勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: イスラエル経済ニュース時評

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    イスラエルによるハマスへの空爆は、人的被害を増やしており国際問題となっている。イスラエル国内の最新世論調査でも、45%が停戦案を支持した。ハマスも、人質解放の条件に停戦を打ち出している。イスラエルが、空爆から陸上戦へ移った場合、さらなる被害拡大が避けられない。

     

    イスラエルは、陸上戦によってハマスのテロ組織を100%排除する目的である。だが、全長48キロメートルに過ぎないガザに、最大で地下80メートル・総延長500キロメートル以上に及ぶトンネルが掘られているという。ここを占領することは、極めて難しいことが予想される。

     

    『ロイター』(10月27日付)は、「イスラエル部隊を待ち構えるハマス地下網 総延長500キロ以上か」と題する記事を掲載した。

     

    イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに侵攻するイスラエルの地上部隊を待ち構えているのは、ハマスが長い年月をかけて地下に作り上げたトンネル網だ。治安関係者や専門家によると、トンネルは総延長が数百キロ、深さが最大80メートルに達し、攻撃、密輸、貯蔵、作戦遂行時の待避所といった目的に応じてさまざまな種類があるという。

     

    (1)「多くの専門家が、長さわずか40キロのガザに数百キロのトンネルが掘られているとの推測を認めている。イスラエルは、ガザの空路と海路を完全に掌握し、陸路についても全長72キロの国境のうちエジプトとの国境を除く59キロを支配している。そのためハマスにとってはトンネルが武器や機材、人を運ぶ数少ない手段のひとつとなっている。ハマスと他のパレスチナ人グループはガザのトンネル網について秘密にしている。しかしハマスに拉致され、最近解放されたイスラエル人のヨシェベド・リフシッツさん(85)は 「クモの巣のようで、たくさんのトンネルがあった。私たちは地下を何キロも歩いた」と証言した」

     

    ガザの地下には迷路のようにトンネルが建設されている。日本の戦国時代の城郭のように、敵を罠に仕掛ける装置もあるようだ。まさに地下の「迷宮」になっている。

     

    (2)「イスラエルの治安筋によると、同国による激しい空爆はハマスのトンネル網のインフラにほとんど損害を与えておらず、ハマスの海軍司令部は今週、ガザ近郊の沿岸地域を標的とした海上攻撃を仕掛けることができたという。「イスラエル側は何日もかけて大規模な攻撃を続けているが、(ハマスの)指導部はほとんど無傷で、指揮を執ることも反撃を試みることも可能だ」と、イスラエル元准将のアミール・アビビ氏は語る。「ガザの地下には深さ40~50メートルのところに都市が丸ごと存在する。地下壕や司令部、倉庫があり、もちろんそれらは1000カ所余りのロケット発射地点につながっている」と指摘」

     

    ハマスは、地下壕に司令部や倉庫などができあがっているという。米軍が対北朝鮮軍を想定して開発した地下壕貫通爆弾や、トンネル内を爆風で破壊する特殊爆弾を打ち込まない限り、ハマスの一掃は困難だろう。人質も被害を免れない。問題は、その後にアラブと米国・イスラエルの決定的な軍事対決が引き起こされることだ。中国と立ち向かう米国が、アラブで新たな敵を作ることはしないだろう。

     

    (3)「トンネルの深さは最大80メートルとの推定もある。ある西側治安筋はトンネル網について「何マイルも続いている。コンクリート製で、非常によくできている。ベトコン(ベトナム戦争時の南ベトナム解放民族戦線)のトンネルの10倍と考えれば良い。ハマスには建設のための時間も資金もたっぷりあった」と話す」

     

    トンネルの深さは、最大80メートルもあるという。ベトコンの構築したトンネルの10倍はあるという。米国は、このベトコンの手強さを十分に知った。

     

    (4)「イスラエル軍には、地下トンネルへの対応を専門とする「ヤハロム」という特殊部隊が存在する。ネタニヤフ首相も今週、ヤハロムへの期待を表明した。しかしイスラエルの情報筋によると、彼らを待ち受けている相手は手ごわい。ハマスは14年と21年の戦闘を教訓に部隊を再編成しているという。元准将でイスラエルのスパイ機関モサドの情報局長を務めた経験を持つアムノン・ソフリン氏は、数多くのわなが仕掛けられている上、ハマスの兵器は21年当時より高度化していると指摘する。ハマスはイスラエル軍兵士の誘拐も画策しているという

     

    ハマスが、いろいろと罠を仕掛けている。イスラエル軍兵士の誘拐作戦も準備しているという。こうなると、際限ない戦いでイスラエル経済は大きな被害を受ける。

     

    あじさいのたまご
       

    イスラエル軍の空爆によって、パレスチナ自治区ガザの市民の犠牲が増え続け、空爆停止を求める国際社会の声が強まっている。ブリンケン米国務長官は10月24日の国連安全保障理事会で、人道的観点から戦闘の一時停止の検討を求めた。 

    経済的な打撃は、イスラエルも顕著である。予備役招集によって労働力は枯渇している。イスラエル市民が、奇襲攻撃で受けたショックは簡単に消えず、個人消費は低調である。イスラエル経済が、ハマスとの紛争で被る打撃は過去数十年に経験したことのないものになりそうだという。 

    『ロイター』(10月25日付)は、「イスラエル経済への打撃深刻、予備役招集や消費低迷で」と題する記事を掲載した。

     

    高層ビルが増え続ける主要都市テルアビブでは、市が建設現場を閉鎖したため建設用クレーンが数日間動きを止めていた。今週に入ると厳格化された安全指針の下で作業が再開されたが、業界の報告書は建設部門の停滞だけで1日当たり1億5000万シェケル(3700万ドル)の経済損失が発生していると推計している。イスラエル建設業協会のラウル・サルゴ会長は「打撃を受けているのは建設業者や実業家だけではない。イスラエルの全世帯が受けている」と話す。 

    (1)「約5000億ドル規模のイスラエル経済はハイテク業と観光業に強みを持ち、中東地域で最も発展している。今年は大半の期間にわたり堅調を維持。通年の成長率は3%に達する勢いで、失業率も低かった。しかし、ガザへの地上侵攻が間近に迫り、戦闘が地域紛争へと拡大する恐れがあるため、国民は身を潜め、食料品以外の支出を大幅に減らしている。格付け会社は既にイスラエルを格下げする可能性を警告している。何十万人もの陸軍予備役が召集されて人繰りに穴が開き、港湾からスーパーマーケットにいたるサプライチェーン(供給網)が混乱。小売業者は従業員を一時解雇し、通貨シェケルは下落している。また紛争の影響でガザ地区からイスラエルへのパレスチナ人労働者数千人の移動が止まり、ヨルダン川西岸地区からの流れも細っている」 

    イスラエルの予備役30万人の招集は、イスラエル経済に大きな影響を与えている。ガザ地区からイスラエルへのパレスチナ人労働者数千人の移動が止まっている。影響が出ないはずもない。

     

    (2)「エルサレムの主要なショッピングモールのエスカレーターや通路は紛争勃発から2週間閑散としていた。利用者は徐々に戻っているが、「客足は激減している」と、スポーツウエアを扱う店舗の店長は言う。ホテルは国境地帯から避難してきたイスラエル人で半分ほどが埋まっているが、残りはほとんど空室だ。工場は、ガザ近郊の拠点でさえ操業を続けてはいるが、定期配送を担うトラック運転手の数は必ずしも十分ではない」 

    イスラエルへの外国人観光客は止まっているので、客足が激減している。観光が、メイン産業だけに打撃は大きい。 

    (3)「先週のクレジットカードによる買い物は前年同期比で12%減少。スーパーマーケットでの買い物が急増した以外、ほぼすべてのカテゴリーで激減した。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大期に隆盛を極めたハイテク産業は苦戦を強いられている。イスラエルは国内総生産(GDP)の18%、輸出の半分をハイテク業が占める。「生産性が著しく低下している。生きるか死ぬかが問題になっているときに日々の仕事には集中できない」と、フィンテック企業シータレイのバラク・クライン最高財務責任者(CFO)は語る。同社は国内の従業員80人のうち12人が予備役に招集された」 

    輸出の半分は、ハイテク業が占める。だが、戦争状態にあるので仕事に集中できず、予備役招集の穴も大きい。

     

    (4)「イノベーション庁のドロール・ビン最高責任者によると、ハイテク業界では労働力の推計1015%が予備役として招集された。同庁が多数のハイテク企業、特に初期段階のベンチャー企業と接触したところ、その多くが資金調達ラウンドの最中で、資金不足に陥っている。こうした企業を支援するためにイノベーション庁は1億シェケル(2500万ドル)の基金を設立し、ハイテク新興企業100社が苦境を乗り切るのを支えている」 

    ハイテク業界は、労働力の推計10~15%が予備役として招集されている。この結果、業務が滞って苦境にある。イノベーション庁は支援に乗り出している。 

    (5)「イスラエル政府は紛争のための資金と被害を受けた家計や企業への補償に「無制限の」支出を約束しており、これは財政赤字と債務の拡大を意味する。今後のイスラエル経済を占う上で過去の紛争は参考にはならないかもしれない。今回は、過去の例とは異なると当局者は指摘する。国民の間に「情緒的な危機」があり、それがすでに打撃を及ぼしていると指摘するのは、大手ハポアリム銀行のチーフ経済アドバイザー、レオ・レイダーマン氏。「人々は先行きの不透明さと不安な気持ちから消費支出を最小限に抑える」と見ている。個人消費は経済活動の半分以上を占めるだけに、経済への影響は重大かもしれない。 

    イスラエルは、ハマスの奇襲攻撃で多大の人命を失い人質までとられている。これは、過去にない被害であるだけに、国民の受けた衝撃は簡単に癒やせないであろう。ここで、イスラエルが、ハマスへ地上戦を行って「溜飲を下げる」ことよりも、恒久的な平和を構築することにエネルギーを割くべきかも知れない。報復は、新たな報復をまねくことになるからだ。イスラエルは、重大な選択を迫られている。その意味では、米国が停戦を求めていることは、イスラエルをより冷静にさせるチャンスとなろう。

    テイカカズラ
       

    ガザのハマスによるイスラエル急襲によって、中国の一帯一路をはるかに凌ぐ「インド・中東・欧州貿易回廊(IMEC)」の行方が懸念されている。

     

    米国、インド、中東、欧州連合(EU)の指導者らは9月、ニューデリーで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせ、欧州・中東・南アジアを結ぶ多国間鉄道・港湾構想を発表した。

     

    「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」に関する覚書は、EU、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、米国、その他G20パートナーによって署名された。米国は世界的なインフラ整備で中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗しようというもの。バイデン米大統領は今回の覚書について、2つの大陸の港を結ぶ「真のビッグディール(大きなこと)」であり、「より安定・繁栄し、統合された中東」につながると述べたのである。

     

    『ロイター』(10月11日付)は、「中東経由で印・欧州結ぶ貿易回廊構想 情勢緊迫でもろさ露呈」と題する記事を掲載した。

     

    イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの新たな衝突は、インドと中東、欧州を結ぶ野心的な貿易回廊構想の実現性に影を落としている。米国が支持する同構想は9月にインドで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせて公表され、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙いがある。ただ、イスラエルとハマスの戦闘激化で中東を巻き込むグランドビジョンはどれも一時停止を余儀なくされた。

     

    (1)「『ンド・中東・欧州経済回廊(IMEC)』の支持者らは鉄道や航路で結ぶ貿易回廊の高い潜在性を強調してきた。バイデン米大統領は「画期的出来事」と称賛し、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は「大陸と文明をまたぐグリーンでデジタルな架け橋」と強調。インドのモディ首相も「今後数百年にわたる世界貿易の基盤」と評した。IMECは、2027年までに6000億ドルを世界のインフラに投融資するという主要7カ国(G7)の計画の一部を成す」

     

     

    主要7カ国(G7)は、2027年までに6000億ドルを世界のインフラに投融資する計画である。IMECは、この計画の一部である。中国の一帯一路と異なるのは、IMECがG7という後ろ盾を持っていることだ。

     

    (2)「IMECが貿易回廊として潜在性が極めて高いのは、輸送時間を40%も短縮できる点が大きい。また、インドとサウジアラビアの貿易総額が過去2年間で2倍以上に膨れ、23年度に約530億ドルに達するなど、需要も大きい。しかし、インドにとって本当の収穫は、第3の貿易相手国である欧州との関係を強化できることだろう。インドと湾岸諸国の関係はかなり温まっているが、サウジアラビア・イスラエル間に信頼できる輸送路を確保できなければ回廊は機能せず、インドの新興財閥アダニ・グループが今年運営権を獲得したイスラエル北部ハイファ港から将来的に欧州に製品を輸送することもできない」

     

    IMECは、インドと欧州の輸送時間を40%も短縮できることである。この計画は、サウジアラビア・イスラエル間に信頼できる輸送路を確保できなければ回廊が機能しないという側面がある。こうした背景もあって、サウジアラビアとイスラエルは外交的に接近しつつあったが、この重要な局面でハマスがイスラエルを急襲した。サウジとイスラエルの融和が、IMEC成功の鍵を握っている以上、ハマスの問題をどうするかという根本的な解決が求められている。この際、ハマスが納得するようなアラブ世界の解決策を打ち出せるのか。

     

    軍事紛争がエスカレートする事態になると、IMEC自体の成功はおぼつかなくなろう。何としても、さらなる犠牲を出さずに解決できるのか。この如何にかっている。

     

    (3)IMECは長期ビジョンで、米資本の撤退に見舞われている中国が中東を重視するのも長期的な政策だ。ただ、現状下ではこれらの計画は先送りされることになるだろう。短期的にスエズ運河がインドから欧州への物流の要所にとどまり、トルコが自国の対抗ルートを推すとみられる。戦争のせいで、世界の貿易・金融ルートを再構築する困難さが思い起こされる形になった」

     

    IMECが、吹き飛ぶような事態にならないように祈るほかない。それは、イスラエル自身が恒久的な解決策を探る動きをするかどうかにも関わってくる。イスラエルは、ハマスに急襲されただけにその怒りは強い。それは当然であろう。ただ、「忍び難きを忍ぶ」という高次元から新たな解決策を求めるかどうかも重要だ。IMEC実現が、イスラエルとアラブの経済的共存に道を開くことも事実であろう。関係国が冷静に対応すれば、新たな平和の道が生まれる可能性も出てくるのだ。

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    「スタートアップの国」イスラエルは、ハマスとの紛争で別の挑戦にさらされている。「人が資源」の国だけに、核心人材が予備役招集で職場を離れているからだ。従業員の15%が入隊する中で、世界的なサービスを維持しなければならない。イスラエルはどのように対応しているのか。 

    『中央日報』(10月17日付)は、「従業員の15%が戦場へ、『スタートアップの国』イスラエルの対応策」と題する記事を掲載した。 

    米経済誌『フォーブス』など外信は、イスラエルのスタートアップ従事者の15%がイスラエルとハマスの戦争の予備役招集を通知されたと報道した。今回の招集人材36万人は920万人のイスラエルの人口の4%に相当するが、従事者の年齢帯が低いテックスタートアップの特性上、これら企業の在職者の招集割合が高いということだ。イスラエルイノベーション庁によると、テック産業はイスラエルGDPの18%を占める。そこで働く若者が予備役招集になっている。

     

    (1)「サイバーセキュリティ専門メディアであるザ・レコードメディアは、「イスラエルの先端産業核心人材にはイスラエル8200情報部隊出身が多く、彼らのうち相当数が招集される可能性があり産業が困難に直面する見通し」と報道した。昨年イスラエルの先端技術輸出額は710億ドルで、同国の総輸出額の48%を占める(『2023年イスラエル革新産業報告書』)。この渦中にもスタートアップはサービスを持続しなければならない二重苦に陥っている。特にイスラエルが、強いサイバーセキュリティなどは24時間の対応が重要だ。小規模スタートアップは1~2人が抜けただけでも打撃がある。ニューヨーク・タイムズは「イスラエル企業は海外顧客を失望させてはならないというプレッシャーを感じている。イスラエルの技術業界の対応力が試験台に上がった」と報道した」 

    イスラエルの輸出総額の中で、先端技術輸出額が48%も占めている。IT関連ソフト開発が主体である。それだけに、今回の予備役招集36万人の経済的な影響は無視できないものがある。これが、紛争拡大にブレーキ役を果たせるという期待も生まれる。 

    (2)「AI半導体企業エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、イスラエルにある研究開発部署の社員3300人に支持書簡を送った。現地メディアによると、彼は書簡に「入隊した我が社の社員数百人の無事帰還を祈る。われわれは後から支援を惜しまないだろう」と明らかにした。初期スタートアップが、戦争時期を耐えられるよう助けようという「セーフドームファンド」も組成された。現地メディアによると、元イスラエル軍8200部隊司令官と革新技術省の元官僚らが主導したという。彼らは、米国とイスラエルの個人投資家から5000万ドルを集め、年末までスタートアップ100社に最大50万ドルずつ投資する計画だ」 

    世界的存在になった米のAI半導体企業エヌビディアは、イスラエルの研究開発部署の社員3300人に激励のメッセージを送った。また、米国とイスラエルの個人投資家から5000万ドルを集め、年末までスタートアップ100社に最大50万ドルずつ投資する計画も持ち上がっている。経済支援である。

     

    (3)「核心スタッフが入隊したスタートアップの業務空白を埋めようという運動もオンラインで起きた。『フォーブス』によると、ニューヨークに居住するイスラエルのテック企業出身者が「リモートワークでボランティアしよう」というオンライン申請ページを開き、数日で世界から1000人以上がリンクトインのアドレスなどを登録して支援したという」 

    ニューヨークに居住するイスラエルのテック企業出身者が、「リモートワークでボランティアしよう」とボランティアを募り、世界で1000人以上が登録したという。支援の輪が広がっている。 

    (4)「イスラエルイノベーション庁によると、イスラエルには現在350を超える多国籍企業の研究開発センターがある。グーグルは、テルアビブとハイファに2200人の社員を、マイクロソフトはテルアビブに2000人以上の社員を置いている。巨大テック企業がイスラエルの技術スタートアップを人材ごと買収する事例が多いためだ」

    イスラエルには現在、350を超える多国籍企業の研究開発センターがある。こういう背景もあり、米国内では「イスラエル批判」が禁句となっている。これまで、イスラエルを非難していた人々は、米国のさまざまな大学や職場、権力の中枢で直ちに猛反発に遭っているというのだ。

     

    ハーバード大学のゲイ学長は先週末に、ハマスの10月7日の奇襲攻撃とイスラエルのガザ地区への報復攻撃で生じた「死と破壊に心を痛めている」と表明する文書を出した。その直後、同大のラリー・サマーズ元学長は、ゲイ氏がハマスを非難していないと批判した。10日にはハーバード大学の少なくとも17の学生団体(ユダヤ人学生クラブを含む)や500人の教職員、3000人以上の卒業生と学生が、(イスラエルを非難する)同大学部生のパレスチナ連帯委員会による声明が「完全な誤りであり、非常に侮辱的だ」とする声明に署名した。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月13日付)が報じた。 

    同紙によると、一部の企業リーダーも論争に加わり、中にはイスラエルに攻撃の責任があると考える学生は採用しないと警告するケースも出てきている。猛反発を受け、進歩派の政治家や左派寄りの学生団体の一部は、先週末に始まった暴力行為に関してイスラエルの責任だとする声明を撤回したり、イスラエルを非難する嘆願書から名前を削除したりしている。

     

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    イスラエル軍が13日、パレスチナ自治区ガザ北部のすべてのパレスチナ人に対し、ガザの南部へ24時間以内に退避するよう国連に通知した。イスラエルは、地上侵攻に着手する恐れが強まっている。対象となる住民は約110万人。国連の報道官は声明を出し「壊滅的な人道危機を招く」と表明し、強く撤回を求めた。事態の沈静化を期待するが、紛争拡大となれば世界の原油市況に大きな影響が出る。 

    『ブルームバーグ』(10月13日付)は、「イスラエルとハマスの紛争、拡大なら世界経済リセッション入りも」と題する記事を掲載した。 

    ハマスによる7日の奇襲攻撃に対し、イスラエル軍はガザ地区への地上侵攻を準備しており、こうしたリスクは現実的なものだ。ハマスの攻撃とイスラエル軍の報復空爆による死者は既に数千人に上っており、ハマスを支持するレバノンやシリアの武装勢力が戦闘に加わる懸念もある。

     

    (1)「ハマスは、米国と欧州連合(EU)がテロ組織に指定している。対立が大幅にエスカレートすれば、ハマスに武器や資金を提供しているイランがイスラエルと直接衝突するシナリオも排除できない。そのような事態となった場合、原油相場は1バレル=150ドルに急騰し、2024年の世界の国内総生産(GDP)伸び率は1.7%に落ち込む可能性があるとブルームバーグ・エコノミクス(BE)は推計する。世界経済の損失は約1兆ドル(約150兆円)に達して事実上のリセッションに陥る」 

    中東地域は、エネルギーの重要な供給源であると同時に、船舶の主要な輸送経路でもあり、同地域の紛争は世界中に波紋を広げかねないというリスクを抱える。1973年の第4次中東戦争が最も明白な例で、イスラエル支持国に対する産油国による石油禁輸や先進国のスタグフレーションにつながった。こういう事例があるので楽観はできない。日本では、「石油ショック」「狂乱物価」として記憶されている。 

    (2)「ブルームバーグ・エコノミクスは、世界の成長とインフレにどのような影響が及びそうか、三つのシナリオを検討してみた。1番目のシナリオでは紛争がガザ地区とイスラエルにおおむね限定されるケース、2番目のシナリオはレバノンやシリアなど隣国に拡大して、実質的にイスラエル、イラン両国の代理戦争となるケースを分析。3番目では、両国の直接的な軍事衝突のケースを考察した。これら三つのケースとも、原油相場やインフレ率の上昇、成長鈍化と方向性は同じだが、その程度は異なる。紛争が拡大すればするほど、そのインパクトは地域的なものから一層グローバルなものになる」 

    紛争拡大を止める力は、米国にある。イスラエルへの影響力行使だ。今回の衝突では、イランが関わっていないということで、米国は一安心している。イランへは、復交したサウジアラビアが干渉しないように説得するであろう。サウジは、米国の意向を受けて行動する期待が持てる。米国が、イスラエルとサウジアラビアの関係改善に動いているからだ。

     

    (3)「1番目のシナリオ:紛争がおおむねガザ地区にとどまる場合、世界経済へのインパクトは最小限だろう。イラン産原油への制裁を米国が強化するなどしても、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が余剰生産能力を使って、イランの供給減少分を穴埋めすれば特にそうだ。イエレン米財務長官は国際通貨基金(IMF)の会合で、米国として「危機の潜在的な経済的影響を注視している」とする一方、「世界経済見通しを大きく左右する要因」になるとは見込まれないと話した。紛争が限定的であれば、こうした指摘が正しい評価である公算が大きいだろう」 

    米国は、奇襲攻撃されたイスラエルを支援しているが、来年の大統領選挙も意識しなければならない。極力、拡大を抑える側に回るはずだ。 

    (4)「2番目のシナリオ:衝突がレバノンやシリアにも拡大し、実質的にイスラエルとイランの代理戦争となれば、経済的コストも増すことになる。原油相場は10%上昇し、金融市場では11年初頭から中東・北アフリカの国々で本格化した民主化運動「アラブの春」当時に生じたようなリスクオフが想定される。24年の世界のGDP伸び率は2.4%と、金融危機を受けた09年の世界的な景気低迷や20年の新型コロナウイルス禍の危機を除き、過去30年間で最も低調が見込まれる」 

    実質的にイスラエルとイランの代理戦争となれば、経済的コストも増す。これは、EU(欧州連合)としても放置できないので、抑制側に回るであろう。

     

    (5)「第3のシナリオ:イスラエルとイランの直接対決の可能性は小さいものの危険なシナリオであり、世界的リセッションの引き金となる。原油相場はバレル当たり最高150ドルに急騰する可能性があり、インフレ率は押し上げられる。24年の世界のGDP伸び率は1.7%に押し下げられるだろう。24年の世界のインフレ率は6.7%に達すると推計される。米金融当局は2%の物価目標に手が届かず、ガソリン価格高騰はバイデン米大統領の再選にハードルとなると考えられる」 

    この事態に落ち込めば、バイデン大統領の再選はおぼつかなくなる。産油国には、西側諸国のハイテクを導入して「脱石油」を図らなければならない弱みがある。紛争拡大にブレーキを掛けるであろう。環境は、1970年代の「石油危機」時代と180度変わっていることに留意する必要がある。

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