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米国大統領選は、国内を二分する争いであった。端的に言えば、労働者階級(トランプ派)と知識階級(ハリス派)の分断である。トランプ氏の大勝によって、知識階級は海外移住へ関心を高めているという。希望先は、カナダやNZ(ニュージーランド)、豪州という。これらの国は、自然環境が豊かな点で共通している。静かな場所で、トランプ氏の顔をみない日々の生活を送りたいのであろう。

 

『ロイター』(11月8日付)は、「米国で海外移住への関心高まる、トランプ氏大統領選勝利に失望」と題する記事を掲載した。

 

米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利したことで、海外移住への関心が米国内で急激に高まっている。

 

(1)「グーグルのデータによると、5日に米東海岸で投票が締め切られてから24時間で、「カナダへの移住」に関する検索は1270%急増した。ニュージーランドとオーストラリアへの移住に関する検索はそれぞれ約2000%と820%増えた。東海岸では6日夜、これら3カ国への移住に関する検索がいずれも過去最高を記録したという。具体的な件数は明らかにされていない」

 

米国東海岸では、投票締切24時間で海外移住検索が急増した。「反トランプ」の怒りで、米国を出るという気持ちになったのだろう。それほど、選挙戦が過熱していたことを示している。

 

(2)「ニュージーランド移民局のウェブサイトによると、7日の米国からの新規アクセスは約2万5000件に達し、前年同日の1500件から大幅に増加した。移民弁護士事務所にも問い合わせが殺到している。カナダで最も歴史のある移民法律事務所グリーン・アンド・スピーゲルのマネジングパートナー、エバン・グリーン氏は、「30分おきに新しい問い合わせメールが届いている」と話した」

 

NZ移民局のサイトまで新規アクセスした件数は、普段の17倍にも達した。カナダ移民法律事務所も30分おきに新しい問合せメールが殺到している。こうなると、移民本気度が窺える。

 

(3)「移住に関する関心の急激な高まりは、2016年の大統領選でトランプ氏が勝利した際にも見られたが、今回の選挙戦では国内の分断がさらに深刻化した。エジソン・リサーチの出口調査によると、有権者の約4分の3が米国の民主主義が脅かされていると答えた。またトランプ氏の復帰によって、人種やジェンダー、教育、生殖に関する権利などの問題で、民主党と共和党の間で一段と分断が広がることを多くの人が懸念している。グリーン氏は「トランプ氏が引き金であることは明らかだが、社会的な問題でもある。米国人の半数以上がトランプ氏に投票する一方で、一部の人々はそのような社会ではもう生きていけないと感じている。人々は自由が失われることを恐れている」と語った」

 

米国知識階級は、米国民主主義が危機にさらされているとみている。一方、トランプ支持派の労働者階級は、高物価で日々の生活が脅かされている人たちだ。こうなると、インフレこそが米国民主主義を危機に陥れた要因と言えよう。改めて、経済安定が国論分裂を防ぐ道であることを示唆している。ドイツも同じ危機に遭遇している。高物価が、過激な右翼の台頭を許しているからだ。

 

(4)「バンクーバーの法律事務所ベル・アライアンスで移民コンサルタントを務めるヘザー・ベル氏は、トランプ氏が当選した場合の米国の将来や個人の安全に対する不安の声が、選挙前から不安の声が高まっていたと述べた。しかし、カナダ政府は移民の受け入れを減らしているため、同国への移住は容易ではなく、実行に移す人はわずかだと明らかにした」

 

カナダは、移民制限を始めている。こうなると、カナダよりもNZや豪州が移住候補国となろう。ただ、距離的に遠くなるので決断できるか、だ。