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韓国製造業は岐路にある。対中国貿易が、31年ぶりの赤字に転落したからだ。中国国内で、素材や部品の代替生産が拡大している結果である。韓国にとって対中貿易の赤字は、死活問題であり韓国産業界は急遽、ドイツへ使節団を送り新たな方向を探ることになった。 

『東亜日報』(1月4日付)は、「財界が新年早々ドイツ・デンマーク訪問の経済使節団募集 4大グループオーナーの参加に注目」と題する記事を掲載した。 

新年初の海外経済使節団が構成される。財界トップらが2月、ドイツやデンマークなど欧州訪問を推進する。三星(サムスン)電子の李在鎔(イ・ジェヨン会長とSKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長、現代自動車グループの鄭義宣(チョン・ウィソン)会長、LGの具光謨(ク・グァンモ)代表など4大グループのトップが参加するかどうかに注目が集まっている。

 

(1)「1月3日、財界によると、大韓商工会議所はドイツ経済使節団を、韓国経済人協会はデンマーク経済使節団を募集している。旧正月連休が明ける2月19日から海外訪問が始まる見通しだ。ドイツ政府と財界は、2022年と昨年に連続で韓国に官民経済使節団を派遣し、サプライチェーン不安とエネルギー危機などで協力関係を結んだ。昨年5月には、ドイツのオラフ・ショルツ首相が韓国を訪問して両国間の首脳会談を開くほど、両国は緊密な関係を保っている」 

韓国財界は、ドイツとデンマークへ経済使節団を送る方針を発表した。韓国製造業のイノベーション推進の手がかりを得る目的である。 

(2)「ドイツは、伝統的な製造業大国であり、グローバル自動車メーカーや機械、電装など技術中心企業の本場である。これを受け、三星電子やSKハイニックス、LG電子などは、ドイツ法人を欧州市場拡大の拠点に位置付けている。現代自動車はドイツに技術研究所を運営している。2022年からドイツに先端自動車技術試験のためのスマートテック研究所を建設中だ」 

ドイツは、EU最大の製造拠点である。最近は、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、ドイツはエネルギー供給源を安いロシアから米国などへ切替え、大幅なコストアップに直面している。こういう苦難をどのように技術力向上で吸収しているか。韓国製造業に参考となろう。

 

(3)「デンマークは人工知能(AI)と新再生エネルギー、医療およびバイオ分野の強国だ。特にデンマークは主要国の競争力評価機関から「企業しやすい国1位」に何度も挙げられた。経済使節団はドイツ産業界と協力強化やビジネスネットワーク構築、業務協約(MOU)などを進めるものとみられる」
デンマークは、AI・再生エネルギー・医療・バイオで競争力を付けている。韓国には製造業の競争力強化の道を探る上で有益なヒントが得られるかも知れない。このように、韓国は製造業のイノベーションが不可欠になっている。 

『朝鮮日報』(12月31日付)は、「『素材・部品・設備大国』日・独に挑む韓国」と題する記事を掲載した。

世界の産業大国は長年蓄積してきた基礎科学技術を土台にした「素材・部品・設備大国」だという共通点がある。韓国もしっかりとした素材・部品・設備の生態系を構築し、産業競争力をさらに一段階引き上げ、それを持続可能にする作業に着手した。

 

(4)「素材・部品・設備大国になるためのグローバル競争は激しい。半導体素材・部品・設備市場で35%のシェアを占める日本が代表的だ。日本は「失われた20年」と呼ばれる1990年代以降の不況の中でも科学予算を削減せずに理化学研究所など多くの研究機関を支援した。同研究所は3人のノーベル賞受賞者を輩出した日本の基礎科学研究の象徴だ。最近米半導体大手インテルは、日本の理化学研究所と量子コンピューターなど未来技術を共同開発するための作業に着手した」 

日本は、超長期の低成長経済下でも研究開発費を削減することなく投入してきた。この結果、量子コンピューターでは、米国と共に世界の最先端にある。2035年頃には、量子コンピューターが世界で普及し、日米がその先頭に立てる見通しがついている。 

(5)「ドイツも100年以上蓄積された基礎科学分野の底力で世界の素材・部品・設備市場をリードしている。日本と同様に100年以上の老舗企業が多いが、彼らが長期間蓄積してきた重要技術が素材・部品・設備産業が成長する土台になっている。世界の半導体市場を掌握するオランダの半導体装備メーカーASMLの誕生にも大学と研究機関の役割が大きかった。基礎開発から商用化に至るまで、各段階で産学研が協業し、1980年代から30年間独自技術を蓄積した」 

ドイツは、半導体や量子コンピューター部門で日本よりも遅れている。製造業の電子化で立遅れた影響が、現在まで尾を引いているとみられる。

 

(6)「韓国も素材・部品・設備大国になるためには、現在よりさらに思い切った長期間の研究支援と技術開発など「時間の蓄積」を通じ、重要技術を確保しなければならない。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の鄭爀(チョン・ヒョク)元日本地域本部長は、「日本は大学や研究所が長期にわたって開発した重要技術を企業に移転する『産学研体系』を備えている。我々も産学研協力を通じ、基礎科学技術にさらに多くの時間と資源を投資しなければならない」と指摘した」 

日本は、産学研究体制が円滑に行われている。大学自体が、開発した技術を企業化する動きが一般化している。韓国は、この面から取組まなければならない。