中国は、5月1日からアフリカ53カ国の輸入品関税をゼロにする。原油やレアアース(希土類)などの資源を多く輸入する中国が、関税撤廃によってアフリカの資源囲い込み策に出た。これは、日本・米国・EUが進めているレアアースなど「重要鉱物特恵市場」(8月稼働)へ対抗する狙いだ。重要鉱物特恵市場は、日本の化学的精錬法をベースにしたESG基準によって精錬された鉱産物の関税をゼロにするもの。
重要鉱物特恵市場は、28年以降に軌道に乗りはじめる見通である。中国は、化学的精錬法技術がないので、劣勢に立たされることが確実視されている。それだけに、アフリカ53カ国の輸入品関税をゼロにして早めの防衛策に出たものだ。日本・米国・EUなどが、重要鉱物特恵市場でESG基準の鉱物のみ購入すると宣言すると、中国産鉱物は主要販売先を失い、「恐慌状態」へ陥るものと予測されている。今回のアフリカ53カ国の輸入品関税をゼロ効果は、それまでの「寿命」となろう。
『日本経済新聞 電子版』(4月29日付)は、「中国、アフリカ53カ国にゼロ関税 資源調達に追い風」と題する記事を掲載した。
中国は、2024年12月から後発発展途上国(LDC)の33カ国への関税をゼロにしてきたが、28年4月末まで新たに20カ国にも適用する。経済規模の大きいナイジェリアや南アフリカなども加わり、台湾と外交関係のあるエスワティニを除くすべてのアフリカ諸国が対象となる。
(1)「中国は、25年6月に湖南省で開いたアフリカ53カ国との会議で輸入関税をゼロにする方針を打ち出していた。中国商務省は関税ゼロ政策が「アフリカ諸国に発展の機会を提供する」と訴える。アフリカは豊富な資源を持ち、中国にとって輸入拡大は利点がある。南部の産油国アンゴラから原油を多く輸入していて、3月は輸入全体の5%を占めた。南西部のナミビアはジスプロシウムなどレアアースの産地だ」
ナミビアは、中国への鉱石売りを断って日本との関係を深めている。UNCTAD (国連貿易開発会議)や 日本との協力方針を明確にした。経済産業省が、新たな資源探査に乗り出すなど、中国とは一線を引いているのだ。ナミビアの他に、ザンビア、マダガスカル、タンザニア、南アフリカもESG基準に基づく自国での製品化によって、重要鉱物特恵市場へ参加するものとみられている。
(2)「アフリカ側の期待も大きい。ケニアのキンディキ副大統領は3月下旬、中国の韓正(ハン・ジョン)国家副主席とともにナイロビ駅で中国への「関税ゼロ第1便」の出荷を見守った。アボカドやコーヒー、豆類が積み込まれたコンテナは鉄路で主要港湾モンバサ港まで行き、船で中国に送られる。キンディキ氏は、「富を生み出す最も確実な方法は貿易だ」と強調する。「中国への無関税アクセスは同国市場でのケニア産品の競争力を高め、農家や貿易業者、輸出企業の収入を増やす」と期待を寄せる」
ケニアは、いずれESG基準によって中国が世界市場から排除されることも知らないのであろう。今は感激しているが、自国の売った鉱石は製品化しても市場を失う事態となろう。
(3)「マンガンやアルミなどの鉱石や原油といった主力輸出品を持つガーナのマハマ大統領も、「輸出障壁だった関税の撤廃は特にカカオ加工品や繊維など、付加価値の高いガーナ製品の競争力を高める」と語った。もっとも実際の輸出拡大にはアフリカ諸国のインフラの未熟さが障壁となる。国連貿易開発会議(UNCTAD)は24年の報告書で「輸送やエネルギー、ICT(情報通信技術)のインフラ不足により、アフリカの貿易コストは世界平均を約50%上回る」と指摘した」
ガーナは、マンガンやアルミなどの鉱石を生産している。野口英世の黄熱病研究の地としても知られ、日本との関係が今も深く続いている。いずれ、日本の化学的精錬法を広める役割を果すかも知れない。
(4)「中国は近年、アフリカ諸国を含む広域経済圏構想「一帯一路」への投資を増やしている。オーストラリアのグリフィス大と中国の復旦大の研究機関の調査によると、25年の投資額と建設契約額の合計は2135億ドル(約33兆円)で、地域別ではアフリカ向けが最大だった。貿易拡大と並行してグローバルサウス(新興・途上国)への投資も増やして影響力を高めようとしている。米国は、アフリカを含む各国に高関税措置をとるなど、自由貿易に背を向けている。中国は、これに対抗する意味合いもある」
中国が、ESG基準によって西側諸国から排除されるであろう28年以降は、アフリカにおける支配圏が大きく後退するであろう。


