勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ベネズエラ経済

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    米海軍の電子攻撃機が、ベネズエラ作戦において極めて重要な役割を果たした。特に注目されているのは、敵の防空網を一瞬の間「攪乱」する能力だ。中ロの防空網は、この米軍の電子攻撃で機能を狂わされてしまった。ベネズエラ大統領マドゥロ氏の邸宅は、ベネズエラ最大の軍事基地内の真ん中にあったという。それでも、米軍に拘束されたのだから、電子戦の威力の凄さに脱帽するほかない。

     

    日本経済新聞 電子版』(1月9日付)は、「米軍の電子攻撃機『グラウラー』、ベネズエラ作戦で要に 専門家分析」と題する記事を掲載した。

     

    米軍が南米ベネズエラで実施した軍事作戦で、通称グラウラーと呼ばれる電子攻撃機「EA-18G」が大きな役割を果たしたとの見方が専門家に広がっている。米軍がほぼ無傷のまま敵の防空網をかいくぐり、一国の指導者を生け捕りにできた背景には、電子攻撃の威力があった可能性がある。

     

    (1)「米軍は奇襲攻撃をしかけ、作戦開始から5時間弱でベネズエラの首都カラカスからマドゥロ大統領を連れ去った。ルビオ米国務長官は、マドゥロ氏の邸宅が「国内最大の軍事基地内の真ん中」にあったと振り返る。何が起きていたのか。作戦から5日が経過し、軍事専門家の分析が進んでいる。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のトーマス・ウィズィントン氏はグラウラーが作戦成功の主な要因というのが「非常に信頼できる評価」と語る。グラウラーはレーダーや通信ネットワークを電磁波などで妨害する。敵のレーダーを検知して破壊する対レーダーミサイルも搭載する」

     

    ベネズエラは、中ロの優秀な防空網を備えていたが、電子戦やサイバー攻撃、ステルス機による浸透には脆弱な面があるという。特に、指揮通信系統が集中管理されている場合、そこを破壊されると全体の機能が麻痺するリスクがある。今回は、この盲点を突かれた形だ。防空網は技術的に強力でも、運用や柔軟性、実戦経験の面で課題を抱えていたのだ。米軍は、これまでいくつかの電子戦を経験している。その経験値では、ベネズエラは「敵」でなかったのであろう。

     

    (2)「グラウラーが相手の防空網を乱して、他の戦闘機やヘリコプターが攻撃を受けるのを回避させる役割を果たしたとみられる。米国防専門誌、「ミリタリー・ウォッチ」によるとグラウラーと比較可能な能力を持つのは中国軍のみだ。米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長は「ベネズエラの防空網の無力化」は様々な技術や妨害手段を織り交ぜて実現したと説明する。相手レーダーがとらえにくい米軍の主力ステルス戦闘機F35も投入した」

     

    米軍は、世界一の軍事力を誇る手前、ミスは許されないという拘束劇であった。

     

    (3)「トランプ大統領は記者会見で、詳細を避けながら「(米国の)特定の専門技術によってカラカスの電気をほぼ消灯させた」とも言及した。ウィズィントン氏は「重要インフラを標的にサイバー攻撃をしかけ電力供給を不安定化させた」ことを指すと分析する。軍事作戦には米中央情報局(CIA)などの情報機関に加えて、米国家地球空間情報局(NGA)が関与したのも明らかになっている。NGAは軍事活動を支援するため画像・地図データを活用する」

     

    米軍が、圧倒的に実戦経験を積んでいるのは間違いない。湾岸戦争、コソボ紛争、イラク戦争、シリア空爆、そして最近のベネズエラ作戦に至るまで、実戦での電子戦運用を繰り返し洗練させてきた。これから言えば、ベネズエラが劣勢であったのだろう。

     

    (4)「第1次トランプ政権で米国家安全保障会議(NSC)の高官だったカースティン・フォンテンローズ氏は、米軍がベネズエラ側から検知されず、交戦を最小限にできたのは「持続的な情報収集・監視・偵察と電子攻撃、そして非常に短時間に圧縮した作戦のタイムライン」と指摘する。防空網の乱れの一瞬の隙に、米陸軍の精鋭部隊デルタフォースや「ナイトストーカーズ」と呼ばれる第160特殊作戦航空連隊がマドゥロ氏の邸宅に降り立ち、拘束に動いた。米メディアによると米中央情報局(CIA)は2025年夏ごろからベネズエラに潜入していた。極秘裏に内通者が大きな役割を果たした可能性も否定できない」

     

    米軍は、防空網を攪乱させた一瞬の隙に、特殊部隊をベネズエラ最大基地の中へ降り立たせた。これは、曲芸的な作戦だ。

     

    (5)「英シンクタンクの国際戦略研究所(IISS)によると、ベネズエラは12基のロシア製防空システムを保有していた。フォンテンローズ氏は、イランが展開している防空システムと似ていると指摘する。トランプ氏はイラン再攻撃を辞さない姿勢を示す。ケイン氏は「我々の任務は戦闘能力を統合し、世界中のいかなる敵に対しても、圧倒的戦力を発揮できるようにすることだ」と強調する」

     

    イラン防空網は、ベネズエラと同じだという。イランにとっては、ベネズエラの一件は他人ごとでなくなった。

     

     

     

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    米国によるベネズエラ大統領夫妻の拘束・連行は、国際法的に大きな問題を投げかけている。それだけではない。米国が、ベネズエラの政治的混乱に巻き込まれ、アジアへの空白が生まれる危険性が浮上している。だが、ネズエラのロドリゲス暫定大統領は4日夜、SNSに「米国と協力する」と投稿した。3日には「マドゥロ大統領こそ唯一の大統領だ」などと話し、米政権に対抗する構えを示していたが姿勢を一転させた。こうした言動が、一つの安堵感をもたらしている。

     

    『ブルームバーグ』(1月5日付)は、「ルビオ氏、原油制裁でベネズエラ新指導部に圧力-変化確認まで維持」と題する記事を掲載した。

     

    ルビオ米国務長官は4日、マドゥロ大統領の追放後に発足したベネズエラの新指導部から米国が望む対応を引き出すため、同国産原油を対象とした制裁措置をテコに圧力を強める考えを示した。トランプ大統領は3日にベネズエラを「運営する」と表明したが、依然として権力を維持しているマドゥロ政権幹部に対して、米国がどう対処するのかを巡り不透明感が広がっている。

     

    (1)「ベネズエラはイラン、イスラム教シーア派組織ヒズボラ、キューバとの関係を断つとともに、麻薬取引を停止し、同国の石油産業が米国の敵対勢力の利益にならないよう確保しなければならないとルビオ氏は語った。「現在、制裁対象の石油輸送を巡る封鎖が行われている。海上に船があれば、その船舶は米国の制裁下にある。われわれは裁判所命令を取得し、それを押収する」と、ルビオ氏はCBSの番組「フェイス・ザ・ネーション」で述べた。これは、ベネズエラに変化を迫る上で米国にとって「極めて大きな交渉カード」になるとも語った」

     

    米国は、ベネズエラを米国の敵対勢力の利益になる存在にしない強い決意をみせている。イラン、イスラム教シーア派組織ヒズボラ、キューバとの関係を絶つように求める。米国の安全保障に重要という認識表明である。

     

    (2)「トランプ大統領は、マドゥロ夫妻の身柄拘束に伴う会見で、ベネズエラの石油産業再建に向け、米国の石油会社が数十億ドルを投じることになるとの見方を示唆していた。ルビオ氏は、重質原油の世界的な不足が、そうした移行を後押しする可能性があると述べた。「ここ数日、米国の石油会社とは話していないが、西側企業から強い関心が示されるのはほぼ確実だ」と、ルビオ氏はABCの番組「ディス・ウィーク」で発言。「ロシア、中国以外の企業が強い関心を示すだろう。米国のメキシコ湾岸にある製油所は、この重質原油を精製する能力で最高水準にある」と述べた」

     

    米国は、ベネズエラの石油産業再建に大きな関心を寄せている。かつては、米国石油資本が支配していた地域だけに「復帰」も念頭にあるのだろう。

     

    (3)「一方、トランプ氏が米国はロドリゲス暫定大統領と協力して移行を進めると述べていたが、ルビオ氏はベネズエラの当面の進路について詳しい言及を避けた。民主化への移行の一環としてベネズエラがいつ選挙を実施するのかとCBSの番組で質問されると、「こうしたことには時間がかかる。プロセスがある」と述べるにとどめた。その上で、「われわれは当面、彼らが何を発言するのかではなく、実際に何をするのかを評価する。今後の行動を見る」と続けた」

     

    米国は、ベネズエラの内政については言及を避けている。ベネズエラ国内の動きによるからだ。

     

    (4)「トランプ氏はアトランティック誌に対し、ロドリゲス氏に警告を発する中で、ベネズエラでは一定の再建が必要になるとの認識を示した。「彼女(ロドリゲス氏)が正しい行動を取らなければ、非常に大きな代償を払うことになる。おそらくマドゥロ氏よりも大きい」と述べた。ルビオ氏はまた、ベネズエラの石油産業こそが強い経済の鍵だと指摘した。「ベネズエラの石油収入は国民に届かず、すべてが上層部の人間に盗まれている。だからこそ、われわれは封鎖を行っている」とCBSの番組で指摘」

     

    米国は、ベネズエラの政治腐敗が石油からの利益を横取りしているとみている。この腐敗構造が、米国への麻薬流入を支えているという判断しているのだろう。

     

    (5)「封鎖措置は、「第一に米国の国益を前進させるだけでなく、ベネズエラ国民にとってより良い未来につながる変化が確認できるまで」維持されると述べた。また、地域に展開している米軍は「麻薬を運ぶ船舶だけでなく、出入りする制裁対象の船舶を阻止し、政権の収入源となっている仕組みの一部を事実上麻痺(まひ)させる能力を備えている」とも語った」

     

    米国は、ベネズエラ問題が解決すれば、アジアへの関心を高める。インド太平洋戦略が、米国にとって「不動の最前線」という認識を鮮明にするはずだ。

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    米国は、一国大統領を軍事力によって拘束する「荒技」を演じた。国際法的には、極めて疑義のある行為とされる。米国は、ベネズエラのマドゥロ大統領と同夫人が麻薬流入に深く関わっているとしてすでに起訴済みだ。今回は、裁判のために身柄拘束という強硬策に打って出たもの。

     

    『ウォールストリートジャーナル』(1月4日付)は、「マドゥロ大統領、米国で裁きの場に 『手出しできない存在』から一転」と題する記事を掲載した。

     

    ベネズエラで強権体制を築いてきたニコラス・マドゥロ大統領は、5000万ドル(約78億円)の懸賞金がかけられ、2020年に麻薬テロの罪で起訴されたが、これまで「アンタッチャブル(手出しできない存在)」と見られてきた。

     

    (1)「米国は3日午前、ベネズエラに対する軍事攻撃を行い、マドゥロ氏は妻と共に米国に移送された。マドゥロ氏は、麻薬の密輸やテロリストとの共謀の罪などで米ニューヨーク州の連邦裁判所で裁判にかけられる予定だ。パム・ボンディ米司法長官は同日、マドゥロ氏と妻のシリア・フローレス氏は「間もなく米国の法廷という米国の地で、米国の正義の全面的な裁きを受けることになる」と述べた」

     

    マドゥロ氏は、妻と共に麻薬の密輸やテロリストとの共謀の罪などで、米ニューヨーク州の連邦裁判所で裁判にかけられる。

     

    (2)「米検察当局は、マドゥロ氏が「太陽のカルテル」を率いていると主張。この組織は軍幹部や政府高官らで構成される緩やかなネットワークで、20年以上にわたりコロンビアのゲリラ指導者から数百万ドルに上る賄賂を受け取ってきたとされる。検察によれば、ゲリラ側はコロンビア政府と戦うための資金を得るため、数千トンのコカインをベネズエラ経由で米国や欧州に送っていた」

     

    米検察当局は、マドゥロ氏が「太陽のカルテル」を率いていると主張している。この組織は、軍幹部や政府高官らで構成される緩やかなネットワークで、20年以上にわたりコロンビアのゲリラ指導者から数百万ドルに上る賄賂を受け取ってきたとされる。 

     

    (3)「検察によると、マドゥロ氏と前任者の故ウゴ・チャベス元大統領や政府高官らは、ベネズエラ経由でコカインを輸送するため、コロンビア革命軍(FARC)と連携した。米国は1997年から2021年までFARCをテロ組織に指定していた。FARCはすでに解散している。検察は、1999年に大統領に就任したチャベス氏の下で、そして2013年に同氏が死去した後に就任したマドゥロ氏の下で、ベネズエラは「米国に対する武器としてコカインを使用することを優先した」と主張している」

     

    米国の検察は、ベネズエラの歴代大統領が麻薬組織と関連を持っていたと主張している。

     

    (4)「マドゥロ氏は、容疑を否定している。同氏は9月にドナルド・トランプ大統領に宛てた書簡で、「これは、わが国に対して仕掛けられた最悪の類いのフェイクニュースであり、大陸全体に壊滅的な影響を及ぼす武力紛争へのエスカレーションを正当化するためのものだ」と記し、対立を避け対話を優先するよう求めた。ベネズエラ問題の専門家の中には、米検察が麻薬を巡るマドゥロ氏の関与を立証するのは困難だと見る向きもある。かつてベネズエラで勤務していた元米政府高官のブライアン・ナランホ氏は、「法的に最大の問題となるのは、太陽のカルテルというものが存在し、しかも彼がそれを指揮していることを法廷で証明しなければならない点だ」と語った」

     

    法廷では、太陽のカルテルという組織の存在を立証しなければならない。

     

    (5)「米国に向かうコカインの大半は、コロンビアの太平洋岸や隣国エクアドルから出荷されている。ベネズエラでの暴力的紛争を防ぐために、活動する国際危機グループ(ICG)のアナリスト、フィル・ガンソン氏によると、太陽のカルテルはメキシコのカルテル「ハリスコ」などの麻薬組織とは異なり階層的ではなく、主に軍幹部で構成される分散型ネットワークであり、麻薬輸送を円滑にし、その見返りとして賄賂を受け取っている。ガンソン氏は、太陽のカルテルについて「ベネズエラにはびこる腐敗の中で繁栄する、結束が弱く、ときに内部対立も抱える将軍や政府高官のグループを示す都合のよいラベルにすぎない」と語った」

     

    ベネズエラでの麻薬組織である太陽のカルテルは、主に軍幹部で構成される分散型ネットワークであるという。麻薬輸送を円滑にし、その見返りとして賄賂を受け取っているのだ。いずれにしても、軍幹部が麻薬運搬で賄賂を得ているとは言語道断であろう。ベネズエラの大統領マドゥロ氏と妻は、この賄賂から利益を得ていたのか。

     

     

     

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