勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース時評

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    韓国左派は、日本へ難癖を付けることが「生きがい」のように行動を続けている。「少女像」を世界中にバラマキ、日本の評価を落とすことを目的としているからだ。その韓国は、北朝鮮とロシアが軍事同盟を結んで対峙し、安全保障を脅かされる事態になっている。韓国の救いは、日本との協力である。こういう大きな時代転換の中で、日本の体面を汚す韓国左派の振る舞いは理解し難い行動である。 

    これまで、ドイツ・ベルリン市は韓国の少女像設置を認めてきた。事情がよく分らずに設置を許可したが、ついに撤去させることになった。これに付随して慰安婦教育プログラム支援も取り止める方向である。日韓が敵対関係にあるならば、こういう一連の「反日行為」をする背景が存在するのであろうが、現在は「友好国」になっている。その日本へ、敵対行動を続ける韓国左派とは一体、何者なのか。不可思議な存在である。

     

    『ハンギョレ新聞』(8月6日付)は、「『少女像撤去の危機』のベルリン、『慰安婦』教育プログラムにも支援中断」と題する記事を掲載した。 

    ドイツのベルリンに設置された「平和の少女像」(以下少女像)が撤去の危機に直面した中、ベルリン市長が日本政府との軋轢(あつれき)を懸念し、市民団体の「慰安婦」教育プログラムに対する支援も中断するために圧力を加えたというドイツ現地メディアの報道が出た。 

    (1)「ドイツの公共放送である「ベルリン=ブランデンブルク放送(RBB)」は8月3日(現地時間)、ベルリンのカイ・ウェグナー市長がドイツの市民団体「コリア協議会」が申請した8万7000ユーロ(約1390万円)規模の「慰安婦」教育プログラムへの支援を許可しないよう影響を及ぼしたと報道した。同放送はある消息筋の話として、ウェグナー市長が市のプログラムへの支援の可否を最終決定する諮問委員会のある委員に連絡し、日本政府と軋轢が生まれかねないとして、コリア協議会の申請を断るよう求めたと報じた」 

    岸田首相とドイツのショルツ首相は7月ベルリンで会談し、経済安全保障と防衛分野の協力を前面に押し出して協力強化する状況にある。こういう中で、ドイツ政府が韓国左派の反日政治運動へ協力するはずがない。国際情勢の変化がもたらした結果だ。

     

    (2)「コリア協議会は、ベルリン市が支援する文化教育のための基金を申請したが、4月に脱落した。諮問委員会は、ベルリン市上院など市政府の内部委員と外部委員で構成される。評価過程で審査団はコリア協議会プロジェクトへの支援を推薦したという。しかし、ウェグナー市長が諮問委員会に連絡した後に行われた表決で、コリア協議会のプロジェクトは支援対象から除外された。コリア協議会が基金支援対象から除外された後の5月、ウェグナー市長は日本の上川陽子外相と面会した際、「変化を作ることが重要だ」として少女像の撤去を示唆する発言をし、少女像撤去を求める主張を後押しした」 

    ベルリン市長といえば、日本の東京都知事にあたる。ドイツ政府の国際的な立場を深く理解しているはずだ。日本政府が忌避する「少女像」やそれにまつわるプログラムをベルリン市長が受入れる政治状況でなくなったのだ。日本の民間団体が、仮にソウルで「嫌韓運動」を始めるに当たり補助金を申請しても受理されるはずがない。あくまでもやりたいならば、自己資金で立ち上げるべきだろう。 

    (3)「諮問委員会の決定には、日本大使館も影響を及ぼそうとした情況も報道で明らかになった。日本大使館がベルリン中心部のポツダム広場にある5つ星ホテルに諮問委員数人を招待し食事をしたということだ。この内容を伝えた消息筋は、「当時、大使館の文化分野担当官が、最初は諮問委員の活動に関心を示していたが、話題を変えてコリア協議会のプロジェクトに反対票を投じるよう説得した」と語った」 

    日本大使館が、コリア協議会のプロジェクトに反対票を投じるよう説得したという。日本政府の立場から言えば、あり得ることだ。

     

    (4)「日本大使館側は、「(コリア協議会の)プロジェクトは少女像を一方の話だけを伝える用途に使われている」とし、「アジアに対する知識が多くない若いドイツ人に反日感情を植え付けている」と述べた。コリア協議会が、ベルリン市に予算支援を申請したプログラムは「私の隣りに座って」という名前のプロジェクトで、すでに2021年から今年上半期までベルリン市の補助金を受けて進めてきたプロジェクトの延長だった。市民の後援を通じて主に運営されるコリア協議会は、財政難の解消および歴史教育のためにベルリン市の支援を受けており、今回は6区で8つの青少年団体とともに活動する計画もあった」 

    ベルリン市が、これまで行ってきたコリア協議会プロジェクト支援に対して、今年は「中止」という政治的意味を考えるべきである。日独関係が,一段と強化される以上、日本を非難するプロジェクトへ援助することがどういうことになるか。ドイツ政府が決めたことである。韓国左派は、国際情勢と無頓着に感情のおもむくままに「反日運動」を行う限界が露呈されてきたのだ。

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    エコノミストの間では、ドイツ経済に対して抱く心理的なイメージが安心から不安に変わってきた。ドイツは、高齢化からインフラの老朽化まで構造的問題を抱えている。ウクライナ戦争、金利の上昇、国際貿易の停滞も追い打ちを掛けているのだ。 

    IMF(国際通貨基金)とOECD(経済協力開発機構)は、ドイツが23年に先進国の中で経済成長が最も低迷するとの見方で一致している。同国で発行部数が最多のタブロイド紙ビルトは「助けてくれ。ドイツ経済が崩壊しつつある」と訴えるほど。GDPで、日本を追い抜くとさえ見えた時期もあったが今や、「欧州の病人」と揶揄される始末だ。 

    ドイツの連邦統計当局が、8月25日発表した4~6月期のGDP改定値は前期比変わらず。世界的な景気低迷で、ドイツの輸出が落ち込んでいる。製造業が大きく下振れしたほか、消費者には高水準のインフレと欧州中央銀行(ECB)の積極的な利上げの影響が及んでいる。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(8月20日付)は、「回復遅れるドイツ経済 構造改革が立て直しのカギ」と題する記事を掲載した。 

    世界第4位の経済規模を誇るドイツは、2四半期連続でGDPがマイナス成長となった後、23年4〜6月は横ばいにとどまった。先進国の中では最も成長が低迷している。

     

    不振の主因は、製造業の世界的な低迷の影響がドイツで特に大きかったことだ。ドイツは日本と同様に製造業の総生産に対する寄与度が5分の1と高く、米国、フランス、英国の倍近くに達する。独ハレ経済研究所でマクロ経済部門を統括するオリバー・ホルテミュラー氏は、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の上昇と貿易摩擦が製造業に深刻な影響を及ぼしたと述べた。資金調達コストの増大と熟練労働者の不足も製造業を「大きく圧迫した」と言う」 

    (1)「ドイツのガス・電力価格は、昨年以降低下しているが、欧州以外の多くの国よりまだ高い水準にある。また、化学、ガラス、製紙などエネルギー集約型産業の鉱工業生産指数は昨年初めから17%低下し、長期的な低迷が続いていることがうかがえる。英コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスのシニアエコノミスト、フランツィスカ・パルマス氏は「ドイツ製造業の見通しは暗い」と言う。従来はドイツ企業が強かった自動車業界では、成長著しい電気自動車(EV)分野でドイツ大手が低価格路線の中国企業に市場シェアを奪われるなど、脅威にさらされていることがドイツの苦境に追い打ちをかけている。ゼネラリ・インベストメンツ・ヨーロッパのシニアエコノミスト、マーティン・ウォルブルグ氏は「ドイツの主要な輸出品である自動車は一段と競争が激しくなっている」と述べた」 

    ドイツ製造業は、安価であったロシア天然ガスへ依存し過ぎたことが命取りになった。前首相メルケル氏が、米国の忠告を聞かずロシアへ傾斜した結果だ。中国への過度の依存もメルケル氏が主導した。「反米」メルケル氏は、意識的に中ロへ接近したが、その代償は大きくなっている。中国は、台湾リスクを抱えており「深入り禁物」になった。

     

    (2)「英コンセンサス・エコノミクスが8月に実施したアナリスト調査によると、ドイツのGDPは23年に0.35%縮小すると予想され、3カ月前の小幅増から見通しが悪化した。24年の成長率予想も年初の1.%から0.86%に引き下げられた。他のユーロ圏諸国に比べて、ドイツは08年の金融危機からの立ち直りが早かった。世界貿易が拡大した一方、南欧諸国は銀行・債務危機に陥ったからだ。だが、先頭を走っていたドイツ経済が今や後れを取っている。ドイツのGDPは6月に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)前の水準をようやく回復したのに対し、ユーロ圏は2.%上回っている」 

    ドイツのGDPは、23年マイナス成長が予想されている。24年はプラス成長へ転じるが、小幅である。ユーロ圏全体の平均成長率に及ばない状態だ。病めるEU盟主である。 

    (3)「独コメルツ銀行のチーフエコノミスト、ヨルグ・クレマー氏は「新型コロナ危機の要因を除くと、ドイツ経済の低迷は17年から始まっている。つまり、構造的問題がしばらく続いているということだ」と指摘した。人件費の上昇、高い税率、抑圧的な官僚主義、公的サービスにおけるデジタル化の遅れによってドイツの競争力はじわじわと低下していると専門家は指摘する。これは、スイスのビジネススクールIMDの世界競争力ランキングで順位が低下していることでも明らかだ。10年前は主要64カ国・地域の中で10位以内に入っていたドイツは、現在22位に低迷している」 

    ドイツ経済の低迷は、17年から始まっているという。人件費の上昇や高い税率が問題という。これが、ドイツの競争力を奪ってきたというのだ。

     

    (4)「暗い影がドイツ経済を覆っているものの、不振は長くは続かないとみるエコノミストもいる。エネルギー価格が落ち着き、対中輸出が回復すれば、ドイツの周期的な停滞が一段落するという。他のエコノミストはもっと悲観的だ。オランダの金融大手INGでマクロ経済分野のグローバル責任者を務めるカールステン・ブルゼスキ氏は、「ドイツには包括的な改革と投資計画が必要だが、実現にはほど遠い」と語った」 

    下線部は、楽観的である。エネルギー価格の落着きは好材料としても、対中輸出回復は余りにも希望的過ぎる。現在の中国経済は、一時的なスランプでなく構造的な問題を抱えている。不動産バブル崩壊なのだ。この中国が、成長軌道へ復帰できると見るのは、世界のバブル崩壊の歴史と比べて余りにもかけ離れている。

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