勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ASEAN経済ニュース時評

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    今年のGWは、高市首相、茂木外相、赤沢経産相が揃って海外へ資源外交で出張し大きな成果を上げた。日本の資源政策が成功している理由は、 危機の瞬間に「同時多発・高速外交」ができる国であり、他国にはみられない機動性を誇っている。

     

    日本は「資源を持たない国」ゆえに、供給国から信頼されるという側面がある。資源国側は、「日本は資源を奪うのでなく、技術と投資を持ってくる」と評価しているのだ。だからこそ、 UAE・サウジ・豪州・ベトナム・アフリカ諸国が、日本を最優先に扱ってくれるのであろう。これは、中国や欧米に真似できない、日本独自の強みとされている。 日本企業の技術が、資源国の弱点を補完するので、むしろ歓迎されているほどだ。

     

    『レコードチャイナ』(5月12日付)は、「GW中も奔走した高市内閣、エネルギー・資源外交で大きな成果か仏メディア」と題する記事を掲載した。

     

    仏国際放送局『RFI』ラジオ・フランス・アンテルナショナル)の中国語版サイト(5月11日付)は、高市早苗首相率いる日本の内閣が大型連休中に各国を歴訪し、資源外交で大きな成果を上げたようだと報じた。

     

    (1)「記事は、高市内閣が積極的に外交活動を展開した背景として、米国とイランの紛争によるホルムズ海峡の事実上の封鎖で日本の原油の94%が影響を受け、中国による重要鉱物の輸出制限も重なった現状を紹介した。そして、赤沢亮正経済産業大臣がサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)と交渉し、2000万バレルの石油追加調達と海峡を迂回するフジャイラ港経由の供給ルートを確保し、供給の8割強を担う中東外交で危機の解決に目途を立てたと伝えた」

     

    UAEは、OPECを脱退したが、TPP(環太平洋経済連携協定)への有力加盟候補国となった。高市首相が、ベトナムの演説でフィリピン・インドネシアと並んでUAEのTPP加盟を推薦したからだ。これは、日本の資源政策とも深く絡んでいる。日本は、UAEをTPPへ加盟させ、ASEAN(東南アジア諸国連合)の原油流通の主役に仕立てる狙いだ。

     

    (2)「高市首相が、ベトナムやオーストラリアを訪問し、石油製品の安定供給や豪州のレアアース・ガリウム事業への日本企業参画、液化天然ガス(LNG)・燃料の相互融通について合意したと伝えた。さらに、茂木敏充外務大臣がアフリカ諸国でザンビアの物流ルート開発や南アフリカとの鉱物サプライチェーン強化に合意し、中長期的な視点から資源安全保障の基盤を強固にした成果にも言及。内閣の半数以上が同時多発的に展開したトップ外交により、エネルギーと重要資源の供給途絶リスクを回避するための具体的な道筋が示されたと評した」

     

    日本企業の技術が、資源国の弱点を補完している。出光興産の硫化物量産(硫黄の高度利用)、三菱商事・INPEXのLNG運用能力、住友金属鉱山のレアアース精製、JOGMECのリスクマネー供給、トヨタ・日産の電池技術など豊富である。このように、日本企業の技術は多彩である。資源国は、「掘る」ことはできても、 精製・輸送・高純度化・長期契約の安定運用で苦手だ。日本はそこを補完するため、 資源国にとって不可欠なパートナーになれる。

     

    日本は、政治的に中立である。どの陣営とも衝突しないという外交的柔軟性を持っている。米国との同盟、中東とは長期信頼関係の樹立、ASEANとはODAで深い関係を築いた。

    アフリカとはインフラ協力、豪州とは「安全保障+資源」で盟友関係を結んでいる。こうして、どの国にとっても日本を敵に回す理由がないのだ。だから、ホルムズ海峡封鎖のような危機でも、 日本は全方向にアクセスできるメリットを持っている。

     

    今回のイラン戦争による石油危機対応は、むしろ「日本がアジアの資源センターになる」転機になる可能性を秘めている。「日本+UAE」が、アジアのエネルギー中枢になる公算を強めているからだ。今回の外交成果を見ると、UAEとは、石油・アンモニア・水素。豪州は、LNG・レアアースの供給関係の強化。ベトナムは、石油製品・燃料融通。アフリカとは、鉱物サプライチェーンの形成である。日本は、精製・技術・金融・物流の面から協力して、アジアの資源ハブとして、「日本中心モデル」を形成しつつある。今年のGWは、日本にとって歴史的な収穫になったことは間違いない。

     

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    ASEAN(東南アジア諸国連合)は5月8日、首脳会議を開催して「ASEAN石油安全保障協定(APSA)」の実効化を決めた。国際シンクタンクの東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)も、地域で共同の石油備蓄に関する調査を提案し、ASEANとしても検討する意向だ。

     

    このバネになっているのは、日本が提供する「POWERR Asia」(100億ドル=1.6兆円)支援の存在である。APSAは、1986年に発足したが効果を上げられずにきた。今回のイラン戦争でも原油不足に直面しているだけに、日本支援の100億ドルが大きな効果を上げるものと期待されている。日本の商社は、ASEANの原油手配に力を入れる構えである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月9日付)は、「『供給網、アジア視点で』 日本貿易会会長、日本主導で最適化」と題する記事を掲載した。

     

    ホルムズ海峡の事実上の封鎖で商社が資源の代替調達に奔走している。「アジア全体の目線で供給網を支えるべきだ」と語る日本貿易会の安永竜夫会長(三井物産会長)に世界のサプライチェーン(供給網)がどうあるべきかを聞いた。

     

    (1)「(質問)中東緊迫で商社の役割が問われています。(答え)「供給網が崩れた時、保有する資産を使い調達を多様化することが商社の役割だ。最大限に対応している。ただ中東は資源調達における最も太い動脈で、その代替は簡単ではない。中東ほどコスト競争力と供給力がある地域はない。軍事衝突によって中東の資源開発施設が被害を受けた。復旧に向けてどのようなリソースを提供できるか、協力姿勢を示すことが重要だ。政府にはホルムズ海峡を自由に通航するためにどのような仕組みが必要か、踏み込んだ取り組みを求めたい」

     

    原油不足という緊急事態が発生している。こうした状況下では、商社機能が活躍する場面である。日本には、「総合商社」という世界に類のない流通機能を担うビジネスが存在する。ビジネス情報を束ねているだけに、迅速に動けるのだ。

     

    (2)「(質問)政府は資源の代替調達や備蓄放出を進めています。(答え)「日本だけで完結する話では全くない。特に石油はナフサ(粗製ガソリン)やエチレンなどの化学品に分かれ、多様な製品に加工され国境を越えて取引されている。オーストラリアを含めたアジア全体の目線で供給網を支えなければ、地域共創が揺らぐ」

     

    石油問題では、「オーストラリアを含めたアジア全体の目線で供給網を支えなければ」という強い意識が全面に出ている。日本が、ASEANの石油流通を担う」 という構造が、ついに経済界トップの口から語られている点が注目点だ。「100億ドル(1.6兆円)支援」=POWERR Asiaが控えている。 これは、ASEAN の石油調達を日本が肩代わりする仕組みでもある。日本の商社が、ここまで資金手当がされているビジネスを活用するのは当然である。

     

    日本が、「資金(100億ドル)+製油能力+物流+保険」一括提供するので、ASEANが日本の供給網に乗ることになる。これは、従来の中国提供の石油製品ルートが、日本ルートに切り替わるという意味でもある。大きな変革が起こるはずだ。日本は、ODA(政府開発援助)50年間で丹念に「培養」してきたASEAN市場において、エネルギー・ルートも日本主導になるという劇的転換点になろう。

     

    (3)「(質問)日本はどんな役割を担えますか。(答え)「長期化を視野に入れた対応が必要になってきた。国ごとに製油能力や工場の役割が異なる。各国の分担について、日本は官民でイニシアチブを取り、供給網を最適化するべきだ。『目詰まり』という指摘もあるが、詰まっているから流れていないのではない。流れ自体が減っている。官民が協力し、まずは原油がどの地域で何に加工され移動しているのか、モノの動きを精緻に把握する必要がある」

     

    アジアの製油能力は、壊滅的な不足状況にある。豪州の製油所ほぼゼロ。フィリピンもゼロである。ベトナムは不足状態。インドネシアは、急増する需要に追いつかない、といった状況下だ。一方、日本だけが「余剰製油能力+物流+保険+金融」を持っている。 だから、日本が、自然とASEANの中心になることで、原油さえ十分に確保できれば、石油製品の需給バランスが取れるであろう。

     

    (4)「(質問)生活への影響も避けられません。(答え)「リサイクルやサーキュラーエコノミー(循環経済)も、この機会に踏み込んで考えていくべきではないか。例えば食品や製品の包装はより簡易にできるかもしれないし、透明にこだわらずリサイクルのプラスチックを使ってもいい。石油が足りなくなることを見越しながら、できるものは簡易化やリサイクルしようという動きは出てくるだろう。最終的にはユーザーがどこまで許容できるかという議論になるだろう」

     

    石油製品の消費削減も重要である。できるだけ、節約することでバランス回復に寄与させることだ。

     

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