勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: UAE経済ニュース時評

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    国内石油元売りが異例の手法を使って原油を日本に運んでいる。日本経済新聞は、ホルムズ海峡が実質封鎖された35月に中東産原油を積んで日本へ向かう原油タンカー33隻の航路を調べたところ、5割の15隻がマレーシア沖やインド沖で外国船から日本船へと原油を積み替えていたことが分かった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月16日付)は、「中東産原油、異例の調達手法で日本に タンカーの5割が洋上受け取り」と題する記事を掲載した。

     

    日本船がアジアの海域で原油を船舶間で受け取るのは、中東の危険海域の航行を避けるためだ。米国・イスラエルがイランを先制攻撃して以降、日本船はホルムズ海峡を通ってペルシャ湾岸に並ぶ主要な原油積み出し港に入ることが難しくなった。ホルムズ海峡の外にあるオマーン湾についても、海上の安全情報を発信する多国籍情報機関が脅威レベルを「最高」に引き上げ、日本政府も注意喚起した。

     

    (1)「アラビア半島西側の紅海も航行に危険が伴う。出入り口のバブ・エル・マンデブ海峡周辺では、23年末からイエメンの親イラン武装勢力フーシが商船を相次ぎ攻撃し、日本船は通航を見合わせてきた。日本は原油の95%を中東に頼る。平時、日本船は1隻で中東から日本までの海上交通路「オイルロード」を通って原油を運ぶ。ホルムズ危機後、石油元売りは危険が伴う中東からアジアまでの原油輸送を外国船に任せる一方、日本船は中間点で外国船から原油を受け取って安全なアジアから日本へのルートのみを航行するようになった」

     

    ホルムズ危機後、日本の石油元売りは危険が伴う中東からアジアまでの原油輸送を外国船に任せている。一方、日本船は中間点で外国船から原油を受け取って安全なアジアから日本へのルートのみを航行する。被弾リスクを避けるためだ。

     

    (2)「船舶情報サービス「マリントラフィック」を調べたところ、海運大国ギリシャやアジアの海運関連会社が中東とアジアを活発に往復していることが分かった。有事をむしろ商機ととらえ、多額の用船料の見返りに危険を冒してリスクがある中東とアジア間を航行し、利益を最大化しようとしている。彼らにとって収益性が見劣りする中東から日本への直航はうまみが少ないとみられる。「ものすごいボーナスがあれば行くという(海外の)船主がいる。一方、我々は安全が担保されるか、リスクを評価してからでないと配船できない」。国内海運会社幹部は日本船が中東の航行を避ける理由をこう語る。危険海域を避けたい石油元売りや国内海運会社など日本側と、海外の海運関連企業との思惑が一致した格好だ」

     

    世界の海運界にも、「冒険野郎」はいるのだ。危険を顧みないで積み荷を運ぶ業者には、「千載一遇の機会」であろう。日本の海運界は、乗員の安全第一でリスクを冒せないのだ。

     

    (3)「欧州調査会社ケプラーの船舶データを基に、2021年から26年5月末までに産油国から日本に原油を運ぶ予定のタンカーの航路を分析した。26年3月以降、海外から日本へ向かったタンカーは68隻で、このうち15隻がアジアの洋上で中東産原油を積み替えた。中米パナマから運んだ原油を韓国沖で受け取った1隻を合わせ、アジアの海域での船舶間積み替えは過去5年間の四半期平均と比べても9倍に上った。アジアで積み替えた中東産原油量は2470万バレルで、ホルムズ危機後に日本が調達した原油の2割強だ」

     

    アジアで積み替えた中東産原油量は、2470万バレル。ホルムズ危機後に日本が調達した原油の2割強になる。洋上での積み替えは、もともと北朝鮮が「瀬取り」(違法)といわれる方式で行っていたものである。

     

    (4)「洋上積み替えは、港湾設備の制約がある国や地域では珍しくはないが、日本の原油調達では例外的な手段だった。横に並んだ2隻の船がホースで原油を移す作業に23日かかり、「取引にもよるが10万ドル(約1580万円)の追加費用が生じる」(エネルギー大手幹部)ためだ。だが、ホルムズ危機で流れが変わった。中東情勢緊迫後に代替輸入が急増する米国産原油はアフリカ南端の喜望峰を経由すると、日本までの輸送日数が片道で50〜55日かかり、輸送費もかさむ。一方で中東からアジアの海域で原油を積み替えて日本へ運ぶ手法だと輸送日数は25日程度と約半分で済む。3月にマレーシア沖から中東産原油を愛媛県の製油所に運んだ太陽石油の船木保宏執行役員は「洋上積み替えをしても、米国から運ぶよりはるかに安い」と話す」

     

    洋上積み替えには、23日かかり取引にもよるが、10万ドルの追加手数料を払わなければならない。それでも、乗員には被弾リスクはないので安全である。

     

    (5)「マラッカ海峡周辺には洋上積み替えを支援する業者も多く、ホルムズ海峡の正常化までは「原油を調達する方策の一つとして続く」と太陽石油の船木氏は見る。とはいえ、中東産原油の洋上積み替えは急場しのぎの調達策であることは変わらない。サウジアラビアやUAEなど中東産油国はホルムズ海峡を経由しない迂回策を講じて原油を海外に輸出しているが、港やパイプラインなどの施設が軍事攻撃の対象になれば代替ルートも機能しなくなる恐れがある。すでに政府は米国のほか、ロシア極東の石油ガス開発事業「サハリン2」や中南米、中央アジア、アフリカなど中東以外の産油国からの調達増に乗り出しており、長期的な原油調達先の分散が欠かせない」

     

    サウジアラビアやUAEなど中東産油国は、ホルムズ海峡を経由しない迂回策を講じて原油の輸出策を講じている。日本の原油輸入では、いずれも1~2位の国である。日本の原油確保には、こうした産油国の努力の恩恵がある。

     

     

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    UAE(アラブ首長国連邦)は、ホルムズ海峡を通らずに原油輸出倍増を目指して、オマーン湾のフジャイラ港までの輸送パイプ増強工事を行っている。27年に稼働の見通しだ。UAEは、日本の原油輸入量の1位であり、先にOPECを脱退したことで、対日輸出を増強できる体制が整った。フジャイラ港からの輸出量が増えれば今後、ホルムズ海峡で閉鎖騒ぎが起こっても日本への影響はそれだけ軽減される。UAEは、日本推薦でTPP(環太平洋経済連携協定)加盟候補国にもなっており、日本の資源政策に好影響を与えることは間違いない。

     

    『ロイター』(5月16日付)は、「UAE、石油パイプライン増強で輸出倍増へ ホルムズ迂回路を確保」と題する記事を掲載した。

     

    アラブ首長国連邦(UAE)は15日、東部フジャイラ経由による石油輸出能力を倍増させるため、新規石油パイプラインの建設を加速する方針を明らかにした。封鎖状態となっているホルムズ海峡を迂回する輸送路を確保し、輸出能力を高めるのが狙い。

     

    (1)「アブダビ政府広報局(ADMO)によると、アブダビ首長国のハリド皇太子は、アブダビ国営石油会社(ADNOC)にパイプライン事業の早期推進を指示した。パイプラインは建設中で、2027年に稼働開始見通しという」

     

    UAEは、5月1日からOPECを脱退したので、これに合せて輸出量を増やす方針に合せたパイプライン増強工事とみられる。日本が、ASEAN(東南アジア諸国連合)への原油調達責任を負うことになったので、それだけ日本向け輸出が増える。日本が、石油製品にしてASEANへ供給する。これは、日本経済圏の拡大であり、中国によるASEAN経済への影響が低下する。

     

    (2)「UAEの既存のアブダビ原油パイプライン(ADCOP、別名ハブシャン・フジャイラ・パイプライン)は、最大で日量180万バレルの輸送能力を有し、オマーン湾沿岸からの輸出に利用されている。UAEは今月1日、石油輸出国機構(OPEC)から脱退し、石油生産に関する制限がなくなった」

     

    UAEの原油パイプラインは、最大で日量180万バレルの輸送能力を有する。大型タンカー1隻分である。これが、どれだけ増えるのか。日本としては「ありがたい存在」だ。

     

    (3)「2月末の米イランの交戦開始以降、イランはホルムズ海峡を事実上封鎖し、エネルギー価格が急騰。ホルムズ海峡を通らずに原油を輸出するパイプラインを持つ湾岸産油国はUAEとサウジアラビアだけだ。サウジの「東西パイプライン」について、国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセル最高経営責任者は、アラムコは8日間で輸送能力を日量700万バレルに引き上げ、イラン交戦前の輸出量の約6割を維持していると述べている」

     

    ホルムズ海峡を通らずに原油輸出のパイプラインを持つ湾岸産油国は、UAEとサウジアアラビアだけだ。サウジは紅海経由である。ただ、アジアへの輸出ではUAEのフジャイラ港よりも遠距離になるので、1バレル3ドルの値引きを発表した。サウジとUAEが、アジア向け輸出で早くも競争体制に入った。日本にとっては、それだけ有利に展開する。

     

    (4)「UAEは、戦争前の1月には日量340万バレル程度の原油を生産していたが、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖により一部生産を停止せざるを得なくなり、生産量は半分以下に減少した。フジャイラ港と近隣のホル・ファッカン港は、食料を輸入に大きく依存するUAEにとって生命線となっている。フジャイラ港は、何度か攻撃を受けている。UAEは、イランによるものと非難している。攻撃により、4月には石油の積み込みが一時的に停止された。東西パイプラインの終点であるサウジアラビアの紅海沿岸にあるヤンブー港も攻撃を受けた」

     

    UAEとサウジは今や、「犬猿の仲」になっている。UAEは、防衛面でも米国との関係を密接にしている。この延長で、日本との関係がより濃密になっているのであろう。日本は、ASEANの原油需要を引き受ける形になった。「POWER Asia」(総額100億ドル支援)が、正式始動しているのだ。日本は、サウジとの関係も深めないと万が一の事態が起こったとき困る。他国の争いに巻き込まれないことだ。

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    出光興産が連日、中東産原油輸送で活躍している。先に、イランの了解を得て出光丸のタンカーがホルムズ海峡を通過した。これは、日本政府が中に入って決めたものだ。一方、TBSによれば、出光興産がホルムズ海峡以外の場所から、ベトナムへ400万バレルの原油を輸送中である。この二つの流れは、偶然とは思われない。日本政府が中に入って、ベトナムへの「原油救済」に動き出しているとみられるからだ。

     

    TBSニュースでは、ベトナムへ輸送中である400万バレルの生産国名が伏せられている。ただ、ホルムズ海峡外が積み出し港としている。これは、UAE(アラブ首長国連邦)のフジャイラ港であろう。出光興産は、これまでUAEと安定的取引を続けていることと、ベトナム製油所がUAE産原油と最も相性がいいことから、UAE産原油がベトナムへ輸送されているとみて良い。

     

    もう一つ、UAEは5月1日からOPEC脱退を決めた。UAEが、減産枠を強いられてきたことへの不満から脱退を決めた。これは今後、増産意思を明らかにしたものである。この場合、どこの国が増産分を引き受けるのか。日本は、UAE産原油輸入が1位の国である。UAEは、日本が無理な購入条件を付けず、支払も遅延したこともない「最優良ユーザー」と位置づけている。こうしたことから、日本が増産分の一定割合を引き受けるという内々の約束があっても不思議はない。UAE側からは、日本へ打診したであろう。

     

    UAEの増産分は、こうしてベトナムやフィリピンへ向けられるという予測が可能だ。それは、ベトナムとフィリピンは3月下旬に、原油窮迫から日本へ緊急支援を求めてきたが、日本は備蓄原油が法的に海外へ出せないことを説明した。その際、ベトナム・フィリピンに対して代替案を出したであろう。

     

    日本政府は今回、この線にそって出光興産ルートを使い、ベトナムへ原油を調達したとみられるのだ。さらに、日本・ベトナム・フィリピン三カ国で、共同備蓄するという事案が立ち上がっても驚くことはないだろう。その原油調達先が、UAEである。ベトナムもフィリピンもUAE産原油比率を増やすことになろう。

     

    『TBS』(4月29日付)は、「出光、原油約400万バレルをベトナムに供給へ 製油所で精製した石油製品は自動車部品や家電として日本へ輸出か  サプライチェーンを支える狙い」と題する記事を掲載した。

     

    石油元売り大手の出光興産は、調達した原油の一部をベトナムに供給する方針を固めたことが分かりました。

     

    (1)「関係者によりますと、ベトナムに供給されるのはホルムズ海峡を通らないルートで調達した中東産の原油およそ400万バレルです。出光が、出資するベトナム北部の製油所などに供給する方針で、製油所で作られた石油製品から自動車部品や家電などが製造され、日本に輸出されるとみられます。ベトナムは石油の備蓄量が少なく、日本などに原油確保の支援を求めていて、日本にとってもアジアからの部品の調達を維持する必要があり、対応が検討されていました」

     

    出光が、「400万バレル」をベトナムに送るのは、出光がベトナムの製油所(ニソン製油所)を所有しており、原油を供給しなければならないというのが理由だ。これによって、ベトナム側の燃料不足を回避し、同時に製油された石油製品は日本の自動車部品・家電のサプライチェーンにも還流するとしている。これは 商取引の形をした戦略的支援」である。

     

    なぜ、日本はベトナムに特別配慮するのか。

    1)ベトナムの燃料不足は、「日本のサプライチェーン危機」になる。ベトナムは、日本企業の製造拠点が集中しており、 燃料不足=工場停止=日本の輸出産業を直撃する。そこで、出光が原油を送ることにより、ベトナムの製油所は操業を続けられる。日本企業の工場も止まらないので、日本の輸出が維持できる。つまり 、日本自身を守るための支援 でもある。

     

    2)南シナ海で中国に対抗する「静かな連携強化」になる。ベトナムは、南シナ海で中国と最前線で対峙している国である。日本が原油を送ることは、ベトナムの経済基盤を安定させるのだ。中国の経済圧力を無効化する。日本・ベトナムの戦略的信頼を強化することにもなるのだ。これは 、「エネルギー外交」による対中抑止 だ。

     

    こうして、商業と国家戦略が完全に一致するであろう。日本政府には、「フィリピンやベトナムへ原油斡旋をして安保につなげたい」という別の意図が働いている。今回の出光の動きは、UAE日本(調達)、日本ベトナム(供給)、ベトナム日本(部品・家電として還流)という 角サプライチェーンの安定化 を意味する。この角サプライチェーンは、フィリピンにも適用できるであろう。

     

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    UAE(アラブ首長国連邦)のOPEC脱退は、日本にとって極めて大きなプラスとなろう。UAEは原油を増産したいが、これまで OPECによる縛りで増産できなかった。 脱退すれば、自由に増産できるので 日本は安定供給を確保できる ことになろう。UAEは、日本の原油輸入量の首位である。日本との関係は極めて良好だ。それだけに、UAEの今回の脱退の裏には日本が関わっていることを否定できないであろう。

     

    『ブルームバーグ』(4月28日付け)は、「アラブ首長国連邦、OPECとOPECプラスから5月に脱退へ」と題する記事を掲載した。

     

    アラブ首長国連邦(UAE)は石油輸出国機構(OPEC)とOPECプラスの枠組みから脱退することを決定した。イラン戦争を踏まえて戦略を見直す計画だという。

     

    (1)「UAEのエネルギー省は28日付けの声明で、5月1日付での脱退で需要の変化に対応しやすくなると述べた。生産は徐々に引き上げる方針だという。同国は生産能力を増強したいと考えており、ここ数年のOPEC会合ではサウジアラビアと対立してきた。中東全域での影響力という点でも、両国の対立は時折目立つようになっていた。両国はイエメンでの戦争において対立する勢力を支持しており、サウジは今年、強まるUAEの影響力を抑える方向に行動を取った」

     

    UAEは、長期輸出先として増産分を日本へ売り渡せば、日本の外交戦略が成功したことになる。今回の危機では、フィリピンやベトナムが日本へ原油手配を要請していただけに、UAEと何らかの約束を交わした可能性も考えられる。

     

    (2)「石油を巡る意見の対立は、過去にUAEをOPEC脱退の瀬戸際に追い込んだこともあった。国営首長国通信(WAM)による先の報道によれば、UAEは脱退後も「責任ある」行動を継続し、「需要と市場の状況に応じて慎重な姿勢で」生産を段階的に増やす方針だとした」

     

    UAEは、日本にとって最も友好的な産油国である。UAEは、政治的に安定している日本を最も信頼できる買い手と見てきた。長期契約を好んでおり、インド太平洋戦略にも参加している。日本のタンカーを優先して通す意思を示しているので、UAEのOPEC脱退の裏には、日本の影を感じる。

     

    (3)「決定は、「市場力学に応じた柔軟性を高めつつ、思慮深く責任ある姿勢で市場の安定化に寄与を続けるという、同国のセクター方針の進化」を示すとしている。脱退は生産政策および現在と将来の生産能力を見直した上で、「国益」および市場の差し迫った需要に「効果的に対応するためのコミットメント」に基づくものだとしている。

     

    UAEは近年、「もっと生産したいのに、サウジに縛られている」 という不満を持っていた。それだけに、OPECを脱退すれば、生産枠の制限なし、市場に応じて柔軟に供給でき、日本向けの長期契約を増やせるメリットがある。つまり、 日本は「安定供給+価格安定」の両方を得られる。

     

    中国にとっては不利な状況が生まれる。UAEの増産分が日本に流れる、中国はイラン戦争で供給不安に陥っている。こうして、中東の「日本重視」姿勢が強まる可能性がでてこよう。 中国は、エネルギー面で日本に対して劣勢になるであろう。

     

    日本が、UAE原油をフィリピンやベトナムへ売ることが可能になれば、単なる商取引ではなく、 インド太平洋の安全保障を強化する構造的行為にもなる。フィリピンやベトナムの弱点は、エネルギー供給を中国へ依存してきた脆弱性である。ここを日本が支えると、エネルギー安全保障を日本が握ることになる。

     

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    高市早苗首相は7日、中東情勢を受けた石油調達に関し「備蓄放出量を抑えながら年を越えて供給を確保できるめどがついた」と説明した。5月は代替ルートでの調達が過半に達し、とりわけ米国からは前年比で4倍に達する見込みだと述べた。多くの国が、ホルムズ海峡の閉鎖によって原油不足に直面している中で、日本が代替調達で順調な理由は何か。一言で言えば、日本が産油国を信頼して長期取引をしていることで勝ち得た「信頼感」であろう。

     

    『ブルームバーグ』(4月7日付)は、「日本行き中東産原油、異例の洋上積み替え相次ぐ-安全確保で慎重対応」と題する記事を掲載した。

     

    マレーシア沖で積み替えられた中東産原油が、日本へ向かっていることが分かった。珍しいルートを取り、現在は北海道の苫小牧へ向かっている。3月下旬にもインド西海岸のムンバイ沖で同様の積み替えが起きており、イラン情勢で中東産原油の供給が滞る中、異例の対応が相次いでいる。

     

    (1)「ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、超大型原油タンカー(VLCC)「KISOGAWA」は5日、マレーシア西岸のリンギ沖でVLCCRIO DE JANEIRO ENERGY」から中東アブダビ産の原油約120万バレルを受け取った。約1週間前にも、アブダビ産原油が洋上で積み替えられ、現在日本に向かっている」

     

    超大型原油タンカーは、ホルムズ海峡での原油積み込みが危険なため、マレーシア西岸のリンギ沖で積み替えて日本へ向っている。こういう臨機応変に原油輸送方式を変えられるのは、産油国による日本への高い信頼度の結果だ。

     

    日本は、「三方よし」の精神で原油取引を行っている。「売り手よし(産油国)・買い手よし(日本)・世間よし(市場の安定)」の国際版である。現在のような緊急事態が起こると、産油国側は代替ルート(途中の洋上での積み替え)へ切替えて、日本へ安定供給に協力してくれるのだ。そのよい例が、UAE(アラブ首長国連邦)である。UAEは、日本の原油輸入のトップ国である。米国も、代替輸入ですぐに対応してくれた。

     

    (2)「船舶間の積み替え自体は石油業界で珍しくない。通常は、中東の輸出ターミナルから国内の製油所まで直航する日本の海運会社にとって、これは異例だ。イランによる船舶攻撃が相次ぎ、死者も出たことを受け、危険度が高まる紛争地帯にタンカーを近づけずに原油を確保しようとする船社の慎重姿勢を浮き彫りにしている」

     

    原油積み替えは、珍しい事例である。通常は、超大型タンカーへ積み込み、そのまま需要国へ到着するのが普通である。今回のように戦闘状態の場合、いつ着弾するか分からない危険な状況にある。超大型タンカーを横付けできないので、他の安全な港湾から小型船で積出し、超大型船へ積み替えなければならない。こういう手間暇を掛けても、産油国側が安定供給に協力してくれるのだ。産油国が、「日本のためならば」という話になる。

     

    (3)「海事データベースのエクアシスによると、川崎汽船がKISOGAWAの船主兼運航会社、シノコー・マリタイムはRIO DE JANEIRO ENERGYの管理会社として登録されている。KISOGAWAが目的地として信号を発している苫小牧の製油所を保有する出光興産はコメントを控えた。3月中旬、日本船籍のKISOGAWAは東南アジアから西に向かっており、オマーン湾のフジャイラへ向かうものと見られていた。だが3月23日、スリランカ沖でUターンし、3日にRIO DE JANEIRO ENERGYと合流するためマラッカ海峡へ引き返した。同船は3月上旬にアラブ首長国連邦(UAE)フジャイラにあるアブダビ国営石油会社(ADNOC)の施設で原油を積み込んでいた」

     

    オマーン湾のフジャイラ港は、UAEの港湾である。ここへ超大型タンカーを横付けしても、万一のリスクを考えれば回避するほかない。そこで、マラッカ海峡へ引き返して安全な海域で小型タンカーから積み替えをするのであろう。

     

    (5)「ホルムズ海峡が実質封鎖される中、原油の95%超を中東に依存する日本は代替調達を進めている。3月末にはインドのムンバイ沖で「OLYMPIC LUCK」から「ENEOS GLORY」に約180万バレルの中東産原油が積み替えられた後、九州に向かっていることが明らかになっていた。一方、商船三井関連の液化天然ガス(LNG)船や液化石油ガス(LPG)船3隻がホルムズ海峡を通過していることも明らかになっている」

     

    日本の原油調達が安定していることは、実は近江商法「三方よし」の一つである“世間よしにもつながっている。日本がパニック買いをしない、市場価格を乱さない、中東の政治的緊張を煽らない、米国のエネルギー輸出戦略を安定させる。こういう「重石」のような役割を果しているのだ。日本が安定していること自体、国際市場の安定に貢献しているという構造をつくっているのである。

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