国際原子力機関(IAEA)は今年2月、ウランの濃縮施設を含む核施設を査察し、イランの濃縮活動について「深刻な懸念」があるとの認識を示した。濃縮度をここまで高めた国で、核兵器を製造していない例は他にないためだ。西側諸国は、このような高濃縮ウランの備蓄に民生目的の正当性はないと指摘する。
トランプ米大統領は、イランの核開発は「完成数週間前の状態」と発言している。IAEAやトランプ発言からみて、イランの核完成は寸前の状況にあることは間違いなさそう。平和的に撤去するか。かつて北朝鮮も同様な状況にあって、結果的に放棄させられなかった先例がある。世界は、イランの核開発で難しい局面だ。
『ブルームバーグ』(6月19日付)は、「イラン核施設の破壊、米軍支援なしでイスラエルは実現可能との見方も」と題する記事を掲載した。
トランプ米大統領がイスラエルと共にイランの核施設攻撃に加わる決断を下すかどうか世界が見守る中、多くの専門家はイスラエル単独ではこの任務の完遂は困難だと指摘している。
(1)「イスラエル軍は、山中深くに位置するイラン中部フォルドゥの地下ウラン濃縮施設を貫通するために必要とされる大型爆弾やステルスB2爆撃機を持たない。イランの核開発を阻止するには、フォルドゥ施設の破壊が作戦の成否を握ると考えられている。だが、これに異議を唱える向きもある。あるイスラエル高官は匿名を条件に、米軍が持つバンカーバスター(地中貫通爆弾、MOP)を使わずとも「多くの選択肢が残されている」と語った」
イランの核開発を阻止するには、フォルドゥ施設の破壊が作戦の成否を握ると考えられている。フォルドウの地下濃縮施設について、IAEAは6月16日、目立った損傷はほとんどないか、全くないと再確認した。フォルドウは、山中深くに建設されている、イランで最も深い場所にある濃縮施設だ。フォルドウには稼働中の遠心分離機が、約2000台設置されている。ナタンズとほぼ同数の遠心分離機を使用しているにもかかわらず、ここは最大60%まで濃縮したイラン産ウランの大半を生産している。『ロイター』(6月18日付)が報じた。
(2)「外部専門家もこうした見方に賛同しており、米科学国際安全保障研究所(ISIS)のデービッド・オルブライト所長もその一人だ。同氏は、「タブレット・マガジン」の質問に対して、イスラエルが単独で核施設を破壊できるとの見解を表明。「特殊部隊による襲撃で地雷を仕掛けることもできる。天井を破壊したり、構造体を弱体化させたりすれば、施設に入ることが極めて困難になる。数カ月の作業を要するようであれば、それは実質的な破壊だ。仮に中に入れても、大半の遠心分離機はすでに破損している可能性が高い」と述べた」
フォルドゥ施設の破壊は、特殊部隊による襲撃で可能という見方がある。イスラエルは、米軍の支援を受けずとも高リスクにも関わらず、敢行作戦できるとしている。
(3)「特殊部隊による襲撃については、中東研究所のケネス・ポラック氏らも注目しており、昨年9月にイスラエル軍がシリアで実施した作戦を事例に挙げる。この作戦は、アサド前政権の崩壊前に実行されたものだ。イスラエル軍は作戦実施から4カ月後に、作戦中に撮影された映像とともに詳細を明らかにした。軍報道官によれば、特殊部隊120人が数十機の航空機とともにシリア奥深くに侵入し、山中にあったイランのミサイル製造施設を破壊したとしている」
イスラエルの特殊部隊による襲撃作戦は、過去にも実行されている。いざというときは、フォルドゥ施設の破壊を敢行する決意なのだろう。
(4)「映像からは、イスラエル軍兵士がコンクリートで覆われたトンネル内を進む様子と、それをイスラエルの司令部内で監視する軍幹部の姿が映し出されていた。この作戦は、大胆な行動としてイスラエル国内で広く称賛され、フォルドゥ核施設へのモデルケースとしても言及されている。別の選択肢として、イスラエルがフォルドゥ周辺のイラン防空システムを排除すれば、イスラエル空軍の戦闘機F35やF15が3万ポンド(1万3600キロ)ではなく、2000~4000ポンド級の爆弾を搭載して同施設を繰り返し攻撃し、最終的に貫通させることも可能とされる」
すでに、イスラエル軍はフォルドゥ核施設へのモデルケースとなる作戦を行い、経験を積んでいる。
(5)「いずれの選択肢も大きなリスクが伴い、米軍機による大型爆弾による攻撃であっても例外ではない。だがイスラエルは、最大のリスクはイランの核施設が温存されることであり、かつ現政権の管理下にあることだと主張。その上で、米国の決定にかかわらず、イスラエルは目標達成まで作戦を継続すると明言している」
イスラエルは、最大のリスクはイランの核施設が温存されることであり、かつ現政権の管理下にあることだと主張している。この主張によれば、イランの政変まで進ませる決意であろう。