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シンガポールウォン首相は3月28日、4日間の中国訪問を終えた。この期間中、最高指導部は、誰もウォン氏と面会しない「冷遇」ぶりをみせた。訪中前に、日本を訪問して高市首相と会談していることに腹を立てたのであろう。中国とは、こういう国であることを世界に示した。シンガポールは、人口の75%が中華系である。中国にとっては「同胞」でもある。そのシンガポールを冷たくあしらったのだ。外交儀礼からみて、あり得ない振舞である。

 

『レコードチャイナ』(3月29日付)は、「ウォン首相『日本と中国はシンガポールとASEANにとって重要なパートナー』―仏メディア」と題する記事を掲載した。

 

フランス『RFI』中国語版サイトによると、シンガポールのウォン首相は28日、4日間の中国訪問を終えてシンガポールメディアの取材に応じた。東南アジア諸国は中国と米国の対立でどちらの側にもつかず、地域が開放的で包容的な状態を維持することを望むと述べた。

 

(1)「ウォン氏は、「主要国との開放的で包括的な関係構築を目指す姿勢は、シンガポール特有のものではない。これは東南アジア諸国連合(ASEAN)の立場でもある」とし、「ASEAN加盟国はいずれもどちらかの陣営につくことを望んでいない。したがって、ASEANの立場は、すべての主要国と全方位的かつ前向きな関わりを持ち、開放的で包容的な地域を構築することだ」と述べた)

 

ASEANは、中国の軍事的圧力に苦しんでいる。だが、それを言い出せない弱みを抱えている。ASEANのエリート世論は、圧倒的に日本支持である。ODA(政府開発援助)によって、日本の「紳士国」ぶりを理解しているからだ。2位は米国、3位が中国というのが支持国ランキングである。

 

(2)「ウォン氏は、シンガポールが2027年のASEAN議長国として、どの国にも肩入れせず、自国の利益を最優先に行動するという方針を、他の加盟国や地域のパートナーにどのように浸透させていくのかという質問に答えた。ウォン氏は、ASEAN首脳会議にはオーストラリアやニュージーランドを含む幅広いパートナーが集まっており、さらにASEANプラス3の枠組みを通じて中国、日本、韓国も参加していると指摘した」

 

シンガポールは、27年のASEAN議長国である。その意味もあって、ウォン氏は日中を訪問した。日本は、高市首相と会談した。中国は最高指導者が面会せず、全国人民代表大会(全人代)トップの趙楽際委員であった。この落差は何を意味するか。シンガポールを露骨に軽視したのだ。

 

(3)「ウォン氏は、「それがASEANのやり方だ。たとえ主要国同士に問題があっても、われわれはすべての主要国を巻き込みたい。われわれは彼らと前向きで建設的な対話や関わりを持ち、協力関係を深めるための共通点を見出し続けている」とし、このバランスの取れたアプローチをASEAN加盟国に納得させることは難しくないはずだと付け加えた。また、シンガポールと中国訪問で訪れた香港・海南島とを対比させ、シンガポールには広大な内陸部がなく、ASEANがその役割を果たすことができると述べた。ウォン氏は「われわれはより広範なASEAN市場の統合に向けて、これまで以上に努力すべきだ。実際、われわれは統合を進めていて、特に来年ASEAN議長国を務める際には、それを継続していく」と述べた」

 

ウォン氏は、「大人の対応」をしている。中国への不満を一切隠している。ASEANにとって、日中は同じレベルで重要な国としているのだ。シンガポールは、中国の「日本軍国主義」に同調せず、逆に中国を批判してきた経緯がある。中国が、ウォン氏を冷遇する背景がここにある。

 

(4)「ウォン氏は、日中関係および先週の東京訪問、今週の海南島・香港訪問と、訪問のタイミングが相次いだことにも触れ、日中関係は「困難な局面を迎えている」と認めた上で、「しかし、シンガポールの立場から言えば、われわれは中国と日本の両方と友好関係にある。さらに言えば、米国やその他の主要なパートナー国とも友好関係にある」と述べた。ウォン氏によると、主要国同士の関係に困難が生じる可能性はあるものの、シンガポールの目標はすべての主要国と友好関係を維持することであり、それは可能だと考えていて「それがわれわれのやり方であり、これまで一貫してそうしてきた。そして、われわれは今後も主要国すべてと連携し、協力関係をさらに深め、双方にとって有益な結果を追求していく」と述べた」

 

中国は、自国の味方でない国は「敵」扱いである。こうして、外交範囲を縮めるのであろう。それにも関わらず、シンガポールは正論を述べ続けている。日本外交と一脈相通ずる面がある。これが「大人の外交」であり、他国から信頼されるのだ。