中国は、衰退期に入った大国が必ず示す「執着の外交」をインドネシアに対して行っている。逃げるインドネシアを追いかける中国の姿は、21世紀後半の「文明的縮小」の前兆である。インドネシアと中国は21日、両国の外相と国防相がそれぞれ会談した。インドネシアは、米国とも防衛分野の連携を強めており、米中双方との距離の取りかたに苦慮している。
インドネシアは、米国・豪州・日本との防衛協力を拡大している。米国とは、「主要防衛協力パートナーシップ」まで結んでいる。豪州とは安全保障条約、日本とも装備品協力を拡大である。中国は、それを「追いかける」ように国防協力拡大を打出している。外相・国防相が同時にインドネシアを訪問して2プラス2会談を開催。海洋共同開発を提案し、台湾東部沖での共同軍事訓練まで行った。中国の完全な「押しかけ」である。
中国は、なぜインドネシアに執着するのか。理由は三つの焦りであり。
1)南シナ海の正当性を失いつつある。中国は南シナ海でフィリピンに押され、 国際的正当性を失っている。だから、対外的にインドネシアを味方に見せたいのだろう。
2)グローバル・サウスの求心力が低下。中国は、「グローバル・サウスの盟主」を自称してきたが、実際にはインド・ASEAN・アフリカが距離を置き始めている。だから、インドネシアを「象徴的な味方」にしたいのであろう。
3)国内の衰退を外向きの協力で補いたい。経済崩壊・人口減・軍粛清で国内が弱体化している。だから、外向きの協力で「強い中国」を演出したいのであろう。
『日本経済新聞 電子版』(8月21日付)は、「インドネシア、中国と国防協力を拡大 米中双方との『距離』に苦慮」と題する記事を掲載した。
インドネシアは中国と国防協力を拡大する。21日に両国の外相と国防相がそれぞれ会談した。米国とも防衛分野の連携を強めていて、米中双方との距離の取りかたに苦慮する。
両国は南シナ海で海洋資源を巡り対立してきたが、2024年11月には「主張が重複する領域」での共同開発の検討で合意した。王外相は「海洋協力を強化し、南シナ海における共同開発を推進していく」と語った。21日には両国の外相と国防相による「2プラス2」も開いた。同会合は25年4月以来、2回目だ。
(1)「王氏らのインドネシア訪問は、両国軍が台湾東部沖で共同軍事訓練をした直後だった。中国が訓練の念頭に置いたのは、5月末に排他的経済水域(EEZ)の境界画定交渉の開始で合意した日本とフィリピンだ。日比交渉の対象海域は台湾東部沖を含み、台湾を自国領の一部とみなす中国は反発してきた。中国が、この海域で他国と戦術的な演習をするのは初めてだ。インドネシア外務省は、「海軍間の定例的な交流で特定の陣営を優遇するものではない」とするが、中国にとっては海域の管轄権と軍事演習の正当性を国際社会に訴えやすくなり意義は大きい」
中国は、インドネシアを味方に引き入れたい一心である。そうしなければ、アジアでの孤立を印象づけるからだ。
(2)「中国の東南アジア諸国連合(ASEAN)外交は、南シナ海の領有権を争うフィリピンと対立する一方、他の加盟国とは経済や安全保障の協力を深めるのが基本戦略だ。なかでも人口や経済の規模が大きいインドネシアとの関係を重視する。インドネシアは最大の経済パートナーである中国との緊張を回避するため、24年10月のプラボウォ大統領の就任以降、防衛協力を広げてきた」
インドネシアは、中国に気付かれないように中国からの離脱を図っている。米国、豪州、日本と関係を深めているからだ。
(3)「インドネシアは、米国など西側諸国との防衛協力も拡大させ、国軍装備の近代化などを通じた国防力を引き上げようとしている。米国とは、4月に両国関係を「主要防衛協力パートナーシップ」に引き上げることで合意した。オーストラリアとは、2月に安全保障条約に署名し、いずれかの国が安保上の脅威に直面した際、共同の対応策などを協議する内容を盛り込んだ。8月下旬には米国と大規模軍事演習「スーパー・ガルーダ・シールド」を始める予定だ。日本や豪州など合計10カ国以上が参加する見通しだ」
インドネシアの基本戦略は、米国圏へ身を寄せることだ。経済的にみれば、明らかに中国経済の「落勢」が目立ち始めている。「船」を乗換えるのは、自然の選択であろう。
(4)「インドネシアは、伝統的に「非同盟諸国」として東西のどちらの陣営にも属さず、全方位外交を志向している。プラボウォ政権は各国のバランスをとるために相次いで防衛協力のレベルを上げているが、地政学的な問題に巻き込まれるリスクもはらむ。4月には米国からの提案を受けて米軍機の自国領空通過を認める案を協議していることが明らかになった。国内では米軍の監視・偵察活動に領空が広範に利用され、安全保障上のリスクを増大させるとの懸念が広がった」
インドネシア国内には、非同盟主義に共鳴する人々も多く存在する。同じ非同盟主義のインドは、米国陣営へ身を寄せることを選択している。



