勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ASEAN経済ニュース時評

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    ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議は8日、フィリピンで開催した。中東情勢に「深刻な懸念」を表明し、ホルムズ海峡の開放を求める声明を採択した。域内で石油備蓄や供給網の強化で協力すると確認する。ホルムズ海峡を通る原油・液化天然ガス(LNG)の8割はアジア向けだ。ホルムズ海峡閉鎖による原油高は、まずアジア向け市場に激しく表れるだけに、ASEANにおける油備蓄や供給網の強化策が喫緊の課題になった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月8日付)は、「ASEAN首脳、ホルムズ海峡の開放要求 石油備蓄・融通で協力確認」と題する記事を掲載した。

     

    東南アジア諸国連合(ASEAN)は8日、フィリピン中部セブで首脳会議を開いた。中東情勢に「深刻な懸念」を表明し、ホルムズ海峡の開放を求める声明を採択した。域内で石油備蓄や供給網の強化で協力すると確認した。

     

    (1)「ASEAN議長国を務めるフィリピンのマルコス大統領は会議の冒頭で「団結して中東情勢の影響に立ち向かい、すべての人が協力の恩恵を感じられるよう努める」と強調した。首脳会議はエネルギー供給や食料問題など論点を絞って議論した。日本経済新聞が入手した首脳声明案では事実上の封鎖が続くホルムズ海峡の開放を訴える。「船舶および航空機が安全かつ妨害されずに継続的に通過・航行できる状況の回復」を求める。米国とイランの停戦合意を歓迎し、双方に戦闘終結に向けて対話を続けるよう促した」

     

    首脳会議は、エネルギー供給と食料問題などが中心になった。脆弱なエネルギー確保では、日本の支援によって基盤を固める。これは、ASEANが日本とUAE(アラブ首長国連邦)を基軸にするエネルギー・ルートに入るという意味である。アジアの政治情勢で、日本がリーダーになる伏線である。この延長線で、日本技術による送電網が建設されるであろう。

     

    (2)「ホルムズ海峡を通過する原油の8割はアジア向けで、フィリピンの場合は原油輸入の9割超を中東地域に頼る。ASEAN加盟国の多くは中東紛争の影響が直撃し、石油製品の供給不安が広がった。イラン紛争が長期化し、域内経済への悪影響が拡大してきた。フィリピンの13月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比2.8%増に鈍化する一方、4月のインフレ率は7%を超えた。物価高と景気減速が同時に進むスタグフレーションの恐れがある」

     

    フィリピンは、原油不足による打撃が大きくなっている。この危機を打開するには、日本との関係強化による以外に道がない。一段と、日本との距離を縮めるであろう。

     

    (3)「タイは、中低所得者向けの生活費軽減策などの財源として4000億バーツ(約1.9兆円)を上限とする緊急借り入れを議論する。インドネシアはガソリン価格の上昇を抑える補助金が膨らみ、財政悪化懸念が広がる。通貨ルピアは最安値圏で推移する。今回のイラン紛争を受けて、加盟国の間では有事の対応を強化するのと同時に化石燃料に依存しない社会への移行を進める機運が高まっている」

     

    ASEANが、最終的に化石燃料に依存しない社会を求めるにしても、現状は原油確保が至上課題である。

     

    (4)「フィリピンが訴えるのは1986年に当時の加盟6カ国で結んだ「ASEAN石油安全保障協定(APSA)」の強化だ。自然災害や紛争時に石油を融通する仕組みで、加盟国の拡大に合わせて更新してきたものの、機能不全が指摘される。首脳声明ではAPSAに関して緊急時の体制構築や情報共有を強化する方針を示す。国際シンクタンクの東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)も地域で共同の石油備蓄に関する調査を提案し、ASEANとしても検討する意向だ」

     

    ASEAN石油安全保障協定(APSA)は、今から40年前に結ばれたが実効を上げ得なかった。理由は、各国が自国優先で、備蓄の融通が進まず、合意形成が困難 な状態にあった。根本的理由は、資金難である。ここで日本が、4月に「POWERR Asia 」として100億ドル(1.6兆円)の即効性ある資金を提供する。ASEANが、この好条件を見逃すはずがない。APSAは動き出すであろう。日本が「資金+調達力+中東との外交パイプ」をセットで提供するだけに、日本がAPSAを「実質的に肩代わり」する構造が生まれる。これは、日本にとってもASEANのエネルギー・ルートに深く関わる「一大チャンス」となろう。

     

     

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    ASEAN(東南アジア諸国連合)経済は、急速に停滞感を強めている。米国の高関税で対米輸出に陰りが出る一方、中国からは安値の工業製品が洪水のごとく流入し、ASEANの産業基盤へ打撃を与えている。

     

    こういう手詰まり感の中で、日本が2023年に始めた「重要資源25ヶ国」事業に、インドネシア・ベトナム・マレーシア・フィリピン・タイの5ヶ国が入っているのだ。これら諸国は、この2月に米国が音頭を取る「重要鉱物特恵市場」(8月稼働)へ参加した。日本の化学的精錬法によって自前の精錬から製品までの道が開けた。さらに、関連産業においては米国内で事業展開できるメリットも約束されているので今後、大きく展望が開けてきた。

     

    『日本経済新聞』(2月27日付)は、「ASEANは自らを改革せよ」と題する投稿を掲載した。筆者は、IDEASマレーシアエコノミストのドリス・リュー氏である。

     

    東南アジアは重要な岐路に立っている。同地域の経済は低・中コストの輸出志向型製造業を基盤に世界的な需要を支えながら成長してきた。しかしそのエンジンは今、失速しつつある。保護主義の高まり、繰り返される貿易戦争、分断化する地政学的秩序が、東南アジア諸国連合(ASEAN)の構造的な脆弱性を露呈させている。

     

    (1)「ASEANの二大市場である米国と中国が輸出の見通しを鈍らせている。米国は高関税により障壁が高まり、中国の産業過剰生産能力が安価な製品を地域市場にあふれさせ、現地産業を脅かしている。ASEANは変化する国際情勢に適応するため、産業政策の再考と経済基盤の再構築が急務だ」

     

    ASEAN経済は、25年に入って状況が急変している。米国の高関税による対米輸出減と中国からのダンピングよる輸出攻勢である。このままでは、「中所得国の罠」は確実で、戦前の評価であった「停滞するアジア」へ逆戻りしかねない状況である。

     

    (2)「第一に、ASEANはすべての産業において低付加価値生産から高付加価値生産へ移行しなければならない。製造業の多くは低、中程度の付加価値の組み立て作業に集中している。半導体産業は集積回路設計、高度なパッケージング、研究開発といった上流工程へ移行しなければ、収益が減少する構造に閉じ込められてしまう」

     

    ASEANは、レアアースなど重要鉱物の産出国である。これまでは、中国へ鉱石を売ってきたが、日本の化学的精錬法提供で「売鉱」から一転して、自前での精錬が可能になった。上記5ヶ国が、製品までの一貫生産体制を築けることは朗報である。レアアース生産国になれば、半導体などの産業高度化も夢ではなくなるだけに、日本への期待感が強まっている。日本は、レアアース供給国が増えるというメリットを受けられる。

     

    85年前、日本は「南方資源」占領目的で太平洋戦争を始める愚を犯した。現在は、科学力(化学的精錬法)によって、ウイン・ウインの関係で双方が利益を得られる時代になった。改めて、科学の力が平和を切り開くことへの認識を深まるであろう。

     

    (3)「農業はより高い所得と長期的な食料安全保障を確保するために、バイオテクノロジー、農業技術、スマート農業への転換が不可欠だ。ハイテク農業は小規模農家を高所得層へと変革させる。サービス業は観光、小売、ホスピタリティといった低生産性活動に依存している。次の成長をけん引するためには、知識集約型のサービスへ軸足を移す必要がある。労働者を高度な役割へ再訓練し、地域的なデジタル統合と越境サービスの深化も図らねばならない」

     

    工業化は一点突破で道が開ければ、それに付随して産業高度化が進むものである。バイオテクノロジー、農業技術、スマート農業への転換が可能になろう。

     

    (4)「第二に、ASEANは技術導入を加速させる必要がある。中小企業や国有企業も自動化、デジタルツール、人工知能(AI)アプリケーションを導入し効率性を高めなければならない。企業がサプライチェーン、金融取引、物流を同時にデジタル化すると、生産性は相乗効果で飛躍的に向上する。第三に、ASEANの長期的な競争力は人的資本への投資と地域イノベーション・エコシステムの構築にかかっている。大規模なスキル向上・再教育プログラム、デジタル・グリーン経済のニーズに沿ったカリキュラム改革、国境を越えた研究開発協力が必要だ」

     

    このパラグラフは、ASEANの向かうべき理想図が説かれている。これらが現実化する道は、日本の提供する化学的精錬法によって切り拓かれるであろう。

     

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