米国が、中東での紛争に気を取られている隙に、中国はこれを悪用することを台湾が懸念しているという。中国国営メディアは、中東での戦闘の事例を引用し、台湾が侵略を撃退するために備えている米国製兵器の有効性に疑問も投げかけているからだ。率直に言って「心配ご無用」であろう。米国情報網が四六時中、中国を監視しているからだ。米国は、中国人民解放軍が不穏な動きを始めた瞬間から、その動きを監視するシステムが動いている。中国軍の奇襲攻撃など、不可能な状態とされている。
『ロイター』(3月30日付)は、「米の中東関与の隙突く中国、台湾は軍事圧力と認知戦に警戒」と題する記事を掲載した。
中国は昨年12月、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。台湾当局者は、中国人民解放軍による台湾近海への大規模な侵入が今月14、15両日に再開されたことは、東アジアから中東への戦力再配置を進める米軍の動きを中国が利用しようとしていることを示すと指摘する。
(1)「台湾の安全保障担当高官は、「中国は影響力を行使するチャンスだと受け止めている」とし、「中国が作り出そうとしているのは、米国が部隊を移動させ、インド太平洋地域の戦力が中東へ再配置される際に、緊張と不安定な状態が醸成されるという認識だ」との見方を示した。台湾国防部(国防省)は、顧立雄国防部長(国防相)による中国の「武力によって併合しようとする意図は常に存在してきた」との今月の発言を引用した」
中国が、親密国イランを何ら支援できないこと自体に、中国の限界をみるべきであろう。その中国が、米国のイランへの関わりを強めている間を狙い、台湾侵攻などあり得ない話だ。中国は、台湾海峡を渡って大軍を送込まなければならない。米海軍の潜水艦部隊が、これを待ち伏せしている。中国潜水艦の敵ではないのだ。
(2)「台湾の情報筋は、米軍の配備は地域間で常に均衡を保っているため、今回の措置によって中国が攻撃の隙を突くような状況が生じる可能性は低いと指摘する。米国務省の報道官はロイターに対し、世界的な脅威に同時に対処する米軍の能力は引き続き「圧倒的」だと主張。さらに米国は、台湾海峡全域の平和と安定を維持することに尽力しているとコメントした」
米海軍の一部は、イラン攻撃参加で中東へ移動しているが、潜水艦部隊まで移動しているはずがない。中国軍の足を止めるのは、米海軍の潜水艦部隊である。
(3)「台北医学大学の張国城教授(国際関係論)は、戦闘が長期化すれば米国の武器備蓄を枯渇させ、アジア太平洋地域への関心をそらし、国内の反戦感情をあおることになるとして、「こうした要因の全てが(中国国家主席の)習近平氏が台湾への圧力を強めたり、台湾に対して武力を行使させたりすることで、戦闘開始前よりも自身の立場が強固になると信じさせる可能性がある」と言及。戦闘が長引けば長引くほど、中国が台湾に対して何らかの行動を起こした場合の米軍の思考や対応シナリオについて、中国が得られる教訓も増えることになると警鐘を鳴らした」
米国は、11月に中間選挙を控えている。イラン戦争を長引かせれば、共和党の敗北を決定的にする。そうなれば、トランプ大統領はレームダック化して政治力が牽制される。こういう大きなリスクを抱えている以上、戦争の期間は限定せざるを得ないのだ。
(4)「台北当局は、中国が中東での戦闘を、台湾に対する「認知戦」のプロパガンダに利用するのを警戒する。ロイターが入手した台湾当局内のメモによると、1例として戦闘後に中国が人工知能(AI)で生成したオンライン動画で台湾が「壊滅的な」エネルギー供給危機に直面していると主張するようなケースを想定している。台湾の安全保障当局者は「いつか台湾が再び中国軍に包囲された際、人々のエネルギー問題に対する信頼を失うように中国側は仕向けたがっている」と話す」
中国自身が、イラン戦争開始と同時に「籠城作戦」に転じている。原油も節約させる方向へ一変している。台湾と同じ状況にあるのだ。台湾も、こういう動画をつくって大陸へ流せば、情報は「相打ち戦」になる。台湾は、中国経済の根本的な弱点を衝く動画をつくって、中国国民を覚醒させることだ。
(5)「中国国務院台湾事務弁公室は25日、中国が「統一」の恩恵としてインフラを改善させ、北京―台北間の高速道路を含む「高速交通網」の整備の提案が誘い水になるとの見解を示した。これに先立って中国側は、台湾が中国による統治を受け入れるならばエネルギー安全保障を提供すると提案していた。だが、台湾経済部(経済省)の何晋滄副大臣は先週、これが「認知戦」だと一蹴していた」
中国の「認知戦」(謀略戦)は、これから一段と過激化するであろう。中国は、台湾への軍事侵攻が極めて困難であることをますます認識しているからだ。中国の「日本非難」は、こうした中国の認識を表わすシグナルでもある。つまり、通俗的言葉を使えば、日本への「八つ当たり」という状況である。
(6)「中国の国営メディアは、イランを巡る戦闘が将来の台湾有事に結び付くとの見方を示す。台湾は米国と正式な外交関係を持たないものの、主に米国から武器の供給を受けているからだ。米ワシントンのアメリカン・エンタープライズ研究所の防衛アナリスト、トッド・ハリソン氏は、この紛争が中国にとって米軍の作戦、特にステルス戦闘機F35のような最先端の兵力を観察する絶好のチャンスになるとして「中国は米国の防空・ミサイル防衛システムがどれほど機能しているか、そしてそれらをどのように運用しているかについて(データを)収集することになるだろう」と訴える」
イランを巡る戦闘が、将来の台湾有事に結び付くとの見方こそ、中国の認知戦の一環である。中国が、台湾へ奇襲攻撃を掛けようとしても、全て米国の情報網に事前把握されていることを知らない妄言であろう。前述の通り、台湾海峡には米海軍の潜水艦部隊が待ち構えているのだ。この現実を忘れた中国優越論は、間違いであろう。


