ハンガリーで、中国製EV電池の「環境リスク」が、初めて公式に暴露され、行政処分へ持ち込まれた。これは、単なる一企業の不祥事ではなく、中国のEV電池産業モデルそのものが、環境違反に問われた意味で、重大な転換点になろう。EV電池は、製造過程で莫大な二酸化炭素を排出する。それだけに厳重な管理が求められるにも関わらず、ルーズな中国方式を欧州へ持ち込み、大恥をかくことになった。
今回の事件は、欧州が抱えていた 3つの懸念が現実化 した。
1)環境汚染リスク(最悪レベル)。
欧州で地下水汚染はレッドラインである。 基準値1万3000倍は、通常の工場事故ではあり得ない数値である。
2)地元住民の反発が臨界点に達した。
粉塵・騒音・水質汚染で住民の抗議が激化している。 欧州では、住民の反対運動が政策を止める力を持つだけに、今回の事態は予断を許さなくなっている。
3)中国企業の「環境管理の甘さ」が制度的問題として認識された。
これは単なる一工場の問題ではなく、 中国の電池産業モデルが欧州の環境基準と根本的に合わない という構造問題が露呈した。
『レコードチャイナ』(7月10日付)は、「中国の電池工場、環境汚染によりハンガリーで操業停止命令―独メディア」と題する記事を掲載した。
独『ドイチェ・ヴェレ』(7月9日付)は、ハンガリーの新政権による環境規制強化に伴い、EV用電池産業に大きな影響が広がっていることを報じた。
記事は、ハンガリーの環境当局が6月下旬、中国の電池部品メーカーである恩捷股份(エナジー・ニュー・マテリアル)の工場周辺から大規模なアルミニウム汚染が検出されたことを理由に、同社の生産許可を一時停止することを決定したと伝えた。
(1)「具体的なデータとして、公式の地下水検査報告書で基準値を1万3000倍以上上回る濃度のアルミニウムやヒ素、亜鉛、鉛、コバルト、カドミウム、ニッケル、クロムなど各種重金属が基準値を超えて検出されたことに触れ、工場があるデブレツェン市当局が刑事告訴に踏み切ったほか、今月1日にはパップ同市長が同社に対し「デブレツェンから立ち去るべきだ」と公に呼び掛けたことを紹介している」
ハンガリーの地元市長は、「立ち去るべきだ」とまで言うほど強い怒りを買っている。これまで、中国でも同じことを繰り返してきたはずだ。環境意識が、微塵もないことを証明した。
(2)「その上で、ハンガリーではオルバン前首相が2021年以降に多額の外国投資を誘致してEV電池産業を成長させたものの、今年4月の総選挙で中道右派の野党指導者マジャル氏を首相とする新政権が誕生すると、全国のすべての電池生産許可を再審査する方針が打ち出されたと解説。ラスロ環境相が環境規制を遵守しない電池工場は閉鎖すると警告しているとした」
旧オルバン政権は、親中国的振る舞いが多かった。新政権は、全てを見直し対象にしている。欧州で、環境対策の甘さは致命傷である。中国政府に取っても不名誉この上ない話だ。
(3)「さらに、与党「ティサ」の議員であるタルカーニ交通投資政務次官が、環境を汚染する工業企業を監視・制裁する新しい規制機関を設立する意向を示したことにも言及。同国内では多くの電池工場建設計画が地元住民の強い不満を招いており、粉塵や水質汚染、騒音などが懸念されていると伝えた。記事は、中国の業界最大手である寧徳時代(CATL)がデブレツェンで電池工場建設を進める中、タルカーニ氏が5月末に「政府は既存の工場敷地に隣接する第2、第3工場を建設する拡張計画を支持しない」と述べたことも併せて紹介している」
CATLの工場まで飛び火している。BYDも工場建設中であるから、厳しい監視の目が注がれる。「ESG基準」から見た今回の事件の位置づけは、次の通りだ。欧州のESG規制は、世界で最も厳しい規制が掛っている。特に、環境(E)については、以下が「絶対基準」となっている。地下水汚染、重金属汚染、有害物質の基準値超過、住民の健康被害リスクなどによって、行政処分(操業停止)や刑事告訴へ進む。今回の中国・恩捷股份のケースは、これらすべてに該当する。
特に 基準値の1万3000倍のアルミニウム検出 は、欧州の環境規制では「即時閉鎖レベル」の重大違反に当たる。 ヒ素・鉛・カドミウム・ニッケル・クロムなどの重金属汚染も、ESG評価では「最悪ランク」に分類される。つまり、ESGのE(環境)で完全アウトである。 欧州市場からの追放は、制度的に避けられないであろう。大変な騒ぎになってきた。この問題は、前政権時代から認識されており、オルバン敗北の理由でもある。



