料になるとの見解を示したと報じた」

     

    輸出入は、バランスのとれることが原則である。中国のダンピング輸出によって、一方的に貿易赤字を押しつけられるのは不公平そのものだ。中国は、25年世界貿易黒字の半分を占めている。これは、決して自由貿易の結果ではない。ダンピング輸出というまぎれもない不公平実態を浮き彫りにしている。

     

    (3)「記事によると、同紙はさらに、米国もEUの特定製品に高度に依存している点に触れ、トランプ大統領が関税で威嚇したり中国が重要中間製品の供給停止を示唆したりした場合でも、欧州には輸出停止などの対抗措置を講じる能力があると指摘。米中の間で翻弄される「駒」でいるリスクの方がはるかに大きいとして、欧州は衝突を恐れず自らの圧力手段を行使すべきだと結論づけている」


    それは、「パートナーシップの管理から力の行使へ」と視点を広げる必要性だ。EUにとっては、様々な報復措置を可能にする「反威圧措置(ACI)」の発動基準を下げることを意味する。事後的に対応するだけでなく、脅威が現実のものとなる前にACIを発動して脅威を退けるのだ。これは、たんなる受け身でなく、積極的に「やり返すこと」としている。

     

    また、利用できるのは希少な商品だけにとどまらないという教えもある。大きな消費者市場や金融市場を抱えているEUは、問題を起こす相手国からのアクセスを拒否できることも一種の影響力になると強調する。要するに、「喧嘩上手になれ」ということだ。やられっぱなしでなく、やり返せという勇ましい提言である。米国や中国のやり方を少しは見倣えということでもあろう。

     

     

     

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    中国は、焦っている。国力が目に見えて低下していく現実の中で、いかに他国へ威圧感を与えるかに腐心している。これが、レアアース(希土類)の主権宣言によって、世界の製造業を支配下におさめるという野心の表明に現れた。だが、これは逆効果になった。EU(欧州連合)は、ドイツの対中姿勢が警戒ムードになったことに合わせることになった、だが、スペインが最近、対中接近姿勢をみせており、EUの統一方針を乱すリスクも抱えている。

     

    『ロイター』(11月21日付)は、「EUの対中通商姿勢、ドイツの方針転換で強化へ

     

    12月3日に公表予定の「経済安全保障ドクトリン」はEU欧州委員会が通商防衛の手段を見直し、中国のレアアース(希土類)供給制限や米国の強硬な通商政策などの脅威に対して一段の対応が必要かどうかを判断する。

     

    (1)「中国は、政策の中心的課題となるだろう。欧州が環境保護対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)移行を推進するために必要な重要鉱物の供給を中国に依存している状況や、欧州企業が中国の補助金による輸出で不公正な競争にさらされている状況を巡る懸念が高まっているためだ。志を同じくする貿易相手国との関係を強化・深化させる政策変更を推し進めたり、あるいは報復措置を発動したりするためには結束が必要とされるだろう。これは、加盟27カ国が米国の関税政策に対する上でなかなか達成できなかったことだ」

     

    欧州は、中国の補助金による輸出で不公正な競争にさらされている状況に対して、共同で対応する体制を整備しつつある。

     

    (2)「重大なことには、域内最大の経済規模のドイツが中国に関して同調しつつある兆しが見受けられる。ドイツは1年前、中国製の電気自動車(EV)に対する関税に反対していたが「安全保障に関連する対中貿易関係」について議会に助言する専門家委員会を先週設置し、「リスク低減」戦略を復活させた。メルツ首相は今月、第6世代(6G)移動通信システムに中国企業製の部品を使用しないと表明した」

     

    ドイツが、中国に対する姿勢を融和から警戒へ変えたことで、EUは結束して対応可能となってきた。

     

    (3)「さらに、ドイツが長年の重視していた自由貿易の原則を覆し、欧州の鉄鋼産業の保護を訴えた。クリンクバイル副首相兼財務相は今週訪中し、中国のレアアース輸出規制や産業の過剰生産能力に懸念を示した。上海でロイターに「自由で開かれた市場を支持するが、欧州やドイツが敗者になるのは望まない」と語った。中国側の何立峰副首相はクリンクバイル氏と共同記者会見した際、中国が「公正かつ公平で差別のないビジネス環境の促進」に協力して取り組むと述べた」

     

    中国のレアアース輸出規制によるレアアース主権宣言は、EUを心底から中国への警戒姿勢を高めている。

     

    (4)「中国は景気減速のために、ドイツにとってもはやかつてのような安定した輸出市場でなくなっている。EUのモノの対中貿易赤字は、2019年以降約60%拡大し、ドイツの対中貿易収支は23年に黒字から赤字に転じ、赤字幅が拡大し続けている。EU首脳は10月、不公正な貿易に対抗するため、中国から大量に届く低価格小包に対する関税免除の終了を早めることなどEUの経済手段を効果的に活用するべきだという点で合意した」

     

    EUもドイツも、そろって対中貿易で赤字幅を拡大している。中国製品のダンピングがもたらした結果だ。

     

    (5)「欧州委が12月に発表するドクトリンは、輸出規制、投資審査、外国補助金の制限などを強調すると見込まれる。最終的な切り札は「反威圧措置規則(ACI)」で、輸出入や投資、公共調達へのアクセスを制限できる。ドイツのシンクタンク・メルカトル中国研究所のジェイコブ・ギュンター氏は、ドイツの強硬姿勢は状況を一変させる要因となり得るためEUがより強い行動を取ることができるようになる、と述べた」

     

    EUは、「反威圧措置規則(ACI)」で中国からの経済アクセスを制限できる。ACIとは、第三国がEUやその加盟国に対して、経済的手段を使って政治的な圧力をかける行為(経済的威圧)に対抗するための法的枠組みだ。

     

    2023年10月にEU理事会で正式に採択され、2023年12月に施行された。第三国が、貿易・投資などの手段を使って、特定の政策変更や行動を強制しようとする行為を禁じる。中国の対リトアニア制裁や、米国の一方的な関税措置などが契機になった。中国対抗への切り札になる。日本も、ACIを導入すれば、中国の圧力を跳ね返すことができよう。

     

    (6)「欧州委のシェフチョビッチ委員(貿易・経済安全保障担当)は先月、EUが「実質的な投資」を求めていると述べた。しかし、ドイツが中国に対してこれまでよりも冷淡になると同時に、スペインは再生可能エネルギー、EV電池、鉱業の分野で中国投資を受け入れようとしている。スペインの豚肉業者も貿易協定によって販売を拡大できる上に、中国が反ダンピング調査で他のEU諸国よりも関税を低く抑えた恩恵を受けている。米シンクタンクのロジウムグループのノア・バーキン氏は、スペインの対中政策について欧州委、ドイツ、フランスで築かれた欧州のコンセンサスからますますかけ離れていると述べた。「『スペイン・ファースト』の姿勢はEUがレアアースや半導体メーカーのネクスペリアを巡る中国の経済的圧力に直面する重要な時期に結束を損なうリスクをもたらしている」と語った」

     

    皮肉なもので、ドイツが中国へ厳しい姿勢をみせる一方、スペインが「親中姿勢」に転じた。スペインは、中国の甘い「誘惑」に乗せられたのであろう。いずれ、ドイツ同様に目が覚める時期が来るのだ。

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    トランプ米大統領が、推進する世界貿易の新基準を今、より明確な形を見せ始めている。米国と欧州連合(EU)の当局者は、15%の関税合意の可能性に向けて歩み寄っており、米国と日本が結んだ同様の合意に続く可能性出てきた。数カ月にわたる各国・地域との貿易交渉は、日本とEU二つの進展によって、転換点を迎えようとしている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月24日付)は、「トランプ関税、15%が新基準 日本が先例に」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ氏が、自ら設定した8月1日の貿易合意期限まで1週間を切る中、まだ不確定要素も多く残っている。

     

    (1)「米国は、主要貿易相手国であるカナダとメキシコと合意に達していない。来週までに合意に達しなければ、それぞれ35%と30%の関税が課される可能性がある。両国には現在、一部製品を除いて25%の関税が適用されている。また中国と合意した関税を巡る90日間の休戦により、中国からの対米輸出に対する追加関税は30%に引き下げられた。これは全ての輸入品に対する10%の課税を含めた水準だが、8月12日には対中関税が再び引き上げられる可能性もある」

     

    米国は、隣国のカナダとメキシコとの交渉は進んでいない。中国も、8月12日には関税が再び引き上げられる可能性もあるという。

     

    (2)「より高い関税は米国の消費者向け商品の価格を押し上げるとエコノミストらはみている。トランプ氏の貿易戦争の中で国内経済は回復力を示してきたが、今後は逆風を受ける可能性もある。米プリンストン大学の国際経済学教授、ジーン・M・グロスマン氏は、「関税として15%は非常に大きな数字だ。他国に対してもこの水準になれば、われわれは高コストの新たな世界に入ることになる」と述べた」

     

    米国は、高関税によって高コストの世界へ入るという警戒観が強まっている。

     

    (3)「ジェフリーズの米国担当チーフエコノミスト、トーマス・シモンズ氏は、15%程度の関税であっても、米国の消費者にとって自動車価格の上昇につながる可能性が高いとした。自動車セクターの行方は米国とEUの貿易協議においても争点となっており、EUは米政府による現行25%の関税を引き下げようとしている。複数の関係者によれば、欧州当局者らは米国との合意で、EUの対米輸出品の大半に対して15%の基本関税が一律で適用される可能性があると考えている。この水準はトランプ氏が今年から関税を引き上げる前に設けられていた関税に上乗せされることはない。現在協議されている15%の関税率は、平均するとEUが直面している実際の水準よりもそれほど高いものではないと関係者らは述べた。15%の基本関税は自動車に適用されるが、現在、50%の関税が課されている鉄鋼とアルミニウムには適用されない見通しとなっている」

     

    EUは、対米輸出品の大半に対して、日本並みに15%の基本関税が一律で適用される可能性があると考えている。

     

    (4)「関係者らによれば、米国側は15%の水準に同意しているとみられており、EU当局者らは潜在的な合意の一環としてこれらの条件について協議を続けている。ただし合意に達することは確実ではなく、いかなる合意もトランプ氏の承認が必要になるとも強調している。米国とEUは、航空機を含む特定のセクターを基本関税から除外する措置を設ける話し合いも行っていると関係者らは述べている。トランプ氏は23日、EUとの合意が日本との合意に似たものになる可能性があることを示唆。同氏は日本との合意を称賛した後、米国は各国・地域に対して15%から50%の範囲で単純な関税を課す計画だと述べた」

     

    米国とEUの交渉当事者は、15%の関税一本化で調整が付いているという。最後は、トランプ氏の承認だけである。日本の場合も、当事者間では15%関税が1ヶ月前に合意されていたが、トランプ氏の承認が得るまで発表を待っていた。

     

    (5)「複数の関係者によると、日本との合意発表後、欧州当局者らにとっても15%の基本関税を受け入れやすくなった。日本との合意は、米国が主要貿易相手国・地域の大半に課す関税について、15%を水準とすることを示すシグナルとなった可能性がある。EUはまた、米国と合意できない場合に備えて対抗措置の準備も続けている。EU加盟国は24日、1000億ドル(約14兆6000億円)以上に相当する米国製品に対する潜在的な関税パッケージを承認する見通しで、これはEUが米国との合意を既定事実とは見ていないことを示している。EUによるこれら関税措置は、8月7日より前には発効しない」

     

    EUは、米国と15%関税で合意できなければ、報復案もパッケージで用意している。戦闘態勢を解かずにいる。

     

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    「あちらを立てれば、こちらが立たず」の喩え通り、欧州には新たな問題が起こっている。「超堅実財政」のドイツが、憲法で禁じられている財政赤字のGDP比0.35%規制を撤廃することに決めたことだ。国防費とインフラ投資については、前記規制から除外する。これによって、財政規律の甘い弱小国へ波及するリスクが浮上している。これが、欧州債券市場を混乱させるという危惧を呼び起こしているのだ。

    『ブルームバーグ』(3月21日付)は、「ドイツの歳出計画、周辺国債務への不安再燃させるー債券自警団始動も」と題する記事を掲載した。

    ドイツの新たな大型支出時代が欧州全域の借り入れコストを押し上げ、欧州周辺国の財政安定性に対する懸念を再燃させている。


    (1)「イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガルの10年物国債利回りは、今月初めと比較して0.3ポイント以上上昇している。欧州ソブリン債(国債)危機に苦しんだ4カ国は、今でも高い負債を抱えており金利上昇の影響を受けやすい。ドイツは長年にわたり、欧州連合(EU)における財政規律の代弁者であり、イタリアやスペインなどの国々に対して緊縮財政を迫り、共同債務の発行に反対してきた」

    ドイツは、超堅実な財政政策を取ってきたので経済成長率で、イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガルなどに抜かれ「欧州の病人」と揶揄されてきた。そのドイツが、財政緩和政策へ転じることから、前記諸国の財政緩和姿勢が問題化する事態になりそうだ。

    (2)「支出に対するより寛容なアプローチへの転換は、欧州で多くの債務を抱える諸国に負の影響を及ぼす可能性がある。M&Gインベストメンツのポートフォリオマネジャー、ロバート・バロウズ氏は、「ドイツが赤字支出を受け入れれば、他の国々も追随し、欧州全体で債務に対するより緩やかな姿勢につながる可能性がある。これは欧州諸国の国債に対する信頼を弱め、多額の債務を抱える国々の借り入れコストを上昇させる恐れがある」と指摘した。同氏は周辺国国債の保有を減らしたという」

    ドイツが、赤字支出を受け入れれば、他の国々も追随しかねない。こうなると、欧州全体で債務に対するより緩やかな姿勢になりやすいというリスクが持ち上がっている。

     
    (3)「ドイツ債の利回りも急上昇しているが、市場では欧州最大の経済であるドイツは防衛とインフラに巨額の資金を費やす余裕があるとみられている。リスクは、この動きがドイツ国外にも広がることだ。欧州の指導者たちが、他の国々にも防衛費を増やすことを認めるために予算規則を緩和する計画を支持しているためその可能性は高い。エーゴン・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、コリン・フィンレイソン氏は、「ドイツは世界で最高級の信用力を持つ国の一つであり、財政的な余裕も十分にある」が、「他の欧州諸国がドイツのやり方をまねようとした場合、広く受け入れられるとは思えない」と話した」

    ドイツは、過剰貯蓄を抱えているほどだから、財政赤字を増やして経済のバランスが取れる。他国が、不用意にドイツの真似をすると、財政赤字を増やすというジレンマを抱えている。

    (4)「リスクにさらされているのは、周辺国だけではない。フランスとベルギーの債務水準は近年急上昇しており、両国の債務残高の対国内総生産(GDP)比はスペインやポルトガルを上回っている。昨年、フランス国債が急落したことは、多額の債務を抱える国が支出を増やそうとすれば、債券市場の「自警団」が素早く復活することを示した」

    債券自警団とは、財政政策が過度に浪費的とみなされると、国債を売却して警告を発する債券投資家を意味する。具体的には、債券利回りの上昇である。これは、新規発行の際に高い金利を付けざるを得ず、資金調達コストを引上げる。


    (5)「ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)最高経営責任者(CEO)の最近の分析によると、EU加盟国のうち財政支出を大幅に増やす余地があるのはドイツ、オランダ、スウェーデン、アイルランドのみ。フランス、スペイン、ギリシャが最も脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれる可能性があるという。「ドイツがアクセルを踏み込めば、欧州全体の金利水準が上昇するだろう。債券自警団に何ができるかをわれわれは既に目撃している」と同氏はインタビューで語った。

    EU加盟国のうちドイツ、オランダ、スウェーデン、アイルランドの4ヶ国は、財政支出を大幅に増やす余地がある。だが他の国は、そういうゆとりがないのだ。これは、EUにとって見逃せない重大事である。


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