ザンビアは2012年頃から、中国から多額の借り入れを行って、道路や発電所、空港、鉱山関連施設などインフラ整備を行ってきた。この結果、約1兆円の債務を抱える「債務の罠」に落込んでいる。こうした弱みから、中国大手鉱山傘下のシノ・メタルズが所有する有毒廃棄物貯留池が決壊し、有毒汚泥がカフエ川に流入する事故が発生しても対策を要求せず放置したままという。すでに1年以上が経過したが、数百人が清潔な飲料水を確保できず、重金属に汚染された土地での生活を余儀なくされている。人権問題である。
西側諸国は、鉱山開発の伴う公害防除に厳しい制約を加える準備をしている。いわゆる「ESG基準」である。中国は、この基準に全く当てはまらず、西側諸国は中国排除の方向で進んでいる。8月稼働の「重要鉱物特恵市場」が、中国排除の舞台となる。今回のザンビアにおける中国鉱山の無責任な行動はESG基準からもやり玉に挙げられる事態だ。中国は、大きな失点を演じた。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月2日付)は、「ザンビア、中国鉱山会社の汚染隠蔽に加担 米報告書」と題する記事を掲載した。
中国政府に対して多額の債務を抱えるザンビア政府が、中国鉱山大手による同国史上最悪規模の汚染事故の隠蔽(いんぺい)に加担していたことが、米下院中国特別委員会の調査で明らかになった。
(1)「 中国国有・中国有色鉱業(チャイナ・ノンフェラス・マイニング)傘下のシノ・メタルズが所有する有毒廃棄物貯留池が決壊し、有毒汚泥がカフエ川に流入してから1年以上が経過した現在も、川沿いの農地は植物が枯れたままで、数百人が清潔な飲料水を確保できず、住民は重金属に汚染された土地での生活を余儀なくされている」
中国企業は、ザンビアで「占領軍」のような身勝手な振る舞いを行っている。
(2)「ザンビア政府は、中国政府と中国系金融機関に対して66億ドル(約1兆円)の債務を抱えることから、中国の報復を恐れている。今回の災害について、シノ・メタルズへの追及を控えてきたのだ。委員会は報告書でこう指摘している。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)はこの報告書を閲覧した」
ザンビア政府は、約1兆円の債務を抱えて、中国政府へ抗議も対策要求もしないで放置している。中国企業は、鉱害事件の発生を知りながら、対策も取らずに「頬被り」したままである。
(3)「委員会は、今年に入ってスタッフをザンビアに派遣し、政府関係者や鉱山幹部、市民団体の代表らと面会した。その結果、政府高官が事故発生後に中国を頻繁に訪問しているものの、目的は責任追及ではなく、投資拡大の勧誘であることが分かった。「ザンビア政府は中国に対して難しい立場に置かれている。中国は同国に対して絶大な政治的・経済的影響力を持っている」。委員会の報道官はWSJにこう話し、「シノ・メタルズは中国の国有企業であり、同社を批判することは中国政府を批判するのに等しい」と指摘し
中国は、ザンビアに対して絶大な政治的・経済的影響力を持っているという。「債務の罠」と落とし込んで隷属化させている。共産主義国家が、植民地支配と同然の振る舞いをしているのだ。
(4)「委員会によると、ザンビア政府はシノ・メタルズと結託し、貯留池のリスクについて自国の規制当局が出した警告を無視し、第三者調査をもみ消したほか、市民団体が汚染の被害者に接触しないよう圧力をかけた。ザンビアのコーネリアス・ムウェトワ情報相は、自国が中国に対して債務を抱えていることについて、「債務のわな外交」ではなくパートナーシップだと説明している。ザンビアは2012年頃から、道路や発電所、空港、鉱山関連施設などのインフラ整備を目的として中国から多額の借り入れを行った。こうしたプロジェクトは成長を促進することが期待されたものの、世界的に金属価格が低迷する中、多くが停滞するか収益化に時間がかかった」
ザンビア政府は、中国政府と「結託」した振る舞いをしている。これこそ、「債務の罠」のもたらす負の効果の実態であろう。

