中国は、南シナ海のフィリピン所有の島嶼を巡って紛争を続けている。フィリピンは、これに対抗すべく今年4月、フィリピン北部のルソン島に米国の中距離ミサイルを配備したことで形成が逆転した。なんと、中国の海上戦力の7割、航空戦力は5割が射程圏にはいってしまうのだ。これまで、中国は圧倒的な武力を背景に「フィリピン虐め」をしてきたが、中距離ミサイルが逆に中国の喉元を脅かす事態となった。「過ぎたるは及ばざるがごとし」である。
『朝鮮日報』(10月22日付)は、海上戦力の70%、航空戦力の50%が射程内 中距離ミサイルで中国を包囲する米国」と題する記事を掲載した。
米国が今年4月にフィリピン北部のルソン島に配備した中距離ミサイルが、中国の頭痛の種になっています。米国は、フィリピン軍と合同軍事演習を行うという名目で持ち込んだミサイルランチャーを引き揚げず、これまで6カ月にわたり駐屯させ続けているからです。永久駐屯に入るのではないかという話まで出ています。
(1)「タイフォンという名前のこのシステムは、車両を用いた移動式のミサイルランチャーで、最大射程2500キロのトマホーク巡航ミサイルなどを発射できます。有事の際、台湾海峡を渡る中国海軍の艦艇はもちろん、東部戦区司令部をはじめ中国南東部沿岸の主な空軍飛行場・海軍基地・ミサイル基地などが射程内にあります。中国は、フィリピン政府をいじめています。しかし、フィリピンはこうした圧迫に屈さず、自国の防衛のために米国からタイフォンのシステムを買いたい、と言い出しました。さらに米国は、タイフォンのランチャーを沖縄などに配備する案を日本政府と協議しているという事実を公表しました」
フィリピン政府は、米国のタイフォンを購入して中国の脅威に対抗する姿勢をみせている。
(2)「米陸軍は今年4月7日、ワシントン州のルイス・マッコード統合基地(JBLM)にいたタイフォン中隊をルソン島に移しました。4月中旬にフィリピン軍と合同で行う「サラクニブ(盾)」演習に参加する、という名目でした。タイフォンは、トマホーク、SM6ミサイルなどを陸上から発射する移動式ランチャーで、米国の防衛関連企業ロッキード・マーチンが開発しました。トマホークは中距離巡航ミサイルで、防空網を回避しつつ目標を精密攻撃することで有名です」
タイフォンは、トマホーク、SM6ミサイルなどを陸上から発射する移動式ランチャーの中距離(2500キロ)ミサイルである。
(3)「タイフォン中隊のフィリピン展開は、米軍が冷戦後初めて海外に中距離ミサイルを配備した、という意味を持っています。中国は強く反発しました。中国国防部(省に相当)の呉謙報道官は「中距離ミサイルは冷戦の色彩が濃厚な戦略的かつ攻撃的な武器」だとし「地域の戦略的均衡を揺るがす措置で、断固として反対する」と表明しました」
中国は早速、身勝手な理屈をこねている。自国は、中距離ミサイルを持ちながら、フィリピンには持つなと言う理屈だ。ならば、中国も撤去するからフィリプンも設置するなと言うべきだろう。そういうことは、決して言わない国である。
(4)「王毅外相は7月末、ラオスでフィリピンのエンリケ・マナロ外相と会談し「米軍の中距離ミサイル配備は地域内の緊張と衝突を呼び、軍備競争を触発する」として「これはフィリピン国民の利益と希望に背くこと」と主張しました。フィリピン軍のロメオ・ブラウナー・ジュニア参謀総長は8月29日の記者会見で「われわれは安全保障上の状況に効果的に対応するため、より多くの先端兵器が必要だ」とし、タイフォン・システムを購入する意向を明らかにしました。中国としては「やぶへび」な格好です。米国は今年7月末、フィリピンに5億ドル(現在のレートで約720億円)の軍事援助を提供すると発表しましたが、この資金でタイフォン・システムを買うという意味だとみられます」
中国・王毅外相による「身勝手発言」は早速、フィリピンから一蹴されている。当然だ。
(5)「中国が、タイフォン中隊のフィリピン配備を懸念するのには訳があります。ルソン島は台湾海峡から600キロしか離れていません。ここに配備された米軍の中距離ミサイルは、台湾海峡侵攻を指揮する中国軍の東部戦区司令部や傘下の空軍基地・海軍基地・ロケット軍基地など戦略拠点を全て攻撃できます。中国のある軍事ブロガーは、ポータルサイト「捜狐ドットコム」に寄稿した記事で「中国海軍の艦艇の70%、空軍基地の50%がタイフォン・システムの射程に入っている」と言いました」
フィリピンのタイフォン・システムによって、中国海軍の艦艇の70%、空軍基地の50%が射程に入るという。これで、逃げ隠れできなくなる。後は、海中へ潜るしかない。
(6)「米陸軍は2017年、インド・太平洋地域で中国やロシアをけん制するため、多領域機動部隊:MDTF)を創設しました。タイフォン中隊は、このMDTFの傘下にあります。これまでに三つのMDTFが作られましたが、このうち二つが米陸軍太平洋司令部に配備されています。さらに米国は、タイフォン・システムの日本配備も推進しています。中国は、これまで東風17(DF17)、東風26(DF26)のような中距離ミサイルで米国を脅かしてきた中国が、逆に米国から中距離ミサイルを突き付けられる状況になりました」
中国は、これまで中距離ミサイルによって東シナ海や南シナ海を「内海」的な位置に置いてきた。米軍の中距離ミサイルが、日比両基地に配備されると、米中互角に持ち込まれる。中国の威嚇力は、それだけ削がれるのだ。