豪州で初の高速鉄道を敷設する計画が前進した。6日までに政府の独立した助言機関が建設の初期計画を承認した。今後、具体的なコストが示されて政府が投資を決定すれば、日本が新幹線を売り込む機運も高まるであろう。
豪州は、広大な国土の移動を飛行機に依存してきたが、二酸化炭素(CO2)排出量の削減や住宅価格の高騰対策として高速鉄道が注目されている。ようやく今、1980年代から浮かんでは消えた高速鉄道の実現に向けて一歩前進した。高速鉄道庁が23年、独立した政府への助言機関として設置されている。高速鉄道庁のティム・パーカー最高経営責任者(CEO)は、「住宅や仕事へのアクセスが広がり、人々の暮らし方を変える」と強調している。これは、新幹線の基本コンセプトでもある。
『日本経済新聞 電子版』(11月6日付)は、「オーストラリア初の高速鉄道、審査機関が計画承認 新幹線も候補」と題する記事を掲載した
オーストラリアで初の高速鉄道を敷設する計画が前進した。6日までに政府の独立した助言機関が建設の初期計画を承認した。助言機関「インフラストラクチャー・オーストラリア」は、このほど公表した審査報告書で「計画が開発段階に入ることを支持する」と記した。国家の重要インフラや2億5000万豪ドル(約250億円)超の政府支出を伴う建設計画で政府に助言している。
(1)「敷設計画を巡り、24年に国の助言機関の高速鉄道庁が事業化調査を政府に提出した。インフラストラクチャー・オーストラリアは、調査に基づき計画を承認するかを審査してきた。承認されたのは、シドニーと、そこから北へ120キロメートル離れたニューカッスルに高速鉄道を敷設する計画。同区間は現状、電車で3時間ほどかかるが、1時間程度に短縮する。シドニー中心地と郊外に開設する西シドニー国際空港も結ぶ。2027年に建設を始め、42年までの完成を目指す」
豪州が、高速鉄道建設計画へ具体的に着手した背景は、次の点が考えられる。
1)人口増加と都市集中の課題 シドニーやメルボルンなどの大都市に人口が集中し、交通渋滞や住宅価格の高騰が問題に。
2)環境政策との連携 高速鉄道は航空機よりもCO₂排出量が少なく、グリーンインフラとしての価値も高い。
3)国際競争力の強化 インフラ整備を通じて、国内外の投資を呼び込み、地域経済を活性化させる狙い。
高速鉄道は、300~800キロメートルの距離で、航空路線に対して競争力を持つとされる。豪州の交通網は、航空路線と普通鉄道に依存しており中間の高速鉄道が存在しないという不便さに悩まされてきた。
(2)「総工費は示されていない。インフラストラクチャー・オーストラリアは高速鉄道庁に対し、費用を明確にし、設計の精度を高めるよう求めた。費用を把握するには関心をもつ企業と設計案などを協議する必要があり、こうしたプロセスが近く始まる可能性がある。協議は2年程度続く見通しだ」
高速鉄道は、安全性と採算性が二大問題として重視される。まず、運行において安全・正確でなければならない。無事故と定時性が不可欠である。もう一つ、採算性確保である。高速鉄道の路線が、生活にどれだけ密着化しているか。それが、乗車率を引上げ採算確保に繋がるからだ。
(3)「高速鉄道庁は将来、ブリスベン・シドニー・メルボルンと、豪州北東部から南東部の主要都市を結ぶ構想を掲げる。シドニーから各都市へは車で9時間ほどかかるが、高速鉄道では4時間で移動できる。アルバニージー首相はかねて高速鉄道導入へ強い思い入れを抱いてきた。案件には日本や欧州企業が関心を示しており、今後、新幹線方式の売り込みが勢いづく可能性がある」
有力候補は、日本の新幹線とフランスのTGVとされる。中国は除外されている。豪州と中国は外交的に対立しているからだ。
日本の新幹線は、環境負荷の面でも非常に優れた実績を持っている。特に単位輸送量あたりのCO₂排出量においては、フランスのTGVを含む他国の高速鉄道と比較しても、省エネ性能と環境配慮の設計が際立っていると評価されている。
路線計画が、新幹線とTGVでは大きく異なる。この路線計画を間違えると、中国が建設したインドネシア高速鉄道のように最初から赤字経営に陥る。
新幹線は、高密度都市が連続しており、駅間距離が短くても需要が高い。TGVは、都市間距離が長く、地方都市の人口密度が比較的低めである。このように鉄道の「設計思想」が異なっているのだ。新幹線は、沿線住民の生活密着型である。TGVは、観光型になっているので、他交通手段との連結を考慮した路線計画から外れている。
豪州が、安全性と採算性を考え、技術移転に応じる新幹線をどう評価するかだ。昨今の日豪関係の密接化をみると、新幹線が有力候補の条件を揃えていることは疑いない。日本は、インド太平洋戦略「クアッド」(日米豪印)で、豪州と密接な関係にある。

