勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: インドネシア経済ニュース時評

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    インドネシア政府は23日までに、経営危機にある同国の高速鉄道を巡り、中国側と債務返済の延長で合意したと明らかにした。当初35〜40年だった返済期間が、60年に延びるという。詳細は、まだ固まっていない可能性があるという。インドネシアは、中国政府の「甘言」に釣られて、日本と調印寸前にあった高速鉄道建設計画を反故にし、中国案を採用して大誤算に陥っている。今年10月、開通2年にして「大赤字」である。路線計画の失敗は明らか。中国の責任である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月23日付)は、「インドネシア高速鉄道、中国と返済延長合意か 40年から60年にと題する記事を掲載した。

     

    インドネシア高速鉄道は、2023年10月に商業運転を始めて2年経った。だが、赤字は止まらず債務が膨らむ悪循環に陥り、政府は再建策を検討していた。国家経済諮問委員会のルフット委員長は20日、返済期間の60年への延長で中国と合意したと語った。支払期限の延長により、年間返済額を大幅に圧縮できるという。ルフット氏はジョコ前政権で海事・投資担当調整相として高速鉄道に関与していた。

     

    (1)「高速鉄道の運営会社を統括する政府系ファンド、ダヤ・アナガタ・ヌサンタラ(ダナンタラ)のドニー最高執行責任者(COO)は23日、記者団に「融資条件や金利、通貨について再度訪中し、別途協議する」と語り、詳細を詰める考えを示した」

     

    中国は、強引に日本の建設計画案を「横取り」して、運行開始2年ですでに大赤字を出している。運営会社KCICのインドネシア側(国営企業連合)は、2024年に約4兆1950億ルピア(約3800億円)の赤字を計上。2025年上半期(16月)も1兆6000ルピアの赤字が続いており、累積赤字は5兆ルピア以上と報じられている

     

    (2)「インドネシアの高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」の建設は、中国が広域経済圏構想「一帯一路」の一環として支援する。およそ72億ドル(1兆1000億円)の総事業費のうち75%に当たる54億ドルは中国開発銀行からの融資だ。中国開発銀行は、17年に高速鉄道の運営会社に期間40年、金利2%で約45億ドルを融資した。23年には事業費が想定より増えたことに対応し、期間35年、金利3%強の追加融資も決めた」

     

    追加融資は、中国側の見積もりが過小であった責任であろう。それにもかかわらず、金利を3%へ上げている。インドネシアは、中国の「手玉」に取られている感じだ。

     

    (3)「高速鉄道の運営企業は、インドネシアの国営企業連合が60%、中国の企業連合が40%を出資する。当初は鉄道収入から債務を返済し、国費は投入しない計画だった。鉄道収入が想定を下回り、赤字脱却のメドがたたないため、債務の膨張も続いている。インドネシア側は、運営会社の再建策の立案を進めている。政府系ファンドは運営会社への増資を検討する。さらに財務負担の軽減に向け、鉄道インフラを政府へ譲渡する案も提案している」

     

    鉄道インフラをインドネシア政府へ譲渡するとなると、完全に中国の最初の提案とは違う結果となる。「安物買いの銭失い」という典型例である。大変な難物を仕込まされたものである。中国の甘言に乗った結果が、この事態を生んでいる。

     

    (4)「高速鉄道を巡り、インドネシア政府はもともと日本の新幹線方式を導入する計画だったが、15年に中国案に乗り換えた。日本案では総事業費を6000億円と見積もり、うち4500億円を期間40年、金利0.%の円借款で充当する計画だった。当時のジョコ政権は中国案を選んだ理由に、政府による財政負担や債務の政府保証が必要ないことを挙げた。事実上の国費投入が拡大し、当時の見通しは崩れつつある」

     

    日本案どうりで進んでいたら、今頃は「左うちわ」でさらなる延伸計画も進んでいたに違いない。改めて、国家としての信頼が問われる事態になった。

     

     

     

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    インドネシア政府は、高速鉄道を巡り建設費用の大半を融資した中国と、債務再編の交渉に入った。事業は、政府が日本案を蹴って中国案を採用した。間もなく開業2年だが、赤字に歯止めがかからず経営危機に直面しており、政府の財政負担が拡大する可能性がある。日本案は、ODA(政府開発援助)で金利はほぼゼロ。中国は2.2%の金利であり、インドネシアは、大きな誤算をして頭を抱えている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月13日付)は、「インドネシア高速鉄道、中国と債務交渉 赤字止まらず『時限爆弾』に」と題する記事を掲載した。

     

    同国の高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」は2023年10月17日に商業運転を始めた。東南アジアでは初の高速鉄道で、首都ジャカルタから西ジャワ州の主要都市バンドンまでの140キロメートルを最高時速350キロメートルで結ぶ。

     

    (1)「6月末には乗客数が累計1000万人を超えた。だが、駅が中心部から遠く利便性が悪いことや運行区間が短いことなどから利用は伸び悩んでいる。運営するインドネシア中国高速鉄道社(KCIC)によると、1日当たりの乗客数は平日で1万6000〜1万8000人。現地メディアによれば、1日当たり5万〜7万6000人という当初目標の半数にも届かない。KCICは、国鉄クレタ・アピ・インドネシア(KAI)を中心とするインドネシアの国営企業連合が60%、中国の企業連合が40%を出資する」

     

    中国高速鉄道自体が、中国国内で杜撰な計画で建設を進めている。せっかく建築した駅舎は、20以上も採算が見込めずに開業しないというほどだ。インドネシアの高速鉄道も、同様な結果に陥っている。駅が中心部から遠く利便性が悪いことや、運行区間が短いことなどから利用は伸び悩んでいるのだ。

     

    (2)「国営企業連合は24都市12月期に4兆1950億ルピア(約385億円)の最終赤字を計上した。25年1〜6月期も1兆6250億ルピアの赤字が続く。負債は6月末時点で18兆9348億ルピアに膨らんだ。KCIC全体でみれば、赤字や負債額はさらに大きい。「(高速鉄道の財務問題は)まさに時限爆弾だ」。KCICの主要株主である国鉄KAIのボビー社長は8月、国会の委員会で危機感をあらわにした」

     

    インドネシア政府が、途中で日本案を蹴って中国案に乗ったのは、政府負担がないという「甘言」であった。ところが、杜撰な建設計画であり、工事は延期するという事態へ追い込まれた。こうして債務が膨らみ、結局は政府負担となって跳ね返る。

     

    (3)「高速鉄道の建設は、中国が広域経済圏構想「一帯一路」の一環として、資金や技術面で支援した。72億ドル(1兆1000億)円)の総事業費のうち75%に当たる54億ドルは中国開発銀行からの融資だ」

     

    中国開発銀行からの融資54億ドルの金利は、年間約1億2000万ドルと報道されている。金利は、2.2%にもなる。日本のODAでは0.1%見当である。2.2%vs0.1%の差は大きい。

     

    (4)「インドネシア政府はもともと日本の新幹線方式を導入する計画だったが、15年に中国案に乗り換えた。当時のジョコ政権は中国案を選んだ理由として、政府による財政負担や債務の政府保証が必要ないことを挙げた。危機に陥ったのは事業の見通しの甘さが背景にある。総事業費は当初は約60億ドルを予定していたが、建設の遅れなどで12億ドルも膨らんだ。地元報道によれば、利息支払いだけで年間約1億2000万ドルに上る」

     

    日本は、詳細な建設工事案まで出しており調印直前まで話が進んでいた。中国は、事前調査もせずに日本の工事案を参考に、インドネシア政府へ甘い計画を提出した。その代償が、インドネシアと中国の双方へ降りかかっている。

     

    (5)「政府は、総事業費が膨らんだ際にも一部国費を投入した。中国との債務再編を巡る交渉では、さらなる国費投入を迫られる可能性が出ている。政府は利用客の拡大に向け高速鉄道を同国第2の都市スラバヤまで500キロメートル以上延伸する構想を打ち出していた。しかし、債務問題の表面化で不透明感が漂う。インドネシアのシンクタンク、経済法律研究センター(CELIOS)のビマ・ユディスティラ氏は、「債務再編では政府や政府系ファンドがさらに負担やリスクを負う可能性がある。前政権は説明責任を果たす必要がある」と語る」

     

    インドネシア政府は、「安物買いの銭失い」となった。総事業費が膨らんだ際にも、一部国費を投入しているからだ。中国が、「財政負担ゼロ」という当初の触れ込みは、全く事実に反する結果となった。

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    インドネシアのアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相は24日、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟について「年内にも申請する」と明らかにした。輸出競争力を高め、経済成長を加速させる。インドネシアは、2045年に先進国入り目標を掲げる。TPP参加で、メキシコや南米の数カ国だけでなく、英国市場も魅力に映っている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月24日付)は、「インドネシア経済調整相『年内にもTPP加盟申請』」と題する記事を掲載した。

     

    インドネシアのアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相は24日、日本経済新聞のインタビューに答え、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟について「年内にも申請する」と明らかにした。輸出競争力を高め、先進国入りを確実なものにする狙いだ。

     

    (1)「アイルランガ氏は、調整相として複数の経済関連省庁を統括しながら、インドネシアの経済政策立案を担ってきた。有力政党のゴルカル党の党首も務めており、10月に発足するプラボウォ次期政権でも重要閣僚として入閣する可能性が高い。インドネシアはニッケルや天然ガスなど豊富な資源を抱える。同国の加盟が実現すれば、TPP加盟国は工業品などの供給網をより広くカバーできるようになる。世界4位の約2億7000万人の人口が生み出す巨大市場が加われば経済圏もさらに拡大する」

     

    アイルランガ氏は、10月に発足するプラボウォ次期政権でも重要閣僚として入閣する可能性が高い。インドネシアは、ニッケルや天然ガスなど豊富な資源を抱える。TPP加盟は、既加盟国にも大いにプラスだ。

     

    (2)「アイルランガ氏はTPPについて「大統領の承認は得ている。いつ加盟を申請するかは技術的な問題だ」とし、早ければ年内にも実現する考えを示した。インドネシアは2045年に先進国入りする目標を掲げる。経済成長の加速には製造業など付加価値の高い産業を育成することが不可欠だ。TPP加盟により輸出産業を強化する狙いがある。アイルランガ氏は、「TPPに参加することで、さらにメキシコや南米の数カ国だけでなく、英国市場も開放される」と語った」

     

    インドネシアは、2045年の先進国入りを目指している。それには、製造業を強化して輸出を増やさなければならない。TPPが、そのお膳立てをする。

     

    (3)「インドネシアは、すでに「東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)」に参加している。RCEPは中国が参加している唯一の大型自由貿易協定だが、関税の削減率など自由化の度合いはTPPと比べて低い。TPPは日本がとりまとめ役となって18年12月に発効した後、加盟国が拡大している。23年には英国が協定発効後で初となる新規加盟国として承認された。中国や台湾、エクアドルなども加盟を申請している。東南アジアの地域大国であるインドネシアが加盟することになれば、TPPの経済枠組みとしての影響力も高まる」

     

    TPP加盟希望国は、中国や台湾、エクアドルなどがある。加盟審査は、書類提出順でないとされているので、インドネシアの加盟審査は、早くなる可能性もあろう。

     

    (4)「アイルランガ氏は、ハイブリッド車(HV)の普及に向けた税制優遇策を検討していることも明らかにした。電気自動車(EV)はまだガソリン車よりも価格が高いことから、「EVへの移行途上では、HVがギャップを埋める役割を果たせる」とした。インドネシアの新車販売シェアはトヨタ自動車など日本勢が9割以上を占める。HVは日本勢が強みを持つ技術で、投資拡大につながりそうだ。23年のHVの販売台数は前年比5.2倍の約5万4000台で、1万7000台だったEVを上回った」

     

    日本にとって、インドネシアはHVの重要市場である。インドネシアは、政治的に中立を標榜している。日本が後押しすれば、加盟審査は順調に進む公算が強い。

     

    (5)「インドネシアは、世界のニッケル生産の5割を占める強みを生かし、EV産業の育成を進めている。EVでは部品の現地調達率が40%を超える車種などを対象に、付加価値税が11%から1%に減る。HVについても付加価値税を引き下げることなどを検討しているとみられる。導入時期のメドについては明らかにしなかった」

     

    インドネシアは、世界のニッケル生産の5割を占める強みを持つ。TPP加盟国にとっても、ありがたい存在である。

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