勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: フィリピン経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    中国は、問答無用の外交姿勢を取っている。中国外務省は11日、フィリピンのテオドロ国防相と家族に中国への入国を禁止するなどの制裁を科すと発表した。テオドロ氏は、「中国に関する誤った主張を繰り返し、中国の正当な利益を損ない、中比関係を破壊した」と非難した。中国は、自国にとって気に入らない発言を行えば,直ぐに入国禁止措置を取っている。フィリピン国防相だけでなく家族も入国禁止という。家族は、無関係のはずであるが「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という類いの話である。

     

    中国が,ここまで神経過敏になっているのは、南シナ海を巡る情勢が、中国に不利になってきているからであろう。フィリピンは、日本と積極的な外交関係を結んでおり、自衛隊の中古護衛艦の導入も検討中である。これまでのフィリピン劣勢状態が、次第に盛り返しており、中国は強硬姿勢を打出すことでフィリピンを牽制するつもりなのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月11日付)は、「中国、フィリピンのテオドロ国防相を入国禁止に 『中比関係を破壊』」

     

    中国外務省は11日、フィリピンのテオドロ国防相と家族に中国への入国を禁止するなどの制裁を科すと発表した。

     

    (1)「テオドロ氏を「中国に関する誤った主張を繰り返し、中国の正当な利益を損ない、中比関係を破壊した」と非難した。中国国内の組織、個人との取引や協力も禁じた。中国外務省の毛寧報道局長は2日、テオドロ氏が5月末に中国を「深刻な脅威だ」などと発言したことについて、両国の関係と相互信頼を著しく損なっていると批判した。中国政府は日本とフィリピンが5月28日の首脳会談で、排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の海洋境界を画定する交渉に入ると合意したことにも反発する。日比のEEZは台湾の東側の海域で重なる部分があるとみられる」

     

    テオドロ氏は、5月下旬に開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)に合わせて行ったロイター通信のインタビューで、フィリピンが中国から「深刻な脅威」にさらされているとの認識を表明した。中国外務省報道官が6月2日の記者会見で、テオドロ氏の発言に関し「両国関係と相互信頼を著しく損なっている」と反発。フィリピン側に「政府関係者の言動を厳格に管理」することを求めていた。

    一方、フィリピンのマルコス大統領は6月1日、ベトナム の最高指導者トー・ラム共産党書記長 兼国家主席によるフィリピン国賓訪問を受け、両国が関係を強化された戦略的パートナーシップへと格上げし、南シナ海の平和と安定に対する共通のコミットメントが「譲れない」ことを再確認したと述べた。比越の最高指導者は、中国に対して「譲歩」できないと強硬姿勢を取っている。こうした状況からみると、フィリピン国防相発言は、決して不規則発言でなく現状を踏まえた発言である。

     

    中国は、なぜここまで過剰反応するのか。背景には3つの心理が考えられる。

     

    1)南シナ海での「自信喪失」である。フィリピンは、米国と急速に接近し、 日本とも海洋境界交渉を開始する。こうして中国は、南シナ海での主導権を失いつつあり、 「追い詰められた側の反応」が強く出ている。

     

    2)国内向けの「強硬姿勢アピール」である。経済低迷・若者失業・人口崩壊で国内不満が高まっている中で、 外交面で強硬姿勢を取ることが政権の対面を保つことになるからだ。

     

    3)日本・フィリピンの接近への恐怖である。 日本とフィリピンが、EEZ画定交渉に入ったことに中国は強く反発している。日本とフィリピンが組むと、中国は南シナ海で不利になるという懸念だ。もともと、中国の南シナ海占拠は不法である。中国が不法行為を働きながら他国を威嚇するのは、「言語道断」というべきであろう。

     

    中国の心理状態は、長期的な混乱の前兆とみられる。経済は縮小傾向である。国内は不満増大が顕著である。不法占拠している南シナ海が外交の争点になると、中国の国際的孤立が進むはずである。その結果、 外交での過剰反応(入国禁止・制裁)が増えるであろう。これは、中国の「衰退前兆」として捉えるべきである。

     

    南シナ海の力学は、すでに「中国が攻める側」ではなく、「守勢に追い込まれた側」へ完全に転換している。 そして、中国の「利権を守ろうと必死」な心理状態が、今回のフィリピン国防相への入国禁止措置にも表れている。中国の「勢い」は落ちている。


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    日本政府と国際協力機構(JICA)は東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国のエネルギー供給網の強化に乗り出す。フィリピンを「最優先支援国」に指定し、今夏にも官民の石油備蓄設備や制度などの課題を調査する。経済産業省が中心となり、国際シンクタンクの東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)、エネルギー・金属鉱物資源機構、国際協力銀行、国際協力機構などがチームとなってフィリピンを訪問する。千代田化工建設や商社など民間企業も参加する。調査対象国は、

     

    日本が「POWER Asia100億ドル支援」を決め、ASEAN首脳会談も承認した件である。調査期間は1年間を見込む。外交関係や民間企業の活動に影響が出ない範囲で公表することも検討するとしている。これまで、中国が石油製品として輸出してきた関係だけに、情報公開は限定される。フィリピン、ベトナム、インドネシア、タイの4カ国を支援対象にする。「最優先」がフィリピンで、ベトナムを「優先支援国」と定める。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月6日付)は、「石油備蓄支援でフィリピン『最優先』 政府、26年夏にも調査開始へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「フィリピンは原油の調達のほとんどを中東に依存しており、米国とイランの武力衝突後に国家エネルギー非常事態を宣言した。備蓄制度は整備されておらず、製油所は1カ所しかない。このため、フィリピンを「最優先支援国」とした。「優先国」のベトナムも備蓄体制が不十分とみる。日本向けの医療物資のサプライチェーン(供給網)の重要拠点のひとつで、安定した医療サービスの提供のため支援が欠かせない。石油備蓄インフラが乏しいカンボジアやラオスはタイとベトナムに石油供給を依存している。タイとベトナム両国の調査を通じて課題を洗い出す。エネルギーの自給度が高いマレーシアは文献調査にとどめる」

     

    日本政府は、フィリピンを「最優先支援国」として原油備蓄体制を調査する。次は、「優先国」のベトナムの基礎調査に入る。インドネシアとタイは、調査対象という位置づけである。

     

    (2)「支援に乗り出す背景にはASEANが中国と経済の結びつきを強めている現状がある。石油の国家備蓄制度を持つ日本として、エネルギー安全保障の分野で中国と異なる価値を示す意図がある。日本から原油や石油を直接供給することは想定していない。現地の石油備蓄制度について調べ、製油所の立地や処理能力、老朽化の状況などを分析する。備蓄用タンクの容量や状態、用地拡大の余裕なども確認する。港湾やターミナルの立地、入港できるタンカーの大きさも調査する」

     

    日本から原油や石油を直接供給することは想定していないという。現地の石油備蓄制度について調べ、製油所の立地や処理能力、老朽化の状況などを分析する。これは、建前上の話である。製油所の立地や処理能力が低く、設備が老朽化しているから石油製品の供給不足が起っている。いくら調査をしても対応策が出なければ問題解決にはならない。日本は、極めて慎重に対応している。相手国からの具体的提案に従って対応するのであろう。「押しつけ」を控えるのだ。

     

    (3)「域内のエネルギー協力や備蓄の運用ルールに課題がある可能性がある。備蓄に関する法律が整っているかや国家備蓄と民間備蓄の内訳、管理体制などを見る。緊急時に放出を決める意思決定のプロセスも対象だ。原油の調達から石油製品の流通までのサプライチェーンにも着目する。代替航路があるかや、そこを通航した場合のコストを算出する。日本に向けて輸出されている医療用の手袋や透析回路など、医療・産業界への影響を明らかにする」

     

    原油の調達から石油製品の流通まで、サプライチェーンにも着目する。代替航路があるかや、そこを通航した場合のコストを算出する。小型の製油所を各国に作っても高コストでは競争力がない。結局、各国の自国製油と日本による代替製油のコスト計算もするのだろう。日本は、押しつけがましくならないよう対応するのであろう。

     

     

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    中国の秦剛国務委員兼外相は4月22日、フィリピンでマナロ外相と会い、両国が領有権をめぐり対立する南シナ海問題などを協議した。フィリピンは、マルコス大統領が昨年6月に就任して以降、南シナ海における中国漁船の活動や中国の「攻撃的行動」について外交的抗議を繰り返し行ってきた経緯がある。秦外相は冒頭、両国が協力して友好の伝統を継続し、連携を深め、立場の違いを適切に解消する必要があると指摘した。

     

    中国は台湾有事になった際に、米国とフィリピンが軍事協力することを警戒している。米比両国の接近を阻もうと巻き返しに動いている。すでに米比両国は、対中戦略で動き出しているのだ。中国は、約束した支援をフィリピンに行わなかったことで、信頼関係にひび割れを起こしたのが米比接近の原因である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月22日付)は、「中国、米フィリピン接近を警戒 台湾有事にらみ巻き返し」と題する記事を掲載した。

     

    中国は南シナ海のほぼ全域を囲む「九段線」の内部で管轄権(事実上の主権)があると主張してきた。国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年に九段線に国際法上の根拠がないと認定した後も、域内の軍事拠点化を止めていない。

     

    (1)「南シナ海を巡る対立を抱えつつも、中国は経済協力などでフィリピンとの関係改善に動いてきた。1月に習近平国家主席がマルコス氏を北京に招き、天然ガス開発の協力などで一致した。フィリピンは中国から228億ドル(約3兆円)の投資を誘致した。背景にはフィリピンが米国に接近していることへの危機感がある。習氏の事実上の公約である台湾統一の実現に向けて武力侵攻が必要と判断した場合、米比の軍事協力が大きな障害になり得るからだ」

     

    フィリピンは、中国から228億ドル(約3兆円)の投資を誘致するが、実行されるかどうかがポイントだ。中国は大風呂敷を広げても、実行しないで信頼を裏切ってきたケースが多々あるのだ。

     

    (2)「米比は軍事同盟を結んでおり、14年の防衛協力強化協定(EDCA)によって米軍の巡回駐留が可能になった。23年4月の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)では米軍がフィリピン国内で使える拠点を5カ所から9カ所に増やすと確認した。このうち2カ所はルソン島北部のカガヤン州にある海軍基地と空港だ。同島北端と台湾の最南端はおよそ350キロメートルしか離れていない。台湾有事になれば米軍の艦艇や戦闘機への燃料補給などに活用する可能性がある」

     

    米比は、外務・防衛の「2+2会議」を行っている。米比両国は、中国の強引な行動に警戒を強めている。フィリピンは、日本とも「2+2会議」を行った。台湾問題をめぐって、密接な関係を構築している。

     

    (3)「4月11日に始まった米比の定例軍事演習「バリカタン」は、台湾有事や南シナ海での中国の海洋進出を見すえ、過去最大規模の1万7600人以上が参加している。マルコス氏は51日、ワシントンでバイデン大統領と会談する見通しだ。中国は、米比首脳会談を前に巻き返しに出るが、両国の分断は容易ではない。22年6月に大統領に就任したマルコス氏は、中国に融和的だったドゥテルテ前大統領の路線を修正し、米国との安全保障協力を加速してきた。マルコス政権も南シナ海の領有権問題を抱え、中国を過度に刺激するのは避けたいのが実情だ。フィリピンにとって中国は最大の輸出先国で経済面の結びつきも強い。同盟関係にある米国を重視しつつ、中国にも配慮するバランス外交を余儀なくされている」

     

    中国は、豪州やフィリピンに対して高圧姿勢をとり、南米やアフリカという中国の安全保障と関係の薄い地域へ肩入れしてきた。これは、外交的にも大失敗であり、対中包囲網を作らせる結果になった。何を考えていたのか、常識では理解不能な面がある。中国の世界網づくりに躍起になり、足元を固めなかったのだ。

     

    ジャンピエール米大統領報道官は4月20日の声明で、バイデン大統領が5月1日にホワイトハウスでフィリピンのマルコス大統領と会談すると発表した。南シナ海の実効支配を進める中国への対応を協議し、経済協力も深める。

     

    中国が南シナ海に加え、フィリピンに近い台湾周辺でも威圧的な行動を続けており、中国を念頭に防衛協力を深める目的だ。ジャンピエール氏は、「地域の課題を話し合って国際法を支えたり、自由で開かれたインド太平洋を推進したりする取り組みで連携する」と強調した。中国が米比会談の共通話題であることを示唆している。中国のフィリピン接近は、時すでに遅しという印象だ。

     

     

     

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