ハンガリーで12日投開票された総選挙で、16年にわたり政権を担ってきたオルバン首相を新興野党が破った。欧州連合(EU)やロシア、トランプ米政権との関係見直しにつながる歴史的な選挙となった。同時に、オルバン政権は中国企業(電池やEV)の進出で条件を緩和して便宜を図ってきたが、これらは全て見直しされるであろう。環境問題で摩擦を引き起していたからだ。中国企業の進出にブレーキが掛れば、日本企業がEU企業と提携拡大の好機となろう。
『ブルームバーグ』(4月13日付)は、「ハンガリー、16年ぶりに親EU政権誕生へ-米政権やロシアに打撃」と題する記事を掲載した。
マジャル氏率いる野党「ティサ(尊重と自由)」は、議会で圧倒的多数を確保する見通しとなり、オルバン政権が築いた非自由主義的な体制を解体するという大胆な公約の実現を可能にする。ブダペストの選挙管理当局によると、開票率90%の段階でティサは議席の69%を獲得し、オルバン氏の与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」は28%にとどまった。
(1)「マジャル氏は総選挙の勝利を受け、早くも抜本的改革の方向性を打ち出した。ブダペストで歓声を上げる支持者を前に勝利の演説を行った際に、大統領や最高裁判事、検察トップに辞任を求めた。オルバン氏への政治的忠誠を優先し、本来の職責に反する行動を取ったと批判した。マジャル氏は、ドナウ川とライトアップされた議事堂を背に壇上で、「国を裏切った者は責任を取らなければならない」と演説。「ハンガリーを解放し、われわれの国を取り戻す」と強調した」
敗北したオルバン氏は、16年という超長期政権で惰眠を貪ってきた。EUの団結を乱してロシアへ接近するという「裏切り行為」を平然と行ってきたからだ。オルバン氏の家族が、企業を経営して公私混同を行ってきた。国民の批判は当然である。ハンガリーの経済成長率はEUで最低であった。
(2)「オルバン氏は敗北を認め、支持者に対し結果は自身にとって「痛み」を伴うものだと語った。マジャル氏の勝利を祝福したとも明らかにした。為替市場では、開票の途中結果公表を受け、通貨フォリントは対ユーロで3年ぶりの高値に上昇した。元与党関係者のマジャル氏(45)は、権威主義化が進む中、この2年、変革を掲げる訴えで支持を広げた。開票が進む中、首都ブダペストではドナウ川沿いで車のクラクションが鳴り響き、人々が通りに繰り出すなど勝利を祝う光景が見られた」
通貨フォリントは、対ユーロで3年ぶりの高値に上昇している。開票が進む中、首都ブダペストではドナウ川沿いで車のクラクションが鳴り響き、人々が通りに繰り出すなど勝利を祝っているという。16年の圧政が終わったからだ。
(3)「長年にわたりオルバン政権の妨害に苦しんできたEUにとっては、大きな安堵となった。プーチン政権は、EU内での分断をあおり、ウクライナ支援を妨害し、対ロ制裁の弱体化を図るうえでオルバン政権に依存してきた。今回の敗北は、ロシアの全面侵攻から4年以上が経過したウクライナにとって不可欠な900億ユーロ(約16兆8000億円)の支援の実行につながる可能性が高い。EUの行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長はX(旧ツイッター)に、「ハンガリーは欧州を選んだ」と投稿し、「欧州も常にハンガリーを選んできた。ともにあれば、より強くなれる」と強調した」
オルバン政権は、EU精神の「統一と団結」を乱す政権であった。この障害物が消えたことで、EUのウクライナ支援が強まる。ロシアは、オルバン政権を利用してEUのウクライナ支援を妨害させてきた。
オルバン政権は、中国企業へも大きな恩恵を与え、EU進出の橋頭堡に利用させてきた。進出した中国企業が環境問題を引き起しても、国内の反対を無視するという強引なものであった。EUが、中国企業の進出に神経を使うなかで、オルバン政権は反旗を翻してきたのである。
今回のハンガリー政権交代は、中国企業にとって「EU進出の最重要ハブが揺らぐ」意味を持っている。EU内の「親中ゲートウェイ」が消えることを意味するのだ。オルバン政権は、中国のEV工場誘致や一帯一路の欧州拠点化を進めてきた。中国製バッテリー企業の大規模投資を積極的に受け入れ、EUの中で唯一「中国の橋頭堡」として機能してきたのだ。新政権は、「親EU・反権威主義」を掲げている。中国優遇政策の見直しは、ほぼ確実と欧州側は見ている。
こうして、EUの対中規制がハンガリー経由で骨抜きにされることはなくなる。EUは対中補助金調査、EV関税、5G規制などを進めているが、
オルバン政権はしばしば、EU制裁の拒否や中国案件の阻止権行使を行い、EUの統一対中政策の弱点になってきた。新政権はEUと協調する。中国企業は、規制を避ける抜け道が消えることになろう。
中国企業は、欧州サプライチェーン再構築が必要になる。ハンガリーは、CATLの巨大バッテリー工場、BYDのEV工場など複数の中国系サプライヤーが進出し、「欧州向け生産の中心」になりつつある。政権交代により、環境審査の厳格化、労働・補助金条件の見直し、EU基準への完全準拠
が求められる可能性が高く、中国企業のコスト増・遅延リスクが一気に高まると見られる。こうした結果、中国企業の進出ブームが止まれば、「正直路線」の日本企業やEU企業にとって、大きなチャンスとなる。

