習近平氏は、自国経済が左前になっているにもかかわらず、西側諸国への対抗心は衰えるどころかますます執念を燃やしている。習氏の個人的利益を守るためにも、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)の加盟国を増やして、その旗頭に収まろうとしているのだ。それが、中国国内での自身の立場を強化すると踏んでいるのであろう。
『フィナンシャル・タイムズ』(8月21日付)は、「BRICS拡大でG7に対抗を 中国が呼びかけ」と題する記事を掲載した。
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国(BRICS)は22〜24日、南アのヨハネスブルクで首脳会議を開く。この10年余りで最大規模となる加盟国の拡大について各国首脳が議論するなかで、中国は主要7カ国(G7)に対抗できる勢力となるようBRICSに迫るとみられる。
(1)「事情に詳しい複数の当局者によると、南アのラマポーザ大統領は、BRICSの拡大会合に60カ国以上の首脳を招待している。会合では複数の国がBRICS加盟を打診される可能性があるという。首脳会議を前に、インドは加盟国拡大を巡って中国と対立している。中印の立場に詳しい関係者によると、BRICSは途上国の経済的利益を追求する非同盟の立場であるべきだとするインドと、欧米諸国に公然と挑戦する政治的勢力であるべきだという中国の間で緊張が高まっている。南ア当局者によれば、23カ国が加盟に関心を示している」
インドは、中国と国境紛争を抱えている。外交関係では、ことごとくさや当てを演じているのだ。「クアッド」(日米豪印)によって、対中戦略に加わっている以上、中国の野望を見過ごすことはできない立場にある。BRICS参加国は、5カ国の合意が前提である。1カ国でも反対があれば、加盟できないシステムになっている。
(2)「匿名を条件に取材に応じた中国当局者の1人は「世界の国内総生産(GDP)に占めるBRICSの割合がG7と」同程度まで拡大すれば、世界におけるBRICSの発言力はさらに強まるだろう」と語った。南アのパンドール国際関係・協力相(外相)は8月、BRICSの拡大を反欧米と考えるのは「大きな誤り」だと指摘した。だが、欧米側はイランやベラルーシ、ベネズエラが加盟した場合、中ロの同盟国を受け入れる動きとみなす可能性が高い。アルゼンチン、サウジアラビア、インドネシアは、2010年に南アが当初の「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国)」に加入して以来初となる新規加盟国の座を競い合っている」
アルゼンチン、サウジアラビア、インドネシアは、加盟に強い熱意を見せているという。
(3)「ブラジルのルラ大統領は最近、BRICSの参加枠を隣国アルゼンチンやベネズエラ、さらにはサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)に広げることに支持を表明している。ブラジルのある外交当局高官によれば、同国は加盟国拡大の基準として明確な条件の確立を望んでいる。その一つとして考えられるのは、上海に本部を置く新開発銀行(通称BRICS銀行)への加盟を求めることだ。サウジはBRICS銀行の9番目の加盟国となるための交渉に入っている。「(BRICSへの))新規加入にあたって基準を定義することが重要だ」と、この外交官は語った。(BRICS加入を申請しているとされる)23カ国すべてが同時に加わる可能性は低いが、「候補国は(加入申請についての)決定が下された理由を理解し、いずれ拡大が実現した場合に優先課題を把握できるようにする必要がある」という」
BRICS銀行加盟をBRICS参加条件にするという案も出ている。ただ、BRICS銀行は、加盟してもたいしたメリットもなさそうだ。この種の銀行が乱立しているからだ。
(4)「首脳会議の事前協議を取り仕切った当局者らは、新規加盟国の受け入れ基準策定にはBRICS首脳の合意が必要になると指摘している。また、加盟国の間で米ドルの優位性に不満が高まっているものの、BRICS共通通貨は議題にあがっていないという。協議に詳しい当局者らによると、首脳会議では「脱ドル化」を幅広く推進することではなく、BRICS加盟国間の貿易決済における自国通貨の利用拡大に合意を求めることが焦点になる可能性がある」
中国は、背伸びしてことを構えているが愚かなことを行っているものだ。自国経済の建直しに全力を挙げる時期である。