勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: イスラエル経済ニュース時評

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    トランプ米大統領は21日、イランの核施設3カ所に空爆を行い、イスラエルによるイランへの攻撃に直接参加する前代未聞の決断を下した。アナリストらは、米国の攻撃参加を受けてイランが取り得る報復措置として、世界で最も重要な原油の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖、中東地域の米国や同盟国の軍事基地攻撃、イスラエルへのミサイル攻撃強化、世界各地の米国やイスラエルの関連機関に対する親イラン組織の攻撃などを挙げる。

     

    一方、国内では2022年に起った民衆デモ蜂起による政権打倒への「残り火」が再び、燃えさかるリスクが残っている。政権のアキレス腱は、民衆の不信感の盛り上がりだ。イラン国民の長年の鬱積した不満も無視できないであろう。

     

    『ロイター』(6月22日付)は、「トランプ氏のイラン攻撃は『最大の賭け』、リスクも未知数」と題する記事を掲載した。

     

    民主党政権と共和党政権で中東交渉を担当したアーロン・デービッド・ミラー氏は、イランの軍事力はかなり弱体化したが、「彼らにはあらゆる非対称的な手段で対抗できる。これはすぐには終わらないだろう」と懸念する。

     

    (1)「ホワイトハウス高官によると、トランプ氏はイランが核合意をまとめる気がないと確信し、核施設への攻撃が「正しいこと」だと判断し、「成功の可能性が高い」と確信した上でゴーサインを出したという。今回の攻撃ではナタンズ、イスファハン、フォルドゥの3施設に地中貫通弾(バンカーバスター)を投下。トランプ氏は「大成功」を収めたと表明した。それでも一部の専門家は、イランの核開発計画が何年も後退した可能性はあるが、脅威は依然として解消されていない可能性があると指摘する」

     

    イランは、神政国家である。信仰が支配する國だ。およそ信仰の自由とはかけ離れている。このことに不満を持つ国民もいる。2022年の長期デモがそれを表している。国民を忘れて、イラン政権側の論理だけで今後の推移を読み解くことは危険だろう。

     

    (2)「超党派団体、米軍備管理協会は今回の軍事行動を受け、イランが核兵器は抑止力として必要で、米国は外交に関心がないと判断する可能性が高いと指摘。「軍事攻撃だけでは、イランの幅広い核に関する知見を破壊できない。攻撃はイランの核開発計画を後退させるだろうが、その代償として核活動を再開するというイランの決意を強めることになる」と述べた。フロリダ国際大学のエリック・ロブ助教は、イランの次の動きはなお未知数だと述べ、報復措置の一つとして、地域内外における米国とイスラエルの「ソフトターゲット」への攻撃も考えられると予想。一方で、弱い立場に追い込まれるが、イランが交渉のテーブルに復帰する可能性もあると述べた」

     

    イラン国内で政権への不満が昂じて、反政府運動に火がつけば、イランは交渉のテーブルに着くだろう。ポイントは、民衆の動きだ。

     

    (3)「イラン外務省は22日未明に声明を発表し、「米国の軍事的侵略に全力で抵抗することは権利であると考える」と警告した。カーネギー国際平和財団のアナリスト、カリム・サジャドプール氏は、「トランプ氏は今こそ平和の時だと述べた。イランが同じように見るかどうかは不明で、可能性も低い。これは(過去)46年にわたる米国とイランの戦争を終わらせるというより、新たな章を開く可能性が高い」とXに投稿した」

     

    イラン政府が、ロシアや中国の支援を受けて米国と長期対決に踏み切るか。これは、今後の動きを占う意味で重要なポイントになる。

     

    (4)「一部のアナリストによると、これまでイラン指導部を排除するという狙いを否定してきたトランプ政権だが、イランが大規模な報復攻撃を行ったり、核兵器製造の動きを見せれば、「レジーム・チェンジ(体制転換)」を求めざるを得なくなる可能性もある。ただ、さらなるリスクをもたらす恐れがある。ワシントンのジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院の中東アナリスト、ローラ・ブルーメンフェルド氏は、「体制転換や民主化運動を狙ったミッションの拡大には注意する必要がある」とし、米国はこれまで中東でそうした取り組みに失敗を重ねてきたと指摘する」

     

    イラン問題は、最終的に「レジーム・チェンジ」に行き着かない限り、解決策はないであろう。その場合、イラン国民がどう動くかだ。

     

    (5)「米国家情報会議の中東担当副国家情報官を務めたジョナサン・パニコフ氏は、イラン指導部は体制存続が危うくなれば、直ちに「不均衡な攻撃」に出るだろうと予想するが、その結果も留意する必要があると述べた。ホルムズ海峡の封鎖は、結果として生じる原油価格上昇や米国のインフレ高進によってトランプ氏に問題をもたらすが、イランの数少ない同盟国の中国にも打撃を与える。また、トランプ氏はすでに議会民主党からイラン攻撃を巡り強い反発に直面しているほか、他国への介入を好まない岩盤支持層の米国第一主義運動「MAGA」派からの反発にも対処する必要がある」

     

    イランが、世界中でゲリラ活動に手を染めれば、その時点でイラン政府の正統性が失われる。国連から追放されるであろう。イラン政府は、感情にまかせた動きをすれば、自分の立場を弱めるだけというリスクを抱える。

     

    テイカカズラ
       


    イスラエル政府は17日、イスラム組織ハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏を殺害したと発表した。対ハマス戦争の主要な目標の一つを達成したことになり、ハマスにとっては大打撃となった。シンワル氏はパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの最重要指名手配犯であり、同氏の死は戦争の転換点となる可能性があるという。 

    『ブルームバーグ』(10月18日付)は、「ハマス最高指導者シンワル氏を殺害、イスラエル発表 1年余りの戦争でハマスへの最大の打撃に」と題する記事を掲載した。 

    (1)「ハマスの指導部と軍事能力を破壊すると誓ったイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にとって、シンワル氏の殺害は大きな白星となった。ネタニヤフ氏は17日、「ハマスがガザを支配することはもうない」とした上で、投降する戦闘員については赦免するが、人質に危害を加える者は追跡して捕まえると述べた。「戦争は終わっていない」。イスラエル軍は16日、ガザ地区南部で実施した作戦で、米国からテロリストに指定されていたシンワル氏を殺害した。歯形・DNA・指紋鑑定などの結果、本人であることを確認したと、イスラエル当局者らは述べた」 

    シンワル氏の死亡が、歯形・DNA・指紋鑑定などの結果、最終的に確認された。

     

    (2)「ジョー・バイデン米大統領は17日、人質を家族の元へ帰還させ、戦争を終結させるための道筋について、ネタニヤフ氏らイスラエル指導部と協議すると表明した。バイデン氏は「ハマスに支配されていないガザの『あした』、そしてイスラエル人とパレスチナ人に同じようにより良い未来をもたらす政治的決着のチャンスが今、訪れている」とし、「ヤヒヤ・シンワルはこうした目標全てを達成する上で乗り越えられない障害だった。その障害はもはや存在しない」と述べた。アントニー・ブリンケン米国務長官に対し、イスラエル入りして停戦や人質返還について話し合うよう指示したという」 

    バイデン米大統領は17日、戦争終結の道筋をネタニヤフ氏らイスラエル指導部と協議すると表明した。ブリンケン国務長官に対し、イスラエル入りして停戦や人質返還について話し合うよう指示した。 

    (3)「シンワル氏が殺害されたことで、幹部の大半がすでに死亡していたハマスは混乱状態にある。イスラエルは7月、ハマス軍事部門トップのムハンマド・デイフ氏を空爆で殺害した。その後、同月中に政治的指導者のイスマイル・ハニヤ氏が、テヘランにある軍運営の宿泊施設で起きた爆発で死亡した。長年ガザにおけるハマス最高指導者の地位にあったシンワル氏の追跡は、最も困難なものとなった。同氏は1年余りにわたってイスラエル軍の追跡を逃れ、トンネルに身を隠してハマスの軍事作戦を指揮していた」 

    ハマスの幹部は、すでに大半が死亡している。シンワル氏の死亡で、ハマスは戦闘指揮者をほぼ失った形だ。

     

    (4)「最終的にシンワル氏の死を決定付けたのは、同氏を標的にした特殊作戦ではなく、イスラエル兵との偶然の遭遇だった。この出来事について説明を受けた元イスラエル軍当局者が明らかにした。ある戦車部隊がガザ地区南部のラファでハマスのトンネルと軍事施設を探していた際に、誰もいないと思われていた建物に戦闘員が入っていくのを兵士らが目撃した。元軍当局者によると、戦車が建物を砲撃したところ、建物は崩壊し、シンワル氏とその他2人が死亡した。この戦車は司令官コースの受講を終えた若手兵士のチームが運用するものだった」 

    シンワル氏は、堅固な防衛拠点で死亡したものでない。誰もいないと思われていた建物の中で、偶然に発見された。これは、最高指導者シンワル氏を守る守備隊すら存在しなかったことを示している。戦闘能力が、完全に失われた状態だ。敗北状態にあったのだろう。 

    (5)「元同僚と連絡を取ったというガザ地区担当部隊の元上級司令官アミル・アビビ氏は、「全ては完全なる偶然だった。建物の中に入り、その姿を見て初めて、シンワル氏のようであることが分かったと彼らは述べていた」と述べた。イスラエルの治安当局者によると、兵士らがシンワル氏を見つけた時、同氏は現金、ライフル銃、弾薬、ミント菓子「メントス」1包を所持していた。また、祈禱(きとう)用の数珠と、他人名義のパレスチナのパスポートも所持していたという

     

    シンワルが身につけていたものは、現金、ライフル銃、弾薬、ミント菓子「メントス」1包と祈祷用の数珠だけであった。他人名義のパスポートも所持していた。最後は、逃亡するつもりであったのだろう。それにしても、最高指導者の最期としては、余りにも侘しさが漂う。 

    (6)「イスラエル軍がガザで発見し、今月『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が内容を確認した文書によると、シンワル氏は2021年から奇襲攻撃の計画を本格的に練り始め、大規模攻撃の資金を得るためイランとの交渉を進めた。シンワル氏は、この攻撃によって2年以内にイスラエルが崩壊すると予想していたという」 

    シンワル氏は、イスラエル奇襲攻撃で2年以内にイスラエルが崩壊すると予想していたという。戦争は、こういう楽観的な前提で始まり最後は悲惨な形で終わる。古今東西に通じる歴史の教訓である。

    テイカカズラ
       

    イスラエル政府は17日、イスラム組織ハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏を殺害したと発表した。対ハマス戦争の主要な目標の一つを達成したことになり、ハマスにとっては大打撃となった。シンワル氏はパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの最重要指名手配犯であり、同氏の死は戦争の転換点となる可能性があるという。 

    『ブルームバーグ』(10月18日付)は、「ハマス最高指導者シンワル氏を殺害、イスラエル発表 1年余りの戦争でハマスへの最大の打撃に」と題する記事を掲載した。 

    (1)「ハマスの指導部と軍事能力を破壊すると誓ったイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にとって、シンワル氏の殺害は大きな白星となった。ネタニヤフ氏は17日、「ハマスがガザを支配することはもうない」とした上で、投降する戦闘員については赦免するが、人質に危害を加える者は追跡して捕まえると述べた。「戦争は終わっていない」。イスラエル軍は16日、ガザ地区南部で実施した作戦で、米国からテロリストに指定されていたシンワル氏を殺害した。歯形・DNA・指紋鑑定などの結果、本人であることを確認したと、イスラエル当局者らは述べた」 

    シンワル氏の死亡が、歯形・DNA・指紋鑑定などの結果、最終的に確認された。

     

    (2)「ジョー・バイデン米大統領は17日、人質を家族の元へ帰還させ、戦争を終結させるための道筋について、ネタニヤフ氏らイスラエル指導部と協議すると表明した。バイデン氏は「ハマスに支配されていないガザの『あした』、そしてイスラエル人とパレスチナ人に同じようにより良い未来をもたらす政治的決着のチャンスが今、訪れている」とし、「ヤヒヤ・シンワルはこうした目標全てを達成する上で乗り越えられない障害だった。その障害はもはや存在しない」と述べた。アントニー・ブリンケン米国務長官に対し、イスラエル入りして停戦や人質返還について話し合うよう指示したという」 

    バイデン米大統領は17日、戦争終結の道筋をネタニヤフ氏らイスラエル指導部と協議すると表明した。ブリンケン国務長官に対し、イスラエル入りして停戦や人質返還について話し合うよう指示した。 

    (3)「シンワル氏が殺害されたことで、幹部の大半がすでに死亡していたハマスは混乱状態にある。イスラエルは7月、ハマス軍事部門トップのムハンマド・デイフ氏を空爆で殺害した。その後、同月中に政治的指導者のイスマイル・ハニヤ氏が、テヘランにある軍運営の宿泊施設で起きた爆発で死亡した。長年ガザにおけるハマス最高指導者の地位にあったシンワル氏の追跡は、最も困難なものとなった。同氏は1年余りにわたってイスラエル軍の追跡を逃れ、トンネルに身を隠してハマスの軍事作戦を指揮していた」 

    ハマスの幹部は、すでに大半が死亡している。シンワル氏の死亡で、ハマスは戦闘指揮者をほぼ失った形だ。

     

    (4)「最終的にシンワル氏の死を決定付けたのは、同氏を標的にした特殊作戦ではなく、イスラエル兵との偶然の遭遇だった。この出来事について説明を受けた元イスラエル軍当局者が明らかにした。ある戦車部隊がガザ地区南部のラファでハマスのトンネルと軍事施設を探していた際に、誰もいないと思われていた建物に戦闘員が入っていくのを兵士らが目撃した。元軍当局者によると、戦車が建物を砲撃したところ、建物は崩壊し、シンワル氏とその他2人が死亡した。この戦車は司令官コースの受講を終えた若手兵士のチームが運用するものだった」 

    シンワル氏は、堅固な防衛拠点で死亡したものでない。誰もいないと思われていた建物の中で、偶然に発見された。これは、最高指導者シンワル氏を守る守備隊すら存在しなかったことを示している。戦闘能力が、完全に失われた状態だ。敗北状態にあったのだろう。 

    (5)「元同僚と連絡を取ったというガザ地区担当部隊の元上級司令官アミル・アビビ氏は、「全ては完全なる偶然だった。建物の中に入り、その姿を見て初めて、シンワル氏のようであることが分かったと彼らは述べていた」と述べた。イスラエルの治安当局者によると、兵士らがシンワル氏を見つけた時、同氏は現金、ライフル銃、弾薬、ミント菓子「メントス」1包を所持していた。また、祈禱(きとう)用の数珠と、他人名義のパレスチナのパスポートも所持していたという

     

    シンワルが身につけていたものは、現金、ライフル銃、弾薬、ミント菓子「メントス」1包と祈祷用の数珠だけであった。他人名義のパスポートも所持していた。最後は、逃亡するつもりであったのだろう。それにしても、最高指導者の最期としては、余りにも侘しさが漂う。 

    (6)「イスラエル軍がガザで発見し、今月『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が内容を確認した文書によると、シンワル氏は2021年から奇襲攻撃の計画を本格的に練り始め、大規模攻撃の資金を得るためイランとの交渉を進めた。シンワル氏は、この攻撃によって2年以内にイスラエルが崩壊すると予想していたという」 

    シンワル氏は、イスラエル奇襲攻撃で2年以内にイスラエルが崩壊すると予想していたという。戦争は、こういう楽観的な前提で始まり最後は悲惨な形で終わる。古今東西に通じる歴史の教訓である。

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    イスラエルは、建国の歴史からみても周辺を「敵」に囲まれている。それだけに、治安対策は国是のはずだった。だが、10月ハマスの急襲を受け、大きな人命の損傷を被った。ネタニヤフ首相は、これまで「ミスター治安対策」として評価され、長期政権を担ってきたが、この看板に大きな傷がついたのだ。長年の支持者が離れ始めている。今、総選挙が行われれば「野党勝利」とみられているほどだ。

     

    『フィナンシャル・タイム』(11月3日付)は、「失望招いた『ミスター治安対策』ネタニヤフ氏支持急落」と題する記事を掲載した。

     

    1948年の建国以来最多の死者を出した襲撃を受け、イスラエル人は国旗の下で団結を強めている。イスラエル当局によると死者は1400人に上り、ガザへの地上侵攻やハマス撲滅というネタニヤフ氏の戦闘目的には支持が広がる。

     

    (1)「愛国心の高まりにもかかわらず、右派支持層でさえ首相に反発している。首相として6期目のネタニヤフ氏は、ライバルらを出し抜いて過去14年間、一時期を除いてイスラエル政治の頂点に君臨してきた。自身を「ミスター・セキュリティー」「ミスター・エコノミー」と位置づけ、国の軍事力を維持しつつアラブ諸国と融和を図る一方、急成長するテクノロジー産業を育成して掌握できる指導者だと訴えて支持を獲得してきた。だが、ハマスによる襲撃と経済に打撃を与えたその後の紛争で、イスラエルが攻撃への準備を著しく欠いていたことが露呈し、こうした首相のイメージは大きく揺らいでいる」

     

    ネタニヤフ首相は、長期政権で緩みが出たのかもしれない。イスラエルの最大課題である「安全保障」で、ハマスの急襲を許したことが、国民の支持を失う要因だ。

     

    (2)「ネタニヤフ首相に対する国民の不満の大半は、イスラエルが10月7日の攻撃を予見・阻止できなかった失態への謝罪を首相がかたくなに拒否していることから生じている。同国紙『マーリブ』が10月末発表した世論調査では、イスラエル国民の80%がネタニヤフ氏は攻撃を招いた情報収集と防衛の失敗の責任を取るべきだと回答した。ネタニヤフ氏は断固として責任を取ろうとせず、紛争終結後に「自分を含む」全ての人に厳しい問いが突きつけられるだろうと述べるにとどまっている」

     

    ネタニヤフ首相は、自らの責任について言及しないことも国民の不満を煽っている。安全保障の最高責任者が、これだけの惨事を招いたことについて一言あるべきだ。

     

    (3)「リクード党(中道右派政党)内は今のところ首相支持で結束しているが、かたくなな首相の態度を受け有権者の支持離れが急速に進む。マーリブが10月14日に実施した調査では、今選挙が実施されれば野党が右派連立政権に大勝するとの結果が出た。ネタニヤフ首相を支持する回答者はわずか29%と攻撃前から激減した一方、48%が中道右派「国家団結党」のベニー・ガンツ党首を支持した。同氏は5人から成る戦時内閣の一員だ。イスラエル民主主義研究所(IDI)のシニアリサーチフェロー、タマル・ヘルマン氏は「ネタニヤフ氏がここまで支持率を下げたのは初めてだ」と指摘する。

     

    10月14日に実施した調査では、今選挙が実施されれば野党が右派連立政権に大勝するとの結果が出た。

     

    (4)「リクード党に対する激しい怒りが湧き起こっている。テルアビブにある同党本部は先月下旬、血しぶきを模した塗料で汚され、ハマスに人質に取られた242人のコラージュ写真が貼られた。血の手形を押したネタニヤフ氏の顔写真もあった。ネタニヤフ氏が10月28日にX(旧ツイッター)への投稿でイスラエル軍と治安機関幹部からハマスの奇襲について何ら警告がなかったと批判したことは、人々の怒りに油を注いだ。投稿は猛反発を引き起こし、ガンツ氏は撤回を求めた。同氏が「戦時にあって指導者は責任を示す必要がある」とXに投稿すると、ネタニヤフ氏は29日朝に投稿を削除して謝罪した」

     

    ネタニヤフ氏出身のリクード党は、国民の怒りの対象になっている。さらに、ネタニヤフ氏が、急襲前に情報が上がってこなかったと発言して、さらにひんしゅくを買った。責任をなすりつける発言であるからだ。最高責任者の取るべき態度でないというのである。

     

    (5)「ネタニヤフ氏がXの投稿を削除した2日後の31日にIDIが発表した世論調査では、同氏に戦争の指導力があるとみるイスラエル人はわずか7%にとどまり、74%が軍幹部と答えた。右派有権者の間でもネタニヤフ氏への支持は僅かに高いだけで10%にとどまった。ヘルマン氏は「Xへの投稿を巡る不始末を見て、人々はネタニヤフ氏が本当に何かおかしいと感じている。この状況で、ネタニヤフ氏は驚くほど予想外な行動を取っている」と指摘する」

     

    10月31日の世論調査では、ネタニヤフ首相を支持する世論は7%に落ちている。74%は軍幹部を支持しているのだ。こうした国民のネタニヤフ支持離れが、ハマスへの戦いを苛烈にさせている面もあろう。また、米国の一時停戦案も聞き入れないほどにさせているとすれば、困った事態になっている。

     

    (6)「リクード支持者の一部は、この不祥事が起きるもっと前からネタニヤフ氏に愛想を尽かしていた。昨年末に同氏が「宗教シオニズム」などの極右政党と連立を組んだことに多くの有権者が反発した。ネタニヤフ氏が裁判所の力を弱める司法制度改革に着手すると、数カ月にわたり大規模な抗議デモが起こり、支持者が抱く心理的な距離感はさらに広がった」

     

    ネタニヤフ首相は、今回の事件によって確実に政治生命を縮める。米国など西側諸国の「停戦案」を聞き入れぬほど硬直化している背景だ。ネタニヤフ氏が、自らの延命を目指せば目指すほど、民間人の犠牲者は増える。

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    米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は11月2日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザの市民を助けるため、イスラエル軍とハマスの戦闘を一時停止する案を模索していると明らかにした。その上で、こうした戦闘の一時停止はイスラエルの自衛を妨げることにはならないという認識も示した。

     

    カービー氏は、記者団に対し「支援活動と人質の救出に向けた取り組みを継続するために必要となる可能性のある一時停止」について検討することを目指しているとし、「イスラエル当局と協力し、民間人の死亡や巻き添え被害のリスクを最小限に抑えるよう全力を尽くしている」と語った。『ロイター』(11月3日付)が伝えた。

     

    米国は、イスラエルのハマス攻撃は自衛権の範囲という解釈である。ただ、民間人への被害を食止めるべく「戦闘の一時停止案」を出したものだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(11月2日付)は、「イスラエル、ガザ地区の南北分断図るか『220万人強制移住』のシナリオまで用意」と題する記事を掲載した。

     

    イスラエル国防軍(IDF)の地上作戦が、ガザ地区を一定期間南北に分断する結果を生むという予測が出ている。海外メディアは、イスラエル軍の最近の動向を、地域をナイフで薄く切り取るように清掃し掌握していくという意味で、「スライス戦法」と呼んでいる。

     

    (1)「イスラエルが「ハマス根絶」のために北部攻略に焦点を合わせており、軍事作戦が終わった後に明確な政治的解決策を提示するのも難しいからだ。こうなると、ガザ地区は「当面の間」イスラエル軍が占領した北部と避難民が集まっている南部に分断される可能性がある。『ワシントン・ポスト』紙は10月30日(現地時間)付で、「イスラエル軍、秘密に包まれたガザで地上攻撃の初期段階へ」という見出しの記事で、イスラエルの軍事専門家の話として、「イスラエル軍は大規模なDデー攻撃(一斉攻撃)の代わりに、慎重に数マイルまたは100ヤード(約90メートル)ずつ前進し、ハマスが隠蔽した爆発物とトンネルを見つけだすことで、(北部の主要都市)ガザシティ周辺に戦車と兵力を迅速に配置できる道を作っているものとみられる」と報じた」

     

    下線部のように、イスラエル軍は一斉攻撃の代わりに、100メートル未満に区切る前進しているという。ハマスを「しらみつぶし」にする戦術であろう。トンネルを狙った攻撃とみられる。

     

    (2)「イスラエル軍はこれと共に、ガザ地区北部の住民に繰り返し「南部への退避」を強く勧告している。これはイスラエル軍が、ひとまずガザ地区の首都に当たるガザシティの位置する北部地域を掌握した後、そこに集まっているハマスの戦力と基盤施設の完全な破壊を目指していることを強く示唆するものだ。軍出身で国防長官などを歴任したナフタリ・ベネット元首相も10月28日、「ガザ封鎖計画」と題したソーシャルメディアへの投稿で、イスラエルはハマスが降伏し、すべての人質を解放する時まで、ガザ地区を半分に分けて北部を掌握すべきだと主張した」

     

    イスラエルの元国防相は、イスラエルはハマスが降伏しすべての人質を解放する時まで、ガザ地区北部を掌握すべきと提案している。これが、イスラエル軍の最終的な目的かも知れない。

     

    (3)「ベネット氏はまた、ガザ地区内部に境界に沿って幅2キロメートルの安全地帯を作ることを提案した。ガザ地区を南北に分断し、北部に住んでいた住民を南部に移住させ、そこを事実上の「無人地帯」にしようという案だ。イスラエルのニュースサイト「シチャ・メコミット」も同日、イスラエルの最終目標が伺える興味深い文書を示した。同サイトの記事によると、イスラエル情報省は13日、ガザ地区の南北を分け、長期的に住民をエジプトのシナイ半島に強制移住させることを提案する報告書を作成した。つまり、ガザ地区北部に大規模な空爆を含む攻撃を浴びせ、住民の大半を南部に移住させた後、次第に南部に対する圧迫を続け、220万人にもなるガザ地区の住民をエジプトのシナイ半島に押し出すという内容だ」

     

    イスラエル情報省は10月13日、ガザ地区の南北を分け、長期的に住民をエジプトのシナイ半島に強制移住させることを提案する報告書を作成したと報じられている。これが事実とすれば、事態を悪化させて戦線が拡大する危険性を秘めている。

     

    (4)「情報省は、「残りの二つの案である(西岸地区を統治する)パレスチナ自治政府のガザ地区の統治と、(ハマスに代わる)新しい地域政権の樹立は、現実性に欠ける」と一蹴した。しかし、イスラエルが実際にこのような対応に乗り出した場合、「ガザ地区の問題はガザ地区で終わらせなければならない」としてパレスチナ難民の流入を強く牽制するエジプトとの摩擦が予想される。この報道に対しイスラエル首相室は、同文書は仮説的な概念を提示したものに過ぎないと説明した。国防省も、ガザ地区問題に対する初期の考えに過ぎず、戦後は考慮されていないと反論した。しかし、文書を暴露した「シチャ・メコミット」は、住民に南部への移動を求めたイスラエル軍の通告や最近の作戦の様子から、この計画が結果的に実行されていることが分かると主張した」

     

    イスラエルでは、ネタニヤフ首相への批判も強まっている。ハマスの急襲を事前にキャッチできず、被害を拡大したことだ。最初に、防衛を堅固にしていれば、こういう事態を招かなかったという理屈づけである。

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