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日本の政府開発援助(ODA)は、10月に70年の節目を迎える。日本のODAで経済成長を支えてきた東南アジア主要国が、今度は日本と協力して途上国向けの開発協力を拡大する側に回ることになった。日本が蒔いてきたODA支援の種が、東南アジアで立派に実って、新たな時代を迎える。 

日本型の開発協力は、技術協力や人材育成を柱とする。中国の「一帯一路」は、相手国へ融資して中国企業によってインフラ工事する「搾取型」である。債務漬けにして担保を取り上げる「高利貸し型」でもある。日本ODAは、こういうスタンスの中国と「大違い」だ。日本ODAは、相手国の立場を尊重する「奉仕型」であり、多くの発展途上国から共感されている。 

『日本経済新聞 電子版』(10月10日付)は、「アフリカ向けODA、転機にーアフリカ連合開発庁長官 ナルドス・ベケレトーマス氏と題する記事を掲載した。ナルドス・ベケレトーマス氏は、南アフリカの国連常駐調整官や国連事務総長室上級局長などを経て、22年から現職。

 

アフリカ連合(AU)は独自の通貨基金の設立に動いている。国際通貨基金(IMF)への依存を減らし、開発に関わる政治的な影響を遮断し、自らの財源から優先度が高いプログラムを実行するためだ。アフリカは世界各国と対等な立場で新たなパートナーシップを構築したいと考えている。全ての国をひとまとめに語るのには無理がある。アフリカの変革プロセスに真剣に協力してくれる国もあるし、自国の政治や利益に左右される国もある。結果として、アフリカは政府開発援助(ODA)が必ずしも十分に機能していないことに気づき始めている。 

(1)「日本のODAがアジア各国を変革し、非常に生産的な成果を生んだことには注目している。インドネシアやシンガポールなどの巨大な経済国を誕生させた。われわれの研究では日本が途上国を見下すような姿勢を示さず、中立的なスタンスを取り、相互に協力し合った効果が大きい。国際協力機構(JICA)の対等なパートナーシップは、アフリカでも広く受け入れられており、アフリカの文化とも幅広く融合している」

 

日本企業が、アジアで成功したのは生産拠点を移管し、技術を移転させて人材を育て、現地の経済成長を実現させたからだろう。「メード・イン・ジャパン」から「メード・ウィズ・ジャパン」への戦略の切り替えが奏功したといえる。アフリカでの中国の覇権は、揺らいでいる。日本のように、対等なパートナーシップで利益を分け合うスタンスで臨めば、「愛されるODA」になる。 

中国は、アフリカの地下資源開発を狙っている。その手順は、先ず漁業権を得て足場を築き、ここから漁港改修や陸地での資源開発へ手を伸して中国経済圏へ組み込んでいく。アフリカ諸国は、気付いたら「チャイナ・エコノミー」に占領されていたというほど巧妙である。だが、アフリカはかつて欧州の支配下での苦い経験から、中国を「第二の欧州」とみて警戒し始めている。日本には、こういう「邪念」のないことをアジアのODA実績で知っているのだ。 

(2)「アフリカ向けのODAは、このような結果を生まなかった。欧州の国々はアフリカが産出する原材料に依存しながら、アフリカのバリューチェーン構築には協力してこなかった。アフリカ各国に主権があり、それぞれの国の責任ではあるが、中国のインフラ開発で、過剰債務を抱えて苦しんでいる国があるのも現実だ。欧州や中国などはアフリカで活動する権利を持っているが、アフリカにもノーと言う権利と選択肢があるべきだ」 

中国は、植民地支配反対と口にするが、実態は欧州の「植民地経営」と同じような振る舞いをしている。中国の製品をアフリカ諸国へ売りつけ、アフリカ産農産物輸入には高い障壁を設けているのだ。アフリカの中で、中国の債務漬けにされている国の裏には、こういう中国手法が使われている。

 

(3)「アフリカが、ノーと言える自信を持つためには、経済統合を加速する必要がある。アフリカ連合開発庁―アフリカ開発のための新パートナーシップ(AUDA-NEPAD)はインフラや包括的な農業、気候変動対策などのプログラムを持ち、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実現を支援している。ほとんどの国がすでに批准しており、関税の撤廃と貿易自由化は確実に進む。開発の欠如が地域の不安定さや紛争、貧困を生み出しているのは確かだ。インフラが大小の国々を結び、巨大なマーケットが誕生すればアフリカは変わる。まずは、アフリカが公平な利益を得られるような国際協力と支援が強く求められている」 

アフリカは、余りにも「ナイーブ」でありすぎた。中国は、欧州と違うだろうと期待したが、現実は「搾取型」で変わりなかった。アフリカが、その経済的地位を向上させるには、「ノー」と言える自信を持つべきとしている。それには、日本のODAが「途上国を見下すような姿勢を示さず、中立的なスタンスを取り、相互に協力し合った効果が大きい」という評価を、アフリカにも広げることだろう。