海面上昇による水没危機で知られる太平洋の島国ツバル。人口は9400人である。フェレティ・テオ首相は毎日新聞の単独取材で、太平洋地域における米中間のせめぎ合いや、日本に期待する役割、半世紀近く維持してきた台湾との外交関係について語った。一方、国土消失も見据えた「デジタル国家」構想や、ツバル国民を対象にした豪州の「気候ビザ」にも言及。小国の主権や将来を揺さぶる気候危機への対処を訴えた。
『毎日新聞 電子版』(6月12日付)は、「『大国間競争の舞台にするな』 島国ツバル首相の地政学的視点」と題する記事を掲載した。
日本は海面上昇などの課題で、島嶼国支援のリーダーシップを発揮してきました。引き続き、働きかけを期待します。再生可能エネルギーに関する優れた技術も持っています。エネルギーを輸入に大きく依存しているツバルのような太平洋諸国にとって、再エネは最優先事項の一つです。エネルギー安全保障の実現に向けた支援でも日本の協力を期待しています。
(1)「(質問)気候変動などを理由にオーストラリアに永住できる査証(ビザ)に、多くのツバル国民が応募したと報じられています。どのように受け止めていますか。(答え)昨年初めて導入された制度で、多くの人が関心を持ちました。制度はツバル国内に暮らす人だけが対象でなく、海外在住のツバル国民にも開かれています。新たな移住ルートに、多くの応募があったことに驚きはありませんでした。ただ政府としては、移住という決断が人生にどのような影響をもたらすかを十分に説明する必要があります。この制度では、渡航費や住居費、生活基盤を整える諸経費はすべて自己負担になります。このビザは生涯有効ですが、一方通行ではありません。教育などを受けた後、その後いつでもツバルに戻り、将来の国づくりに貢献することもできます」
ツバルは、平均標高約2mの低平な島国です。国連などの推計では、2100年までに国土の約95%が水没・常時浸水の恐れがあるとされている。NASAなどは、2050年頃までに国土の多くが高潮時に水没する可能性を指摘している。こうした危機に対して、日本などの支援で護岸整備や土地のかさ上げ、生態工学的な海岸保全プロジェクトを実施している。
2023年の「ファレピリ連合条約」により、ツバル国民は毎年最大280人がオーストラリアへ移住できる制度が開始。これは、世界初の「気候変動を理由とする計画的国家移住」の枠組みである。すでに人口の3分の1以上が移住申請を行ったとの報道もある。
(2)「(質問)ツバルは、国土が失われた場合に備えた「デジタル国家」構想も進めています。文化やアイデンティティーの保存だけでなく、仮想国家としての主権維持も目的なのでしょうか。(答え)その両方です。最悪の事態を想定した計画です。あらゆる文化や歴史の記録、重要文書などをデジタル化し、将来世代のために残したいと考えています」
ツバルは、国土が水没しても「国家としては存続する」と宣言し、海洋境界線の維持を国際社会に求めている。島の景観や文化をデジタルで保存する「メタバース国家」構想も進行中だ。
(3)「(質問)ツバルは台湾との外交関係を持つ数少ない国の一つです。その関係はツバルにとってどのような意味を持ちますか。(答え)私たちは、台湾と半世紀近い関係を築いてきました。台湾は、私たちにとって唯一知る中国です。その関係を見直すような、重大な困難はこれまで一度もありません。台湾との関係は民主主義の原則、法の支配の尊重、権力の分立といった価値観に基づいて築かれたものです。ツバルは「二つの中国」を巡って立場を変えたことがありません。台湾はツバルに対して非常に誠実であり、私たちも同様に台湾にとって信頼できるパートナーであり続けました」
ツバルは、台湾との国交関係を維持している。台湾との関係は、民主主義の原則、法の支配の尊重、権力の分立といった価値観に基づいて築かれたものとしている。
(4)「(質問)太平洋の海洋鉱物資源に注目が集まっていますが、海洋環境への影響をめぐって採掘については島嶼国の間でも立場が割れています。(答え)採掘に賛成する国もあれば、完全に反対してモラトリアム(一時停止)を主張する国もあります。ツバルはその中間で予防的なアプローチをとっています。現時点では(環境への影響が)分からないことが多い。より多くの信頼できるデータと情報が必要で、それに基づいた最善の判断を下したいと考えています」
海洋鉱物資源開発は、日本の南鳥島沖レアアースが「モデル事業」である。日本は、最新の注意で海洋環境保全を行っている。一度、現場を見学することを検討すべきであろう。

