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中国は、一帯一路で発展途上国を「債務漬け」にして担保を取り立てる無慈悲な貸付けを行ってきた。それが今、不良債権となって中国へのブーメランとなっている。中国が、膨大な焦げ付け債権を抱え込む結果になったのだ。スリランカもそういう対象国の一つである。

 

英国を拠点とする慈善団体「デット・ジャスティス」の4月11日発表の調査では、91カ国の低所得国などによる対外公的債務の返済は23年、平均で政府の歳入の16%以上を占め、24年には約17%に上昇する。この数字は、1998年以来の高い水準であり、債務の整理は一刻の猶予もならない状態だ。

 

これに対して中国は、国際機関のIMF(国際通貨基金)や世界銀行に債務を押しつけて、中国の負担を軽くする「奇策」を編み出したが、強い反対で撤回せざるを得なくなった。中国がこういう醜態を演じたのは、背に腹は代えられないほど、経済的に追い詰められている結果だ。

 

『日本経済新聞 電子版』(4月12日付)は、「スリランカ債務再編 日本主導で新枠組み 中国対応焦点」と題する記事を掲載した。

 

2022年5月にデフォルト(債務不履行)状態に陥ったスリランカの債務再編を進めるため、日本が主導して債権国会議を立ち上げる。日本、インド、フランスなどが13日に表明する。2国間融資で最大の債権を握る中国にも参加を呼びかける。米欧の利上げで深刻度を増す中所得国の債務問題の解決に向けた先行事例となる可能性がある。

 

(1)「スリランカは、新型コロナの感染拡大以降、中所得国として初めてデフォルトに陥った。債務危機は低所得国以外にも広がっている。日本主導の枠組みで債務再編が円滑に進めば今後の債務再編のモデルにもなりうる。スリランカも債務の重みが減ることで、インフラ開発や気候変動対応といった新たな投資に踏み出しやすくなる。発足イベントには鈴木俊一財務相のほか印仏の高官が参加する。スリランカのウィクラマシンハ大統領もオンラインで参加する見通しだ」

 

中国が、途上国の債務再編問題を巡り国際開発金融機関も損失を負担すべきとの要求を取り下げる見通しとなった。中国が、こういう無法な要求を出していた理由は、最大の債権国中国の負担を国際機関に肩代わりさせる意図であった。それが強い反対の壁に阻まれ、ついに撤回せざるを得なくなった。この結果、途上国の債務整理交渉の進展を阻んできた、大きな障害が解消する。中国は、それだけ負担が増える計算だ。

 

(2)「国際通貨基金(IMF)や世界銀行など国際機関のほか、民間も加わり債務再編に向けた協議をする。第1回会合の開催時期を今後関係者で調整する。スリランカへの2国間融資で最大の債権国は、22年6月時点で全体の52%にあたる73億ドル分の債権を握る中国だ。日本が20%、インドが12%、フランスが3%で続く。中国が債務の減免に難色を示し、問題の解決に時間を要してきた。中国にも会合への参加を呼びかけると見られ、同国の判断が焦点になる」

 

IMFや世銀が債務再編に立ち会うのは、各国の交渉がスムーズに進むようにという役割である。中国は、この「行司役」のIMFや世銀に、債務を押しつける策略を練ったもの。見当違いもいいところだ。スリランカの場合、中国の債権は全体の52%で過半を占める。日仏印は35%にすぎない。この「少数債権者」が音頭を取って、スリランカの債務整理に乗り出すのだ。中国のメンツは、丸つぶれであろう。

 

(3)「新興国の債務問題を巡っては、20カ国・地域(G20)が20年、「共通枠組み」と呼ばれる制度を導入した。IMFなどが主導して債務の一部免除を進めやすくする仕組みだが、対象が低所得国に限られている。新型コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻に端を発した物価高で新興国を取り巻く環境は厳しさを増している。世界銀行によると、新興国の対外債務は21年末に9兆ドル(1200億円)と、10年前の2倍以上に増えた。スリランカは主力の観光業収入が新型コロナウイルス禍で急減。中国などから借り入れたインフラ整備資金が返済できず、22年5月に事実上のデフォルトに陥った」

 

インドは今年、G20議長国である。この関係もあって、IMF、世界銀行、インドが共同議長を務める「グローバル・ソブリン・デット・ラウンドテーブル」が、途上国の債務再編加速を目的としている。インドとしては、スリランカが友好国でもあり経済的苦境の解決に乗り出す形だ。日本も日印関係の立場から支援する。相当の債権減免は不可避である。同じ比率の減免になれば、中国の負担が最大になる。