中国は、「第二列島線」防衛の布石として南太平洋の島嶼国への勢力拡大を図ってきた。軍事拠点として不可欠という認識である。例の「札束」で、島嶼諸国との関係強化を図ってきたが、最近は肝心の経済支援が滞っている。「金の切れ目が縁の切れ目」である。南太平洋の島嶼諸国のメイン的存在のソロモン諸島新首相は、中国への「関係見直し」発言を行った。この発言は、他の島嶼国へも波及して対中離脱国が増える見通しといわれる。
『AFP=時事』(6月3日付)は、「ソロモン新首相、中国との安全保障協定『見直す』意向表明
超親中的な前政権から路線変更」と題する記事を掲載した。
南太平洋の島国ソロモン諸島のマシュー・ワレ新首相は3日、2022年には中国と締結した安全保障協定を「見直す」意向を表明した。不信任案が可決され罷免されたジャーマイア・マネレ前首相は親中政策を進め、2022年には安全保障協定を結びオーストラリアや米国を動揺させた。
(1)「ワレ首相は、訪問先のオーストラリアでのアンソニー・アルバニージー豪首相との共同記者会見で中国との安全保障協定について問われると、「祈りと断食」を続けて熟考した結果、「他の多くの国と結んでいる他の安全保障協定と同様に、(中国との安全保障協定も)見直す予定だ」と回答。中国との安全保障協定の内容を公表するかどうかを問われると、ワレ首相は同協定には秘密保持契約が含まれており、自身もオーストラリア訪問の直前まで内容を確認できていなかったと明かした」
ソロモン諸島の新政権が、中国との安保協定を「見直す」と表明したことは、南太平洋における中国の影響力拡大にとって明確な痛手である。
他の「親中派」島嶼国でも潮目が変わりつつある兆候が見える。それら「転向組」は、次の国々である。
ツバルは、オーストラリアと新たな条約を締結し、中国との安保関係を制限する代わりに豪州が巨額支援。事実上、中国の軍事進出を拒否する方向へ転換中
。
ナウルは、2024年に台湾と断交して中国と国交樹立したが、豪州との協定により中国の安保進出には制限がかかる構造
。
パプアニューギニア(PNG)は、豪州と安全保障協定を締結し、米国とも防衛協力を強化。中国の警察・治安分野への進出を抑制する方向
。
バヌアツは、中国寄りの政権が続いてきた。豪州との新協定が、「締結間近」と報じられる。中国の治安・軍事関与を制限する可能性が高い
。
フィジーは、2023年以降、中国との警察協力協定を凍結し、豪州・NZとの連携を強化。AFP報道でも豪州との協定が近いとされる。
豪州の積極的な経済支援で、いったんは中国寄りへ舵を切った島嶼国も、外交路線の修正に転じている。
(2)「ワレ首相は、「何人かを主要な役職から解任せざるを得なかった。(豪訪問)出発の前日まで、安全保障協定のコピーすら提供されていなかったため、まだ十分に目を通せていない」と述べた。オーストラリアは、ソロモン諸島における中国の影響力に対抗しよとしており、先月、変化を公約に掲げてワレ氏が首相に選出されたのを機に、関係の再構築に向けて動いている」
中国は、徹底的は「秘密条項」によって相手国を縛ってきた。中国の貸付で、「債務漬け」にする狙いであった。返済では、最優先させる条項が付けられているケースが多い。「又貸し資金」だけに、貸倒れはタブーである。
(3)「一方で、中国はソロモン諸島にとって最大の債権国だ。インフラプロジェクトをめぐってソロモン諸島が中国政府系銀行に負った債務は、昨年1年間だけで倍増している。アルバニージー首相は3日、オーストラリアとソロモン諸島が「包括的な」新協定の策定に着手するとともに、警察分野での連携を深めることで合意したと発表した。警察分野での連携を深める協定は、極めて親中的だったソロモン諸島の前政権下で停滞していた。前政権は、中国式の警察モデルを推進し、中国の警察官が村々に入り込んで住民の世帯データや生体認証データを収集するのを容認していた」
ソロモン諸島は、中国式警察モデルを導入し、中国の警察官が常駐するという異常事態を引き起していた。前政権は、中国に深く抱き込まれていたのであろう。
(4)「オーストラリアは、ツバルやナウル、パプアニューギニアといった小規模ながらも戦略的に重要な位置にある島嶼国と相次いで条約を締結し、中国との安全保障関係を制限することと引き換えに巨額の経済支援を提供することで、南太平洋諸国との結びつきを強めようとしている。バヌアツとフィジーも、同様の協定の締結間近だとしている」
中国は、南太平洋の島嶼諸国へ約束した経済支援が滞ったのであろう。中国が、経済的に末期症状であることを窺わせている。

