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ファーストリテイリングは、ユニクロ1号店の開業から40年を迎えた。2024年8月期の連結売上収益(売上高)は、初めて3兆円を突破した。次なる目標は、売上高10兆円である。現状の3倍超と途方もない数字だが、会長の柳井氏は不可能とは毛頭考えていないという。ファッションの本場・欧州で、ユニクロが急成長を遂げているからだ。 

『日本経済新聞 電子版』(10月25日付)は、「ユニクロ猛攻、HMに迫る パリ・ローマの超一等地に旗艦店」と題する記事を掲載した。 

ユニクロ欧州最高経営責任者(CEO)で、ファストリ・グループ上席執行役員の守川卓氏は、「ここまで既存店の売り上げが伸びるというのは、僕のユニクロの歴史の中ではなかった。あり得ないという予算をつけたのに、それを超えてきましたから」と驚きを隠せない。それもそのはず。24年8月期の連結決算で、ユニクロ欧州事業は“異常値”をたたき出した。売上高は前期比45%増の2765億円、営業利益に至っては70%増の465億円と急伸した。グループ内での成長力は抜きんでている。

 

(1)「それが如実に表れているのが、1店舗当たりの稼ぐ力だ。全世界のユニクロを対象とした売上高(23年9月~24年2月期)で、欧州からはフランスの「パリ オペラ店」など4店舗がベスト10に入った。欧州の店舗数は24年8月末時点で76にすぎないが、売上高は3000億円に迫る。797店舗で9322億円の日本事業と比べて1店舗当たりの稼ぐ力は桁違いに大きい」 

欧州の1店舗当たり売上高は、約40億円である。日本は、同12億円である。欧州店舗の稼ぐ力は、日本の3倍強だ。 

(2)「全体をけん引しているのが旗艦店だ。「建物そのものと立地が最高、最良であること」(守川氏)を条件に、欧州中から選び抜いた超一等地に思い切って出店し続けた。歴史的建造物の梁(はり)や天井、柱を生かしながら、ユニクロの世界観を盛り込んだ路面店の数々は、見事に欧州の街に溶け込んだ。例えば、オペラ店はその名の通り、パリのランドマーク、オペラ座の真向かいという超一等地に構える。間口こそ狭いが、一歩足を踏み入れると、歌劇場を思わせる大階段が目に飛び込んでくる。築150年を超す重厚な建物の雰囲気と相まって、思わず写真に収めたくなる“映えスポット”だ」 

欧州店舗は、各国の1等地を選んでいる。先ずここで、「店舗格」を引上げて、顧客に高級感のイメージを植え付けている。要するに、イメージ戦略が成功している。

 

(3)「24年4月にはイタリア・ローマの中心部を貫くコルソ通りにデビューした。アールヌーボー様式の商業施設の一角を占め、店内はらせん状の階段でつながる。広場をイメージした空間を配し、ローマらしい装飾を随所に施した。欧州では現在11カ国で店舗を運営するが、どれも立地、内外装ともに唯一無二の存在感がある。こうした「映えるユニクロ」がブランド力の底上げに大きく寄与し、欧州での認知度が高まっていった」 

こうした立地の良さが、「ユニクロ」ブランド力の底上げに大きく寄与し、欧州での認知度が高めている。 

(4)「今や出店する先々で、大歓迎を受けるほどだ。4月、英エディンバラに出した店舗は午前4時から列ができ、約700人が開店を待った。10月に開いたオランダ・アムステルダムの2号店は、開店前の和太鼓演奏に人だかりができた。今後も出店攻勢を続け、27年8月期には欧州事業の売上高を5000億円まで持っていきたい考えだ」 

27年8月期の欧州事業売上高は、5000億円目標を立てている。今年8月期の売上高は3000億円であるから、3年後に6割増を目指す。

 

(5)「まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだが、ここに至るまで実に四半世紀近い時間を要した。ユニクロの海外展開は01年、英ロンドン進出に始まる。しかし苦戦続きで、一時は「失敗」と判断して大幅に店舗を減らした。旗艦店という鉱脈をつかむまでは長く険しい道のりだった。24年で創業40周年を迎えたユニクロ。その節目を記念した特別展が10月、フランス・パリで開かれ、柳井氏も駆けつけた。テーマに据えたのは「ライフウエア(究極の普段着)」だ。パリのアパルトマンを模したモデルルームに、ユニクロの秋冬コレクションがずらりと並ぶ。ファッションショーのようにモデルがステージ上を行き交うのでなく、暮らしの中に新作を加えた。そこに、ユニクロの美学が宿っていた」 

欧州店舗の売上高が急増しているのは、「ライフウエア」を欧州市民の生活の中に溶け込ませる狙いが成功しているからだ。 

(6)「ライフウエアとは何か。柳井氏は、詰めかけた海外メディアを前にこう説いた。「私たちは40年にわたり、服だけでなく服をつくる会社にできることを見直し続けてきました。その私たちの価値観の結晶が、ライフウエアです」。根底にあるのは「個性とは服にあるのでなく、人にある」という考え方だ。「服とは自らの個性を組み立てる部品です。自ら選んだ高品質な部品を使って、自身の魅力を表現する。余計なものをそぎ落とし、シンプルかつ上質、高い機能性、耐久性を持ち、しかも毎年その機能が高まっていく。使い捨ての服でなく、長く着られる究極の普段着。これがライフウエアの哲学です」と柳井氏は力説した」 

ライフウエアとは、「使い捨ての服でなく、長く着られる究極の普段着」という。欧州市民のモノを大事にする生活感覚にぴったりだ。日々の生活を楽しく演出する。それが、ライフウエアという概念であろう。