勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: アラブ諸国経済

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    イスラエルと米国の軍事情報機関は、めったにない機会を捉えるべく、長らく監視と待機を続けてきた。イランの政治・軍事指導者が一堂に会する会合が開かれ、全員を一度に攻撃する機会を狙っていた。イラン側は、無警戒にその隙を与えたのが、今回の攻撃の始まりであった。イラン側は、隙を突かれた怒りの矛先を周辺国にある米軍基地へロケット弾を撃ち込み報復している。

     

    『ブルームバーグ』(3月1日付)は、「『正気に戻れ』、アラブ諸国がイラン批判強める-報復攻撃拡大で」と題する記事を掲載した。

     

    イランの湾岸地域への攻撃に、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が批判を強めた。ムハンマドUAE大統領の上級外交顧問であるアンワル・ガルガシュ氏は、「正気に戻り、周囲の状況を直視すべきだろう。孤立とエスカレーションの輪が広がる前に、分別と責任をもって近隣諸国に向き合ってもらいたい」とX(旧ツイッター)で呼び掛けた。

     

    (1)「UAEのガルガシュ氏は、「あなた方の戦争は近隣諸国とのものではない。このエスカレーションによって、イランを地域における最大の脅威と見る人々の主張を裏付けてしまっている」と続けた。サウジアラビア外務省は、2月28日に始まった米国とイスラエルの攻撃に対するイランの報復に「断固とした」国際的対応が必要だと主張。カタールは、オマーンのドゥクム港に対するイランの攻撃を「卑劣」と表現した」

     

    イラン周辺国は、一斉にイラン批判の声を上げている。自国領にある米軍基地へロケット弾を打ち込んでいるからだ。

     

    (2)「イランは、米国とイスラエルによる空爆に対抗して、イスラエルや近隣のアラブ諸国に報復攻撃を仕掛けているが、アラブ諸国の当局から出てきたこうした発表文は、イランの孤立が深まっていることを示す。UAEの主要都市であるドバイとアブダビは28日朝以降、数百に上るミサイルや無人攻撃機(ドローン)によるイランの攻撃を受けた。大半は迎撃に成功し、死傷者の報告はほとんどない。それでも住民の間にはパニックが生じ、安定した金融・物流拠点であるというUAEの地位や観光業には大きな脅威を呈した」

     

    UAEの主要都市であるドバイとアブダビは、イランから数百に上るミサイルや無人攻撃機(ドローン)が打ち込まれている。イラン批判を強めるのは当然であろう。

     

    (3)「世界の首脳らも、イランを巡る危機の迅速な解決を呼びかけた。米国の同盟国では、イランの最高指導者ハメネイ師を標的とした判断を支持する声も出ている。オーストラリアのアルバニージー首相は1日、記者団に対し「ハメネイ師はイラン政権の弾道ミサイルや核開発計画、武装代理勢力への支援、自国民に対する残虐な暴力や威圧行為に責任があった」との認識を示し、「その死が惜しまれることはない」と述べた。アルバニージー氏はイラン攻撃の合法性に関する判断については、行動に直接関与した米国などの問題だとしつつ、イランの体制が国際平和と安全保障に対する現実的な脅威だったと主張。「今回の措置が迅速な解決につながることを期待する」と語った」

     

    米同盟国は一様にイラン批判で足並みを揃えている。豪州のアルバニージー首相は、ハメネイ師に対して「その死が惜しまれることはない」と手厳しい。イランの体制が、国際平和と安全保障に対する現実的な脅威だったと主張する。

     

    (4)「中国は1日、米国とイスラエルによる対イラン軍事行動が中東を一段と不安定にし、国際法を損なうリスクがあると非難した。新華社によれば、中国の王毅外相はロシアのラブロフ外相と電話会談し、中国は国際関係における武力行使に反対すると表明。イランへの攻撃とイラン最高指導者ハメネイ師の殺害は「受け入れられない」と述べた。マレーシアのアンワル首相は「即時かつ無条件の敵対行為停止」を求めた上で、米国とイランに対し「さらなるエスカレートではなく、外交的出口を追求する」よう促した」

     

    中国は、つい最近までイラン海軍と合同訓練を行った手前、米国とイランに対し即時停戦を求めた。

     

    (5)「アンワル氏は先月28日、フェイスブックに「イスラエルによるイラン攻撃と、それに伴う米国の軍事行動は、中東を破局の瀬戸際に追い込んでいる」と投稿。「これらの攻撃を始めたイスラエルの行為は進行中の交渉を妨げ、阻止が不可能となりかねない紛争に他国を巻き込もうとする卑劣な試みだ」と記した。シンガポール前首相のリー・シェンロン上級相は2月28日、今回の危機がエネルギー価格に影響を及ぼし、中東から遠く離れた国々にも波及する可能性が高いと警鐘を鳴らした。「戦争がどのように始まるかは分かるが、どのように終わるかを見通すのは非常に難しい」と、シンガポールでのイベントで述べた」

     

    マレーシアのアンワル首相と、シンガポール前首相のリー・シェンロン上級相は、米国とイスラエルの軍事行動を非難した。

     

    (6)「ニュージーランドのラクソン首相とピーターズ外相は1日の声明で、イラン政権は長年にわたり国際社会の期待に応えず、国民の支持も失っていたと指摘した。両氏は「この危機ができる限り早期に終結することを国際社会とともに望んでいる」とし、「協議の再開と国際法の順守を求め、イラン指導部に交渉による解決を模索するよう促す」と述べた」

     

    ニュージーランドのラクソン首相とピーターズ外相は、イラン政権は長年にわたり国際社会の期待に応えず、国民の支持も失っていたと指摘。紛争の早期解決を促した。

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    イスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争は、中国の外交的影響力を高める機会になるとの予想があった。だが、紛争が始まって1ヶ月余り経つ現在、中国は目立った動きを止めている。この裏には、中国がロシアから多くの原油を輸入していることや、中国のアラブ諸国への対外直接投資が減っていることが挙げられる。カネの切れ目は、縁の切れ目になっているのだ。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月14日付)は、「中国の影響力にも限界、中東で陰り」と題する記事を掲載した。 

    過去10年の大半の期間、中国が中東で描くストーリーは明快だった。それは投資や貿易、影響力を際限なく拡大させることだ。今年、中国の仲介でサウジアラビアとイランが国交正常化に合意したことや、中国とイスラエルが強力な経済関係を持つことから、パレスチナ自治区ガザでの紛争が激化する中で、中国自身も注目を浴びる存在となっている。

     

    (1)「だが、中国が中東で高めつつある影響力の2本柱、すなわちエネルギー購入と対外投資は、今やかなり流動的だからだ。最も顕著なのは、ウクライナで戦争が起きて以降、中国の石油輸入がロシアに決定的に偏り、ロシアが同国への最大供給国になっていることだ。データ会社CEICの集計によると、中国の2023年7~9月期のロシア産原油の輸入量は、21年同期に比べて42%増加。これに対し、イラクからの輸入量は6%増にとどまり、以前は最大供給国だったサウジアラビアからの輸入量は11%減少した。短期的には、ロシアの石油パイプライン容量の不足のせいで、この変化がなお進展するには限界があるかもしれない」 

    中国は、ロシア経済支援のためにロシアからの原油輸入を増やしている。その分、アラブ諸国からの輸入が減っている。 

    (2)「長期的には、中東から海上輸送するよりもロシアから陸上輸送する量が増えることの地政学的論理性を無視するのは難しいかもしれない。米国との緊張が高まり続ける限り、中国にはロシアと協力してパイプライン容量をさらに拡大する強い動機が生じるだろう。将来、西側と衝突する事態が起きた場合、シーレーン(海上交通路)は影響を受けやすいからなおさらだ。中国経済の成長減速、特に石油化学のようにエネルギーを大量消費する建設関連の重工業分野の成長鈍化は、この先何年にもわたり同国の石油需要の伸びを圧迫する可能性がある」 

    中国は、将来的に地政学的な視点からロシアからの原油輸入を増やすであろう。

     

    (3)「中国の中東経済に対する無限の投資資金源としての役割も、2年前に比べて不確実性が増したようだ。中国・復旦大学のグリーン・ファイナンス・アンド・デベロップメント・センター(GFDC)の報告書によると、2021年に中国の巨大インフラ構想「一帯一路(BRI)」の新規資金投資先で、中東・北アフリカ地域は最大を占め、同年の総額590億ドル投資とBRIに基づく契約のうち約29%を受け取った。だがここ数年、「一帯一路」の壮大な目標や規模は総じて大きな打撃を受けている。新型コロナウイルス禍の影響や、中国内外の債務やプロジェクトの質を巡る懸念の高まりなどがその理由だ」 

    「一帯一路」プロジェクトは、中国の資金難から縮小方向に向っている。中国が、アラブ諸国への対外直接投資を増やす状況ではなくなっているのだ。 

    (4)「アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のデータによると、2023年上半期に締結されたBRIの大型契約は計約400億ドルだった。このまま行くと年間総額は2019年以降で最も高水準になる見通しだが、それでもコロナ前に到達していた年間1000億ドル超の水準を大きく下回る。正式なBRIプロジェクト以外の外国投資はさらに先行きが暗いように見える。CEICのデータによると、イスラエルとイランを除く中東の経済規模上位8カ国に対する中国の純直接投資額は2021年には20年の水準から約3分の1減少した。アラブ諸国が出資しクウェートに本部を置くアラブ投資輸出信用保証公社(DHAMAN)のデータによると、中国は2022年のアラブ諸国への投資額(設備投資ベース)で少なくとも2018年以降初めて上位10カ国に入らなかった」 

    中国は、2022年のアラブ諸国への投資額(設備投資ベース)が少なくとも2018年以降では初めて上位10カ国に入らなかった。中国は、アラブ諸国への対外直接投資を減らしている。

     

    (5)「中国の公式統計によると、今年1~9月の対外直接投資(FDI)総額は、前年同期比6.7%増となった。また非金融分野のBRI投資は50%増加している。だが、中国国内の金融面の負担増大、特に不動産と地方政府の財政破綻が続くことで銀行や国家のバランスシートが巻き添えになる損害を考えると、恐らく今後数年間、外国では倹約せざるを得ないだろう。また西側からの対内投資が消失し続ける中で、多くの中国企業は逆に、資金力豊富な中東の金融家に資金を頼ろうとする傾向を次第に強めるかもしれない」 

    下線部は、重要な指摘である。中国は、自国への対内直接投資が減っているので、アラブ諸国へ融資を依頼する局面が出てくる可能性のあることだ。こういう変化を頭に入れておくべきである。その時期は近いとみられる。一帯一路プロジェクトは、遠い話になってきた。

     

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