イスラエル政府は17日、イスラム組織ハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏を殺害したと発表した。対ハマス戦争の主要な目標の一つを達成したことになり、ハマスにとっては大打撃となった。シンワル氏はパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの最重要指名手配犯であり、同氏の死は戦争の転換点となる可能性があるという。
『ブルームバーグ』(10月18日付)は、「ハマス最高指導者シンワル氏を殺害、イスラエル発表 1年余りの戦争でハマスへの最大の打撃に」と題する記事を掲載した。
(1)「ハマスの指導部と軍事能力を破壊すると誓ったイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にとって、シンワル氏の殺害は大きな白星となった。ネタニヤフ氏は17日、「ハマスがガザを支配することはもうない」とした上で、投降する戦闘員については赦免するが、人質に危害を加える者は追跡して捕まえると述べた。「戦争は終わっていない」。イスラエル軍は16日、ガザ地区南部で実施した作戦で、米国からテロリストに指定されていたシンワル氏を殺害した。歯形・DNA・指紋鑑定などの結果、本人であることを確認したと、イスラエル当局者らは述べた」
シンワル氏の死亡が、歯形・DNA・指紋鑑定などの結果、最終的に確認された。
(2)「ジョー・バイデン米大統領は17日、人質を家族の元へ帰還させ、戦争を終結させるための道筋について、ネタニヤフ氏らイスラエル指導部と協議すると表明した。バイデン氏は「ハマスに支配されていないガザの『あした』、そしてイスラエル人とパレスチナ人に同じようにより良い未来をもたらす政治的決着のチャンスが今、訪れている」とし、「ヤヒヤ・シンワルはこうした目標全てを達成する上で乗り越えられない障害だった。その障害はもはや存在しない」と述べた。アントニー・ブリンケン米国務長官に対し、イスラエル入りして停戦や人質返還について話し合うよう指示したという」
バイデン米大統領は17日、戦争終結の道筋をネタニヤフ氏らイスラエル指導部と協議すると表明した。ブリンケン国務長官に対し、イスラエル入りして停戦や人質返還について話し合うよう指示した。
(3)「シンワル氏が殺害されたことで、幹部の大半がすでに死亡していたハマスは混乱状態にある。イスラエルは7月、ハマス軍事部門トップのムハンマド・デイフ氏を空爆で殺害した。その後、同月中に政治的指導者のイスマイル・ハニヤ氏が、テヘランにある軍運営の宿泊施設で起きた爆発で死亡した。長年ガザにおけるハマス最高指導者の地位にあったシンワル氏の追跡は、最も困難なものとなった。同氏は1年余りにわたってイスラエル軍の追跡を逃れ、トンネルに身を隠してハマスの軍事作戦を指揮していた」
ハマスの幹部は、すでに大半が死亡している。シンワル氏の死亡で、ハマスは戦闘指揮者をほぼ失った形だ。
(4)「最終的にシンワル氏の死を決定付けたのは、同氏を標的にした特殊作戦ではなく、イスラエル兵との偶然の遭遇だった。この出来事について説明を受けた元イスラエル軍当局者が明らかにした。ある戦車部隊がガザ地区南部のラファでハマスのトンネルと軍事施設を探していた際に、誰もいないと思われていた建物に戦闘員が入っていくのを兵士らが目撃した。元軍当局者によると、戦車が建物を砲撃したところ、建物は崩壊し、シンワル氏とその他2人が死亡した。この戦車は司令官コースの受講を終えた若手兵士のチームが運用するものだった」
シンワル氏は、堅固な防衛拠点で死亡したものでない。誰もいないと思われていた建物の中で、偶然に発見された。これは、最高指導者シンワル氏を守る守備隊すら存在しなかったことを示している。戦闘能力が、完全に失われた状態だ。敗北状態にあったのだろう。
(5)「元同僚と連絡を取ったというガザ地区担当部隊の元上級司令官アミル・アビビ氏は、「全ては完全なる偶然だった。建物の中に入り、その姿を見て初めて、シンワル氏のようであることが分かったと彼らは述べていた」と述べた。イスラエルの治安当局者によると、兵士らがシンワル氏を見つけた時、同氏は現金、ライフル銃、弾薬、ミント菓子「メントス」1包を所持していた。また、祈禱(きとう)用の数珠と、他人名義のパレスチナのパスポートも所持していたという」
シンワルが身につけていたものは、現金、ライフル銃、弾薬、ミント菓子「メントス」1包と祈祷用の数珠だけであった。他人名義のパスポートも所持していた。最後は、逃亡するつもりであったのだろう。それにしても、最高指導者の最期としては、余りにも侘しさが漂う。
(6)「イスラエル軍がガザで発見し、今月『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が内容を確認した文書によると、シンワル氏は2021年から奇襲攻撃の計画を本格的に練り始め、大規模攻撃の資金を得るためイランとの交渉を進めた。シンワル氏は、この攻撃によって2年以内にイスラエルが崩壊すると予想していたという」
シンワル氏は、イスラエル奇襲攻撃で2年以内にイスラエルが崩壊すると予想していたという。戦争は、こういう楽観的な前提で始まり最後は悲惨な形で終わる。古今東西に通じる歴史の教訓である。