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昨年10月、イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃したことで、頓挫していた「サウジアラビアとイスラエル」協議の最新版が現在、米国とサウジアラビアとの秘密交渉で浮上しているという。米国は現在、サウジアラビアと歴史的合意を目指しているとされるが、これを示唆する動きが表面化した。 

『ブルームバーグ』(5月8日付)は、「米国の要請あれば中国から撤退 サウジAIファンドのトップが表明」と題する記事を掲載した。 

サウジアラビアの政府系ファンドから資金提供を受け、半導体や人工知能(AI)テクノロジーに投資している新設ファンドのトップが、米国の要請があれば中国から撤退すると表明した。 

(1)「投資会社アラットのアミット・ミダ最高経営責任者(CEO)は、「今のところ求められているのは製造とサプライチェーンを完全に分離することだが、もし中国との提携が米国にとって問題になるのであれば、われわれは手を引く」と述べた。同社にはサウジのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が1000億ドル(約15兆5000億円)出資している」 

サウジの政府系投資会社アラットのアミット・ミダ最高経営責任者(CEO)は、中国との関係を捨てても米国との関係復活に賭ける姿勢をみせた。中国は、VCの資金不足を補うべくサウジへ接近している。米国が、サウジとの関係強化に動いていることを裏付ける話でもある。

 

(2)「米政府は、国家安全保障上の問題を巡る一連の協議の一環として、半導体産業の発展を目指すサウジ当局に対し、中国と米国の技術のどちらかを選択する必要があると伝えたとブルームバーグが先に報じていた。米国は、サウジやアラブ首長国連邦(UAE)などの国々が、中国企業が米国から購入することを禁じられているテクノロジーに中国政府がアクセスするためのパイプ役になることを懸念しており、中東の中国との関係に一段と神経をとがらせている」 

サウジは、産業の近代化を大わらわで進めている。半導体産業導入もその一環だ。半導体となれば、米国が中国に比べて絶対的に有利であることは言うまでもないことだ。 

(3)「ミダ氏は、米カリフォルニア州で開催されたミルケン研究所主催のグローバルカンファレンスに参加。ブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、「われわれは信頼できる安全なパートナーシップを米国に求めている。米国はわれわれにとって一番のパートナーであり、AIと半導体および半導体業界にとって最も重要な市場だ」と語った。同氏はその上で、アラットは6月末までに米テクノロジー企業2社との提携を発表するほか、米投資会社1社と共同投資を行う予定だと明らかにした。ただ、具体的な企業名には触れず、AIか半導体、あるいはその2つの組み合わせが焦点になるのかどうかに関しコメントを控えた」 

下線部のように、サウジは米国への信頼感を表明している。中国当局が聞いたら「絶句」するような事態だ。サウジにとって、米国との長期安定協定のような「明るい話」が持ち上がっていることをバックにした印象だ。

 

『ブルームバーグ』(5月2日付)は、米国とサウジ 歴史的な協定へ合意に近づくー中東情勢を一変も」と題する記事を掲載した。 

米国とサウジアラビアは、サウジに安全保障を提供するとともに、イスラエルとの外交関係の確立に道を開く歴史的な協定で合意に近づいている。内情を知る複数の関係者が明らかにした。 

(4)「合意への障害は多いが、今回の取り決めは昨年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃し、パレスチナ自治区ガザで紛争が勃発(ぼっぱつ)したことで、頓挫していた枠組み案の最新版に相当する。情報の部外秘を理由に匿名を条件に語った関係者によると、ここ数週間に交渉が加速しており、当局者の間では、米国とサウジが数週間以内にも合意に達するとの楽観的な見方が出ている。合意が実現すれば、中東情勢を一変させ得る。イスラエルとサウジの安全保障を増強するだけでなく、中東における米国の立場を強め、イランや中国の影響力が弱まるかもしれない」 

下線部のように、米国とサウジの協定が実現すれば、中東での米国の立場が強化され、イランや中国の影響力が低下するかも知れないとしている。

 

5)「協定により、サウジはこれまでアクセスできなかった米国の最新兵器の入手も可能になるかもしれない。サウジのムハンマド皇太子は、米国の大規模な投資と引き換えに、最も機密性を要する国内のネットワークから中国の技術を制限することに同意し、民生用核プログラムの構築で米国の支援を得る可能性がある。米国とサウジが合意に達すれば、イスラエルのネタニヤフ首相に提案を行う見通しだ。具体的には、サウジと初めて正式な外交関係を樹立し、投資拡大と地域統合を見据えるこの協定に参加するか、取り残されるか、ネタニヤフ氏に選択を迫るとみられている。ネタニヤフ首相にとって重大な条件となるのは、ガザの紛争を終結させ、パレスチナ国家の樹立に向けた道筋に合意することだろう」 

これまで、サウジは米国へ近代兵器の購入を認めるように要請してきた。米国は、これに対して慎重な姿勢をみせたことで、サウジは反動的に中国へ接近して米国を苛立たせることをたびたび行ってきた。サウジには、米軍が駐屯しているのだ。こういう関係から言えば、米国がサウジへ譲歩する可能性が出てくる。 

米国は、サウジとイスラエルの協定を希望している。これが、中東での米国の影響力を広めるテコになるからだ。これが実現すれば、中東に安定した政治勢力が生まれる。