勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ハンガリー経済ニュース時評

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    ハンガリーで、中国製EV電池の「環境リスク」が、初めて公式に暴露され、行政処分へ持ち込まれた。これは、単なる一企業の不祥事ではなく、中国のEV電池産業モデルそのものが、環境違反に問われた意味で、重大な転換点になろう。EV電池は、製造過程で莫大な二酸化炭素を排出する。それだけに厳重な管理が求められるにも関わらず、ルーズな中国方式を欧州へ持ち込み、大恥をかくことになった。

     

    今回の事件は、欧州が抱えていた 3つの懸念が現実化 した。

     

    1)環境汚染リスク(最悪レベル)。

    欧州で地下水汚染はレッドラインである。 基準値1万3000倍は、通常の工場事故ではあり得ない数値である。

    2)地元住民の反発が臨界点に達した。

    粉塵・騒音・水質汚染で住民の抗議が激化している。 欧州では、住民の反対運動が政策を止める力を持つだけに、今回の事態は予断を許さなくなっている。

    3)中国企業の「環境管理の甘さ」が制度的問題として認識された。

    これは単なる一工場の問題ではなく、 中国の電池産業モデルが欧州の環境基準と根本的に合わない という構造問題が露呈した。

     

    『レコードチャイナ』(7月10日付)は、「中国の電池工場、環境汚染によりハンガリーで操業停止命令独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独『ドイチェ・ヴェレ』(7月9日付)は、ハンガリーの新政権による環境規制強化に伴い、EV用電池産業に大きな影響が広がっていることを報じた。

     

    記事は、ハンガリーの環境当局が6月下旬、中国の電池部品メーカーである恩捷股份(エナジー・ニュー・マテリアル)の工場周辺から大規模なアルミニウム汚染が検出されたことを理由に、同社の生産許可を一時停止することを決定したと伝えた。

     

    (1)「具体的なデータとして、公式の地下水検査報告書で基準値を1万3000倍以上上回る濃度のアルミニウムやヒ素、亜鉛、鉛、コバルト、カドミウム、ニッケル、クロムなど各種重金属が基準値を超えて検出されたことに触れ、工場があるデブレツェン市当局が刑事告訴に踏み切ったほか、今月1日にはパップ同市長が同社に対し「デブレツェンから立ち去るべきだ」と公に呼び掛けたことを紹介している」

     

    ハンガリーの地元市長は、「立ち去るべきだ」とまで言うほど強い怒りを買っている。これまで、中国でも同じことを繰り返してきたはずだ。環境意識が、微塵もないことを証明した。

     

    (2)「その上で、ハンガリーではオルバン前首相が2021年以降に多額の外国投資を誘致してEV電池産業を成長させたものの、今年4月の総選挙で中道右派の野党指導者マジャル氏を首相とする新政権が誕生すると、全国のすべての電池生産許可を再審査する方針が打ち出されたと解説。ラスロ環境相が環境規制を遵守しない電池工場は閉鎖すると警告しているとした」

     

    旧オルバン政権は、親中国的振る舞いが多かった。新政権は、全てを見直し対象にしている。欧州で、環境対策の甘さは致命傷である。中国政府に取っても不名誉この上ない話だ。

     

    (3)「さらに、与党「ティサ」の議員であるタルカーニ交通投資政務次官が、環境を汚染する工業企業を監視・制裁する新しい規制機関を設立する意向を示したことにも言及。同国内では多くの電池工場建設計画が地元住民の強い不満を招いており、粉塵や水質汚染、騒音などが懸念されていると伝えた。記事は、中国の業界最大手である寧徳時代(CATL)がデブレツェンで電池工場建設を進める中、タルカーニ氏が5月末に「政府は既存の工場敷地に隣接する第2、第3工場を建設する拡張計画を支持しない」と述べたことも併せて紹介している」

     

    CATLの工場まで飛び火している。BYDも工場建設中であるから、厳しい監視の目が注がれる。「ESG基準」から見た今回の事件の位置づけは、次の通りだ。欧州のESG規制は、世界で最も厳しい規制が掛っている。特に、環境(E)については、以下が「絶対基準」となっている。地下水汚染、重金属汚染、有害物質の基準値超過、住民の健康被害リスクなどによって、行政処分(操業停止)や刑事告訴へ進む。今回の中国・恩捷股份のケースは、これらすべてに該当する。

     

    特に 基準値の1万3000倍のアルミニウム検出 は、欧州の環境規制では「即時閉鎖レベル」の重大違反に当たる。 ヒ素・鉛・カドミウム・ニッケル・クロムなどの重金属汚染も、ESG評価では「最悪ランク」に分類される。つまり、ESGのE(環境)で完全アウトである。 欧州市場からの追放は、制度的に避けられないであろう。大変な騒ぎになってきた。この問題は、前政権時代から認識されており、オルバン敗北の理由でもある。

     

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    ハンガリーで12日に控える議会選を前に、中国との関係性が争点に浮上している。中国企業の車載電池工場で環境汚染が発覚し、地元住民の間で反対運動が広がっているからだ。野党は、オルバン首相の中国傾斜を批判材料に使い、世論調査でリードしている。中国は、これまでハンガリーを足場にしてEU(欧州連合)進出へ果たしてきた。オルバン政権が、親中派であったことで何かと有利な扱いを受けた結果だ。野党が政権を握れば、中国には逆流となる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月8日付)は、「ハンガリー議会選、野党は政権の親中路線批判 中国の投資戦略に逆風」と題する記事を掲載した。

     

    ハンガリーの議会選では与党の親中路線に批判が集まっている。野党は中国企業との契約内容の精査にも言及している。中国はハンガリーを欧州連合(EU)域内に進出する拠点としてきたが、戦略の見直しを迫られる可能性がある。

     

    (1)「オルバン首相は、これまで中国からの投資を積極的に誘致してきた。中国の自動車大手、比亜迪(BYD)はハンガリーに欧州の事業を統括する欧州本社を設け、南部セゲド市で近く電気自動車(EV)の本格生産を始める。米国のシンクタンク、ロジウム・グループによると、ハンガリーは2025年まで3年連続でEU域内での中国からの最大投資先となった。EU域内における外国直接投資全体の25%に達する」

     

    EUには、ハンガリーが親中ロ姿勢を強めていたことから頭を痛めてきた。EUが、ウクライナへ支援を強化しよとしても、ハンガリーが反対するなど結束できずに来た。

     

    (2)「オルバン氏は、「非リベラル民主主義」と称する強権体制を敷き、中国の習近平国家主席と親密な関係を築いた。習氏は24年にブダペストを訪問し、EV関連の投資拡大などで合意した。ハンガリーは法の支配などをめぐってEUと対立を深め、経済支援を一部凍結されている。汚職のまん延などで経済成長が停滞するなか、中国からの投資に依存を強めた経緯がある。インフラ分野などでの投資では、詳細な契約内容を公開していない。トラブル発生時の対応などをめぐり、中国に有利な条件が盛り込まれているとの指摘が多い」

     

    ハンガリーは、EUの「鬼っ子」であった。親中ロの立場を鮮明にしてきたからだ。EUは、「全会一致」原則がある。ハンガリーが、これを破ることが多かった。議会選の結果によっては、中ロにも大きな影響を及ぼしそうだ。

     

    (3)「環境問題でも中国企業に配慮し、規制をなおざりにしているとの批判が繰り返されてきた。車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)がハンガリー第2の都市である東部のデブレツェンで本格操業の最終準備を進める工場では、環境汚染が表面化している。地元の住民は同工場を監視するため「環境のための母親の会」を設立した。市内周辺の18カ所に大気汚染を観測する設備を配置し、日々の汚染状況を公表している」

     

    オルバン政権は、親中の立場から中国企業の進出を歓迎してきた。これが、中国企業のEU進出の橋頭堡になって、EU全体へ負の影響を及ぼす結果となった。

     

    (4)「同会の幹部であるティボル・ネメスさん(51)によると、冬季に大気の状況は「危険レベル」に達する日が多い。工場は産業用水を大量に必要とするため、主力産業の農業で灌漑(かんがい)用の水が不足する懸念も強い。ネメスさんは州政府などに計画の見直しや環境対策を求めるが、住民への説明会すら開かれていないという。「中国企業の撤退を懸念して、環境保護を二の次にしている」と批判する。強引な産業政策に地元住民の不満は募り、与党離れが広がりつつある。世論調査によると、デブレツェンの選挙区(6議席)では、与党が23議席を失う公算が大きい。前回の22年選挙では与党が全勝していた」

     

    オルバン政権が、ここまで親中姿勢を強めたことで、中国企業による公害が市民生活を圧迫する事態まで生んでいる。

     

    (5)「オルバン氏が失脚すれば、中国の対EU外交にも痛手となる。中国はハンガリーをEU市場に食い込む足がかりと位置づけてきた。欧州各国が中国への依存を引き下げるデリスキングを模索するなか、ハンガリーは対中制裁に一貫して反対してきた。環境団体は野党の「ティサ(尊厳と自由)」と、環境保護の徹底について意見を交わしている。「ティサは政権交代が実現すれば環境保護省を設立し、対策を徹底することを約束した」(ネメスさん)という。ティサはオルバン政権と中国が結んだ不透明な投資契約を問題視し、政権を握れば精査する方針も表明している。オルバン氏が推し進めた中国傾斜に歯止めがかかる可能性が高まる」

     

    オルバン政権が敗北すれば、EU全体にとって結束力が高まり、ウクライナ支援もスムーズに行くであろう。オルバン政権はこれまで、国益無視で親中ロ路線を強化してきた。今、その総決算を迫られている。

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    EU(欧州連合)は、中国への警戒姿勢を強めている。ロシアのウクライナ侵攻に対する中国の姿勢が「支援」であるからだ。こうした中で、中国は、ハンガリーをEU進出への足がかりにしようとしている。中国警官が、中国人観光客の安全維持名目でハンガリーに常駐することから、EU内で中国人監視役を行うのでないかと警戒されている。この中国とハンガリー蜜月化は、どのような展開をするのか。 

    『毎日新聞 電子版』(5月10日付)は、「中国とハンガリーの蜜月なぜ続く?『一帯一路』にEUで唯一参加」と題する記事を掲載した。 

    ブダペストで5月9日行われた、ハンガリーのオルバン首相と中国の習近平国家主席の首脳会談では、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を前進させるなど、経済連携の強化で一致した。両国にはどんな恩恵とリスクがあるのか。欧州連合(EU)の「問題児」とされるハンガリーと中国の蜜月の背景を追った。

     

    (1)「2015年、EU加盟国として初めて一帯一路に参加したのがハンガリーだった。現在、欧州における基幹事業として、ブダペストとセルビアの首都ベオグラードを結ぶ高速鉄道の建設計画が進む。19年に着工し、26年に完成予定だ。24年2月には、ギリシャも計画への参加を発表し、路線はアテネまで延びる見通しだ。ギリシャは債務危機に陥った09年以降、国外からの投資が急減。その際、多額の投資で手を差し伸べたのが中国だった。中国はアテネに近いピレウス港で使用権の大部分を取得しており、高速鉄道の完成で、中国資本による人とモノの流れが、ギリシャ・ハンガリー間に生まれることになる」 

    中国は、得意のインフラ投資でハンガリー・ブタベスト・ベオグラード・アテネを結ぶ高速鉄道を建設する。この投資を巡って「債務の罠」にならないか、監視の目が強まろう。中国が、全額負担して後から回収するときに高利を貪ることがあれば、大きな批判を浴びよう。試金石となる。 

    (2)「欧州全体では、中国資本への警戒感は強まっている。22年2月のロシアによるウクライナ侵攻で、ロシア産天然ガスなどに依存してきた欧州各国は、経済安全保障への意識を高めた。G7とEUは経済の中国依存を避ける「デリスキング」戦略を進めており、イタリアの一帯一路離脱の要因となった。メローニ政権は23年6月、中国企業シノケム・ホールディングスによる伊タイヤ大手ピレリの株式買い増し時に介入し、経営への関与拡大を阻止するなど、中国資本への監視の目を強めている」 

    EUは、中国の人権弾圧を問題視している。さらに、中国がウクライナを侵攻したロシアを支援していることも重なり、根強い「反中国熱」が潜んでいる。イタリアも「一帯一路」を脱退して、反中国の列に加わった。

     

    (3)「ギリシャでも、ピレウス港で21年10月に起きた労働者の死亡事故をきっかけに、港湾を運営する中国企業の劣悪な労働環境が問題になった。ギリシャ国民の対中感情も以前より悪化したとされる。こうした警戒感を反映し、17年の一帯一路国際会議にはEU加盟国ではイタリア、スペイン、ギリシャ、チェコ、ポーランド、ハンガリーの6カ国の首脳が参加したのに対し、23年はハンガリーだけだった。中国はハンガリーを中心とする一帯一路の実績をアピールすることで、他の欧州諸国の関心を呼び戻したい考えだ」 

    ギリシャでは、労働者の死亡事故をきっかけに反中国気運が強い。 

    (4)「EUによる中国への警戒感が強まる中、中国にとってEU内の友好国であるハンガリーの重要度は増しており、ハンガリーがより経済協力の恩恵を受ける形になっている。オルバン氏は習氏との会談後の会見で、「昨年のハンガリーへの投資の4分の3が中国からだ」と誇らしげに語り、謝意の言葉を並べた。その投資の象徴が電気自動車(EV)と車載電池だ。中国EV大手の比亜迪(BYD)は23年12月、南部セゲド市で欧州初となるEV組み立て工場を建設すると発表した。ほかにも車載電池世界首位の寧徳時代新能源科技(CATL)などEV、電池メーカーの工場進出が相次いでいる」 

    ハンガリーで、中国BYDはEV工場を、CATLも電池工場をそれぞれ建設する。ハンガリーは、一手に中国投資の恩恵を受ける。

     

    (5)「ハンガリー政府は24年1月、EVメーカーに向けて1台当たり百数十万円を支給する新たな補助金政策を発表した。これまでトヨタ自動車やスズキなどの牙城だったハンガリーの国内市場で、中国勢のシェア拡大が進みそうだ。またEUは現在、安価な中国製EVの大量流入を警戒し、関税引き上げも視野に、中国政府による中国企業への補助金の調査を進めている。だが、中国企業がハンガリーで生産するEVは、規制の対象外となる可能性がある。 

    中国EVがEUの輸入規制対象外になる場合、中国政府から補助金を支給されていないかチェックを受けるだろう。経営の自由度は、かなり制約されるとみるべきだろう。 

    (6)「EU内ではハンガリーへの批判が強まっている。ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、親ロシアのハンガリーは中国と同様、事実上「中立」の立場を取る。EUが今年2月に決めた500億ユーロ(約8兆3800億円)のウクライナ支援を巡っては、ハンガリーは一時、承認を拒否。EUは同国向けのEU予算支出の凍結も検討した。今年2月には、ハンガリー国内に中国の警察官を受け入れ、パトロールなどを認めることを発表。ハンガリーに住む中国反体制派や人権団体の抑圧につながるとの懸念が広がる。ハンガリーがロシア、中国との関係を強化すればするほど、EU内での孤立が深まる構図が続く」 

    ハンガリーは、EUの統一を乱して中国へ接近すれば、EUは同国向けのEU予算支出の凍結という強硬手段を取るであろう。その意味では、ハンガリーと中国は、EUの監視を受けることになる。

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