中国の「対日勝利80周年」軍事パレードでは、西側諸国が警戒する中ロ朝の3ヶ国首脳が天安門楼上に勢揃いした。米国トランプ大統領は、米国への対抗策を共謀したとして批判の投稿をSNSで行なうほどのインパクトを与えた。中ロ朝の3首脳は、果たして肝心の共同会談を開いたのか。主催国の中国は、西側諸国による警戒感増幅を忌避した模様だ。
『時事通信オンライン』(9月6日付)は、「習氏、『枢軸』結成へ振り切れず 中ロ朝3首脳会談は非開催」と題する記事を掲載した。
中国の習近平政権は、戦勝記念行事に合わせて訪中したロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との3カ国首脳会談を開催しなかったもようだ。個別会談で友好関係を確認するにとどめた。対米共闘の観点からロ朝を糾合する習氏だが、西側諸国が「冷戦期の再現」と見なす「中ロ朝枢軸」の本格結成には振り切れないジレンマがある。
(1)「中国外務省の郭嘉昆副報道局長は4日の記者会見で、「中国は平和を大切にするために外国のゲストを招いた。いかなる国との外交関係の発展も、第三国を標的とするものではない」と述べ、中ロ朝の首脳が米国への「陰謀」を企てているとSNS投稿したトランプ米大統領に反発。関連行事には米、英、仏、カナダなどの戦没者遺族代表らを招待したとも強調し、西側の警戒心の緩和を図った」
中国は、「メンツの国」である。体面を極端に重んじ形式を尊重する。中ロ朝の首脳が、米国へ「陰謀」を企てているというトランプ氏の批判は、急所を突いたものだ。こういう見方が一般的である以上、中国は3ヶ国首脳会談には慎重であったのだろう。
(2)「習国家主席は今回、国際社会に与える波紋の大きさを考慮し、ロ朝との3者会談を見送ったとみられる。3日の軍事パレードでは、1959年以来初めて3カ国の首脳が天安門楼上に並び、既にインパクトは十分だ。核・ミサイル開発にまい進する正恩氏は、日米韓対中ロ朝という「新冷戦」の構図を目指すが、習政権は欧州などとの関係も重視している。北朝鮮と一心同体と見られるのは好ましくない。関税を巡る対米交渉も道半ばで、トランプ政権を過度に刺激する展開は避けたい考えだ」
北朝鮮は、核・ミサイル開発にまい進している。日米韓対中ロ朝という「新冷戦」の構図を目指している。それだけに、中国は迂闊に北朝鮮の動きに同調できないのだろう。北朝鮮国営メディアは5日、中国を訪問した金正恩朝鮮労働党総書記が、約6年ぶりに会談した習近平国家主席から厚遇を受けたと伝えた。経済大国の「後ろ盾」を国内に印象付ける狙いがあるとみられ、韓国メディアは「軍事はロシア、経済は中国」という役割分担がより鮮明になったと報じた。
北朝鮮が、経済苦境の真っ只中で依存できるのは中国である。ロシアは、ウクライナ戦争で疲弊しつつある。こうして、「軍事はロシア、経済は中国」という二股外交を志向する結果となった。中国は、ロシアへ接近する北朝鮮を仲間に加える「中ロ朝」一体化に慎重なのであろう。北朝鮮の国際的イメージが悪すぎるからだ。
(3)「3者会談によって、各国の根本的な立場のずれが露呈するリスクもあった。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対し、北朝鮮は兵士を送り軍事支援を強化しているが、中国は表向き「中立」姿勢を主張している。プーチン政権が北朝鮮の核開発を擁護する姿勢を示す一方、朝鮮半島の不安定化を望まない習政権は、北朝鮮の核実験などには明確に反対してきた。中国人民大の時殷弘教授は「中国は欧州の戦争(ウクライナ侵攻)に直接参加しておらず、中ロ朝を結ぶ貿易体制も存在しない。3カ国は名目上の戦略パートナーにすぎない」と指摘した」
中ロ朝の3者会談は、中国のイメージを北朝鮮によって悪化させるという危険性が大きい。「好戦的」北朝鮮が、中国の懐に入り込むことによるイメージダウンは極めて大きいのだ。中国は、こういう配慮もあって3者会談を回避したのであろう。


