テイカカズラ
   

侵略戦争は、いかなる理由があっても行ってならない。これは、人類永遠の願いである。国際刑事裁判所(ICC)は、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスに対する戦争で、イスラエル・ネタニヤフ首相とガラント国防相のほかに、ハマス幹部のヤヒヤ・シンワル、ムハンマド・デイフ、イスマイル・ハニヤの3氏にも逮捕状を請求した。ウクライナ侵攻を行ったロシアのプーチン大統領に続いて、ICCが厳しい姿勢をみせている。 

侵略戦争は犯罪という認識が世界的に高まれば、予想される中国の台湾侵攻も適用されるだろう。理由の如何を問わず、武力によって相手を屈服させることは、野蛮行為そのものである。国連の戦争拒否精神はそこにある。ただ、自衛権は国家固有の権利である。侵略への自衛権に伴う防衛戦争は、ICCから告発されることにはならないであろう。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(5月21日付)は、「イスラエル首相の逮捕状請求 その重大な意味」と題する記事を掲載した。 

イスラエルは数週間前から、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスに対する戦争の遂行をめぐり、国際刑事裁判所(ICC)が同国政府高官の逮捕状発行に向けて動き始めていると警告していた。だが、それでもなお、ICCのカーン主任検察官が20日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相、およびハマス幹部3人の逮捕状を請求すると発表したことは、大きな政治的衝撃をもたらした。 

(1)「国際法・人権の専門家、シーラ・ペイラン氏は、「これは重大なことだ」と指摘する。「欧米に支援される国家の首脳に対して、ICCで逮捕状が請求されたのは初めてだ」ガザでの紛争による法的な影響が深刻化したことを示す動きである。パレスチナ側の発表で死者3万5000人、ガザを人道危機に陥れた7ヶ月にわたる攻撃をめぐり、イスラエルは国際社会から強い圧力を受けている。同時にイスラエルは、国連の最高司法機関である国際司法裁判所(ICJ)からジェノサイド(大量虐殺)の容疑もかけられている。イスラエル側は強く否定している」 

パレスチナ側の発表では、死者3万5000人も出ている。狭い地域での作戦行動は、民間人の被害を増やす。米軍による沖縄上陸作戦が、多くの民間人を巻き添えにした事例と酷似している。中立条約でも結ばない限り、ガザでの平和は守られないであろう。そういう視点からの枠組みづくりが求められる。

 

(2)「カーン検察官は20日、ネタニヤフ、ガラント両氏とハマス幹部のヤヒヤ・シンワル、ムハンマド・デイフ、イスマイル・ハニヤ各氏の逮捕状請求について、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑に関して5氏に「刑事責任」があると「信じるに足る合理的な理由」があると説明した。ハマス幹部3人に関しては、2023年10月7日にイスラエルへの奇襲攻撃を仕掛け、イスラエル側の発表で戦闘員が1200人を殺害し、250人の人質を取って紛争を引き起こしたハマスによる集団殺りく、殺人、誘拐、レイプなどの性的暴力、拷問に対して責任があるとした」 

ハマスも厳しく責任を問われる必要がある。突然、イスラエルを襲って残虐行為の限りを尽くした。イスラエルが厳しく反攻作戦を展開したのは自衛権の執行である。問題は、その範囲を超えたというのがICCの判断であろう。ハマスもイスラエルも、言いたいことは山ほどあるに違いない。ICCが、「戦争犯罪」という認識で取り上げていることは、冷静にその論拠を聞くべきであろう。 

(3)「専門家は、ICCが逮捕状の発行を決めれば、イスラエルの指導者たちと同国の外交上の立場に広範な影響が及びうると指摘する。ネタニヤフ、ガラント両氏にとって逮捕状の発行の意味は大きい。英国や大半の欧州および中南米諸国、アフリカとアジアの多数の国を含む124のICC加盟国・地域を訪問すれば逮捕される可能性が生じるのだ。象徴的な意味合いだけでも影響は大きい。ネタニヤフ、ガラント両氏は、ロシアのプーチン大統領やスーダンのバシル元大統領、リビアの指導者だった故カダフィ大佐といった独裁者たちと同類とみなされることになる」 

ICCの逮捕状発行は、現在の戦争を止めさせる大きなきっかけになるだろう。そうあって欲しいと念じるほかない。

 

(4)「この問題が直接影響するのは、紛争発生から一貫してイスラエルへの最大の武器供与国となっている米国のバイデン政権だ。米国はICCに加盟していないが、ホワイトハウスはプーチン氏の逮捕状に熱い賛意を示した。一方、イスラエル高官の逮捕状には反対している。ICCにとっても事は重大だ。カーン氏の発表後、イスラエルと米国の政治家は「ICCの越権行為であり、ICCは政治化している」と非難した。だが、カーン氏は逮捕状請求の発表に際し、無為無策ではリスクが高まると主張した。ICCに対しては、かねてアフリカやロシア、セルビアの事案に偏っているとする批判の声が上がっている。「今日、一つの核心的な問題を明確にしておきたい。我々が法を平等に適用するという決意を示すことなく、選択的に法を適用しているとみなされれば、法の崩壊を招く状況を生み出すことになる」とカーン氏は述べた。国際人道法は「全ての個人に平等に適用される」と同氏は付け加えた」 

国際人道法は、全ての個人に平等に適用されることを認識すべきだ。侵略戦争は悪である。自衛権執行も限度がある。ICCは、それを示そうとしているのであろう。