a0960_008417_m
   

台湾TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏が、サムスン電子の問題は技術力不足にあると指摘した。張氏は9日、自伝の出版イベントに登壇。記者会見でサムスン電子について質問を受け、「問題は、事業戦略でなく技術的なこと」だとコメントしたもの。サムスンが、ファウンドリー(半導体受託生産)事業で苦戦している原因は、技術競争力を十分に確保できていないことだと指摘した。

『中央日報』(12月11日付)は、「TSMC創業者も『サムスン電子を懸念』、危機の韓国電子・半導体」と題する記事を掲載した。

政治的混乱が深刻になった中で韓国の電子・半導体産業界に懸念する声が大きくなっている。ファウンドリー(半導体委託生産)世界1位の台湾TSMC創業者までサムスン電おを心配をしている。

(1)「台湾経済日報などが伝えたところによると、TSMC創業者で93歳のモリス・チャン氏は9日に台湾の台北で開かれた自叙伝出版記念式でサムスン電子の現状に対する質問を受け「(サムスンは)戦略的問題ではなく技術的問題に直面している。最近の(韓国の)政治的混乱は会社経営に決して役に立たないだろう」と答えた。サムスン電子の広帯域メモリー(HBM)やファウンドリー2ナノ工程の歩留まり問題など技術的課題のほかにも、韓国の政治的不安が続けばサムスン電子の競争力に否定的影響を及ぼすと予想したのだ」

TSMC創業者は、サムスン苦戦の原因が技術的問題にあると指摘した。「5ナノ」半導体の歩留まり率が20~30%と低く、赤字になっているからだ。サムスンは、半導体「後工程」技術に問題を抱えていると指摘されている。日本のラピダスは、すでにこの問題は解決済み。「前工程」「後工程」を自動化することにも世界初で成功している。ラピダスは、サムスンを抜いたのだ。

(2)「政治的不確実性にともなうウォン相場急落もリスクだ。ドルが、高騰すれば外貨を稼ぐ輸出企業に有利だという話も、いまは半分正しく半分間違った言葉だ。世界各地に生産基地を置いている半導体、スマートフォン、家電企業のコスト計算が複雑になったためだ。半導体業界の場合、以前はドルが上がれば好材料に近かった。ほとんどが国内でメモリー半導体を生産している上に、これを海外に輸出する際にドルで支払いを受け、ドルが上がればウォン換算した利益はさらに増加するためだ」

韓国の戒厳令騒動が、政治不安を高めている。次期大統領選は来春とみられる。それまでは、ウォン相場も振り回される。

(3)「サムスン電子などは、大規模補助金を受ける条件で米国に大規模半導体工場を作っている。米国内で大規模投資中であるサムスン電子とSKハイニックスとしては、ドルが高くなれば建設費だけでなく、人件費や各種設備搬入コストが上がる。米テキサス州テイラーにファウンドリー工場を作っているサムスン電子は、2030年までに総額合450億ドルを投資する計画だ。SKハイニックスも39億ドルを投じてインディアナ州に先端パッケージング工場を建てる。サムスン電子とSKハイニックスなど主要企業は、固定契約で為替相場変動に対するリスクを最小化しているが、不確実性が長期化すれば海外投資に対する悩みが深まるほかない」

サムスンは、米テキサス州テイラーにファウンドリー工場を作っており、2030年までに総額450億ドルを投資する計画だ。ドル高で、建設費や人件費、各種設備搬入コストも上がる。政治的な不確実性が長期化すれば、海外投資に対する悩みも深まるのだ。

(4)「サムスン電子が、来月発売するスマートフォンの次世代フラッグシップモデルとなる「ギャラクシーS25シリーズ」も、やはり為替の影響を受けることになった。ギャラクシーSシリーズに搭載される、米クアルコム製チップの製造を引き受けるTSMCが生産価格を引き上げた上に、ドルまで上昇しチップ調達コストが大きく上がった。スマートフォンの頭脳に当たるプロセッサチップは、スマートフォン生産原価で最も大きな割合を占める」

サムスンは、スマートフォン製造コストがウォン安の影響を受ける。これも、マイナス要因である。

(5)「今年初めに発売されたギャラクシーS24シリーズの国内出庫価格は、115万ウォン~169万ウォン水準(256GBモデル基準)だった。スマートフォン業界では、サムスンが現在の収益性を維持するには、国内出庫価格を15万ウォンほど引き上げる可能性が大きいとみる。電子業界関係者は、「サムスンスマートフォンの海外市場平均販売価格(ASP)が、国内より低いためドルが上がってもサムスンの海外販売分が収益性に及ぼす効果は限定的で国内価格を調整するほかないだろう」と話した」

サムスンは、ウォン安の影響でスマホ出荷価格を引上げねばならない。国内出庫価格を15万ウォン(約1万6500円)の引上げだ。ただ、ウォン安によって海外販売分が収益に寄与する分は少ない見通しである。