中国は、欧州からは「非人権国家」として烙印を押されている。その中でも、北欧の中国批判には厳しいものがある。中国の政治手法や人権、安全保障に関する欧州のより広範な懸念を反映したものだ。中国EV(電気自動車)についても、「監視されている」感じと警戒されている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月9日付)は、「中国EVが欧米で直面する信頼の壁―フィンランドが示す現実」と題する記事を掲載した。
中国のEVメーカーが、低価格と高い技術力だけで十分通用するかどうかを試す上で、フィンランドは欧州で最も厳しい場所の一つかもしれない。この国では中国に対する懐疑的な見方が根強い。それはガバナンスや人権、安全保障に関する欧州のより広範な懸念を反映している。またそこには、中国のEVメーカーが欧州を攻略する上で直面する壁を垣間見ることができる。
(1)「フィンランドでは苦戦を強いられている。フィンランド最大の新聞「ヘルシンギン・サノマット」で自動車と経済を担当するエサ・ユントゥネン氏は、中国のEVに不利に働いている二つの要因を説明した。第一に、フィンランド人は高額商品を買い控えている。昨年の新車乗用車登録台数はわずか7万1888台と、通常の10万台を大きく下回った。同氏はこの低迷をウクライナ戦争や予測不能な米政権、そしてイランとの対立に結びつけている。「人々はお金を枕の下にしまい込んでいる」と同氏は述べた」
フィンランドで、中国EVが販売不振であるのは、世界情勢が混乱していることへの警戒心である。北欧フィンランドは過去、国際情勢に翻弄されてきたので敏感なのであろう。
(2)「第二に、保守的なフィンランドのドライバーにとって、EV自体が依然として受け入れられにくいということだ。同国の運輸相がユントゥネン氏に「内燃機関は永遠に残るだろう」と語ったほどだ。さらに、中国特有の疑念もある。ユントゥネン氏によれば、フィンランド人は、車に監視されていないか、「キルスイッチ(遠隔停止装置)」が仕込まれていないか、自分たちのお金が共産党に流れていないか、疑問を抱いているという。こうした障害はフィンランドに限った話ではない。中国のEVメーカーにとって、より広範な課題を浮き彫りにしている。それは、信頼性よりも価格や技術の方が重要だと欧州の買い手を納得させることだ」
フィンランドは、保守的でEVを簡単に受入れない気風がある。とりわけ、中国製EVは車に監視されていないか、「キルスイッチ(遠隔停止装置)」が仕込まれていないか、という警戒心を高めている。
(3)「ユントゥネン氏は、2024年から導入されている中国製EVに対する欧州連合(EU)の関税を「何かあるという、潜在意識に訴えるメッセージ」だと捉えている。同氏によれば、そもそも車を買う人がほとんどおらず、買う人の中にもEVを信用しない人がいる一方で、EVに前向きな人の中にも依然として中国を信用しない人がいる。要するに、「膨大な数の障害はすぐには解決できない」のだという。
フィンランド人は、EVを信用しない上に中国という国家自身への不信感を持っている。こうなると、中国EVは売れるはずがない。
(4)「EUの関税に対するBYDの答えは、EU域内で製造することだ。ハンガリーの新工場では今年、試験生産が始まっており、年内に関税が免除されるEU製の車両生産を目指している。BYD専任担当者であるミッコ氏は一つの仮説を示した。サイドミラーがまだ付いていない車をフィンランドに出荷して現地でそれを取り付け、そこで組み立てられたように見せかけて関税を回避できるのではないかと。ただ、実際にこれをやってのける企業があるかどうかについて、同氏は語らなかった」
EUでは、ハンガリーがBYDの組み立て工場が稼働する。だが、中国企業ゆえに「不正」をするのでないかと疑われている。国家としての信頼度が、これほどまでに低いのだ。
(5)「このことは、中国メーカーが欧米の関税ルールの限界を試そうとしているという、このサプライチェーン(供給網)のリアルを物語っている。対照的に、米国政府は中国に関連するコネクテッドカー技術を全面的に禁止しており、2027年から段階的に適用を開始していく方針だ。最近、ある中国EVメーカーの幹部は私に、貿易摩擦の逆風下にあっても、自社の戦略は依然として強気だと語った。米国が完全に閉ざした北米市場への活路を、カナダが中国EVメーカーに開いた。この幹部によれば、中国企業が世界規模で事業を拡大するには、欧州と米国の両方が必要だという。「どんなに困難であっても、この二つの市場を諦めてはならない」と同幹部は私に言った」
中国EVは、欧米市場が不可欠と認識している。それ故、どんなことがあっても諦められないとしている。だが、8月稼働の「重要鉱物特恵市場」は、中国排除が目的である。30年以降には、「ESG基準」によって中国工業製品は全て排除される見通しである。レアアース製造が、ESG基準に反しているという理由だ。西側諸国は、着々と中国製品の封じ込めに動いている。知らぬは「中国だけ」という状況である。
(6)「一見すると、フィンランドのEVに関する数字は依然として目を見張る。今年6月までの新車販売の47.8%が完全なEVだった。だが、ユントゥネン氏によれば、その多くは企業の環境目標のためにリースされた社用車で、フィンランドの個人消費者が自腹でBYDとフォルクスワーゲンを比較検討して購入したものではない」
フィンランドで、EV販売比率が高まっているが、リースされた社用車である。個人消費者は、無関心である。

