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欧州は、家族との時間を大切にするとされ、合計特殊出生率が東アジアと比べ高かった。その欧州でも、人口横ばいを維持するに必要な合計特殊出生率「2.1」を大きく割り込んで1.5程度である。 

『ロイター』(2月17日付)は、「欧州の出生率低下続く 止まらない理由と手探りの現実」と題する記事を掲載した。 

フランスのマクロン大統領にとって、国家の活力を維持するにはより多くの子どもが生まれることが重要だ。イタリアのメローニ首相も、もっと多くの女性に出産を奨励することを政権の最優先課題に挙げている。しかし、人口統計学者やエコノミストによると、欧州各国が出生率を引き上げようとする試みは何年たっても成果を出していない。そこで彼らが促すのは、少子高齢化が進む社会経済の現実を受け入れて、適切に対応するという発想の転換だ。

(1)「確かに過去10年間、欧州の出生率は1.5前後にとどまったままだ。東アジアほど低くはないが、人口規模を保つのに必要とされる2.1を大きく下回っている。ロイターが取材したマティシアク氏や他の研究者の見解では、この2.1という数字は予見可能な将来において実現できる公算は極めて乏しい。欧州各国は、基本的な福祉政策に加えて、子育て世帯への現金支給や大家族向け税額控除、育児休暇制度など、国民が子どもを持つことを後押しするために何十億ユーロも支出してきた。だが、従来は出生率が1.8前後と比較的高かったフランスやチェコでさえも、現在は下がる傾向を見せている」

 

世界人口は、2080年代に約104億人でピークとなり、2100年頃までその水準が維持されると予測されている。世界的な人口頭打ちが予見される時代において、楽しい家族の典型とされる欧州でも、合計出生率の低下がみられるのはごく自然なことかもしれない。問題は、人口減のスピードが韓国や中国のように早いことだ。これは、社会環境に大きな異変が起こっているとみるほかない。 

(2)「スペイン首都マドリードの大学教授で家族社会学、人口動態、格差問題などを研究しているマルタ・セイス氏は、同国の出生率が欧州ではマルタの次に低い1.19にとどまっている要因として、住宅価格の高騰と雇用不安を挙げる。セイス氏は「人々は子どもが欲しいし、より若いうちに持ちたいだろうが、構造的な理由からそれができない」と述べた。こうした経済的な事情は、欧州各地に共通する。一方で、親になることを巡り、社会文化的に重大な変化が起きている証拠もある。しっかりした家族支援政策が整備されて雇用も確保され、国も豊かなノルウェーでも、出生率は2009年の2から22年には過去最低の1.41に落ち込んでいるのだ」 

スペインでは、住宅価格の高騰と雇用不安が出生率を引下げていると指摘されている。

 

(3)「経済協力開発機構(OECD)は昨年、ノルウェーの出生率低下の根拠として男女の役割が変わってきたことや、キャリア志向の高まり、ソーシャルメディアが不安感を増幅している可能性などを列挙したが、本当のところは謎のままだと締めくくった。フィンランドの人口統計学者アンナ・ロトキルヒ氏も、同じように出生率が下がっている自国の状況を分析する中で、深層的な社会文化の変容に目を向け、多くの若者が今、人生において子育てと他の目標が二律背反の関係にあると考えていると説明した。ロトキルヒ氏はこれはまさに、望ましく喜びに満ち、魅力的な人生やライフスタイルは何かという問題や価値観、理想の多様化に行き着く」と指摘。この新しい状況でどんな家族政策が出生率を引き上げる上で有効に機能するのかは、誰にも分からないと付け加えた 

多くの若ものが、世界の異常気象について深刻に悩んでいることが価値観の変化を生んでいるのかも知れない。それが、出生率の低下現象となって跳ね返っているとも読めるのだ。 

(4)「この出生率低下により欧州には「人口統計の時限爆弾」シナリオに基づく暗い未来、つまり最終的に社会全体が縮み、年金制度が維持できなくなるほか、慢性的な人手不足に悩まされ、高齢者を介護する人もいなくなるという展開が待っているのだろうか。実際には、各国の経済構造において少子高齢化に適応できる仕組みが構築できるかどうかに左右されることになる」

 

出生率の低下が、年金制度の維持を困難にさせるという切実な問題をもたらしている。高齢者の介護をする人がいなくなるという懸念も生じている。これは、移民規制の緩和で解決できる。欧州も頭の切り替えが必要だ。日本は、アジアから多くの若ものを受入れ、介護現場で働いているのが普通の姿だ。 

(5)「インペリアル・カレッジ・ロンドンの経済学者デービッド・マイルズ氏は「時限爆弾」シナリオを否定するとともに、1人当たり国内総生産(GDP)を維持し、人々がより多く、より効率的に働けるようになれば、人口が減少しても生活水準の低下は避けられると主張する。マイルズ氏は、平均余命がずっと長くなっている上、サービス産業主体の欧州経済では激しい仕事は狭い業種にとどまっている。このため、65歳前後を定年退職とする論理には重大な欠陥があるとの見方を示した」 

欧州は、一人当たり名目GDPがほぼ2万ドルを超えている。アジアと違って、経済的に余裕がある。EU(欧州連合)として相互扶助が可能という制度的なメリットもある。アジアに比べれば恵まれているのだ。