中国は今年3月、イランとサウジアラビアの和解仲介役を果たし「外交大国」を目指す姿勢をみせた。今回のイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突では、中国はどういう立場を取るのか。「洞ヶ峠」を決め込み、勝った側につく意向なのか。関心が高まっている。
『ロイター』(10月11日付)は、「中国、中東緊迫でも動けず 外交的野心の限界露呈か」と題する記事を掲載した。
中国が今年3月、意表を突いてサウジアラビアとイランの外交関係正常化を仲介したことは、中東外交の重鎮として振る舞いたい中国の意欲を示すものだった。しかし、イスラエルとイスラム組織ハマスによる紛争発生のよって、その野心の限界が露呈しかねない状況となっている。
(1)「中国が中立を保っていることを、アメリカやイスラエルの政府関係者は批判している。中東における公平な和平の仲介者だ、という北京の主張が揺らいだとの声もある。アナリストによると、中国の対応は驚くに当たらない。中国の外交政策は長年、リスク回避的であり、イスラエルとハマスの対立激化は中国の外交担当者らを窮地に追い込んでいる。中国は歴史的にパレスチナ、そしてパレスチナの米国に対する敵対姿勢を支援してきたからだ」
中国は、「すべての関係当事者に即時停戦、戦闘中止を強く求めている。中国はすべての当事者と意思疎通を保ち、中東の平和と安定のために絶え間なく努力するつもりだ」と述べた。当たり障りのない姿勢だ。
(2)「中国が3年近く続けたゼロコロナ政策を終了して以来、習近平氏は米国とその同盟国に対抗すべく外交攻勢をかけた。新興5カ国(BRICS)などの非欧米主導の多国間グループと連携を深める一方、ウクライナに侵攻したロシアとの関係を緊密にし、中東やグローバルサウス諸国との関係を強化している。しかし、中国が現在の危機に深く関与する可能性は低い。一つの理由は、長年の不干渉政策にある。この政策は時に、世界の舞台で大国として振る舞うという中国の目標と衝突することがある」
中国外交は、不干渉政策にある。となれば、外交大国にはなれないはずだが、この限界を弁えていないようだ。
(3)「SOAS中国研究所(ロンドン)のディレクター、スティーブ・ツァン氏は「習近平政権下の中国は、中東を含むあらゆる場所で尊敬され、賞賛されることを望んでいるが、結局のところ、本当に難しい地域安全保障問題を解決するのに必要な行動を起こす気はない」と語る。「中国は手っ取り早い成果だけを欲しがっており、基本的にそこ止まりなのだ」とも指摘した。中国がイスラエル・パレスチナ問題に取り組んだ前例はある。だが、中国はパレスチナとの関係を含めた長年にわたる中東諸国との関係によって、選択肢が限られている」
中国は、イランとサウジアラビアの和平仲介を自国の功績としている。現実は、「頼まれ仲人」に過ぎず、実質的交渉は前記二国が行っていたものだ。
(4)「一部の中国の学者は最近、パレスチナ人の疎外と、米国主導によるサウジとイスラエルの関係正常化の合意が危機をあおっている根本的な原因だと批判した。上海国際問題研究院中東研究所のLiu Zhongmin教授は、中国メディアのインタビューに対して「イスラエルとパレスチナの紛争の背後にある最も重要な外的要因は、米国がアブラハム合意(イスラエルとアラブ諸国の国交正常化合意)の履行を試みていることだ」と指摘。「中東地域の和平とパレスチナ問題の公正な解決は不可分だ」と主張した」
中国は、米国を批判するだけで解決の妙案を持っている訳でない。
(5)「中国は、今後数十年間で4000億ドル近い対イラン投資を計画しており、同国に対して影響力を持つ数少ない国の一つだ。だが、イスラエルでは、中国はこれ以上危機に踏み込まないのではないか、との見方がある。イスラエル国家安全保障研究所の中国研究者、トゥービア・ゲーリング氏は「中国は国際舞台で発言力や影響力を行使し、物事を良い方向に変えようとはしない」と断言した。中国は中東から石油を輸入し「一帯一路」構想の一環として中東の通信やインフラに投資しているだけに、中東和平は中国の望みだ。しかし、習近平氏のリスクテーク意欲には明確な限界がある」
下線部は、中国の本音を指摘している。いかにして、中東から経済的な利益を得るかを模索している。外交的に厄介な問題に介入する意思はない。
(6)「シンガポール国立大学・中東研究所のシニア研究フェロー、ジーンループ・サマーン氏は、中東の環境が安定していたため、中国がサウジ・イランの関係正常化を仲介することが可能だったと説明。「ところが、紛争の管理となると、状況は大きく異なる。中国がその役割を果たしたがっているとは到底考えられない」と語った」
中国は、台湾問題を抱えている。いつ自国が紛争の当事国になるか分らないのだ。その時に、揚げ足を取られるようなことをしたくないのが本音であろう。中国は、利益になることしか行わないのだ。