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半導体装置の世界メーカーASMLは、オランダ南部アイントホーフェンで11月14日、投資家向け説明会で、同社のクリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)は「AIがより一層、産業を活性化させる」と強調した。中国への輸出は禁止され、メモリー半導体で世界首位のサムスンが非メモリー半導体で足踏みしているだけに、主な需要先は台湾のTSMC1強であるとみられている。

 

見逃してはならないのは、「AIがより一層、産業を活性化させる」というくだりの発言だ。これは、日本のラピダスが、物づくりに広くAI(人工知能)半導体を組み込むことを見込んでいるのかも知れない。テンストレント開発のAI半導体試作品が、来年春に登場する。世界初の製品である。

 

ラピダスは、ASMLから微細加工に不可欠な極端紫外線(EUV)露光装置を2024年末に導入する。7ナノメートル(ナノは10億分の1)以降の生産技術として不可欠である。日本国内では、ほかに米マイクロン・テクノロジーが広島県で25年以降に立ち上げる工場で導入を見込んでいる。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月15日付)は、「半導体装置のASML、『買い手は1強TSMC』に成長リスク」と題する記事を掲載した。

 

オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングは14日、2030年12月期の中期目標を据え置いた。人工知能(AI)向けの半導体の需要が拡大する一方で、同社が手掛ける最先端装置の受注は台湾積体電路製造(TSMC)の動向に左右される。AIを中心とした成長戦略には、ASMLの強気の姿勢と慎重な姿勢が交錯する。

 

(1)「ASMLは同日、オランダ南部アイントホーフェンに置く本社で、投資家説明会を開催した。売上高は440億〜600億ユーロ(約9兆9000億円)、売上高総利益率(粗利益率)は56〜60%などと、22年に掲げた目標を据え置いた。クリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)は「AIの普及に伴い、ASMLは有利な立場に立つことができる。大幅な成長を実現できる」と強調した。先端半導体の製造に欠かせない極端紫外線(EUV)露光装置が、中長期の成長をけん引するとの長期ビジョンを示した」

 

AI半導体は、生成AIだけが需要先ではない。今後は、ロボットや機械へ組み込まれて新規需要が増える。その先兵が、ラピダスのAI半導体である。消費電力は従来の10分の1とされる。

 

(2)「強気の姿勢は維持する一方で、慎重姿勢もうかがえる。「前回の目標を発表した22年時点よりも、AIは大きな存在になっている」(独ベレンベルク銀行のタミー・キュー氏)にもかかわらず、目標を据え置いたためだ。世界半導体市場統計(WSTS)は24年5月、24年の半導体市場規模は6112億ドル(約95兆7200億円)に拡大すると見込む。23年時点予想の5759億ドルから引き上げている」

 

非メモリーであるAI半導体需要は、これから急速に拡大する見通しである。米調査会社ガートナーは、AI半導体の市場規模が27年に22年比2.7倍の1194億ドルに拡大すると予測する。既存技術で覇権を握ったエヌビディアと、ラピダスがテンストレントと提携した技術革新によって、エヌビディアの牙城を崩そうとする攻防が一段と激しさを増すことになりそうだ。こうなれば、ASMLの需要増は確実であろう。

(3)「背景には、最先端の領域でTSMC1強の構図が鮮明となっていることがある。半導体の性能を左右する回路線幅が5ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下の製品を製造できるのはTSMCのほかには、韓国サムスン電子と米インテルに限られる。この3社がASMLのEUV露光装置の主要な販売先となっている。ただ、インテルは受託生産事業での顧客開拓が進まず、79月期には166億ドルの最終赤字となった。サムスンは、最先端品の製造で歩留まり(良品率)の問題を抱える。台湾調査会社トレンドフォースによると、ファウンドリー市場で18年に50%だったTSMCのシェアは25年に66%にまで増える。2位のサムスン(25年に9%)と大差がつく」

 

サムスンは、脱落したとみるべきだ。ファンドリー事業を縮小すべく人員配置も換えている。これに代わって登場するのが、ラピダスとなろう。

 

(4)「頼みのTSMCは、ASMLの最新のEUV露光装置を買い控えている。回路線幅が1ナノ台の次世代半導体の製造に必要だとされているが、1台あたり約3億5000万ユーロ(約570億円)と高額だ。TSMCはライバル企業が足踏みするなか、足元では既存の装置を使った次世代品の開発を進めている。ASMLのロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は、「特定顧客から想定していた一定規模の需要が消える可能性が高いことがはっきりした」と取引先が投資を先送りしている状況を明かす」

 

特定顧客の想定需要は消えても、新規ユーザーが登場すればカバーする。世界ファンドリー事業は、大きく動き出すだろう。