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インドネシアのアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相は24日、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟について「年内にも申請する」と明らかにした。輸出競争力を高め、経済成長を加速させる。インドネシアは、2045年に先進国入り目標を掲げる。TPP参加で、メキシコや南米の数カ国だけでなく、英国市場も魅力に映っている。

 

『日本経済新聞 電子版』(5月24日付)は、「インドネシア経済調整相『年内にもTPP加盟申請』」と題する記事を掲載した。

 

インドネシアのアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相は24日、日本経済新聞のインタビューに答え、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟について「年内にも申請する」と明らかにした。輸出競争力を高め、先進国入りを確実なものにする狙いだ。

 

(1)「アイルランガ氏は、調整相として複数の経済関連省庁を統括しながら、インドネシアの経済政策立案を担ってきた。有力政党のゴルカル党の党首も務めており、10月に発足するプラボウォ次期政権でも重要閣僚として入閣する可能性が高い。インドネシアはニッケルや天然ガスなど豊富な資源を抱える。同国の加盟が実現すれば、TPP加盟国は工業品などの供給網をより広くカバーできるようになる。世界4位の約2億7000万人の人口が生み出す巨大市場が加われば経済圏もさらに拡大する」

 

アイルランガ氏は、10月に発足するプラボウォ次期政権でも重要閣僚として入閣する可能性が高い。インドネシアは、ニッケルや天然ガスなど豊富な資源を抱える。TPP加盟は、既加盟国にも大いにプラスだ。

 

(2)「アイルランガ氏はTPPについて「大統領の承認は得ている。いつ加盟を申請するかは技術的な問題だ」とし、早ければ年内にも実現する考えを示した。インドネシアは2045年に先進国入りする目標を掲げる。経済成長の加速には製造業など付加価値の高い産業を育成することが不可欠だ。TPP加盟により輸出産業を強化する狙いがある。アイルランガ氏は、「TPPに参加することで、さらにメキシコや南米の数カ国だけでなく、英国市場も開放される」と語った」

 

インドネシアは、2045年の先進国入りを目指している。それには、製造業を強化して輸出を増やさなければならない。TPPが、そのお膳立てをする。

 

(3)「インドネシアは、すでに「東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)」に参加している。RCEPは中国が参加している唯一の大型自由貿易協定だが、関税の削減率など自由化の度合いはTPPと比べて低い。TPPは日本がとりまとめ役となって18年12月に発効した後、加盟国が拡大している。23年には英国が協定発効後で初となる新規加盟国として承認された。中国や台湾、エクアドルなども加盟を申請している。東南アジアの地域大国であるインドネシアが加盟することになれば、TPPの経済枠組みとしての影響力も高まる」

 

TPP加盟希望国は、中国や台湾、エクアドルなどがある。加盟審査は、書類提出順でないとされているので、インドネシアの加盟審査は、早くなる可能性もあろう。

 

(4)「アイルランガ氏は、ハイブリッド車(HV)の普及に向けた税制優遇策を検討していることも明らかにした。電気自動車(EV)はまだガソリン車よりも価格が高いことから、「EVへの移行途上では、HVがギャップを埋める役割を果たせる」とした。インドネシアの新車販売シェアはトヨタ自動車など日本勢が9割以上を占める。HVは日本勢が強みを持つ技術で、投資拡大につながりそうだ。23年のHVの販売台数は前年比5.2倍の約5万4000台で、1万7000台だったEVを上回った」

 

日本にとって、インドネシアはHVの重要市場である。インドネシアは、政治的に中立を標榜している。日本が後押しすれば、加盟審査は順調に進む公算が強い。

 

(5)「インドネシアは、世界のニッケル生産の5割を占める強みを生かし、EV産業の育成を進めている。EVでは部品の現地調達率が40%を超える車種などを対象に、付加価値税が11%から1%に減る。HVについても付加価値税を引き下げることなどを検討しているとみられる。導入時期のメドについては明らかにしなかった」

 

インドネシアは、世界のニッケル生産の5割を占める強みを持つ。TPP加盟国にとっても、ありがたい存在である。