勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: UAE経済ニュース時評

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    高市早苗首相は7日、中東情勢を受けた石油調達に関し「備蓄放出量を抑えながら年を越えて供給を確保できるめどがついた」と説明した。5月は代替ルートでの調達が過半に達し、とりわけ米国からは前年比で4倍に達する見込みだと述べた。多くの国が、ホルムズ海峡の閉鎖によって原油不足に直面している中で、日本が代替調達で順調な理由は何か。一言で言えば、日本が産油国を信頼して長期取引をしていることで勝ち得た「信頼感」であろう。

     

    『ブルームバーグ』(4月7日付)は、「日本行き中東産原油、異例の洋上積み替え相次ぐ-安全確保で慎重対応」と題する記事を掲載した。

     

    マレーシア沖で積み替えられた中東産原油が、日本へ向かっていることが分かった。珍しいルートを取り、現在は北海道の苫小牧へ向かっている。3月下旬にもインド西海岸のムンバイ沖で同様の積み替えが起きており、イラン情勢で中東産原油の供給が滞る中、異例の対応が相次いでいる。

     

    (1)「ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、超大型原油タンカー(VLCC)「KISOGAWA」は5日、マレーシア西岸のリンギ沖でVLCCRIO DE JANEIRO ENERGY」から中東アブダビ産の原油約120万バレルを受け取った。約1週間前にも、アブダビ産原油が洋上で積み替えられ、現在日本に向かっている」

     

    超大型原油タンカーは、ホルムズ海峡での原油積み込みが危険なため、マレーシア西岸のリンギ沖で積み替えて日本へ向っている。こういう臨機応変に原油輸送方式を変えられるのは、産油国による日本への高い信頼度の結果だ。

     

    日本は、「三方よし」の精神で原油取引を行っている。「売り手よし(産油国)・買い手よし(日本)・世間よし(市場の安定)」の国際版である。現在のような緊急事態が起こると、産油国側は代替ルート(途中の洋上での積み替え)へ切替えて、日本へ安定供給に協力してくれるのだ。そのよい例が、UAE(アラブ首長国連邦)である。UAEは、日本の原油輸入のトップ国である。米国も、代替輸入ですぐに対応してくれた。

     

    (2)「船舶間の積み替え自体は石油業界で珍しくない。通常は、中東の輸出ターミナルから国内の製油所まで直航する日本の海運会社にとって、これは異例だ。イランによる船舶攻撃が相次ぎ、死者も出たことを受け、危険度が高まる紛争地帯にタンカーを近づけずに原油を確保しようとする船社の慎重姿勢を浮き彫りにしている」

     

    原油積み替えは、珍しい事例である。通常は、超大型タンカーへ積み込み、そのまま需要国へ到着するのが普通である。今回のように戦闘状態の場合、いつ着弾するか分からない危険な状況にある。超大型タンカーを横付けできないので、他の安全な港湾から小型船で積出し、超大型船へ積み替えなければならない。こういう手間暇を掛けても、産油国側が安定供給に協力してくれるのだ。産油国が、「日本のためならば」という話になる。

     

    (3)「海事データベースのエクアシスによると、川崎汽船がKISOGAWAの船主兼運航会社、シノコー・マリタイムはRIO DE JANEIRO ENERGYの管理会社として登録されている。KISOGAWAが目的地として信号を発している苫小牧の製油所を保有する出光興産はコメントを控えた。3月中旬、日本船籍のKISOGAWAは東南アジアから西に向かっており、オマーン湾のフジャイラへ向かうものと見られていた。だが3月23日、スリランカ沖でUターンし、3日にRIO DE JANEIRO ENERGYと合流するためマラッカ海峡へ引き返した。同船は3月上旬にアラブ首長国連邦(UAE)フジャイラにあるアブダビ国営石油会社(ADNOC)の施設で原油を積み込んでいた」

     

    オマーン湾のフジャイラ港は、UAEの港湾である。ここへ超大型タンカーを横付けしても、万一のリスクを考えれば回避するほかない。そこで、マラッカ海峡へ引き返して安全な海域で小型タンカーから積み替えをするのであろう。

     

    (5)「ホルムズ海峡が実質封鎖される中、原油の95%超を中東に依存する日本は代替調達を進めている。3月末にはインドのムンバイ沖で「OLYMPIC LUCK」から「ENEOS GLORY」に約180万バレルの中東産原油が積み替えられた後、九州に向かっていることが明らかになっていた。一方、商船三井関連の液化天然ガス(LNG)船や液化石油ガス(LPG)船3隻がホルムズ海峡を通過していることも明らかになっている」

     

    日本の原油調達が安定していることは、実は近江商法「三方よし」の一つである“世間よしにもつながっている。日本がパニック買いをしない、市場価格を乱さない、中東の政治的緊張を煽らない、米国のエネルギー輸出戦略を安定させる。こういう「重石」のような役割を果しているのだ。日本が安定していること自体、国際市場の安定に貢献しているという構造をつくっているのである。


      


    日本の原油の95%はこれまで、ホルムズ海峡を通過してきた。それだけに、イランによる事実上の海上封鎖は、日本の受ける打撃を大きくしている。だが、これに風穴を開ける新たな原油輸送ルートが登場した。イラン軍の攻撃圏外のUAE(アラブ首長国連邦)のフジャイラ港を積出し基地に、日本への輸送ルートを開くものだ。フジャイラ港は、米海軍とUAE海軍によって守られている。イランの軍事妨害は、届かないとされている。

     

    具体的には、アブダビ産原油をフジャイラ港で積み込み、インド沖でVLCC(大型タンカー)に積み替え日本へ直行するものだ。これによって、4月中旬に約180万バレルの原油が九州へ到着する。このルートは、今後も引き続き活用される見込みだ。こうして、UAE・インド・日本という三カ国の連携によって、ホルムズ海峡を通過しない新たな原油輸送ルートが開かれることになった。

     

    『ブルームバーグ』(4月1日付)は、「中東産原油、インド沖で積み替えたタンカーが日本へ-4月中旬に到着」と題する記事を掲載した。

     

    中東アブダビ産の原油がインド西海岸のムンバイ沖で超大型原油タンカー(VLCC)へ別の船から積み替えられた後、日本へ向かっていることが分かった。船舶追跡データによれば、4月中旬に九州に到着する見込みだ。

     

    (1)「ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、VLCCの「ENEOS GLORY」は先週後半、別のVLCC「Olympic Luck」から約180万バレルの積荷を移し替えた。「Olympic Luck」は同積み替えの約1週間前に、オマーン湾のフジャイラで、マーバン油田産の原油を積み込んでいた。ホルムズ湾の実質封鎖や周辺海域の混乱で、日本企業が中東産原油を現地で船に積み込むのが難しくなる中、こうした積み替えによる輸入が今後安定調達に寄与する可能性もある」

     

    今回は、「ホルムズを通らない中東原油」という意味で、日本にとって極めて重要な代替ルートになる。フジャイラ港は、ホルムズ海峡の外であることと米海軍とUAE海軍が常駐している。ここから積出して、インド沖で大型タンカー積み替えるもの。インド沖は「安全な積み替えハブ」として最適とされている。海賊リスクが低い、インド海軍のプレゼンスが強い、穏やかな海域で積み替えが容易という恵まれた条件を揃えている。VLCC(大型タンカー)が停泊しやすい深さがある。こういう利点によって、中東アジアの「新しい中継地点」として急浮上している。他国の原油取引も可能である。

     

    日本は、政治的に不安定なホルムズ海峡通過を回避して、フジャイラ港を積出し基地に振り替える可能性を強めている。UAE自身が、長期契約(10~15年)を前提にして日本との原油取引を望んでいるであろうとみられる。日本が、契約を守る国として信頼感を高めているからだ。日本も、「ホルムズを通らない中東原油」を確保するため、新たな輸送ルートを増やさざるを得ない事情にある。こうして、両国の希望条件が一致するであろう。

     

    (2)「ENEOS GLORYは、国内最大の石油元売り会社ENEOSホールディングスの海運子会社の運航船で、同社は九州大分県に製油所と鹿児島県に備蓄基地を保有している。ENEOSホールディングスの広報担当者はコメントを控えた。原油の95%超を中東に依存する日本は代替調達を進めている。赤沢亮正経済産業相は3月末に、ホルムズ海峡を経由しない中東の代替ルートや中央アジア、南米などの既に過去に輸入した実績がある国を含め、民間事業者の間で検討が進んでいると説明していた」

     

    国内最大の石油元売り会社ENEOSホールディングスだからこそ、今回の一連の「取引」を行えた。リスクを負担できるからだ。問題は、今回限りの「特殊ケース」に終らせることなく、継続させねばならない。それは、次のような背景があるからだ。

     

    米国は、今回のイラン戦争終結にみせたように短期戦志向である。したがって、中東の長期にわたる安全保障は、「地域大国(UAE・サウジ・インド)」が担わざるを得ないという緊急性が生まれている。日本も、これに応じて自前で輸送ルートを確保する必要がある。ホルムズ海峡が、「常に不安定」という前提になるからだ。日本は、「ホルムズを通らない中東原油」を確保するため、インド沖での積み替えルートを確保しなければならなくなったのだ。

     

    UAE・サウジ・インドは、日本にとって外交的な親密国である。ただ、日本がこういう「バイパス・ルート」を確保すると、中国は焦るであろう。中国の「一帯一路」が、日本によって脅かされるからだ。今回の輸送ルートが、日本にとってホルムズ海峡依存からの脱却の決め手になる意味で、エネルギー安全保障として戦後最大級の構造変化になる。

     

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