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「チャイナ・マネー」は、いかにも潤沢そうに振る舞っている。だが内実は、火の車であることがわかった。米国資金の中国流入がストップしているので、正直正銘の「中東マネー」を求めたアラブ諸国へ手を伸ばしているほどだ。

 

不思議なことに、中国株ファンドへ資金流入が続いている。米調査会社EPFRグローバルによると中国籍ファンドへの資金流入額は8月に222億ドルと月間で過去最大。9月も流入超過だった。実際は、外国籍からは9月まで5カ月連続で流出超過である。資金流入があるはずがないのだ。この謎は、「『国家隊』の買い支えが入っているのではないか」とみられている。国家隊とは、相場が不安定になった際に出動する政府系資金を指す。中国は、あたかも資金が潤沢のように見せかけているのだ。『日本経済新聞 電子版』(10月7日付)が報じた。

 

『ロイター』(10月10日付)は、「中国の株式ファンド 中東で資金集め 米国からの投資減少で」と題する記事を掲載した。

 

中国の株式ファンドが、中東の投資家からの資金集めを目指している。米中関係の緊張などを背景に米国の投資家が中国から資金を引き揚げていることが背景だ。

 

(1)「ヘッジファンドやミューチュアルファンドなど中国の7つの株式ファンド(運用総額5000億ドル以上)の担当者はロイターに対し、投資資金を募るため、今年に中東を訪問したことを明らかにした。うち3つのファンドは初の中東訪問だった。中東の投資家も、割安感や景気刺激策で利益を得られるとの見方を背景に対中投資に積極的になっている。法律事務所シドリー・オースチンのアジア太平洋投資ファンドグループ共同リーダー、エフィー・バシロプロス氏は「これまではおそらく米国からの資金調達が究極の目標とされていたが、米国の投資家が資金を引き揚げており、代わりの資本を集めることが焦点となっている。われわれの顧客の多くが中東に目を向けている」と述べた」

 

米国の投資家は、対中投資を引き揚げている。中国の抱える地政学的リスクを警戒している結果だ。

 

(2)「今年、中東を訪問したファンドの一つ、ファウンテンキャップ・リサーチ&インベストメントのスティーブン・ルク最高経営責任者(CEO)は、「(中国に対する)センチメントが最も良好なのが中東の投資家だ」とし、「一部の政府系ファンドは中国をオーバーウエートにしている。そうしたファンドは『なぜ中国なのか』ではなく『中国にどのように投資するか』を話している」と述べた。ファウンテンキャップはロングオンリー型株式ファンドで、2015年から中国に投資。運用資産は21億ドルと2倍近くになった。欧州のほか、中東からも資金が流入しているという。次はオーストラリアで資金集めを目指す方針だ」

 

中東マネーは、中国経済の実態におかまいなしだ。元々、オイルマネーは地中から湧いてきたものだから、有り難みが少ないのだろう。

 

(3)「テキサス州教職員退職年金基金や、カリフォルニア州教職員退職年金基金など、米国の大手機関投資家は過去1年で対中投資を減らしているが、中東の政府系ファンドは中国に多額の投資を行っている。MSCI中国インデックスは、今年11%下落。一方で、世界株指数は8%値上がりしている。シンガポールを拠点とするAPSアセット・マネジメントのウォン・コック・ホイ最高投資責任者(CIO)は、「これは『政治と投資』の戦略的決定だ。中国は割安だ。その一方で、米国中心の投資からの多様化が必要との考え方がある」と述べた。APSは今年、中東・アフリカの投資家から新たな資金を集めた」

 

米国の名だたる退職年金基金は、多国籍で運用している。だが、中国経済のリスクの高まりで投下資金を引き揚げている。この裏には、米国覇権へ挑戦する国家で、米国市民の年金基金を運用するのは「利敵行為」という批判が出ているからだ。こういう政治的発言も無視できなくなっている。これら年金は、日本株への投資に関心を持ち始めている。

 

(4)「ウォン氏は、中東の軍事衝突が今後数カ月でどのような影響を及ぼすかを判断するのは時期尚早だが、中東の投資家がドル以外の資産への投資を増やすという長期的な戦略に大きな変化はないはずだと指摘。「原油高で産油国の投資資金が増えるため、この新たな不安定な環境では投資のペースが上がるかもしれない」と述べた」

 

現在のイスラエルとハマスの紛争が、これからどう影響するか。中国は、イランとサウジの和解仲介をしたが、今回は全く手が出せない状況だ。これが、中国外交にマイナスになれば、中東マネーが中国へ流れる可能性は低くなる。ドルは、何が起こっても基軸通貨である。中東マネーが、ドルを捨てて人民元へ乗換えるとは思えないのだ。