勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: イラン経済ニュース時評

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    イラン指導部は、首都テヘラン市内での大型ポスター掲示や政府主導のイベントなどを通じて、国家の団結と世界的超大国である米国に対する「勝利」を誇示するための大々的な政治宣伝を展開している。イラン経済は崩壊寸前である。国民は、戦争前から絶望的な状況で、経済制裁と空爆でさらに悪化している。国民の不満が頂点に達しているのだ。

     

    『ロイター』(5月23日付)は、「イラン指導部、首都で団結と対米『勝利』の政治宣伝 国民から冷ややかな目も」と題する記事を掲載した。

     

    大型ポスターで掲げられているのは、革命防衛隊や事実上封鎖しているホルムズ海峡の画像だ。軍事色を取り入れた集団結婚式、モスクでの一般市民向け軍事訓練なども実施され、断固たる抵抗の意思が演出された。

     

    (1)「直近の政治宣伝の特徴は、かつての革命的・宗教的なメッセージとは異なり、強硬派の支持層を超えたナショナリズムのテーマを強調している点にある。非政府組織、国際危機グループ(ICG)のイラン・プロジェクト担当ディセクター、アリ・バエズ氏は「イスラム共和国の古いイデオロギーはもはや社会の中で大きな支持を得られなくなっていた。そのため大衆を動員できるイランのアイデンティティーの他の要素を引き出す必要があった」と語る。ただバエズ氏や他の専門家は、現在の環境に深く幻滅しているイラン国民の間でそれがどの程度の成功を収めるかは議論の余地がある、とみている」

     

    直近の政治宣伝の特徴は、強硬派の支持層を超えたナショナリズムのテーマを強調している点にあるという。大衆を動員できるテーマを探している。だが、現在の環境に深く幻滅しているイラン国民の間で、成功を収めるかは不明という。それほど、国民は経済的に疲弊している。

     

    (2)「確かにイランは、米国やイスラエルの空爆に耐え抜き、世界の石油供給の重要ルートであるホルムズ海峡を事実上封鎖することでトランプ米大統領を交渉の場に引き戻すことに成功したが、国内では悲惨な事態に直面している。経済は戦争前から既に絶望的な状況にあり、崩壊の危機に瀕している。また当局による国内の締め付け強化は、政府が数カ月前に起きた騒乱の再発を恐れている表れだ。こうした中で指導部は依然として国家の抵抗や西洋の悪事という確立されたイランの政治宣伝のモチーフを利用しているが、一部の古い革命的なイメージは控えめになった」

     

    革命的イメージを前面に出しても、国民の反発を受けるだけという計算が働いているのであろう。元を糺せば、革命があったか西側と長期の対立が始まったという理屈づけである。

     

    (3)「ホルムズ海峡封鎖は、国内向けのメッセージ発信においても中心的な役割を果たしてきた。あるポスターには、米軍の艦船や軍用機を捕らえた漁網を持つ革命防衛隊員が描かれ、別のポスターでは、海峡の独特な形状をした布がトランプ氏の顔にホッチキスで留められている。これらのイメージは、頭蓋骨の顔をした自由の女神像を描いた有名な壁画を含め、イランの英雄的行為を称賛し、米国を非難するという長い伝統に合致する」

     

    戦争で戦意高揚を図るために、敵を貶めるために露骨に描くのだ。どの国も行っている。

     

    (4)「過去とは異なり、テヘランにある別の巨大なポスターには、1世紀前にイランの湾岸地帯を占領していたイギリスに対するゲリラ指導者であったライス・アリ・デルバリが、革命防衛隊の司令官の隣に立ち、厳しい表情で両手を上げて海峡を封鎖する様子が描かれている。元政府職員の1人は「国家の英雄を描いたこれらの横断幕は、戦時のためのものだ。その後、彼ら(政府)は再び私たちに牙を剥き、弾圧が始まるだろう」と語った」

     

    政府の牙は現在、戦争に向けられているが、いずれ国民へ向けると絶望的である。専制国家とは恐ろしいものだ。

     

    (5)「イランにおいて政治権力の中心は、戦争中に聖職者から革命防衛隊の司令官へと急激に移り変わった。これは、長年続いていた緩やかな変化が決定的になった、というのがイランの政治関係者の見方だ。バエズ氏は、「政権が発信しているナラティブ(物語)の方向性は、実際には政権が遂げている変容を示している。それは神権政治体制から軍事体制へと移行しつつある」と指摘した。敬礼するサッカーイラン代表チームの画像や、巨大なイラン国旗を掲げた新最高指導者モジタバ・ハメネイ氏の画像が、愛国的なテーマを象徴している」

     

    イランにおいて政治権力の中心は現在、聖職者から軍部へ移っている。いずれにしても、国民には無縁な動きである。

     

    (6)「バエズ氏は、インフラへの空爆やトランプ氏による「文明の抹消」という脅しが、こうした戦術の効果を強めていると述べた上で「これら全ては、イラン政権がこの戦争をイスラム共和国に対する戦争ではなく、国家としてのイランに対する戦争として描くのを助けている」と付け加えた。ただ当局が国民の支持確保のために戦争中ほぼ毎晩のように集会を開催してきたが、体制の支持者も反対者もその結果については懐疑的だ。国民からは、体制が支持されていると国際的にアピールする暇があるなら、経済を改善すべきだといった批判も出ている」

     

    米国やイランによる戦争の対象が、イスラム共和国に対するものでなく、国家としてのイランに対する戦争であるとカムフラージュしている。イラン治世者は、米国とイランが挑んでいる対象は、自分たちでなく国民を含めたイラン国家全体であるとぼやかしているのだ。イラン政治体制が、宗教による支配という異常さであることを認識している結果である。

     

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    イランと米国は仲介国と協力し、戦争終結に向けた1カ月間の交渉の枠組みを定める14項目・1ページの覚書の策定を進めている。複数の関係者が明らかにした。こうした項目は、早ければ来週にもパキスタンの首都イスラマバードで再開される可能性のある協議の焦点になる見通しだという。イラン側は、これまで難色を示していた核プログラムの議論についても、柔軟な姿勢を見せ始めているという。

     

    ロイターによると、覚書の核心に「ホルムズ海峡の通航制限解除」が入っている。戦闘終結、ホルムズ海峡の開放、イランの核計画制限、米制裁解除に向けた30日交渉となっている。ホルムズ海峡の封鎖は、30日かけて段階的に解除される 。 一気に全船を解放しない理由は、次の理由とみられる。

     

    イラン側の「面子」を保つこと、米軍・湾岸諸国が安全確認を行うこと、地雷・妨害物の有無を確認すること、船主・保険会社のリスク管理などだ。30日以内に、ほぼ全船が出航できる。 ただし、優先順位と安全確認を経て段階的に行われる。

     

    優先される船は、医療品・食料・生活物資、エネルギー輸送船(タンカー)、国際保険が付いている船である。

     

    後回しになる船は、イラン側が「政治的カード」として扱ってきた船、書類不備・保険不備の船、監視対象国(一部の第三国)関連船である。しかし、 最終的には全船が出られる方向で米・イラン双方が合意している。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月7日付)は、「イランと米国、終戦に向け覚書策定進める」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「1ヶ月の交渉期間は、進展があれば双方の合意の上で延長される可能性がある。イラン外務省の報道官は、米国の提案は精査中であり、評価がまとまり次第、仲介役のパキスタン側に見解を伝えると述べた。複数の米当局者の話では、米国、イラン、仲介国の各政府間で複数の文書がやり取りされており、合意済みの要素を1枚の枠組み文書に集約することを目指している」

     

    なぜ、イランは商船を解放せざるを得ないのか。イランは、経済的に完全に行き詰まっていることだ。外貨収入が枯渇している。港湾封鎖で自国経済も麻痺したこと。中国も助けられないこと。UAE・サウジアラビアが米国側に寄ったこと。国内不満が鬱積して限界にきていること。こうして、 海峡封鎖を続けるメリットがゼロになった。米軍の逆封鎖が、決定的な経済窮迫要因になった。

     

    (2)「覚書を巡る作業の進展については米ニュースサイトのアクシオスが先に報じた。関係者の話では、この作業文書には30日間の交渉中にイランがホルムズ海峡での通航制限を緩和し、米国はイラン港湾封鎖を縮小することが盛り込まれている。双方は、ウラン濃縮停止といったイランの核開発プログラムについて詳細の詰めの作業を進めていると関係者は話した。米国は、イランに合意違反があった場合のウラン濃縮停止期間の延長、地下核施設の禁止、抜き打ち査察といった条項を盛り込みたい考え。イラン当局者の1人によると、イランのウラン濃縮作業を12~15年間停止し、その後は3.67%の濃縮を認める案が出ている。同国が現在保有するウランの濃縮度は最高60%と、90%の核兵器級に迫る水準だ。この当局者によれば、双方はイランの保有する高濃度ウランを海外に移送することも協議しているが、イランは米国への移送に反対する姿勢を崩していない」

     

    米国の目的は、「核凍結+海峡安定」であったが、いずれも達成可能になった。当初から政権転覆ではなく、 イラン政府の行動制御が目的とみられていた。陸上戦へ突入しなかったことが、これを示している。核開発は、覚書通りに 12〜15年後にどうなるのか。これが、重要なポイントである。

     

    12〜15年後に、核開発を再開する可能性はゼロではないが、その頃にはイラン国内の世代交代、中東秩序の再編、米国・湾岸諸国の監視網 が完全に整っている。つまり、12〜15年後に「再び核兵器化」する現実的可能性は極めて低いであろう。核開発再開は、今回と同じ事態を生むことが明らかな以上、「学習効果」があるはずだ。

     

    中東秩序はどう再編されるか。中国・ロシアの介入余地は縮小しよう。 イランが、核の監視を受けるために米国枠組みへ部分的に取込まれる。これで、 中国が中東で「決定的カードを持つ」構図は大きく後退するだろう。 ロシアも、ウクライナ戦争で手一杯のままだ。中ロにとっては、きわめて「不都合な事態」が発生する。

     

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    トランプ米大統領は5日、イランとの包括的合意に向けて「大きな進展」があったとして、ホルムズ海峡の船舶航行を支援する作戦「プロジェクト・フリーダム」を短期間停止すると表明した。これは、すでにホルムズ湾が米海軍によって完全な支配下に置かれている結果であろう。湾内に滞留を余儀なくされている商船が、米軍管理下で集団通航を実現すると、イランの敗北は決定的になる。イランは、この事態を避けるべく急遽、米国との妥協案を探っているとみられる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月6日付)は、「トランプ氏、ホルムズ『通過支援』を一時停止 交渉に進展」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は5日夜、ホルムズ海峡で商船の通過を支援する政権の取り組み「プロジェクト・フリーダム」を一時停止することに同意したと表明した。

     

    (1)「トランプ氏はトゥルース・ソーシャルへの投稿で、一時停止は短期間であり、パキスタンや他の国々からの要請に基づくものだと説明。「イラン代表団との完全かつ最終的な合意に向けて、大きな進展があった」と明かした。さらに、米国は引き続きイランの港湾封鎖を全面的に継続するとした上で、政権は「イランとの合意がまとまり、署名に至るかどうかを見極める」との考えを示した。合意内容の詳細には触れなかった」

     

    イランは、「メンツを保った形」で妥協する可能性が極めて高いとみられる。イランは、米軍監視下で「集団通航」されるのは、国内的には屈辱となる。 しかし、現在の力関係と制裁状況を踏まえると、イランは何らかの「建前を整えた妥協」を選ばなければならないと予測される。

     

     イランが取り得る「メンツを守る妥協パターン」としては、米国主導でなく「国際的な航行安全の枠組み」と再定義するのではないかとみられる。イランは、自国の要請ではなく、国際社会が勝手にやっていると説明する必要があるからだ。これにより、米軍の護衛を受けているという屈辱を回避するという予測ができるであろう。

     

    なぜ、イランはここで妥協せざるを得ないのか。 米国の海上封鎖が完全に効いていることだ。イランはすでに、原油輸出がほぼ止まって外貨収入が枯渇している。国内経済が危機的 という状況に陥っている。 封鎖が続けば、政権の存続すら危うくなるという状況であろう。軍事的にも打開策がなくなっている。米海軍の制海権が圧倒的支配を強めている。イランは、対艦ミサイルやドローンで嫌がらせはできても、封鎖を破る力がなくなっている。こうした状況下では、「名誉ある撤退」によってメンツを守り、「勝利宣言」して終幕にする可能性が出てきた。これが、イランによる常套手段である。

     

     

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    イランが、ホルムズ海峡で支配範囲の拡大を図る中、数百隻の船舶がドバイ沖に集まっている様子が5日に確認された。戦争開始以降、船舶が集まりやすい海域ではあるものの、これほどの数は異例とされている。これは、米軍の指示で船団を組んでおり、護衛下で一挙にホルムズ海峡を通航する準備が始まったと見られる。米軍は、完全な護衛体制を組んでおり、イラン側の攻撃をかわす体制を整えている。

     

    『ブルームバーグ』(5月5日付)は、「ドバイ沖に船舶が異例の集結-イランが管理拡大のホルムズ海峡離れる」と題する記事を掲載した。

     

    米国とイランが4日にペルシャ湾で交戦し、数週間続いてきた停戦は不安定な状態となっている。米国は、ホルムズ海峡に航路を開いたと発表し、米CBSは米海軍の駆逐艦2隻がペルシャ湾に進入したと報じた。

     

    (1)「ブルームバーグ・ニュースが監視するドバイ沖の海域には4日以降、さまざまな種類の船舶約60隻が新たに集結した。現在、この海域には信号ベースで少なくとも363隻の船舶が確認されており、これまでの7日間平均の294隻を大きく上回っている。イランは4日、ホルムズ海峡の「管理区域」を、ホルムズ海峡から南に向かってアラブ首長国連邦(UAE)のウンム・アル・カイワインまで拡大したと発表した。ドバイは、イランが新たに設定した区域の外側に位置する」

     

    ドバイ沖への船舶集結は、単なる避難ではない。 イランの管理区域を避け、UAE側に「新しい安全圏」が形成されつつあるという意味だ。この裏には、米軍の指令があるとみるべきだ。すでに、ホルムズ海峡の通航が、ほぼゼロ になっている。これは、 ホルムズ海峡が空洞化していることで、イランの管理が機能していない結果であろう。イランが、「管理区域拡大」しても、面子のための政治的宣言にすぎない。イランは、管理する海峡を持ちながら、どこの国もそこを通らない。 これは、イラン実質的な敗北である。

     

    (2)「イランを巡る戦争が始まって以来、ペルシャ湾での船舶の監視は、トランスポンダーを停止して姿を消す船舶が増え、電波妨害も強まったことで複雑化している。その結果、不自然な形状の船舶の集まりが観測されるようになった。ドバイ沖での船舶の集合の形状も、実際の海上の状況を完全には反映していない可能性があるが、少なくとも、海上輸送の動向を示してはいる。イランは4日、UAEのフジャイラ港を攻撃した。オイル・ブローカレッジのグローバル海運調査責任者、アヌープ・シン氏は「海峡での双方向の通航がすぐに再開されるとは見ていない」と述べた」

     

    UAEが、「ホルムズ代替ハブ」として浮上している。フジャイラ港の利用、ドバイ沖の待避海域、UAE海軍+米海軍の防護圏など、ペルシャの 新しい海上秩序の中心 になって来た。船舶はイラン側を避け、 UAE側に集まっており、イランの管理権は空洞化している。

     

    米軍の逆封鎖で、イランは海上で手が出せない構造ができている。イランが攻撃すれば、米軍に反撃される。攻撃しなければ管理権を主張できない。結果として「管理区域」だけが広がり、実効性はゼロという「空洞化現象」である。これは典型的な 「面子だけ残して実質的敗北」パターンとみられる。UAEの地位が、急上昇している。

     

    (3)「現在のホルムズ海峡の通航数はほぼゼロで、戦前の1日あたり約135隻と比べて大幅に減少している。長期化する封鎖は、すでに世界の海運市場を混乱させている。シン氏は、米国がより多くの船舶をホルムズ海峡外へ誘導できれば、湾内に閉じ込められている数百隻の原油・化学タンカーの脱出の可能性が高まり、市場への圧力が緩和される可能性があるとの見方を示した」

     

    米国が、より多くの船舶をホルムズ海峡外へ誘導できれば、湾内に閉じ込められている数百隻の原油・化学タンカーの脱出の可能性が高まる、としている。

     

    (4)「ただ、今週はこれまでのところ、海運業界が慎重姿勢を強めざるを得ない状況だ。UAEの国営石油会社アブダビ国営石油会社(ADNOC)は4日、同社の超大型タンカー「バラカ」がホルムズ海峡でドローン攻撃を受けたことを認め、韓国政府も同国の船舶が戦争開始後初めて攻撃対象となったと発表した」

     

    これまでに、米海軍駆逐艦2隻が湾内に進入している。イランは「管理区域拡大」を宣言したが、商船は完全にこれを無視している。この状況は、商船が 「自発的に避難しただけ」では説明できず、米軍の指令とみるのが自然であろう。全ての商船が、船団を組める状況を確認次第、米軍監視下で「集団通航」の可能性が高い。米軍は過去にもこ方式を採用している。1987年、 クウェート船を米国旗に付け替え、船団方式で護衛した例だ。今回、「数百隻の商船を安全に通過させた」 となれば、米国の外交的勝利と受け取られる。

     

     

     

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    クーパー米中央軍司令官は4日、米国がホルムズ海峡の船舶航行を解放するための作戦を開始したと発表した。それによると、イランの小型船舶6隻を破壊したほか、イランが発射した巡航ミサイルとドローンを迎撃したと述べた。これにより、米国商船2隻が無事通過した。焦点は、次にどこの国の船舶が通航するかだ。イラン軍は、ホルムズ海峡で米軍を止めるための武器が、ほぼ無力化されたとみられている。それだけに、イラン革命防衛隊は威勢の良い発言を繰り返しても、単なる脅しに過ぎないと指摘されている。

     

    『ロイター』(5月5日付)は、「米中央軍、イラン小型船舶6隻を撃沈 ホルムズ海峡開放作戦を開始」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は4日、「プロジェクト・フリーダム」と名付けたこの作戦を開始した。クーパー米中央軍司令官は、作戦開始にあたり、イラン軍に対し米軍に近づかないよう「強く推奨した」と述べた。作戦には米兵1万5000人、米海軍の駆逐艦、100機超の陸上・海上航空機、水中戦力が投入されているという。また、イランへの船舶の入港やイラン領土からの出港を阻止する米国の対イラン封鎖も継続しており、予想以上の効果を上げていると述べた」

     

    イラン軍は、ホルムズ海峡で使える武器はほぼ尽きたと指摘されている。米中央軍クーパー司令官が、「われわれは防衛兵器の的確な運用により、それらの脅威を一つ残らず排除した」 と指摘している点が重要だ。

     

    1)小型艇戦力は、壊滅的打撃を受けた。6隻撃沈された上に、米軍のアパッチ・シーホークの優位性により、小型艇が出撃すれば即撃沈 される。 ホルムズ海峡での小型艇戦術は破綻したとされている。

     

    2)巡航ミサイル・ドローンの迎撃率ほぼ100%である。米軍は多層防衛(艦艇+航空機+電子戦)を展開しているので、イランの発射した巡航ミサイル・ドローンは全て迎撃される。すでに、「飽和攻撃」が成立しなくなっている。

     

    3) 米軍が、機雷除去で航路を確保した。これによって、イランの海峡封鎖の根幹が崩壊したのも同然の状態にある。

     

    4 )沿岸ミサイルは、発射すれば即座に位置が露呈する。米軍航空戦力は、100機以上が常時上空に止まっているので、発射地点は即座に反撃対象 になる。 イランは、撃てば撃つほど損害が増える事態となっている。こうしてホルムズ海峡は、無力化されたので、次は英国船が通航するかも知れないとみられている。日本船は、未だ慎重であろう。

     

    (2)「作戦は複数の段階で構成され、まずイランが敷設した機雷を除去する航路の確保から始まった。米国は4日、米国旗を掲げた商船2隻を海峡に通過させ、航路の安全性を実証した。クーパー氏によると、今回の作戦は従来の護衛任務を超え、船舶やヘリコプター、航空機、さらに電子戦を含む多層的な防衛態勢でイランの脅威に対処する、より大規模な作戦となっている。イランの高速艇は米軍のアパッチやシーホークヘリコプターによって撃沈されたという」

     

    今回の護衛作戦は、従来規模を超えており船舶やヘリコプター、航空機、さらに電子戦を含む多層的な防衛態勢でイランの脅威に対処しているという。米軍の威信を賭けた護衛である。

     

    (3)「クーパー氏は、イランがアラブ首長国連邦(UAE)に対するドローンおよびミサイル攻撃を含めて域内で反撃を強めており、4月8日に開始した停戦が引き続き有効かどうかについてはコメントを避けた。ただ、イスラム革命防衛隊(IRGC)が米国の作戦を「妨害」しようとしていることは認めた。「IRGCは、われわれが護衛する船舶に対し、複数の巡航ミサイル、ドローン、小型船舶を発射した。われわれは防衛兵器の的確な運用により、それらの脅威を一つ残らず排除した」と述べた」

     

    IRGCは、メンツを保つ上で強硬発言をしても、手出しができず「黙認」という形が予測されている。

     

    (4)「革命防衛隊は、過去数時間に商船が同海峡を通過した事実はないとし、米国の主張は虚偽だと反論。イラン国営テレビもイラン軍当局者の話として、小型船舶沈没に関する米軍の発表を否定した」

     

    イランは武器を持っているが、「撃てば損害が増える」「撃っても効果がない」 という状況に追い込まれている。これは軍事的には 「実質的な戦力無効化」と呼ばれる状態だ。だからこそ、イランは「否認フェーズ」に入っている。米国商船の通過を否定、小型艇撃沈の否定である。戦時中の日本軍が、敗北しながら勝ち続けていると「嘘情報」を流していたのと同様のケースだ。これは典型的な 「面子を保ちながら実質的敗北を受け入れる前段階」とされている。

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